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2016年11月29日

漫画『七つ屋志のぶの宝石匣』1巻の感想とあらすじ

『七つ屋志のぶの宝石匣』1巻の感想。



七つ屋志のぶの宝石匣
著者:二ノ宮 知子
掲載:KC KISS
1巻発売日:2014年11月3日

東京の下町に店を構えている江戸時代から続く老舗質屋「倉田屋」。宝石のオーラを見ることができる高校2年生の倉田志のぶは、2年前に亡くなった祖父の家に離婚した母と出戻りし、質屋で宝石の鑑定を任されていた。部活と店の手伝いばかりの毎日を送り、彼氏もいない志のぶだったが、実は亡き祖父が相談なく勝手に決めた婚約者がいた。
フランスに本店を置くジュエリー店「デュガリー」日本支店の外商を務めている北上顕定(きたがみあきさだ)。幼い頃、とある理由から祖父に預けられるも、一向に迎えは来ず、そのまま倉田家で育ててもらったイケメン男性。そんな彼には、探し求めている石があるようで・・・。

宝石のオーラを目で見ることができる質屋の娘と、“赤い石”を探している彼女の婚約者であるイケメン宝石外商。そんな2人が出会った人々と宝石にまつわる様々なドラマを織り成す物語。
テーマは『宝石』×『質屋』。コミック・アニメ・ドラマ・映画、様々な媒体で話題になった『のだめカンタービレ』の著者・二ノ宮知子さんが手がけている作品。のだめは漫画だけは読んだことありますが、最も話題を攫ったドラマはまだ観たことないですね。

『七つ屋』とは、質=七(しち、なな)を掛けた質屋関連の隠語です。

作中からは気になる伏線もいつくか伺うことができ、内容、掴み・引き、どれも見事な出来だったと思います。
物語は北上顕定がまだ幼い頃、なんと彼自身が祖母によって質に入れられるところから始まります。志のぶの祖父である倉田屋の12代目店主のもとに、名家・北上家の跡取り顕定を連れた祖母が訪れ、「この子を質に入れたい」というありえない頼みを受けます。
普通ならありえないこととはいえ、切羽詰ったとんでもない事情を抱えている雰囲気を察し、条件付きで引き受けることを了承。その条件というのは、3年過ぎても引き取りに戻って来なかった場合、顕定を孫娘の志のぶと婚約させてもらうというもの。名家・北上家の家計図に連なりたいというちょっとした野心、さらに顕定を連れてきた祖母がかつて憧れの存在だったということも起因していると思われます。なかなかの狸爺ぶりでした。勘違いないでいただきたいのは、決して悪い性格したおじいさんというわけではなりません。

そしてここから時は一気に流れ、顕定は立派な社会人、志のぶは高校生に成長したところまでが冒頭です。まあ、結局迎えは来ず、本人達は認めてないものの、婚約者になっているようです。
幼い身分で質に入れられるというとんでもない入りではありますが、インパクトの強さで掴みとしてはばっちりだったと思います。北上家は離散したとのことですが、その原因はなんなのか、迎えに来れなかった両親や祖母はどうなったのか、気になりますね。

主人公の志のぶは将来倉田屋を継ぐ夢を持つ女子高生。宝石のオーラを見ることのできる彼女の眼には、大切に扱われたモノは光り輝いて見えるようです。逆に盗品など曰くつきのモノはどす黒く淀んだオーラが見え、その才能によって問題が解決に至ることもあります。部活と質屋の手伝いばかりなせいか、「読モ」を会社の名前と勘違いするなど、女子高生らしからぬ常識のなさをしている子。
成長した顕定は倉田屋の手伝いをしながら、老舗フランスジュエリー店の外商として働いています。幼い頃から志のぶの祖父に鍛えられていたことによって、仕事ぶりはかなり優秀。しかも、美青年に成長していることから特に女性客相手だと高成果を上げ、倉田屋に来るお客さんからも「顕ちゃん」と呼び親しまれています。さらに、なぜか商店街のマドンナコンテストで優勝してしまった経歴を持つ伝説の男でもあります。そんな顕にはどうやら探し求めている赤い宝石があるようです。どういう理由なのかは明らかになっていませんが、おそらく倉田家と関係していると思われます。

顕の友人であり仲間でもある久世鷹臣というキャラも登場し、本人には自覚ないものの、彼は淀んだオーラを放つ宝石に触れただけで浄化してしまう特殊な人。志のぶと鷹臣は、お互いの力を利用できないかと企ててる様子も見せ、どちらもいい性格してるので少しおかしかったですね。

宝石にも質屋にもあまり縁のなかった自分ですけどとても楽しめました。しっかりとした取材、勉強によって裏打ちされた宝石や質屋の知識を伺え、単純にストーリーが面白いというだけではなく、とてもタメにもなる作品内容でした。宝石の説明もくどいほど過多になっておらず、読みやすいうえに分かりやすい説明はありがたい。
顕と志のぶの絶妙なコンビから生まれる掛け合いは面白く、宝石にまつわるほっこりする話もあって、気になる謎も散りばめられているなど、今後の展開が一層楽しみになる1巻でした。


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