2022年07月03日
オンラインカジノ
山口県阿武町が4月に、国の臨時特別給付金合わせて4630万円を誤って町内の住民1人に振り込んだことを発端に、オンラインカジノおよび決済代行業者の存在がクローズアップされた。違法なオンラインカジノの広がりはパチンコ・パチスロ業界と無縁ではない。
6月1日の衆議院予算委員会で岸田文雄首相は「一般論として、オンラインカジノにかかる賭博行為の一部が国内において行われた場合、刑法の賭博罪が成立することがある」「オンラインカジノは違法」と政府の見解を改めて明らかにした。
これは山岸一生議員(立憲)の「オンラインカジノを提供している事業者は国外にあり、自分の国では合法だとPRしているが、日本の刑法では国内で遊んだらこれは違法になる。誤ったメッセージを与えてはいけませんので、総理の口からも明快にしていただきたい。オンラインカジノを国内から遊ぶことは違法ですか?」との質問に答えたもの。
オンラインカジノを国内から遊ぶ行為は賭博罪が成立し得るという政府見解はこれが初めてのことではない。それにもかかわらずオンラインカジノ事業者の日本市場向けの活動は積極化しており、オンラインカジノへの誘導のために「無料ゲーム」を提供する海外事業者がテレビCMを放映している状況だ。オンラインカジノに関する2 020年の消費生活相談窓口への相談件数は2 013年の約10倍になっている。しかし摘発事例はきわめて少ない。山岸議員はこうした状況を「野放し」と批判した。
これに対して岸田首相は「オンラインカジノは違法」と繰り返したのに加え、「違法な行動が広がるということは許してはならない」「関係省庁が連携し厳正な取り締まりを行わなければならない」「資金の流れの実態把握をしっかり行うことも重要」と発言した。これは参加者を取り締まるにとどまらず、オンラインカジノを遊ぶ際に大きな役割を果たしている電子決済代行業者に違法性がないかを明らかにしていくことを示唆したと考えられる。
ある市場調査会社の推計によると、2021年の世界のオンラインギャンブリング市場規模は575.4億米ドル(約7.5兆円)。モバイルアプリケーションの普及、ビットコインの採用、有名人を起用した広告や企業スポンサーシップの効果が成長を後押しし、2022年から2030年にかけて11.7%の年平均成長率で拡大すると予想されている。そして、アジア太平洋地域においては「中国、インド、日本が主要な収益源」だとしている。
オンラインカジノの国内での広がりが遊技業界に無縁と言えないのは、参加者の多さだ。国会では国際カジノ研究所が推計した約203万人という試算が紹介されたが、当社とシーズ、EBIの3社が共同で今年2月に実施した調査による試算もこれに近いもので、成人における参加者率は2.7%、参加者人口は推計265万人だった。
注目すべきは、遊技参加者におけるオンラインカジノ参加者率の高さだ。パチンコ・パチスロを遊ばない人のオンラインカジノ参加者率はわずか0.4%だが、パチンコプレイヤーでは29・0%、パチスロプレイヤーでは36.5%。しかも、遊技頻度が高い層ほど、オンラインカジノを高頻度で遊んでいる人の割合が高い。逆の角度から見ると、オンラインカジノ参加者の83.1%がパチンコプレイヤーで、81.8%がパチスロプレイヤーだ。
また、パチンコ・パチスロの遊技頻度が1年前よりも高くなった人(新規参加者を含む)ほどオンラインカジノの頻度も高い。両方を並行して遊ぶため本来ならパチンコ・パチスロに消費されていたはずの小遣いが、オンラインカジノに流出していると考えられる。
オンラインカジノを国内で遊ぶことは違法であるということも踏まえると、遊技業界は政府に取締り強化等の対応を求めるとともに、パチンコ・パチスロプレイヤーへの啓蒙に取り組む必要もあるのではないだろうか。
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