1次変換を繰り返して軌跡を描きます
今回は円弧を描く線形変換を扱いますが、行列の性質を調べるために 「1次変換の繰り返し」という特殊な方法を使います。ある点を1次変換し、得られた座標に対してまた同じ行列で1次変換します。そしてさらに変換して・・・というようなことを繰り返し、それを全てプロットしていきます。するとそこに点の軌跡が描かれているはずです。すなわち行列Aによる変換:という演算を必要な n だけコンピューターで繰り返すのです。これは手計算でやると途方もない根性を要求されるので、コンピューター数学ならではの手法といえます。さっそく普通の回転行列で試してみましょう。初期値を (x, y) = (1, 0) とし、θ = pi/18 = 10° とした R10 を用いて計算してみます:
綺麗に円弧を描いていますね。これはあくまでテストです。本番はここから。今回はベッセル関数を成分にもつ行列
を定義します。通常の回転行列における cosθを J0(θ) で、sinθを J1(θ) に置き換えています。θ = pi/6 = 30° とした B30 を用いて点の軌跡を描いてみると・・・・・・
螺旋が現れました。 (1, 0) からスタートして少しずつ半径を小さくしながら回転して原点へ巻き込んでいく様子がわかりますね。これはもちろんベッセル関数のもつ減衰振動の性質によるものです。