2009年11月05日
見知らぬ海へ
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隆 慶一郎著
税込価格: \540 (本体 : \514)
出版 : 講談社
発行年月 : 1994.9
愛読書というのは何度読んでも楽しい。或いは読むたびに新しい発見がある。そんな愛読書を誰でも1冊や2冊は持っているものです。
私の場合この隆 慶一郎氏の書いた”見知らぬ海”という小説は愛読書のうちのひとつです。
戦国時代、武田信玄の息子 勝頼が駿河の国高天神城を押さえ、その為に織田・徳川の連合軍が駿河の国の支配を争っている時期に高天神城の支城持ち舟城には向井水軍がいました。
徳川軍が攻めてくる。そんな切迫した時期に向井水軍の長向井正重の嫡子向井正綱はなんと釣りに出かけてしまいます。そして釣りをしている最中に徳川軍の総攻撃が始まり、向井一族は正重の側近の海坊主を残し全滅するところから物語りは始まります。
武田水軍の本拠地清水に戻った向井正綱は仲間から魚釣り侍と揶揄されます。
普通なら坊主にでもなってしまうような恥辱のなか、正綱は密かに起死回生の機会を狙います。
そして名を上げた時、武田家は滅び、向井正綱は徳川家と縁を結び徳川水軍の大将となっていきます。
戦国時代の中で家、血筋を守り伝えていくことは大変な事です。関ヶ原の合戦でも多くの武将達が生き残りをかけて右往左往しました。選択肢のいくつもある時代なら更に大変になります。
その中で家、血筋を守る海の一族。考え抜いた上で”海がなんとかしてくれる”と海を中心にした考え方。それが日本中の水軍に注目と尊敬を受ける存在になっていきます。
江戸時代に向けて向井水軍はどのようになっていくのか?興味がわくところですが、残念ながらこの小説は長崎で”ウィリアム・アダムス(後の三浦安針)”の乗って来た船に乗船するところで終わっています。
隆 慶一郎が執筆の途中でなくなられたということです。
未完の小説かも知れませんが、話の面白さ、人の生き様を感じさせてくれる小説で、時々読み直しては自分の生き方を見直しています。