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ν賢狼ホロν
「嫌なことなんて、楽しいことでぶっ飛ばそう♪」がもっとうのホロです。
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2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part1
  
  某スレで、また霊狐の親様がSSを書いて下さいました。
 しかし今回、UPの許可が取れなかったのでUPして良い
 ものか悩みました。悩んだ結果、いちよUPして霊狐の親
 様がこのコメントを見て下っていたら、コメントにOKの
 許可を書いていただけたら嬉しいです。
 
  もしダメでしたら、もちろんコメントに書いてもらってもかま
 いません。そのさい、すぐに削除させていただきます。
 私が勝手に載せなければいい話ですが、多くの悪堕ち好き
 の人にあなた様のSSを見てもらいたいと思い、勝手ですが
 今回載させていただきます。霊狐の親様には本当に申し訳
 ありません。 part9が終わった後には、おまけがあります。
 
 wiki様のサイトでも、UPされているのでご覧いただけます。
 
  いなづ様も、SSを書いてくださいました。毎週ありがとうご
 ざいます。近日中にUPしますので、こうご期待!

  あと本当にいまさらですが、最初のセイバーズの設定を
 考えた作者様、ありがとうございます。 それではどうぞ。










注意! この文章と画像には官能的表現が含まれております。
(ご覧になる方は、自己判断でお願いします。)








学園侵略計画! 個別面談ご用心!?

霊狐の親様作

キーンコーンカーンコーン……

夕焼けの赤に染まる空に、鐘の音が響く。
放課後を告げるその音を合図に各教室の戸が開かれ、ここ私立西安津学園でも各教室
から何人もの生徒が自由な時間を満喫するべく、廊下に飛び出していった。
学園校舎の一つ、高等部の3年のクラスがある3階でもそれは変わらず、まだ部活動
引退の時期には早いためあるものは部活の練習のため部室やグラウンドへ。そして部
に所属していないものは鞄をつかみ、帰宅の途についたり友人との他愛もない雑談に
花を咲かせていた。
その中の一つ、「3−A」と書かれた板が下がる教室の中で、一人の少女が鞄に教科
書を詰め込んでいる。
ふわりと膨らんだセミロングの髪に、いつも優しげな瞳が穏やかな印象を周囲のもの
に与える。学園指定の白と水色の制服に包まれたその体は、布地の上からでもうら若
き乙女らしいシルエットを浮かび上がらせていた。
てきぱきと手際よく教科書やノート、筆箱を鞄に詰め込んだ少女に、教室の入り口か
らクラスメートの声がかかる。
「紫乃森さん、一緒に帰らない〜?」
その声に顔を上げ、教室の戸口に視線をやると2、3人の女生徒が固まって帰宅しよ
うとしている所だった。そのうちの一人、彼女の友人が帰り支度をしている様子を見
かけて誘ってくれたのだろう。
「ごめんね、今日はちょっと用事があるの〜」
顔の前に片手をあげ、眉をハの字に下げながら彼女
――紫乃森・菫(しのもり・すみれ)は鞄を手に持った。
「なんだなんだ、付き合い悪いぞ〜」
「しょうがないよ、すみちゃん最近彼氏出来たばっかりだもん」
「おお〜デートかこいつめ〜、後で話し聞かせなさいよね〜」
面白半分に口々に少女は言い合う。その言のとおり、彼女は最近同じクラスの男子と
付き合いを始めていた。恋人といってもまだキスを一度したくらいの初々しいもので
あったが、お互いに相手のことを大事に思っていた。
だが、今日は彼女たちが言うような予定はない。菫は慌てて手を振った。
「ち、ちがうわよ〜。今日は進路のことで面談! ほら、帰りのホームルームで言っ
てたじゃない」
からかう少女達に顔をぷくりと膨らませながら、彼女は否定する。だがその頬は真っ
赤に染まっており、本心から彼との仲をからかわれたことに腹を立てているわけでは
なさそうだった。
「あ! もう行かないと! それじゃあ!」
慌てて教室を飛び出す彼女の背中に、にやにやとした顔の友人達の視線が突き刺さっ
た。面談は本当のことなのに、これじゃあまるで言い訳をして逃げたみたいじゃない
かという考えが頭に浮かび、彼女は真っ赤な顔のまま廊下を走り抜けた。

――――――――――――――

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part2
「えっと、ここ……かな?」
普段はめったに生徒も通らない特別棟の一角、「面談室」と書かれた張り紙が貼られ
た教室の前にたどり着いた菫は呼吸を整え、引き戸の取っ手に手を掛けた。
「失礼しま〜す……」
そう声を掛けながら、ゆっくりと戸を開ける。ガラガラ……という音を耳にしながら、
菫は一歩、教室の中に足を踏み入れた。

「あの、3−Aの紫乃森です。面談に来ましたー」
室内には普通の教室とは違い、無造作に机やイスが置かれており、空いた教室を倉庫
代わりに使っているような印象を受ける。ほとんど訪れる者もなく、打ち捨てられた
ような空気が漂っているせいか、学園の中のはずなのにどこか異空間のような印象を
菫は受けた。
入ってきた生徒の姿を認め、先に教室の中にいた少女が声を掛ける。










「あ、来たのね。まあ適当なイスにでも座って」













その声の主である少女は胸に大きなリボンのついた白いブラウスにコルセット、ホワ
イトラインが入った青いスカートを身に着け、彼女に視線を向けていた。だがその背
丈は高等部3年の彼女よりも低く、幼い顔立ちからはとても年上には見えない。グリ
ーンの細いリボンが結ばれたツインテールの髪型と、その髪から覗くネコミミ型のア
クセサリが彼女の子どもっぽい印象をいっそう強くしていた。
「遅れてすみません、唯子先生」
「いいのいいの。ほら、じゃあ始めましょっか」
頭を下げた菫に、目の前の少女、唯子は気にした様子もなく微笑む。
そう、一見菫の年下にしか見えない彼女は「先生」――この西安津学園にこの春から
産休の教師の代わりにやってきたれっきとした「教師」なのだ。担当科目は「保健体
育」とこれまた可愛らしい見た目とは大きなギャップがあるが、授業での真剣な態度
と、クラス担任として生徒一人ひとりをしっかりと理解していることから、学園の中
においても男女問わず人気が高い。
にこにこと微笑む唯子にもう一度軽く頭を下げると、菫は手近なイスと机を選び、腰
をおろした。それを見て唯子も机をくっつけて彼女に向き合い、鞄から面談用の資料
を取り出す。
「まあ、進路相談といってもそんなに固くなることは無いから。とりあえず、この間
のテストの結果からね」
「はい」
菫が頷いたのを見ると、唯子は手元の個人票に視線を落とす。緊張に固まる菫に小さ
な苦笑いを一つ漏らすと、彼女は菫の成績の分析、現時点での志望進路の確認、何か
最近問題は無いかなど、一つ一つ彼女に解説し、時には質問をしたりしていく。
初めこそ身を固くしていた菫であったが、唯子の親しみやすい風貌と話し方にいつの
間にか引き込まれ、数分もしないうちにまるで友人と語らうかのようにリラックスし
た様子で会話を続けていた。

「ふむふむ……、では今のところ学校生活に特に不満はなし、と。
うん、現時点の成績もいいし、このまま調子を崩さなければ志望している大学も十分
合格できるんじゃないかしら。もちろん、努力し続けることが大事だけどね」
しばらくの間二人の間で交わされていた会話の結果か、手元の資料に何か書き込みな
がら、唯子がこの面談を締めくくる。褒めつつも現状に満足しないよう、しっかりと
釘を刺すところが彼女らしかった。
「はい、頑張ります!」
彼女の言葉に大きく頷く菫を見つめ、唯子もまたうんうんと頷く。そしてこの面談の
最後に、唯子はちょっといたずらっぽい表情を作ると立ち上がろうとしていた菫に声
を掛けた。
「ところで……ちょっと小耳に挟んだんだけど。紫乃森さん、最近彼氏が出来たんだ
って?」
「ええっ!? せ、先生、な、何を言い出すんですか!? と、言うか何で知ってる
んですか!?」
勢いよく振り返り、真っ赤な頬のまま詰め寄る菫をおかしそうに見、唯子は笑う。
「まあ、いろいろよ。女の子は噂に敏感でしょ? それよりもどうなの、上手く行っ
てるの?」
問いかけてくる唯子の瞳は、気のせいか……先ほどの進路相談よりもどこか真剣な色
が浮かんでいる。まるで、ここからが本番だとでも言わんばかりに。
「あ、そんな……上手く行くとか、私たち、まだ付き合い始めたばっかりで」
しどろもどろに言葉を紡ぐ菫の方に、立ち上がった唯子が一歩近づく。目の前の小柄
な少女が近づいただけで、室内の温度が上がったように菫は感じた。いつの間にか、
唯子の頬も赤く染まり、目には今まで彼女が見たことも無いような色が浮かんでいる。
「あらあら、かわいい。でも、興味はあるんでしょ?
……えっちなこと、とかにも……」
「あ……」
その言葉と共に、唯子から不思議な気配が放たれる。熱っぽく見つめられ、菫は思わ
ず後ずさった。だが、その背に積まれた机があたり、彼女の逃げ場をふさぐ。
まるで獲物を捕らえた獣のように、そっと唯子が近づいてくる。
「そんなに怖がらなくてもいいのに。何もひどいことしようってわけじゃないんだか
ら。ほら、全てを感じるまま、ゆだねなさい……」
「あ……ああ……」
唯子と菫の距離が狭まるたび、少女から発せられる気配は濃密さを増し、菫の体の熱
も熱さを増していく。だんだんと頭に靄がかかり、その目がとろんとして光を失いだ
していった。
だが、唯子の手が彼女に触れる直前。突然菫の目に光が戻り、彼女は素早く唯子から
身を引き離すと慌てて落ちていた鞄を掴み、教室の出口へと駆け出した。
「す、すみません先生! わ、わたしはこれで失礼しますっ!!」
「あっ! ちょ、ちょっと!?」
背後からかけられた声にも構わず、菫は全速力で廊下を疾走する。そのまま階段を駆
け下り昇降口の下駄箱の前まで来て、ようやく足を止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。な、何だったのかしら? 唯子先生のいたずらかな……?
でもそれにしてはなんだか……」
下駄箱に背を預け、荒い息を静めながら考え込む彼女。
しばしうつむいたままの菫に、一人の生徒が近づく。そのまま、彼はぽんと軽く彼女
の肩をたたき、声をかけた。
「よ、何やってんの?」
「わひゃうっ!?」
「うおわっ!?」
不意に肩に置かれた手に思わず飛び上がる。だがその反応は手を置いた方にも予想外
だったらしく、大きく身を引いて目を白黒させていた。
胸元に手を当てて深呼吸をくりかえし、ようやく落ち着きを取り戻した少女は、あま
りの驚きに目の端に小さな涙を浮かべたまま自分を驚かせた犯人を睨みつけた。
自分と同じくらい驚愕を貼り付けたせいで若干崩れているとはいえ、その顔はそれな
りに愛嬌があった。学園の男子制服に包まれたその体はすらりとしているが、だから
といって決して貧弱な印象でもない。それが彼女の彼氏の周囲からの評価である。
「もう、達也くん驚かさないでよ! 心臓が止まるかと思ったじゃない!」
「悪い悪い。そんなに驚くとは思わなかったんだよ。それに珍しいじゃないか、菫さ
んがこんな所でぼうっとしているなんて。……何かあったの?」
詰め寄る彼女の剣幕に両手を軽く挙げ、降参のポーズをとった少年
――「宮下・達也(みやした・たつや)」は彼女の背後から自分の靴箱を探し当てる
と上履きを靴に履き替える。菫もそれにならい、靴を履くと二人は並んで歩き出した。
そのまま校舎を出、庭の中ほどに差し掛かった辺りで菫はややためらいがちに口を開
く。
「うん、ちょっとね。さっき行ってきた面談のことなんだけど……」
「何、結果が悪かったとか言われたの?」
「ううん、そういうんじゃなくて……」
彼の言葉に首を振り、言葉を濁す。さっきのことを正直に話すのはなんだかためらわ
れたし、率直に言って自分でも上手く理解できていなかった。
ただなんとなくいつもと唯子先生の様子が違う、とだけ説明した菫に、隣を歩く達也
は少しだけ心配そうな顔色を浮かべた。
「ま、一対一の面談で菫さんも緊張したんだろうし、そうじゃなかったとしても先生
だっていろいろあるんじゃないか? きっと気にしすぎなんだよ」
「だといいんだけど……」
浮かない顔の彼女を元気付けるようにあれこれ推測を述べる彼。その言葉に力なく頷
きながらも、菫には先ほどの教室でのことを納得できるような理由は見つけ出せなか
った。



夕焼けの赤に染まる空に浮かび上がるように、そびえる学園の校舎。その部屋の窓際
に、一人佇む人影があった。
彼女以外の人間、他の教師や生徒の姿は室内には見当たらない。
今、窓から入る夕日が朱色に染める世界にはその少女の影だけが床や壁に長く伸びて
いた。小柄な体躯と長く伸びたツーテールの影が、夕日に伸ばされ歪んだシルエット
になっている。
いや、その影の形はどこかおかしかった。頭、胴体、手足と人間が持つ特徴はそれぞ
れ備えているものの、手足はふわふわとした黒い獣の毛に包まれ、鋭い爪が伸びてい
る。頭につけたネコミミも髪の毛同様真っ黒にそまり、その質感はとてもアクセサリ
とは思えない。さらに、その腰のあたりからは手足と同じ色に包まれた細い尻尾が生
え、ゆらゆらとゆれていた。
いつの間にか肌の色も漆黒に染まり、その中に人外の輝きを宿す目が二つ、沈みかけ
た太陽が作り出す夕闇の中に浮かび上がっている。
いまだ校庭からは部活動を行う生徒達の元気な声が時折響いてきている。彼らにはこ
こに人ならざる姿をした怪人が立っていることなど、ましてやそれが生徒から慕われ
る教師である唯子の正体だとは夢にも思うまい。
金色に妖しく輝く瞳は、今丁度校門を通り過ぎようとしている一組の男女へと向けら
れていた。仲良さげに並んで歩くその姿が角を曲がり、やがて唯子の視界から消える。
二人の姿が見えなくなっても彼女はしばしその角を見つめていたが、やがてポケット
から小型の通信機を取り出すと誰かに連絡をとった。








    「……秋子様。少し気になることでご報告が。
    ……はい、分かりました。では、一度帰還します」











短い通話の後、通信機を折りたたんだ唯子が振り返ると、目の前の虚空に様々な色を
混ぜ合わせたような混沌が口を開けていた。彼女はためらいもせず、その中に一歩踏
み出す。いかなる原理か、彼女の姿がその中に全て消えると混沌は音もなく入り口を
閉じる。
後には暗闇が満ちだした無人の教室だけが残された。

――――――――――――――

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part3
何時とも知れぬ時、何処とも知れぬ場所に禍々しき威容と共にそびえる魔城。
脈動する外壁にはまるで血管のような細い筋が幾条も走り、粘液に濡れた触手が意志
を持っているかのようにのた打ち回る。それはまさに混沌という言葉を具現化したも
のであった。正常な精神を持った人間であれば嫌悪を催すどころか発狂してもおかし
くないその異形を持つ城こそ、数多の世界を侵略してきたダーククロスの本拠地・
ダークキャッスルである。

その複雑広大な城内の一角。淫獣軍の怪人や戦闘員が歩き回るエリアに黒い猫娘の姿
をした淫獣人、唯子の姿があった。
彼女はまるで動物の体内を思わせる廊下を気にした風もなく歩みを進め、前方の開い
たドアから出てきた戦闘員の一人を呼び止める。全身をタイツで覆い、その頭から獣
の耳を覗かせる少女は自分より上官にあたる淫怪人に気付き、素早くダーククロス式
の敬礼を取った。









「イーッ・ハイル・ダーククロス! 唯子様、何か御用でしょうか?」








「ええ、少し軍団長に報告したいことが。秋子様はいらっしゃる?」
「はい、つい先ほどご帰還なされました。今は自室に居られます」
「そう、ありがとう」
敬礼を取る戦闘員を後に、唯子は秋子の自室に向かった。ドアの前に立ち、声を掛け
ようとして室内から響いてくる声を鋭敏な耳が捉える。






「……めぇ……、や……らない……ぇ……!」
「……そん……ここは、もう……よ……?」
「やだ……らめ……らめ……、ぁ……やぁ……」
「…………!」
「…………!!」






どうやら取り込み中のようだ。どうしたものかと彼女はノックしようとしたままの姿
勢で固まる。そんな彼女に構わず室内の声と物音は激しさを増していった。
「あ、あ、あああああぁぁぁぁん!!」
突如響いた叫び声にびくりと体を跳ねさせた唯子は、そっと室内の様子に聞き耳を立
てる。やがてことが終わったと判断した彼女は、おそるおそる声を掛けた。
「……あの、秋子様。少しお時間よろしいでしょうか?」
「…………」
気のせいか、室内の人物が驚いて飛び上がったような気配がした。それからばたん、
ばたんと何かの音が聞こえ、まるで「何かを隠すのを諦めたような」投げやりな声が
響く。
「……開いてるわよ。唯子ね? 入っていいわ」
「……失礼します」
何となく、明日にすればよかったかなという思いが浮かぶのを首を振って消し去ると
彼女は軍団長・秋子の部屋に足を踏み入れた。







            「ま、待たせたかしら?」








「いいえ、来たばかりですから」
部屋に入ってきた唯子に、ベッドの端に腰掛けた淫獣軍団長・秋子が声を掛ける。
室内にはむせかえるほどの情事の後の淫臭が立ち込めており、ほとんど裸身の彼女の
肌に珠の汗が浮き、その頬も桜色になっていることから先ほど何が行われていたかは
明白だったが、彼女はあえてそれに触れることはしなかった。
異様に膨らんだベッドの上の布団が時折ごそごそと震え、そこから純白の獣毛に包ま
れる尖った「狐の耳」と銀髪、さらにふさふさとした尻尾が覗いていても、唯子は強
引に無視した。
久しぶりに会え、しかも仲間となってくれた親友との甘いひとときなのだ。隙さえあ
れば毎日のように任務中でも構わずにゃんにゃんして作戦を失敗することは日常茶飯
事、その結果副長はおろか、ついにダークサタン様にまで説教とおしおきを喰らうハ
メになったどこぞの某淫竜軍団長と同じことをやっていたとして誰が彼女を責められ
ようか。
「そ、そう? それならいいわ。ところで話があるってことだったわよね?」
ちらちらと視線がベッドにそれる秋子に構わず、唯子は口を開く。
「ええ。実は私が潜入している学園でのことですが、ある生徒に対し淫気が効果を
発揮しなかったのです」
「淫気が効かない……? それは確かなの?」
流石に軽く目を見開き、驚いた表情を作った軍団長に唯子は頷いた。
「確かかと。そのとき私は擬態こそ解いていませんでしたが、戦闘時とほぼ同じ強さ
の淫気を発散していました。ですが、対象は最初こそ行動を鈍らせたものの、私が肌
に触れる寸前に理性を取り戻し、逃げ去ったのです」
「……対淫気装備を身につけていた可能性は?」
「完全に無いとは言い切れませんが、極普通の生徒の格好だった所から、おそらくそ
れは限りなく低いかと。私個人の印象ですが、対象自身が何らかの特殊能力を持って
いたと考えた方が正しい気がします」
「……正体はばれてないのね?」
「はい、その点に関しては心配ありません」
「ふむ……」
真剣な表情で腕を組み、考え込む秋子。その姿は流石軍団長といった風であった。
本能任せに戦い、犯す淫獣軍が「軍団」として統制を保っているのはひとえに彼女の
智謀あってのことである。そのことは軍団の中で秋子と同じく知略に長けた唯子が誰
よりもよく知っていた。
「……だめね。私たちだけじゃちょっとそのことについては答えが出せそうに無いわ」
しばらく考え込んでいた秋子だったが、やがて溜息と共にそう言った。そして唯子の
目をじっと見つめると、諦めたように言葉を続ける。
「貴女が見て見ぬふりをしてくれてたから、それに甘えようかと思ったけど……。
やっぱりこの件については彼女の協力が必要そうね。
……霊狐、出てきていいわよ」
その言葉に布団に隠れて……いやくるまっていた、銀髪白毛の狐の姿をした女性、
霊狐が姿を現す。
彼女は呆れたように秋子を見ると、大きな溜息を一つついた。
「まったく。途中で自分からばらすくらいなら最初から素直に白状すればいいのよ。
唯子さんも困ってたじゃないの」

「だ、だって……どこぞのセイ(ピー)と同じ色狂いと思われたら、私のイメージ
が落ちちゃうじゃない」
「もう遅い気がするけどね……。作戦の失敗という点で見たら貴女もそんなにかわ
りないわよ? 以前脱走した私のことを捕まえて、完全なダーククロスの一員とし
てくださったのはダークサタン様ですし」
「ううっ……」
「それで、淫気が効かない子っていうのは?」
肩を落とす秋子を尻目に、唯子のほうに向き直った霊狐はさっそく例の生徒について
唯子に尋ねる。彼女も自分が手に入れたデータを取り出すと、霊狐に渡した。
「この生徒です。『3−A 12番 紫乃森 菫』 念のため健康診断などの生体デ
ータも調べましたが、身体には特に目だった異常はありませんでした」
その数値や報告の詳細に眼を通していた霊狐は、やがて顔を上げると顎に手をやりな
がら語りだした。
「確かにね。……実際に私がその様子を目にしたわけじゃないから、断言は出来ない
けど……。その子はもしかしたらセイバーズの適正があったのかもしれないわ。
以前、セイバーズのメンバーを選ぶ際に、とある学園に適正値が高い子達を集めたっ
て聞いたことがあるし」
「セイバーズの!?」
驚く二人に無言で頷き、霊狐は先を続ける。
「でも多分、当人は自分にセイバーズの適正があるとか、淫気に対する抵抗が高いっ
ていう意識は無いでしょうね。そういう意味では今のうちに手を打ったほうがいいわ。
もしそれを自覚すればもっと淫気に対して強くなってしまうし、セイバーズの誰かが
彼女の適正に気付き、仲間に引き入れたら、私たちにとって強力な敵になる恐れもあ
る」
これ以上厄介な敵が増えるかもしれないということに、流石の軍団長も眉根をひそめ
た。唯子も、同じく焦りを浮かべた表情で霊狐を見つめる。
「では、どうしましょうか?」
「淫気が効かないとなると……こっそり誘拐するのも難しいわね。それに唯子さんは
既に警戒されているでしょうし……」
「あら、そんなの簡単よ?」
唯子の問いかけにまた考え込んだ霊狐に、意味ありげな笑顔を浮かべた秋子が話しか
ける。自信満々のその声に振り向いた二人の視線を受け止め、彼女はごくあっさりと
言った。
「ふふ……外からの守りが堅固な城でも中から崩せばもろいものよ。それと見ず知ら
ずの相手を警戒するなら、警戒できないような人物に協力してもらえばいいのよ」
ぱちりとウインクをした秋子は、彼女たちを近寄らせるとそっと作戦を耳打ちした。

――――――――――――――

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part4
「ええと……面談室、面談室……。あ、あれだ」
遠くに響く部活の生徒の声を聞きながら、少年は人気の消えた廊下を歩く。
やがて並んだ教室のうち、目的とするところを見つけた彼は鞄を持ったまま教室の引
き戸を開け、室内に一歩踏み込んだ。
「失礼しまーす。……先生、きましたけど〜」
少年はきょろきょろと室内を見回しながら、教室の中央まで進んだ。だが、室内には
彼を呼び出した人物の影も形もなく、その顔に戸惑いが浮かぶ。
「あれ? ここであってるよな? 先生、唯子先生〜。宮下、来ましたけど〜」
もう一度声をあげ、室内を見回す。がらんとした教室にはあちこちに埃を被った机や
イスが散乱するのみで、彼を呼び出した小柄な名物教師は何処にも見当たらなかった。
「あれ〜? 時間か場所、間違ったかな。しょうがない、今日は帰って……」
ぼやきつつ床に置いていた鞄を拾い上げようとして、達也は突如耳に響いたドアの音
に驚く。思わず口から悲鳴が漏れそうになるのをようやくこらえ、おそるおそる振り
返った先には後ろ手に扉を閉める唯子の姿があった。無意識に、達也の口からは安堵
の吐息が漏れる。
「ごめんなさいね、ちょっと遅くなっちゃって。驚かせちゃった?」
「いや、いいんですよ」
謝る彼女に首を振ると、唯子はにこりと微笑む。取り越し苦労だったかと安堵した彼
の顔はしかし、彼女がそのまま鍵を掛けたことで再び曇った。
「……あの、先生? な、なんで鍵を掛けるんですか?」
自分でも意識しないうちに顔がこわばり、口ごもってしまう。そんな彼を入ってきた
ときからずっと見つめたまま、唯子は近づいてきた。
理解できない不吉さに、達也は一歩後ずさる。彼女は全く変わらない様子で足を踏み
出し、彼に近づく。
後ずさる、近づく、後ずさる、近づく、後ずさる、近づく。
だがその非常にゆっくりとした鬼ごっこは、彼の背が黒板に当たったことで終わりを
告げた。少年を追い詰めた唯子はそっと正面から彼に抱きつく。
「もう、何で逃げるの?」
いたずらっぽく、わざとらしく怒ったように頬を膨らまし彼を間近で覗き込む唯子は
客観的に見たら非常に魅力的に見えるだろう。だが、その目はどこか獲物を狙う肉食
獣のもののようで、女性に密着しているといっても、とてもではないが達也には興奮
する余裕は無かった。
「あ、あの……せん、せい……?」
カラカラに渇いた喉を震わせ、ようやくそれだけを搾り出した少年に唯子は楽しそう
に微笑む。そのどこか邪悪さを感じさせる笑顔を目にした彼の体は、まるで石になっ
たように硬直した。怯える目に涙が浮かぶ。思わず突き放そうとするも、目の前の小
柄な少女は、その華奢な体躯からは信じられないほどの力で彼を抱きしめてくる。
振りほどけない。
「ふふ……こわがっちゃって、かわいい」
どこか不吉で淫らな微笑を浮かべたまま、唯子は人間の姿から本来の淫獣人へと姿を
変えていく。手足を黒い毛が覆い、ネコミミが血の通った生身になり、肌と髪も黒く
染まっていく。スカートのすそから二本、黒い猫の尻尾が飛び出し、興奮に揺れた。

「……!」
目の前で怪人へと姿を変えた少女に目を見開き、叫び声を上げようとした彼の口を唯
子は己の口で素早くふさいだ。そのまま舌を絡め、しばし濃厚なキスを続けると彼の
体から力が抜け、抵抗が止む。光を失いつつも恐怖に怯える達也の耳元に、唯子は顔
を近づけそっと囁いた。
「そう心配することは無いわ。別に君を殺そうとか、そういうことではないから。
ちょっと宮下君にお願いがあるだけなのよ。
それに君にとっても悪い話じゃないわ。どうかしら? 協力してくれる?」
「……あ……は、はい……」
「ふふ、いい子ね。素直な子にはご褒美をあげるわ……」
虚ろな瞳で意志のまったく感じられない声を出した少年を、唯子はゆっくりと押し倒
す。そのまま慣れた手つきで既にがちがちに固くなった少年のモノをズボンから取り
出す。達也はもはや淫気に完全に当てられ、唯子が服を脱がせていっても最早抵抗も
せず、これから起きることにかすかな期待をこめた視線を送るだけだった。
「あら、立派じゃない。うふふ……これならきっと彼女も喜ぶわね。
それじゃあ、いくわよ……?」
唯子は床に寝そべった達也にまたがり、はちきれんばかりの一物を秘所にあてがう。
そのまま彼の上に腰を下ろし、ずぶずぶと飲み込んでいった。
「うあぁぁぁぁっ!」

「あうぅん……おっきぃ……はいって、くるぅ……」
あまりの快感に叫び声を上げる少年を見下ろしながら、唯子もまた膣内に侵入してく
るものが擦れる感触に声を出した。そのまま根元まで飲み込むと、蕩けた笑みを浮か
べる。
「ほら、全部入ったわ……見える? うふ、気持ちよさそうな顔しちゃって。
でもまだよ、ほらほら、動くわよ」
「あ……ぁっ……ぅあ……」
ずっ、ずっ……と彼女の腰が動き出し、少年の体を揺さぶる。
「くっ……」
無意識にやっているのか、絡みつき締め付けてくる彼女のあまりの快感に、達也は唇
を噛みしめ、出しそうになるのをこらえた。
「……ん……っ! 我慢しなくていいのよ……」
「あ、うぁぁあ!」

唯子は彼とつながったまま、彼の唇を奪い、腰を振ると共にその口内を舐めまわす。
抵抗したくても淫気と快感に思考を塗りつぶされ、逃げることも考えられない彼を意
地悪く見つめながら、ぺろぺろと頬に舌を這わせた。
しばしの間、部屋の中には彼らの動きにあわせて肉がぶつかり合う音と少女の嬌声だ
けが響いていた。だがそれも、二人が限界を迎えたことで終わりを告げる。
「あぁん……そろそろ、いきそう……?」
唯子の声に、虚ろな表情の達也はかろうじて頷く。それを見ると、唯子は腰の動きを
早めた。
「くぅ……っ!!」
「ぁ……っ、あぁ……っ……ぁぁ……!!」
一際強く締め付けてきた快感に、男のものから熱い液がほとばしると、彼女も大きく
背を反り返らせ、かすれた叫び声を上げた。
「ふぁ……ぁ……」
ぶるぶると体を震わせると、淫怪人の秘所からどろりと白い液体がこぼれた。その熱
さに彼女の体はまたびくんと震え、力を抜くと、くてんと倒れこむ。
そのまま彼の胸に顔をうずめ、そっと囁いた。
「ふふっ……想像以上によかったわよ? またしたくなったら、いつでも課外授業を
受けにいらっしゃいね」
しばしそのままの体勢でいた二人だったが、やがて唯子は体を起こすと萎えた彼のモ
ノを引き抜き、立ち上がった。とろり、股間から白濁した液体が垂れだす。
「これで君の体には魔淫気がたっぷり染み込んだわ。まずは第一段階クリアね。
君、なかなか素質もあったから特別サービスで私たち淫獣人の因子も混ぜてあげたわ。
それじゃ、後はお願いね?」
「は……い……」
かすかな声で達也が頷くのを聞き届けると、唯子は再び人間の姿に変身しその場を後
にした。
教室の中に一人残された少年はセックスの後の気だるい疲労に、いつの間にかまぶた
が閉じていった。やがて、その体がぶるぶると小刻みに震えだし、姿を変えていった。
だが、その様子を見たものは誰も居らず、少年自身すら深い眠りの中で気付くことは
無かった。

――――――――――――――

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part5
その翌日、登校途中に達也の姿を見つけた菫は、一緒に帰るという昨日の約束を破っ
て何をしていたのかと彼を問い詰めた。連絡しても全く電話がつながらないので、
何かあったんじゃないかと心配する彼女に対し、少年は心からすまなそうに、先生か
ら頼まれた用事でどうしても外せなかったと謝罪し、後で埋め合わせは必ずするから
許してくれと頭を下げた。
その様子には嘘をついている風もなかった。菫としても恋人とそんな些細なことでけ
んかをしたくなかったため、彼女はかすかに心に引っかかるものは感じたものの、こ
の件についてはそれでおしまいにすることにした。
「でも、今度からはちゃんと連絡入れてよね?」
「わかった、もう約束をすっぽかすようなことは二度としないよ」
最後にもう一度だけ念を押すと、そのまま二人は並んで学園への道を歩き始めた。

テーレッテー

放課後、帰り支度をしていると彼女の携帯電話が着信ありのメロディーを奏でた。
ポケットから小さな機械を探り当てると取り出し、二つ折りのそれを開いて画面を見
る。四角い液晶にはメール受信の旨と、送信者の名前が表示されていた。
「……あれ? 達也君からじゃない。珍しいわね。なんだろ、わざわざ……」
別に、彼氏である達也から彼女にメールが来ること自体はよくあることで不思議でも
なんでもない。しかし、彼とはクラスが同じであることから、それほど重要な用件で
ない限り大抵の場合は直接会って話してくるのが普通だ。メールを送ってくるにして
も意外と几帳面な彼は、題名にも中身が分かるようなことを書いてくるはずだった。
「今大丈夫?」とだけ書かれた簡潔な題名に疑問を浮かべながらも、菫はボタンを操
作し彼氏から送られてきたメールの本文をディスプレイに表示させる。
だが、それはますます彼女の混乱を深めるばかりだった。
『話したいことがある。学園特別棟3階、一番端の教室で待ってる』
メールはそれだけで終わっていた。いつもの彼らしくないそっけない一方的な呼び出
しに一抹の不安を感じる。思い返せば今日の彼は一日中、なんだかそわそわしていた
ような気がした。授業が終わった後も、わき目も振らず教室を飛び出していった姿を
彼女も目にしている。
「う〜ん、気になるけど……ここで考えていても仕方ないわよね。当人が呼び出して
きているんだし,会って直接聞いた方が早いわ」
彼女はそう自分を納得させると、勉強道具を詰め込んだ鞄を手に教室を後にした。

夕日が窓から射し込み、茜色に染まる廊下はどこか不安を掻き立てる。逢魔が時とは
よく言ったものだわ、と彼女は内心呟きながら自分以外の生徒の姿のない特別棟の階
段を上る。まるで一歩一歩異界へ近づいているような不気味な感覚を、無理に笑って
吹き飛ばす。
「……はぁ、学校の怪談を信じる小学生じゃあるまいし。この前といい最近ちょっと
神経質になりすぎてるのかなあ」
ぼやきながらも廊下を進む足は止めない。歩く彼女の横には空き教室の曇りガラスに
室内に乱雑に積まれたガラクタの影が映り、出来の悪いお化け屋敷の背景のような印
象を与えてくる。生徒や教師からも忘れ去られたような特別棟の薄気味悪さに、知ら
ず菫の歩みは早足となっていた。
やがて、達也がメールで指定して来た教室が見えてくる。廊下の行き止まりに作られ
たそこは今まで通り過ぎた教室と同じく、ここ最近の間に使われたような形跡はない。
本当にここに彼がいるのだろうか、という疑いもかすかに生まれてはいたが、ここま
で来た以上帰るにしてもせめて中を一目見て確かめてからにしようと思い、菫は勇気
を震わせて塗装の色あせた引き戸に手を掛けた。
「失礼します……。達也君、いるの?」
こわごわと教室の中を覗き込み、一歩踏み出す。室内の明かりはついておらず、夕日
が壁や床をオレンジ色に染めていた。倉庫特有のつんとした埃っぽい空気に、菫は思
わず顔をしかめる。

菫が求める姿はすぐに見つかった。部屋の中央、机やイスをどけて作られた空間に、
よく見知った少年がこちらに顔を向けて立っている。夕日を背にした逆行の中でも見
間違えるはずもない彼の姿を認めた菫の顔に、無意識に安堵の表情が浮かんだ。
「早かったね、待ってたよ」
にこにこと笑顔を浮かべ話しかける達也の姿にほっとした彼女は、中央に立つ彼に2、
3歩近寄りながら声を掛けた。
「それで、メールでは何か話したいってことだったけど。急にどうしたの?
それもわざわざこんなところに呼び出して。教室では出来ない話?」
わざわざ人気の少ないこんな場所まで呼び出され、気味の悪い思いまでした不満が見
知った人物に逢えた安堵からつい口をつく。だが当の彼氏は先ほどからなにがおかし
いのかずっと笑みを浮かべたまま、彼女の姿を見つめていた。
「……ちょっと? 達也君?」
その様子にいつもの彼と違った何かを直感的に感じ取った菫は、こわばった声を出し、
無意識に一歩後ずさった。それでもまだ、達也は笑みを浮かべたまま彼女から視線を
外そうとしない。いつもの彼とはどこか違うその態度に、菫は言いようのない違和感
と恐怖を感じる。
「ねえ、ちょっと何か言ってよ……。あんまりたちの悪いいたずらが過ぎると、
流石に私も怒るわよ……」
いつの間にか震えだした腕を押さえながら、出来る限り強い調子で言おうと口を開い
た菫から発せられたのは、しかし恐怖にかすれた小さな声だった。
その声を受けて、彼が菫の方に一歩踏み出す。思わず彼女は身をすくめ、一瞬目をつ
ぶった。
「ごめんごめん、怖がらせるつもりはなかったんだ。ただちょっと……あまりにも
「おいしそう」だったんでつい、ね」
「え……? 何言って……」
いまいち彼の言葉を上手く理解できなかった菫は、戸惑いも露に聞き返す。だが頭の
どこか別の部分は冷静に今彼女が置かれている状況を分析していた。
そしてさっきの言葉は、聞き間違いでなければ……彼は、私を「おいしそう」って言
ったのではなかったか? 何をバカな、人間が人間を美味しそうなどと思うはずがな
いじゃない。きっと何かのいたずらかドッキリなんだわ。
人間としての常識はそうさっきからひっきりなしに声を上げているものの、彼女の生
存本能、動物的な直感は先ほどからずっと警告音を鳴らしていた。目の前のモノは危
険だ、今すぐ逃げろと。
だが彼女の前に立つ人物がよく見知った、大好きな少年であったことが彼女の判断を
鈍らせた。そして全ては遅すぎた。戸惑い混乱する間に菫はもう敵の罠……狩場に完
全に踏み込んでしまっていた。そして目の前の相手には彼女を見逃す気などこれっぽ
っちも無かった。
近づいてくる達也の体から奇妙な気配が立ち上る。彼女はそれが以前に唯子との面談
のときに感じたものと同じであると気付いた。彼の笑みが深まるのに比例するように、
どんどんその気配は濃くなっていく。不意に菫は彼から感じる違和感の正体に気付い
た。その瞳だ、夕日を背に、影になっているはずなのにどこかぎらついて見える。
そのくせ、妙なことだが……全く光が無かった。
「ひっ……」
意図せず漏れたか細い悲鳴に、達也は困ったように頭を掻く。
「参ったな……。そんなにこわがらないで貰いたいんだけど。まあいいか、
どうせやることは一緒なんだしね」
その言葉と共に制服の上着を脱ぎ捨てた少年の姿が、しだいに変わっていく。
黒髪の間から、髪の毛とは違う真っ黒な毛に覆われた三角の耳が伸びだし、ピンと立
つ。同時にズボンの後ろ、尾てい骨のやや上あたりからは黒くふさふさした毛に覆わ
れた見事な尻尾が飛びだした。口元からは鋭く尖った牙が覗き、手の爪もまるで刃物
のように鋭く長く伸びる。両足がふくらみ上履きを破るとまるで獣のような形になっ
た。

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part6

「ひ、た、達也君……。い、いやぁ……」
目の前で恋人が化け物へと変貌していく様子を見せ付けられた菫は動揺して彼の名を
呼ぶことしか出来ず、その目からは現実とは思えない眼前の光景への恐怖のあまり涙
がこぼれた。
やがて、完全に怪人へと変化が終わった少年は白目すら黒く染まった目の中に浮かぶ
金色の瞳で恋人の少女を見つめた。その瞳は愛しい恋人に対する燃えるような愛情と、
これから起こることへの期待、そして何よりも獲物を自分の手に捕らえた喜びといっ
たもので満ち溢れていた。
だが、それは結局のところたった一つの言葉で言い表せるものである。それは、菫が
この教室に入ってきたときから、つまるところ最初から彼が彼女に対して示していた
笑みの正体であった。
――つまり、『性欲』である。
セイバーズやダーククロスのことに疎い彼女が知る由も無かったが、その感情こそが
戦闘員や怪人を初め、ダーククロスの構成員が共通して持つ、他者に対する感情であ
る。唯子によって獣人の因子を埋め込まれ、狼型の淫怪人へと改造された達也もその
例に漏れることはない。いや、もともと恋人である菫に対しての想いがある分他の怪
人よりもその性欲の炎は激しく燃え盛っていた。
「怖がらないでもいいよ……ただちょっと気持ちよくなってもらうだけだからさ……。
恋人同士なんだし、普通のことだろう……?」
「いや……、いや……」
大好きな恋人の姿をした人狼が、よく聞き知った少年の声で語りかけてくる。どこか
異常な響きこそあるものの、その声自体はいつも聞いていた達也のものであり菫は混
乱した。目をつぶり頭を抱えながら、いやいやと首を振る。
「逃げないでよ、さあ……一緒になろう? 菫さんなら俺なんかよりもずっとダーク
クロスのために力を使えるようになるんだって、秋子様も言っていたよ?」
何故嫌がるのか全く分からないといった調子で、眼前の獣人は首をかしげる。
すっと伸ばされた手がするりと彼女の細い腕を掴むと、達也は強引に彼女を抱き寄せ
る。菫がじたばたと暴れても人間のものとは思えない力でつかまれた腕はまるでびく
ともせず、淫怪人は熱のこもった視線で彼女の目をまっすぐに見つめると、その可愛
らしい唇をふさいだ。
「むぐぅっ!?」
目を見開く彼女に構わず、彼はそのまま舌を伸ばしてくる。彼女は目に涙を浮かべた
まま、しっかりと固く口を閉じた。だが彼の舌はまるで万力のように固く閉じられた
菫の唇をじわじわとこじ開け、ついに彼女の口内に侵入した。

「んんんっ! ん、んん〜〜っ!
異物が口内に侵入してくる不快感に彼女は声にならない声をあげ、顔を引き離そうと
する。だが腰と頭をがっちりと固定され、人間の彼女にはどうすることも出来なかっ
た。
少年は暴れる菫をおかしそうに間近から見つめ、構わず口内を蹂躙する。舌が絡めら
れ、頬の裏や歯茎を熱い唾液まみれの舌が這いずる。その感触に彼女の目から涙が溢
れ、流れ落ちた。
彼の舌が唾液を菫に送り込んでくる。必死の抵抗も空しく、それは彼女の喉の奥へと
流れ込んでいった。
「んぶっ、ん、んく……やらぁ! んぐ、おねがい、やめ……!」
彼女の懇願など聞こえていないかのように、達也はひたすら菫の口を貪る。
やがて絶望からか彼女の目から光が消えると、ようやく狼は彼女から顔を離した。
「……ひっく……は……っ……ひどぃ……なんで、こんな……」
焦点の合わない瞳で彼を見つめ、呆然と呟く彼女に、淫怪人は悲しそうな表情を作る
と、その頬を伝い落ちる涙を舌で舐め取った。
「ごめん、でも菫さんもすぐに分かるよ? ダーククロスがいかに素晴らしいかって。
でもそのためには菫さんの体が持っている力が邪魔なんだって。だからさ、菫さんに
仲間になってもらうための大事な役割を俺が秋子様から仰せつかったんだ」
「だーく、くろす……? 私の、ちから? ……仲間? なに、何を言って……」
戸惑う彼女に少年はもう一度口付けると、彼女の制服の上着とスカートをめくり上げ
る。ブラジャーに包まれたふくよかな胸と、清楚な白い下着が露になった。
「い、いやぁぁっ!」
悲鳴を上げた彼女に構わず、彼はふくよかな胸と、下着越しにもじんわりと湿り気が
分かる秘所に手を伸ばす。敏感な部分に指が触れ、菫は体をびくつかせた。
「へぇ、キスだけでもうこんなになっちゃったんだ? 菫さんって、意外とエッチな
んだね? ほら、パンツももう濡れちゃってるよ?」
「ち、ちがう! そ、そんなこと、ない……」
「本当?」
男は右手で胸を揉みながら、左のふくらみに舌を這わせる。生暖かい感触に菫の口か
ら小さな叫びが漏れた。体をくねらせ、引き離そうとする彼女を獣人は逃がすまいと
、いつの間にかツンと尖っっていた乳首を口に含んだ。
「あ、あぁん! だめ、だめぇ! やめてぇ!」
悲鳴とも嬌声とも区別のつかない声を上げ、目をぎゅっとつぶった彼女に構わず舌で
転がすように愛撫する。そうして、左を十分に味わってから、今度は手と口を入れ替
え、右の胸に吸い付いた。頃合を見計らい、男の大きな手が娘の下半身へと伸ばされ
る。その手はへそを越え、彼女の下着に隠された熱い割れ目へと伸びる。
「……! そ、そこはだめなの、やめて……お願い……」
だが、かすれた菫の言葉にも構わず、少年の指はそこにうずめられた。彼の指が中を
かき混ぜるたび、くちゅり、ぐちゅとくぐもった水音が響く。
「ひぅん! あっ、あ……やだぁ……」
しばらく手と口で胸、そしてあそこの愛撫を続けるうちに、だんだんと彼女の体から
力が抜けていく。
「あ……」
彼による蹂躙が続くうちに、いつの間にか菫の体に変化が生まれはじめた。先ほどか
ら頬はほんのりと色づき、上気し、目にはかすかだが淫らな光が灯り始めている。
時折口から漏れる声にもほんのわずか、甘い響きがこもり、無意識にではあるが彼女
の体、女としての本能は自分からも彼とのこの行為を、そしてさらに彼とその先の段
階へ進むことを求め始めていた。
その彼女の変化を見て取った淫怪人・達也は金の魔眼を嬉しそうに細める。
「ふふふ……菫さんも気持ちよくなってきた? 嬉しいよ。
でもね、菫さん。まだまだこれからなんだよ……。まだ、始まったばかりなんだから。
……でももう、そろそろいいかな? 我慢できないし。
菫さんのここ、いただくね……?」
耳元に顔を近づけ、そっと囁かれた言葉をぼんやりとした思考にとらえた菫は、何気
なく顔をうつむける。その視線の先には既にズボンの生地を持ち上げ、大きく固くな
った少年のモノがあった。
「……ひっ!」

思わず息を呑む彼女を優しく床に押し倒し、少年が覆いかぶさる。ズボンから外に出
されたグロテスクな肉棒が秘所に押し当てられると、全身を貫く恐怖が彼女を支配し
た。髪を振り乱しながら泣き叫び、必死に抵抗する。

「い、いやぁっ!! やだ、やめてぇ!! おねがい、お願いだからぁ!!
やめて! ゆるして、それだけはゆるしてぇ! だ、だめ、そんな、
そんな太いのはいらないからぁ……! 」」
だが、彼女の狂乱すらも性欲に支配された獣と化した少年には興奮をあおる材料でし
かなかった。先ほど以上に邪悪な笑みを深めると、そのまま一気に彼女を貫く。

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part7
異常なほど巨大化した肉の槍が彼女の肉壁を押し進み、ぐぶぶぶぶという嫌な音が響
く。

「あ、いや、あ、やぁあぁあぁあああ……!」
「すご……、菫さんのなか、すごくきもちいい……!」
根元まで自分をうずめた少年は恍惚の表情で呟き、腰を動かし始めた。
最初こそゆっくりとした動きだったそれは、すぐに激しさを増し、打ち付けるような
乱暴なものになった。彼女の華奢な体は揺られ、奥に何度も彼が打ち込まれる。
「あ……ぁぁぁ、はげし、はげしすぎるよぉ……お、奥がぁぁ……く、くるし……」
唇を噛み、目をつぶって耐える彼女の耳に、どこか遠くから達也の声が聞こえてくる。
「あは……気持ちいいんだね? 菫さん、すごくエッチな顔しちゃって、自分から腰、
動いちゃってるよ?」
もはやまともな思考もできなくなっためちゃめちゃな頭に響いたそれは、意図せず彼
女の意識に焼き付けられた。彼のモノを感じるたび、その声が何度も何度も再生され
る。
(……え? …うそ……大きいのはいって、奥にあたって……きもち、いいの……?)
そうしたことをつい考えて、そして自分の腰が動いていることを、彼のモノが擦れる
感触を自覚してしまった瞬間、先ほど以上の快感が彼女を襲った。
「あ、あ……あああああああああああああああ」
「くぅっ……菫さん、すごいよっ……!」
強烈な締め付けに、淫怪人と化した彼の口からも快感の叫びが漏れる。それがさらに
心に彼への愛しさを燃え上がらせ、彼女の思考を淫らに塗りつぶしていった。
何度も何度もお互いの肉を打ち付けあい、快感を貪りあう。
「……あぁあ、だめ、もう、だめぇ……! 
あたま、あたままっしろになっちゃううぅ! わたし、こわれちゃうぅぅっ!!」
「いいよ、こわれていいよっ!! こわれて、うまれかわるんだよっ!!
ダーククロスの僕に、いっしょになろっ!!」
「うん、なる、なるよぉっ!! だーく、くろすの……しもべになるからぁ……
きて、いっぱい、きてぇ!!」
すでに菫には自分が何を言っているのか、これからどうなるのかを考える余裕は無か
った。目の光は完全に消え、彼の声が絶対の真理のように彼女の脳裏に刻み込まれて
いく。いつしか菫は目の前の少年の異形に対する恐怖も、自らが置かれた状況のこと
さえ忘れていった。彼女の理性は快感に押し流され、そしてその快感と共にダークク
ロスの素晴らしさが彼の体から彼女の体内にしみこむ淫気とともに焼き付けられてい
く。
そして一際強く突きこまれたモノが最奥まで到達した瞬間、熱い迸りが彼女の中に放
たれ、満たされた。

「くっ……うあああぁぁああぁぁあぁあぁ……!」
「はぁっ……ふっ……、あ、あああ……! ふぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ!!」
大きく背を反らし、快感に染まった叫び声を上げた菫の体から力がぬける。彼女をそ
のまま床に横たえ、少年が体を離すとどろりとした液が彼女のあそこからこぼれだし
た。
ややあって、愛しい彼女を満足そうに見つめる少年の前で菫の体が変化を始めていく。
先ほどの行為で精液と共に彼女の体内に打ち込まれたダークサタンの魔因子が浸透し、
その体を作り変え始めたのだ。
まず最初につややかな髪の間から、黒く艶のある毛に覆われた何かが伸び始める。瞬
く間に頭から飛び出したそれは、彼と同じ狼の毛であった。手からも同じような毛が
伸び始め、あっという間に獣のような形を作る。その先端には鋭く伸びた爪が、鈍い
光を放っていた。
そして腰の辺りからは、やはり同じような色の毛を持つふかふかの尻尾が伸びだす。
いつの間にか肌の色も健康的な肌色から、まるで怪物か悪魔のような紫に染まってい
く。
数分も立たないうちに彼女の姿は可愛らしい少女から、不気味な怪人へと変わってい
った。それはまさしくダーククロスに忠誠を誓う邪悪な戦闘員の姿そのものであった。

「上手くいったようね?」
不意に響いた声に少年が振りむくと、いつの間にか部屋に入ってきていた秋子と唯子
が彼らを見つめ、こちらに歩いてくる所だった。彼女たちの命を受け、先ほどまで菫
を抱いていた淫怪人の少年は彼女らに敬礼を捧げ、作戦結果を報告する。
「はい、秋子様。ご命令の通り、性交を通じて直接彼女の体内に魔因子を浸透させま
した。行為中の思考改変の傾向、獣化因子の発現からみて淫気耐性の無効化もほぼ確
実になされたかと思われます」
彼の言葉を耳にしながら横たわる菫を見やった秋子は満足そうな笑みを浮かべた。
「ふふ……よくやったわ。ご褒美にこの子の淫気耐性や生体データの調査が終わった
後は、彼女をあなたと一緒の部隊にしてあげるわ。恋人同士だもの、やっぱりいつも
一緒にいた方がいいわよね?」
「はっ、ありがたき幸せ、感謝いたします!」
「いいのよ、あなたはそれだけの働きをしたわ」
頭を下げる少年に手を振りながら、傍らの唯子に声を掛ける。
「唯子、聞いたわね? 分析調査、部隊編成の手はずの方は任せるわ。
さて……そろそろこの子にも起きてもらいましょうか。おっと、その前に折角私たち
の仲間になったことだし、彼女の服を着替えさせてあげないとね」
秋子は手に持ったペンライトのような機械を気絶したままの菫にむけ、そのスイッチ
を入れる。先端から極彩色の光が放たれ少女を照らしたかと思うと、全身を覆う、体
にぴったりとフィットした黒くつややかな戦闘員のコスチュームが菫の肌を覆った。
原理は良く分からないが、淫機械軍の発明品の一つだろう。
戦闘員の衣装を纏った菫の姿を見下ろし、秋子は口を開く。
「さあ、目覚めなさい……われらダーククロスの新たな僕よ」
その声にゆっくりと閉じられた菫のまぶたが上がっていく。ゆらりと立ち上がった菫
は首をめぐらして自分の姿を確かめ、ぴょこんと飛び出た耳や揺れる尻尾に興味深そ
うに触れた。そして目の前に立つ秋子達に気付くと、片手を高く掲げたダーククロス
式の敬礼を取る。
「イーッ・ハイル・ダーククロス! 秋子様、私を偉大なるダーククロスの一員とし
ていただき、心から感謝いたします! 私は偉大なるダークサタン様に永遠の忠誠を
誓い、必ずやお役に立ってご覧に入れます!」
「ふふ……頼もしいわね。そうね……あなたたち二人にはこの学園の偵察をお願いし
ようかしら。どうも霊狐の話だとただの学園じゃなさそうだし……。
ああ、もちろん素質のある子がいたら「勧誘」も忘れずにね? ただ、あんまり派手
にやっちゃダメよ?」

「了解しました! 必ずやご期待に応えておみせします!」
応える菫の目にはダーククロスの一員となれたことへの喜びと、既に情欲の炎が灯っ
ており、早く誰かを襲いたいといわんばかりであった。それは隣に立つ少年も同様で、
秋子はそんな二人に小さく苦笑すると、唯子と共に虚空に開いたワープホールを通り
姿を消した。


後に残された恋人達は顔を見合わせこれからのことに期待を膨らませると、抑えきれ
ない性欲の飢えを満たすべく、お互いに体を触れ合わせていった。


既に日も沈み、暗闇に覆われた教室の中から、しばし、少年と少女の嬌声が響いてい
た。

――――――――――――――

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part8
どんな場所にも人々の意識から外れた死角は存在する。それはここ、西安津学園でも
同様であった。
グラウンドの隅、青々とした葉をつける木々に隠されるようにたたずむ小さな小屋。
学生や教師もそんなものがあることを忘れかけた建物の中に、今、絡み合う人影があ
った。

「せ……せんぱい……どうして……こんな……」
涙をこぼしながら、怯えかすれた声をきれぎれに出す少女。その衣服は乱暴に剥ぎ取
られ、今はほとんど裸に近い格好をしていた。床に無造作に放り投げられた制服と、
口の開いた鞄から散らばる教科書が、彼女がこの学園の生徒であることを物語ってい
る。
「ん〜? 何でって、貴女にも私たちの素晴らしさを知ってもらいたいからに決まっ
てるじゃない。それにしても先輩に向かって口答えするなんていけないわね。
礼儀っていうのをちゃんと、体に教えてあげないとね」
そう口にしながら少女に後ろから抱きつくのは、彼女とさほど年の変わらない女性で
あった。だが、その格好は全身に黒く光る滑らかなスーツを纏うという奇妙なもので、
さらにその頭からは黒い毛に包まれた狼のような耳を生やし、尻からは左右に振れる
大きな尻尾が生えていた。
それこそがダーククロスの尖兵となった菫の新たな姿であった。興奮を抑えきれない
ように頬は赤く染まり、その目は目の前の彼女に異様な熱のこもった視線を送ってお
り、鋭い牙が覗く口は嗜虐の喜びに弧を描いていた。まるで獣のような手が、ブラジ
ャーを外され素肌を露にした少女の胸を掴み、そのまま、リズミカルに双球を揉み解
す。
「あ、あんっ! あはあんっ! あぁっ!」
既に先ほどから何度もされた愛撫にすっかり敏感になった胸を弄られる少女は、口か
ら何度目かも分からない嬌声を上げる。
「ふふっ……気持ちいいでしょ? 貴女、胸がいいのよね?
うふふふ……もっと、もっとしてあげるからね……」
「ひいあ! やぁあ! も、もう許して下さいぃ! 先輩、わ、わたし変になっちゃ
いますぅ!」
「ふふ……だぁめ。いいのよ、何も心配しなくても、怖がらずに全てを委ねなさい。
そうすれば、貴女もすぐに私たちと同じになれるわ……」
恐怖に目から大粒の涙をこぼす彼女に、邪悪に染まった笑みをむけ、愛撫を続ける菫。
先ほどから彼女の体より発散され続けている淫気は次第に少女の思考から理性を奪い、
その瞳からは意志の光が消えていった。
「あ、ああ……あんっ、あっ、い、いいっ……! 先輩、もっと、もっとぉ……あ、
あんっ!」
やがて全身に淫気が浸透し、だらしなく開かれた少女の口からは嬌声と、さらなる快
楽を求める声だけが紡ぎだされる。完全に発情した彼女の様子を満足げに見ると、そ
の耳を甘噛みしながら囁いた。
「ふふ……気持ちいいでしょう? でも、皆にこの幸せをあげようとする私たちの邪
魔をする愚かなやつらがいるの。そいつらと戦うために、貴女も力を貸してくれない
かしら?」
「わ……わたしの……ちから……」
「そうよ。それに私たちの仲間になれば、もっともっと気持ちよくなれるわ。
どうかしら、悪い話じゃないでしょう?」
「もっと……きもち、よく……もっと……」
最早目の前の少女は菫の言葉しか聞こえていない。その言葉は彼女の深層にまで染み
渡り、絶対の真実、大いなる福音のように響く。彼女にその言葉を疑うことも、否定
することも出来るはずが無かった。
彼女はためらいもせず、こくりと小さく頷く。
「……なります……だーくくろすの、しもべに……。だーくさたんさまに、ちゅうせ
いを……ちかい、ます」
口からは抑揚に乏しい機械の様な声が発せられ、埃っぽい室内に響く。
「……いい子ね……。それじゃあ、貴女の友達にもダーククロスの偉大さ、ダーク
サタン様の素晴らしさを教えてあげなさい? ただし、くれぐれも敵に見つからない
よう慎重にね?」
      





       「はい……わかりました……」









菫が体を離すと、少女はのろのろと散らばった服を身につけ、夢遊病者のような足取
りで倉庫を後にする。
「ふふ……まだまだよ……。もっともっと、皆を淫らに染めてあげなくちゃ。
うふふ……たのしみだわあ……」
虚ろな瞳の少女が去ったあと、一人たたずむ菫は暗闇の中、邪悪に染まった笑みを浮
かべていた。


おわり

――――――――――――――

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 part9
「ふふ、学園の支配計画は上手く行ってるみたいね。あの二人、なかなかの手際だわ」
ダークキャッスル内部、淫獣軍団長の部屋で部下から送られてきた報告に目を通して
いた秋子は、その結果に満足そうな声を漏らした。
今のところ、対セイバーズ方面ではそれほどの成果は上がっていないものの、菫たち
が洗脳した生徒や教師の数はかなりのものとなっていた。このペースで行けばそう遠
くないうちに西安津学園をダーククロスの支配下に置き、侵略の拠点とすることも可
能となるだろう。
「でも、あの学園以外の方にはまだまだ支配が及んでいないのよね。かといってあん
まり目立つ活動をするのも危険だし……」
考え込む秋子。そのとき、部屋のドアが開く音が彼女の耳に届いた。思わず顔を上げ、
部屋の入り口を見る。








「あらあら、お困りのようね……?」
「私たちの力を貸してあげてもいいわよ?」








そこに立っていたのは透き通ったスライムの体を持つ淫水魔軍団長・アティと体に蔓
の触手や緑色の葉を茂らせ、淫らな香りを放つ花を咲かせた淫妖花軍団長・霞であっ
た。
「アティに霞……軍団長が二人も、どうしたの?」
疑問を浮かべる秋子に二人は微笑むと、ゆっくりと歩み寄る。
「そう警戒しなくてもいいわよ。私たちも優秀な素材をこっそり手に入れる方法を考
えていたとこなの」
「で、どうせならお互い協力しましょう、ってこと。ギブ&テイク、悪くは無いでし
ょ?」
「……まあ、そうかもしれないわね。で? 具体的にはどうするの?」
秋子の問いに、霞が答える。
「そうね……喫茶店なんてどうかしら?」
「喫茶店?」

いまいちピンとこなかった秋子の様子に、アティが補足する。
「そう、私たち淫水魔の水を使い、淫妖花の蜜や葉で作ったお茶やお菓子を売るお店。
これなら相手のほうから来てくれるし、洗脳したり、怪人や戦闘員の素材を集めやす
いと思うの。
あなた達淫獣人には店のスタッフをお願いしたいの。獣の耳みたいなかわいい見た目
に釣られる人間は男女問わず多いでしょうし。どうかしら?」

彼女たちの提案はなるほどなかなか効果的なようであった。秋子としても、大量の人
間を効果的に洗脳し、優れた人材が手に入るというのなら特に反対することはない。
「分かったわ、では店の方は私が何とかしましょう。そのかわり、運営方針は任せて
貰うわ」
「別にいいわよ。淫怪人適正の高い子がいたら、私たちの方にもちゃんとまわして頂
戴ね」
「ええ、もちろん」
顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべる3人の怪人達。

やがて、各地の都市に「Piaふぉっくす」という名の喫茶店がオープンし、若者たち
の間で流行していった。





だが、その裏の顔、本当の姿を知るものは誰もいなかった。





霊狐の親様のSSはここで終わりですが、
次のページに霊狐の親様の作品に入っていた、
画像のおまけを載せてあります。

byホロ

2009年02月03日
『学園侵略計画! 個別面談にご用心!?』 おまけ
おまけ(2) 


おまけ(1)はpart1で最初にUPした画像です。

おまけ(3)



少女分析中 (1)


少女分析中 (2)


少女分析中 (3)





なんか、いろいろとすいません。
画像を追加したり、用事ができて途中退場したりなど、
勝手な私で本当に申し訳ありません。
もし霊狐の親様が見ていたら、今回のこのSSのことについて
コメントしていただければ、こちらも嬉しい限りでございます。

できれば作者様にご感想があれば、コメントにお書きください。
作者様も、ご感想のお返事をだしてもらってもかまいません。

byホロ

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