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2019年09月06日

MMTの命題が「異端」で無く「常識」である理由



 




 MMTの命題が「異端」で無く「常識」である理由


           〜東洋経済オンライン 9/6(金) 6:30配信〜  


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             松尾 匡  立命館大学経済学部教授


 〜「財政は赤字が正常で黒字の方が異常、寧ろ、ドンドン財政拡大すべき」と云う、これ迄の常識を覆すのでは無いかとも言われて居るMMT。(現代貨幣理論)
 関連報道も増え続け国会でも議論され、同理論提唱者の1人のステファニー・ケルトン氏・ニューヨーク州立大学教授も来日し、各所での講演やメディア登場が話題に為る等、益々ホットなテーマと為って居る。ケルトン氏の来日招聘プロジェクトにも携わり、この度邦訳された、同理論の第一人者L・ランダル・レイ・バード大学教授による著書『MMT現代貨幣理論入門』に解説を寄せた、日本に於ける「反緊縮」の旗手としても知られる松尾匡氏が、MMTを巡る論争の背景や現状を解説する〜



 




 米英急進左派の経済政策理論の1つ

            9-7-2.jpg

          アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏

 2018年のアメリカ中間選挙でサンダース派が躍進し、10人の国会議員が誕生した。中でも史上最年少の議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは有名である。何しろ無名のプエルトリコ系の女性が、民主党のベテラン最高幹部を予備選で打ち負かし、更に共和党候補に圧勝したのだから。彼等はあのアメリカに於いて社会主義者を自称する事を厭わぬ最左翼の政治勢力である。

 こうした動きは、新自由主義的な体制への反乱の広がりと捉えられ、日本の左派の間にも希望を与えて居る。そして「それに引き比べて日本では」と、安倍政権がかくも強権的立法と政治私物化を進めながら、若者の内閣支持率が高く、選挙の度に自民党の圧勝をモタラスこの国の大衆の現実を嘆くのが、有り勝ちなパターンである。
 しかし、こうした論者達のドレだけが、これ等欧米の急進的勢力の経済政策論に付いて意識して来ただろうか。

 アメリカの政府債務の総額は、特にトランプ政権成立以降急激に膨らみ今や日本の倍に達して居る。日本の左派・リベラル派の中には、民主党の左の端にしてトランプ政権への最も熾烈な批判者であるオカシオ=コルテスであるなら、サゾカシこの財政毀損をケシカランと叩くであろうと期待した向きがあったのでは無いだろうか。

 アニハカランや、彼女は当選後にウェブ雑誌『ビジネス・インサイダー』のインタビューで「政府は予算のバランスを取る必要は無く、寧ろ財政黒字は経済に悪影響を与える」とするMMT(Modern Monetary Theory・現代貨幣理論)こそ「絶対に」「私達の言論の中にモッと広がる」必要があると語ったのだ。
 彼女のMMT支持発言を切っ掛けに、アメリカではこの学説を巡る議論がマスコミを舞台に盛り上がり、それは例によって日本にも波及した。

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 大マスコミも大臣達も有名エコノミスト達も、躍起に為ってこれをトンデモ扱いし、遂には財務省が、海外の経済学者17人の非難を並べ、グラフ30枚以上の表もイラストも駆使したスライド62ページに渉る本気の反論資料を発表するに至った。
 奇妙なのは、それに対してMMT支持を表明した論客や政治家は保守派ばかりだった事だ。世間で左派サイドと見做される政治家でその主張内容に支持を表明したのは、現在の処「れいわ新選組」代表の山本太郎只1人である。

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             ステファニー・ケルトン氏

 その様な中、本家アメリカでは、MMTの代表的論客の1人であるステファニー・ケルトンが、バーニー・サンダースの政策顧問に就くと報じられた。元々彼女は、2016年の大統領選挙の時にも、サンダースの経済政策顧問を務めて居た。
 又その前年2015年には、イギリス労働党党首選で最左翼で泡沫候補と見られて居たジェレミー・コービンが圧勝して居るが、その時の目玉公約であった「人民の量的緩和」は、MMTの財政学者、リチャード・マーフィのアイデアであった。

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                バーニー・サンダース氏 

 この様に、MMTは、生地米英では急進左翼系の経済政策のバックにある経済理論の1つと為って居るのだが、何故か日本ではそう為って居ない。私はMMT論者では無いが、この事は異常な事だと思って居る。


 




 「異端」扱いの標準的経済理論

 しかしMMTに対して、ロクに読ま無いワラ人形論法的批判や無理解が絶え無いのは、本人達が招いて居る面も有る様に思う。主流新古典派の経済学者や共和党緊縮政治家に罵倒される事は本望なのかも知れ無い。しかし、欧米の反緊縮左派世界の中で、少なくとも当面の経済政策主張が殆ど変わら無い、ニューケインジアン左派等との間でも、論争が対話不可能に為る印象がある。

 そもそもMMT論者は、自分達の主張をワザと「異端」と位置付けて居るかの様な言い方をする。既存の経済学が悉く根本的に間違った前提の上に立って居て、自分達の見方を執る事で初めて真理が見えると云う様な。そこで批判された側もマスコミも、その自称を真に受けてMMTを異端の経済学と扱う訳である。
 しかし、本書でも説かれて居るMMTの主張とされる次の様な事実命題は、実は異端でも何でも無い。真面な経済学者なら誰でも認める知的常識の類いであって、新奇な処は何も無い不変の真理である。

  通貨発行権の有る政府にデフォルトリスクは全く無い。通貨が作れる以上、政府支出に財源の制約は無い。インフレが悪化し過ぎ無い様にする事だけが制約である。
  租税は、民間に納税の為の通貨へのニーズを作って通貨価値を維持する為にある(*)。総需要を総供給能力の範囲内に抑制してインフレを抑えるのが課税する事の機能である。だから財政収支の帳尻を着ける事に意味は無い。
  不完全雇用の間は通貨発行で政府支出をするばかりでもインフレは悪化しない。
  財政赤字は民間の資産増(民間の貯蓄超過)であり、民間への資金供給と為って居る。逆に、財政黒字は民間の借入れ超過を意味し、失業存在下ではその借入れ超過(貯蓄不足)は民間人の所得が減る事に依る貯蓄減で齎される。


 *MMTは、課税で貨幣と云うものを受け入れるニーズが質的に作られる論理次元と、課税で総需要が抑制されて貨幣価値が量的に維持される論理次元を区別する。
 しかし前者の次元の論理では、民事契約の司法的保護を自国通貨取引に限るとか、賃金を自国通貨で払う義務にする等でも貨幣を受け入れるニーズは作られる筈だが、それ自体にインフレを抑える力が無い以上、課税無くこれ等の仕組みだけで貨幣システムを維持するのは困難だろう。

            9-7-6.jpg
  
                サイモン・レン=ルイス氏
 
 ニューケインジアン左派で、イギリス労働党経済顧問委員会委員のサイモン・レン=ルイスも、MMTの学説全般に付いて、基本的には、標準的マクロ経済学の考え方から出て来る事と同じ事を言って居ると繰り返し評して居る(「MMT: not so modern」「MMT and mainstream macro」)
 しかしその上で、MMTの論者が政府取引の会計的細部にヤタラと拘るとの感想を述べ、その事に聊か閉口して居る様子である。これは私も全く同じ感想である。更に言えば、基本用語の使い方に一般の経済学とは違う独特な拘りがある。

 特に、本質論を直截に現象的な次元の議論に適用して、本質と矛盾する現象形態に即したものの言い方を排撃する傾向が感じられる。例えて言えば、マルクス経済学を初めて学んで、利子も地代も労働の搾取が源泉だと把握したばかりの大学1年生の学生活動家が、利子を出資の報酬と扱ったり地代を土地提供の報酬と扱ったりして議論する言い方に、イチイチ噛み付く姿に似た印象がある。
 プロのマルクス経済学者は、利子の源泉は労働の搾取と把握した上で、現象的次元では利子を出資の報酬と扱う現実に則った説明を平気でするものであるが。

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 「MMT」ケルトンとクルーグマンの対話不能な論争

 その事が好く判る例として、最近見られた有名なニューケインジアン左派のノーベル賞経済学者ポール・クルーグマンと、ケルトンとの間に交わされた論争を概観しよう。
 クルーグマンはこの中で、赤字財政支出政策ばかりに頼って金融緩和政策を言わ無いMMTを批判して、両者の間には代替関係があると主張して居る。彼は、ゼロ金利の時にはMMTの言う事も当て嵌まるが、プラスの利子が付いて居る時には、赤字財政支出をすると金利が上昇して民間投資が減ってしまうと言う。
 所謂「クラウディング・アウト」効果である。同じ完全雇用を達成するにも、赤字財政支出はホドホドにして、残りは金融緩和で金利を下げて設備投資を増やす事で実現する事も必要に為ると言う訳だ。

 ケルトンはこれに対して、逆に赤字財政支出をすると金利は下がるのだと反論して居る。そして、金利が下がり過ぎて困るから、望ましい水準に迄金利を引き上げる為に、当局は国債を売るのだと言う。
 これに対してクルーグマンは何を言って居るのかサッパリ判ら無いと云う対応をし、ケルトンは判ら無いのはクルーグマンの前提して居るIS‐LMの様なモデルが間違って居るからだと応じて居る。
 クルーグマンはここで、赤字財政政策と云う言葉で、国債を民間に向けて発行して調達した資金で以て政府支出する事を指して居る。それに対してケルトンが同じ言葉で指して居るものは全く違う。

 確かに、マクロ経済の本質としては、政府・中央銀行を一緒にした「統合政府」が、民間人に通貨と云う購買力を出して財やサービスを買い、それで世の中の購買力が高まり過ぎてインフレが酷く為ら無い様に、徴税してそれを消し去って居る。
 マクロ経済に取っての効果は、国債は政府が出そうが中央銀行が出そうが同じ。それを合わせた統合政府が出した国債の純増(減)は、結局金利調整の為に為されて居る。こうした事は、政府取引の会計手続きをどんな風に決め様が全く関係無く成り立って居る、人の意識を離れた機能法則的事実である。

 「売りオペ」と「赤字財政支出」と云う2つの呼び方

 処がMMTはこれをどんな話の次元にも直截に適用する。MMT論者は、偶々現実の財政支出の会計手続きがこの「本質」と合致した形式の見掛けである事を殊更重視する傾向がある。
 私はその正誤を判断する力を持た無いが、赤字財政支出に際しては、アル例では後日民間の銀行が買い戻す約束を着けた国債を中央銀行が民間の銀行から買う事で、別の例では政府支出先の業者が取引銀行に持ち込んだ政府発行小切手を中央銀行が引き受ける事で、政府支出額と同じ額の準備預金が民間の銀行の資産側に先ず作られると云う。

 これが、政府支出先業者の銀行預金に政府から払い込まれた額と一致し、この預金が給料や仕入代金として払われて世の中に貨幣として出回って行く。それに対して政府の国債発行は別途行われ、民間の銀行は国債を買った分、政府に準備預金が吸収される。
 これを以てMMT論者は国債発行が支出に先立つ財源調達で無い事の表れと見做すのだが『MMT現代貨幣理論入門』でも、政府支出に先立って国債発行で財源を用意し無ければ為ら無い制度的制約を着けたとしても結局は同じと云う事が示されて居る様に、これは見かけの形式を巡る議論であって本質的では無い。

 このようにケルトンが赤字財政政策と呼ぶのは、統合政府が通貨を作って財政支出する事である。だから、その為に民間の銀行の元にお金(準備預金)が出過ぎて金利が下がってしまう。それを受けて統合政府が、言わば「売りオペ」で国債を出してお金を吸収する事で、金利を元に戻して居るのだと説明して居るのである。
 結果的には、ケルトンの見方で政府が「売りオペ」し過ぎて、出したお金をマルマル回収して国債に換えた事態が「クルーグマン語」で言う赤字財政支出の結果と全く同じに為る。この時にはクルーグマンの言う通り、金利が元の水準よりも上がって当然だろう。
 しかしそれをケルトンは赤字財政支出自体が齎したクラウディング・アウトとは見做さ無い。言わば行き過ぎた金融引き締めが齎したものと解釈される事に為るのだろう。

 「ケルトン語」の赤字財政支出の後で、統合政府が適切に「売りオペ」して、出したおカネを部分的に国債に換えた事態は、クルーグマン語に翻訳すれば、赤字財政支出と金融緩和が組み合わさったものと表現されるだろう。そう云う訳だから、私見では、両者は基本的に用語法の違いで行き違って居るに過ぎ無い。クルーグマン同様IS‐LMを前提してもケルトン語を表す事は出来る。

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 クルーグマン語の赤字財政支出拡大政策はIS曲線単独の右シフトで表されるのに対して、ケルトン語の赤字財政支出拡大政策はIS曲線、LM曲線双方の右シフトで表されると云うそれだけの事である。しかし、MMTに取っては、政府支出の財源として国債を売って資金調達すると云う様な表現をする事自体が、事態の本質を判って居ないタブー表現扱いである。
 国債は飽く迄事後的な金利調整の為に出されて居ると云う言い方に拘る。銀行の資産であるおカネ(準備預金)と国債は、共に政府の債務であるが、前者は利子が付かず後者は利子が付く点に違いが有るに過ぎ無いとされて居る。

 私等は、数学的に同値なものは同値と見做す好い加減な人間なので、本質が判って居るならドッチでも好いじゃないかと思ってしまう。殊に、デフレ脱却する迄の実践的方針としては、アカラサマニ通貨を発行する事に依る政府支出を求める事に付いて、クルーグマン等左派ケインジアンとMMTの間に違いがあるとは思えない。
 そもそもイデオロギーで歪められる障害無く、本質がクリアに表れるシステムを作る事は、MMT派の望む処だろうから、私見同様ニューケインジアンの場合はこれに、インフレ予想の上昇による実質金利低下がもたらす総需要拡大と云う、MMTが同意し無い賛成根拠が着いて来るだけの違いである。

 処で、矢張り同様に通貨発行による政府支出を唱える欧米反緊縮左翼の経済政策論に、信用創造廃止を唱えるヘリマネ論の潮流がある。彼等はMMT同様、貨幣は全て債務為りと云う立場であるが、MMTと異なり、だから現行システムの貨幣は好く無い制度であると云う判断を着けて、「債務無き貨幣」の実現を提唱して居る。
 この点を巡っても論争に為って居て、本書においても、アラユル貨幣はソモソモ債務であると云う立場からの批判が述べられて居る。

 銀行預金貨幣が債務なのは判り易いが、MMTは政府が出す通貨も債務と見做す。政府が公衆に対して持つ徴税債権を相殺・消滅させるものと云う意味で、政府の公衆に対する債務だと言うのである。
 この論理が成り立つには、国民は皆元々納税債務を国家に負って居ると云う前提が無ければ為ら無い。これは私にはナカナカ心情的に受け入れ難い前提である。人の意識を離れて存在する法則的現実は、政府が財やサービスを買った為に公衆に購買力が溜まって行くのを、他方で消滅させる事で、インフレを受忍可能な程度に抑える事である。

 徴税・納税の債権債務関係と云う考えは、人間の意識の中で、これを司る為の決まり事の一種である。その意味で、MMTの嫌う、政府支出の財源として徴税するとか国債を出すとかと云う議論と、五十歩百歩のイデオロギーの様に私には思える。


 




 「こっち側」の大義! 

 この様に、欧米反緊縮左派世界の中でも、MMTは他学派と論争して居るのであるが、そんな中、2019年5月に、アメリカ上院で共和党議員が、何と「MMT非難決議」を上げる動きを始めた。この時、上記の通りケルトンと熾烈な論争をしたクルーグマンは、ツイッターで「私はMMTのファンでは無いが、共和党の連中が信奉する経済学教義よりは遥かに好い。理論に同意し無いならそれに基づく政策を採ら無ければ好いだけだ。だが共和党の連中は思想警察みたいなマネをしようとして居る」と抗議の声を上げている。

 日本の左派・リベラル派の諸氏は、ここに要約本格教科書が翻訳されて、MMTに付いての妖怪物語を脱してチャンとした検討が出来る様に為った訳だが、本書を読んだ上で尚反対と云う人達は居て当然だろう。しかし、アメリカで起こった様な事が日本でも起こった時、クルーグマンの様に大義に立つ事が出来るだろうか。



 (この解説文の原稿を修正するに当たっては、望月慎氏との議論が大きく役立って居る。記して感謝する。但しこの事は意見の一致を意味するものでは無い)


            9-7-9.jpg

           松尾 匡  立命館大学経済学部教授
     以上


 



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メディアに依って拡散される市街劇「香港」の切り取られかた




 メディアに依って拡散される市街劇 「香港」の切り取られかた


          〜ニューズウィーク日本版 9/6(金) 18:31配信〜


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 「香港版タンクマン」と呼ばれて居るニューヨーク・タイムズの写真 LAM YIK FEI-THE NEW YORK TIMES-REDUX/AFLO


 <デモ隊は暴徒か英雄か・・・デモ参加者、警察そして記者自身が望むアングルで切り取られ、世界に配信されて行く香港の抗議活動。その「真実」は何処にある?>



 




 1970年代に寺山修司率いる演劇集団「天井座敷」が上演した市街劇『ノック』をご存じだろうか。杉並区阿佐ヶ谷近郊で行われた「演劇実験」で、観客は劇場内では無く普通の街中で何かが起こるで有ろう場所の印が付いた地図を片手に街を彷徨いながら各所で行われるパフォーマンスを体験して行くと云う30時間にも及ぶイベントだった。当時付近の住民は殆ど何も知らされず、場所に依っては警察を呼ぶ様な騒ぎにも為ったらしい。

 香港を訪れて騒乱の最中に身を置いて感じたのは、今起こって居るこの一連の出来事と半世紀前に行われたこの市街劇との奇妙な相似だ。何時も飲み歩いた街を背景に武装警官と黒尽くめの勇武派(デモ側の武闘派)が練り歩き、敷石と催涙弾が飛び交う非現実感はその割には薄い危険の匂いも相まって更に強く為る。
 紙の地図の代わりにソーシャルメディアを通じてデモの発生がリアルタイムで伝わり、それを追い掛けて現場に急行する「参加者」も、メディアの記者で有ったりSNSを通じて情報を発信する者が多い。そしてそこで行われる「パフォーマンス」は、記者達が望むアングルで切り取られ、世界中に配信されて行く。

 タンクマンか、暴徒か

 冒頭の写真をご覧に為った方も居るかも知れない。デモが盛り上がる中、8月26日 にニューヨーク・タイムズが撮った写真だ。
 身を呈し、手を広げて景観を止めようとする市民。その姿は勢いの在る構図と共に天安門事件の際、進行する戦車の前に立ち塞がった「タンクマン」を強く思わせる事もあり、一気にネット上で拡散されこの局面を代表する一枚に為った。
 しかし、角度を変えると見えて来るものも大きく変わる。翌日 、親中国とされる香港の新聞「大公報」等を転載する形で中国メディアが一斉に報じた「裏側」動画を見ると印象は変わるだろう。只、この「完全版」に関しても編集されて居り、例えば場面の前後を入れ替える等の方法で意図を強調されて居る可能性は捨て切れ無い。結局何が真実かは、現場に居なければ(ヒョッとしたら居たとしても)判ら無いのだ。

 この一連の騒動は非常に敏感であると云う事で、6月にデモが始まった当初は中国でも余り報道され無かった。記憶の限りでは、7月21日の元朗 での地元ヤクザによるデモ参加者襲撃事件の辺りから、次第に報道される様に為って来た様に感じる。
 当初周囲の友人も「香港は怖いね」と云った程度であったが、それが一気にデモ隊に対する反感に変わったのが8月13日 、香港国際空港での記者リンチ事件だったと思う。


 




 空港で殴られた記者の「身分」

 発生当日、デモ隊を擁護する側からは「環球時報はメディアでは無い、奴は偽記者のスパイだ」と云った声も挙がったが、結局翌日には謝罪声明が出された。人民日報グループである環球時報は、中国共産党に属する事は事実だが、だからと云って取り囲んで暴行を加え、所持品を勝手に漁るのが正しい行為で無いのは当然だ。
 それに加え中国人の感情を沸騰させたのがデモ隊に依って拘束された記者が現場で叫んだ「私は香港警察を支持する者だ、だからお前達は俺を殴れ!」と云う台詞だ。この様子は映像が残って居り中国側報道素材に使われた。
 これが中国人には「硬骨漢だ」「勇気ある行動だ」と絶賛され、逆にデモ側が暴力的であると云う印象を強く与えた。今迄香港に付いて殆ど触れ無かった比較的温厚な友人達もこの件ではWeChat等で一斉にこの事件を非難する投稿等をシェアして居た。

 しかし直後には、この時殴打された若い「記者」付国豪は実は中国の情報機関である国家安全部の第四部が所有する建物に居住し、所持して居た銀行カードが本名では無い(中国では特殊な身分で有れば偽名での口座保有が出来ると云う)と云うカウンター情報も流された。
 中国の政府系メディアは、党や政府の宣伝機関と定義されて居り、所属する記者の役割も我々が想像する所謂ジャーナリストとしての者だけでは無い可能性があると云う前提もある。現場でどの様な遣り取りがあった上で暴行に繋がったのかは判ら無いし、何があったとしても暴力は肯定され無い。しかし、カメラが回って居無い場所で記者側が挑発的な行動を取った可能性も否定は出来無いだろう。

 双方が仕掛ける映画顔負けの欺瞞(ぎまん)の応酬

 映画『インファナル・アフェア』3部作は、警察に潜入したマフィアとマフィアに潜入した捜査官を描いた香港ノワール映画の金字塔だ。今の香港ではその映画と同じかそれ以上の複雑さで様々な勢力が身分を偽装し、お互いを騙しあう事が現実に起こって居る。
 大規模デモが起こった6月中旬より、警官隊の中に広東語を理解しない警官(中国からの増援?)が混じって居ると云う噂は流れて居た。そして8月前半には警官がデモ隊の服装に着替える映像が出回る。(後に当局も警官を変装させてデモ参加者を逮捕して居る事を認めて居る )
 8月13日夜に起きた「偽記者暴行事件」はこうした事情でデモ隊側が内鬼(自陣に潜入した敵側のスパイ)の存在に神経を尖らせて居た時期だった事が背景にある。その後8月31日にも、デモ隊の服装をした人物が同じデモ隊を拘束する写真が出回った。

 しかし、こうした欺瞞工作は警察側だけの専売特許では無い。親中国とされる大公報 に依ると、9月2日に検挙した「暴徒」の所持品から大量の偽記者証が押収され、前日に旺角で記者に偽装して警察行動を妨害して居たとされた一群との関係が指摘された。
 只この件はこれで終わら無い。私は試しにこの写真に表示されて居る記者証に記された「柒傳媒」と云う社名を百度やGoogleで検索してみたが、全く関連しそうな情報が見付から無い。詰まり、ソモソモ存在し無いメディアの記者証(偽記者証)である可能性もあるのだ。
 何より、広東語では「柒」と云う字は粗口(悪口)として理解される。この字のニュアンスは悪口のバリエーションに乏しい日本語には訳し辛いが、大マカには「バカ」と云う意味に為る。サテ、果たして何処のメディアが自社の名前に「バカ」を入れるのだろう?

 こうしたニュースは読めば読む程表が裏に為り、裏が表に為って、そして裏の裏は必ずしも表に為らず、結局何が真相なのか判ら無いままフワッとした「印象」だけを残して消費されて行く。


 




 各所で上演されるメディア向け「スペクタクル」

 デモ側はこれが「覇権主義の中国に依る、一国二制度で保障されて居る筈の香港の一定程度の独自性に対する挑戦である」と云うアングルで報道させて他国の支持を得たい思惑がある。
 逆に中国側からすればこれは「一部の(以前の合意を反故にして香港独立を訴える)暴徒が起こした無軌道な騒乱」であると云う立場を主に国内向けに訴える必要がある。結果として現場は欧米系・香港系・中国系メディア等が入り乱れる過密地帯と為って居る。場合に依ってはデモ隊や警官隊と同じ位の人数の記者達がカメラを構えて「夫々が望む決定的瞬間」を狙って居るのだ。

 読者・視聴者は彼等が撮った迫真の写真や動画を見る事に為るが、その中にはメディアの姿は映り込まない。しかしその光景を現場で一歩離れた所から見ると、これ等は記者に依って十重二十重に囲まれた場所で演じられるパフォーマンスにも見えて来る。
 デモ隊も警官隊も夫々に真面目に役割を熟して居る事は疑い様も無いが、その真面目さは「役者が真面目に役を演じて居る」のと同じ種類だ、と言ったら怒られてしまうのかも知れないが。


 




 我々は切り取られた「ニュース」をどう受け止めるべきか

 ソモソモ現実は非常に多面的で流動的だ。又、こうした大きな出来事は、例え現場に居たとしても、立つ場所と時間、向いて居る方向で見える景色は全く違うものに成り得る。そしてそこに居なければ猶更、実際に何が起こったかを知る事は難しい。
 個人が気軽に情報発信出来る様に為った事には素晴らしい面がある事は確かだが、同時に雑多な情報が増える事も又事実だ。加えてこうした政治に関わる問題に於いては、流される情報は自らの立場に沿った強いフレーミングとバイアスが掛かり、場合に依ってはそこに完全なるフェイクニュースも混ざって来る。

 そうした情報に曝される状況で、大きな興味も基礎知識も無い事柄に対して正しい選球眼を持つ事は難しく、大多数の普通の人々に取って現実的でも無い。しかしこの記事も含めて、自分達の元に届けられる「ニュース」「つぶやき」の多くが誰かの意図や願望の元に味付けされ、発信されて居ると云う事には今迄以上に注意を払っても好いのだろうと思う。

 9月4日夕刻、元々の発端であった逃亡犯条例の法案が撤回に向け正式に動き出した。6月9日から2000時間以上に渉って上演され続ける市街劇にはこの先、どの様な展開が用意されて居るのだろう。


              林毅   以上


 



 モンマルシェ





「今こそ『嫌韓』煽り報道と決別しよう」 韓国を巡る報道で新聞労連が声明



 「今こそ『嫌韓』煽り報道と決別しよう!」  

  韓国を巡る報道で新聞労連が声明


         〜共同通信 Yuto Chiba  BuzzFeed 9/6(金) 17:40配信〜


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              新聞労連の南彰・中央執行委員長


 〜9月6日、韓国に関する一連の報道を巡る問題を受け、日本新聞労働組合連合は声明を発表した〜


 




 韓国に関するテレビ番組や週刊誌に依る一連の報道を受けて、全国の新聞社の労組が加盟する日本新聞労働組合連合(新聞労連)が9月6日「『嫌韓』煽り報道は辞め様」と報道機関へ呼び掛ける声明を発表した。
 8月27日放送のTBS・CBC系の情報番組『ゴゴスマ〜GoGo Smile』では、中部大学の武田邦彦教授が「韓国女性が入って来たら暴行しにゃいか無い」と発言。後日、番組内でアナウンサーが謝罪を述べた。更に、9月3日発売の『週刊ポスト』の特集「韓国なんて要らない」にも抗議の声が挙がり、編集部が謝罪して居る。今回の声明はこうした事態を受けてのものだ。

 新聞労連の南彰・中央執行委員長はTwitterで「報道機関の中に、対立を煽ろうと云う時流に争い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力して居る人が居ます。新聞労連はそうした仲間を全力で応援します」と綴って居る。
 新聞労連は6日、韓国を巡る一連の問題報道を受け「『嫌韓』煽り報道は辞め様」と題した声明を出しました。報道機関の中に、対立を煽ろうと云う時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道しようと努力して居る人が居ます。新聞労連はそうした仲間を全力で応援します。 https://t.co/sJmlQ3eDXo

   南 彰 / MINAMI Akira @MINAMIAKIRA55 05:55 AM - 06 Sep 2019

 声明の全文は以下の通り

 「嫌韓」煽り報道は辞め様

 他国への憎悪や差別を煽る報道を辞め様。国籍や民族等の属性を一括りにして「病気」や「犯罪者」と言ったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもう辞め様。先月末、テレビの情報番組で、コメンテーターの大学教授が「路上で日本人の女性観光客を襲うなんて云うのは、世界で韓国しかありませんよ」と発言した。
 他の出演者が注意したにも関わらず、韓国に「反日」のレッテルを貼りながら「日本男子も韓国女性が入って来たら暴行しないといかん」等と訴える姿が放映され続けた。憎悪や犯罪を助長した番組の映像は今も尚、ネット上で拡散されて居る。

 今月に入っても、大手週刊誌が「怒りを抑えられ無い韓国人と云う病理」と云う特集を組んだ。批判を浴び、編集部が「お詫びすると共に、他のご意見と合わせ、真摯に受け止めて参ります」と弁明したが、正面から非を認める事を避けて居る。
 新聞も他人事では無い。日韓対立の時流に乗ろうと「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国ナンて要ら無い」と云う扇情的な見出しが着けられたこの週刊誌の広告が掲載される等、記事や広告、読者投稿の有り方が問われて居る。

 日韓対立の背景には、過去の過ちや複雑な歴史的経緯がある。それにも関わらず、政府は、自らの正当性を主張する為の情報発信に躍起だ。政府の主張の問題点や弱点に触れ様とすると「国益を害するのか」「反日か」と牽制する政治家や役人も居る。でも、押し込まれ無い様にしよう。
 「国益」や「ナショナリズム」が幅を効かせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返しては為ら無い。そして、時流に抗う処か、商業主義でナショナリズムを煽り立てて行った報道の罪を忘れては為ら無い。

 私達の社会は今、観光や労働の目的で多くの外国籍の人が訪れたり、移り住んだりする状況が加速して居る。又、来年にはオリンピック・パラリンピックが開催され、日本社会の成熟度や価値観に国際社会の注目が集まる。排外的な言説や偏狭なナショナリズムは、私達の社会の可能性を確実に奪うものであり、それを食い止める事が報道機関の責任だ。

 今こそ、「嫌韓」煽り報道と決別しよう。報道機関の中には、時流に抗い、倫理観や責任感を持って報道し様と努力して居る人が居る。新聞労連はそうした仲間を全力で応援する。


                 以上


 




【関連記事1】


 「ヘイトで商売するな」 週刊ポスト嫌韓特集に抗議


           〜カナロコ by 神奈川新聞 9/6(金) 5:00配信〜

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         小学館本社前で抗議の声を上げる市民ら=東京都千代田区

 
 2日発売の週刊誌「週刊ポスト」が韓国に対する差別と敵意を煽る記事を掲載した問題を巡り、発行元である東京都千代田区の小学館本社前で5日、市民に依る抗議活動が行われた。参加者は「ヘイト本で商売するな」と言ったプラカードを手に「デマと差別に基づく記事を謝罪し、雑誌を回収しろ」と求めた。
 都内の女性が4日夜にツイッターで呼び掛け、約150人が参加した。女性は「放置すれば差別が容認された事に為る。傷付いて居る人は大勢居て、怒って居る事を可視化する必要があった」と話した。

 特集は「厄介な隣人にサヨウナラ 韓国なんて要らない!」と題され「怒りを抑えられ無い『韓国人』という病理」との見出しを着けた記事もあった。
 同誌に連載を持つ作家を初めインターネット上で批判が相次いだ事を受け、同社は「配慮に欠けていた」等と謝罪したが、参加者はマイクを手に「差別と認め無ければ本当の謝罪とは言え無い」「ヘイトスピーチをして居るのは一部の可笑しな人では無い。大手の出版社迄こんな記事を出し、売れれば何でも好いのか」と非難の声を上げた。

 近隣の出版社や書店の関係者も駆け付け、編集者の女性(63)は「仕事で関わった川崎の在日コリアンの事が頭に浮かんだ。煽られた憎悪の矛先が向かい兼ねず、知らんプリは出来無かった」と話して居た。


                 神奈川新聞社  以上


 




【関連記事2】


 「韓国、米国の同盟から離脱の可能性 中国が機会窺う」


              〜中央日報日本語版 9/6(金) 15:02配信〜


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          マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長


 「韓国は日本とは非常に異なる歴史を持ち、非常に異なる地政学的状況に在る。こうした要因から中国は韓国が米国との同盟から離脱する可能性が遥かに大きいと見て居る」

 米シンクタンク米戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン上級副所長は4日(現地時間)、米議会傘下の米中経済安保検討委員会が主催した「2019年米中関係検討公聴会」に出席し、この様に述べた。韓国は日本等他のアジアの国に比べて米国から脱同盟する可能性がある環境に有り、これを知る中国が機会を眺めて居ると云う主張をしたと、米政府系放送のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が5日報じた。

 この公聴会は米中関係を研究する専門家等が議会に専門的な助言をする席で、米国が経済・安保分野でどの様に中国に対して優位を維持するかに焦点が合わされた。グリーン副所長は議会に提出した陳述書で「中国の習近平国家主席が執権した後、中国は韓国が米国との同盟から離脱する様強圧的に接した」と診断した。   2017年の高高度防衛ミサイル体系(THAAD)事態当時の韓国企業への圧力及び中国人観光客の訪韓禁止政策を例に挙げた。

 韓国は中国の要求に降伏した訳では無いが、中国の強要に対抗すべきと云う姿勢では日本・豪州政府より慎重な方だと評価した。又、韓国が米国のインド太平洋戦略への参加に消極的である点も指摘した。
 グリーン副所長は「韓国が中国に対する貿易依存度が他国に比べて相対的に高いと云う理由もあるが、朴槿恵(パク・クネ)政権から文在寅(ムン・ジェイン)政権迄中国が韓半島(朝鮮半島)統一に於いて重要な役割をすると云う信念を抱いて居る為」と分析した。
 続いて、中国は同盟国が関与し無い「独立的」統一を支持するが、これは韓日米の立場とは矛盾すると指摘した。にも関わらず、韓国は中国との関係改善が北朝鮮の脅威を管理するのに役立つと云う考えを維持して居ると伝えた。

 グリーン副所長は「韓国と日本が最近対立して居る隙を突いて中国とロシアの軍用機が韓国・日本領空を侵犯したが、共同対応するのでは無く韓国が韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了を通知した事で日本との対立を激化させた」と述べた。
 又「同盟の間に隙が生じれば中国に分裂戦略を使う機会を与えてしまう」と懸念を表した。トランプ政権が韓日間の緊張関係を解決する為決断力のある行動を見せ、3者安保協力を新たに構築すべきだと提案した。
 又、トランプ政権が韓国と日本に駐屯軍支援問題を過度に要求すれば、アジア地域の核心同盟との関係が分裂して弱まる為、これは避けるべきだと助言した。

 一方、ワシントンポストにもこの日、トランプ大統領が韓日対立の解消の為に積極的な仲裁の役割をすべきだと云う主張を載せた。コラムニストのマックスブート氏は「我々の最も重要な同盟が戦って居る。トランプ大統領は何処にも見え無い」と題したコラムで「米国の最も重要な同盟である韓国と日本の紛争が激化して居るが、これにトランプ大統領が目を閉じて居る」と批判した。

 トランプ大統領は先月9日「両国の関係が上手く行って居ないのが心配に為る。お互い上手く遣るべき」と述べた。韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定を出した後の先月23日には「韓国にどんな事が起きて居るのか見守ろう」とのみコメントした。


                 以上


 



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田原総一朗「韓国を追い詰める政策 諫める声出ぬ自民党を危惧する」




 田原総一朗 「韓国を追い詰める政策 諫(いさ)める声出ぬ自民党を危惧する」


     〜連載「ギロン堂」 田原総一朗 2019.9.4 07:00 週刊朝日〜


 




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 田原総一朗(たはら・そういちろう)1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て1977年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)等著書多数 (c)朝日新聞社



 〜ジャーナリストの田原総一朗氏は、日韓関係が泥沼化した原因に付いて持論を展開する〜


 日本政府は韓国を「ホワイト国」から除外する事を決めて8月28日から実行した。そして、22日には韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定して居て、日韓は言わば断絶状態と為った。
 こんな状態に為った事を日本国民の多くは、韓国の文在寅政権が日本を露骨に敵視して、無理難題をブツけて来た為に、怒らざるを得無かったと捉えて居る。嫌、報復措置では無く、韓国が杜撰な行為を公然と繰り返して居るので、輸出国として取らざるを得無かったのだと日本政府は説明して居る。

 だが、文政権の行動の根元は、経済悪化に依る失業率の上昇にある。それに依って支持率の低下に歯止めが掛からず、打ち出したのが「徴用工問題」だった。要は、韓国人の被害者感情を刺激しようとしたのだ。
 これは、朴槿恵前大統領が行って来た政策の否定である。支持率回復の為に、前政権の政策を否定し、逆の政策を打ち出すのは何処の国の首脳もする常套手段だ。米国がTPPを否定しイランの核合意から離脱したのも、トランプ大統領がオバマ前大統領の政策を悉く否定し逆の政策を実施した為だ。

 文政権は最初に、朴政権が日本政府と結んだ慰安婦問題の合意に付いて「こうした合意を韓国国民は支持して居ない」等として慰安婦像を新たに建てた。しかし、それでも支持率は上がら無かったから「徴用工問題」にも踏み込んだのだ。繰り返し記すが、根元は韓国の経済が悪化して、失業率が上昇した事なのである。
 ここで、敢えて記して置きたい。日本政府は、韓国は何かと言うと日韓併合時代の韓国国民の被害を強調するが、こうした問題は1965年の「日韓基本条約」で決着が付いて居る筈だと捉えて居る様だ。だが、これは「正確」では無い。当時、韓国は国力が弱く貧しく、日本に頼らざるを得無かった。韓国が独立国として自信を持ち、日本と初めて政治的に関係改善を図ったのは、1998年の小渕首相と金大中大統領による「日韓共同宣言」である。

 それでも、日本は韓国に比べて国力も経済力も強い。戦後、再出発してからのキャリアも長く、経験も豊富なので、言わば韓国の兄の様な存在である。だから、経済が悪化して取るべき方策が掴めず、前政権が結んだ慰安婦問題の合意を否定し始めた時に、根元の問題である韓国経済の立て直しの為の方策を積極的に提案すべきだったのではないか。
 少なくとも、自民党議員の有力者の誰かが、安倍首相にそうした提案をすべきであった。以前の自民党ならば、こうした提案者が居た筈である。私はこうした実例を幾つも見て居る。だから、自民党政権は長く持続で来たのである。だが、現在の自民党議員達は、安倍首相のイエスマンばかりに為ってしまった。

 韓国の経済が悪化して混迷して居る時に、理由はどうであれ韓国の経済に対して厳しい政策を取り続ける事は、韓国を追い詰める事に為るのではないか。そして、追い詰められた文政権がどの様な事をヤッテしまう恐れがあるのか。
 日本政府が、韓国向けの半導体素材3品目の輸出規制強化措置を発表した時、そして「ホワイト国」からの除外が検討され始めた時に、以前の自民党為らば、諫(いさ)める声が出た筈である。それが無く為った自民党を私は危惧する。


   ※週刊朝日  2019年9月13日号     以上


 




 【関連記事】


 韓国制裁で戦略無き安倍首相と文在寅の余裕 ホクソ笑むのは金正恩


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          〜朝日新聞社 西岡千史 2019.8.2 12:05dot.〜


 




 日本と韓国の関係悪化が危険水域に達して居る。安倍晋三首相は、安全保障上の輸出管理で優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する事を8月2日に閣議決定した。ホワイト国の取り消しは韓国が初めてと為る。
 文在寅韓国大統領は、2017年に政権を発足させてから日本への強硬姿勢を鮮明にして来た。慰安婦合意の破棄・レーダー照射問題・元徴用工に対する賠償判決と3つ続けて日韓関係を悪化させる事態が続き、修復不可能な状態が続いて居る。

 文政権に対して業を煮やした安倍政権が繰り出したカードが「ホワイト国からの除外」だ。既に7月4日には、半導体等の材料3品目に付いて輸出許可の手続きを厳格化して居る事から、ホワイト国の除外は韓国制裁第2弾と為る。
 韓国は、GDPの約4割を輸出が占め半導体はその内約2割を占める主力産業だ。一方で、日本の対応を疑問視する声もある。或る外務省関係者は「日本が韓国に反発する気持ちは判る」としながらも「安倍政権には戦略が無い」と冷淡だ。

 「ソモソモ、今回の対抗措置は経産省が前面に出過ぎて居る。北方領土交渉の際の経済8項目提案も、経産省は具体性の無いロシアとの経済協力プランを山程出して、ロシアの外交官は唖然として居た。『3メートル位の高さのある日本の提案書をシュレッダーに掛けるのが大変だ』と小バカにして居ましたからね」(外務省関係者)


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 それでも、読売新聞の世論調査(7月22、23日実施)では、韓国への輸出管理の厳格化に付いて「支持する」とした人が71%で「支持しない」の17%を大きく上回った。只、ホワイト国から除外が、何処まで韓国の経済にダメージを与えるのかは未知数だ。手続きの簡素化が無く為るだけで、輸出そのものが禁止される訳では無いからだ。
 寧ろ、安倍政権が拳を高く振り上げた事で、韓国国内の反日感情が更に高まって居る。韓国では現在、日本製品の不買運動が始まって居て、観光業にも影響が出始めて居る。

 大韓航空は、韓国・釜山と札幌を結ぶ路線を9月3日から運休する方針を明らかにした。日韓関係の悪化を受けて、日本旅行の予約数が減って居る事が理由と思われる。18年に日本を訪れた韓国人の旅行消費額は中国の次に多く5881億円。(観光庁「訪日外国人の消費動向」)
 それが2019年に入ってから韓国人観光客は減って居て、2019年1〜6月は前年比3.8%減の386万人と為って居る。輸出管理の強化で7月以降は更に悪影響が出る事が予想される。政府は2020年に訪日旅行者を4000万人に増やす計画を掲げて居るが、目標達成の逆風と為って居る。

 悪影響は経済だけに限ら無い。韓国に対する強気の姿勢は、安全保障にも影響が出始めて居る。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は7月31日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に付いて「早期に破棄され無ければ為ら無い」とする論評を配信。GSOMIAは8月末に更新期限が迫るが、韓国側も継続の見直しを示唆して居る。
 ここまで韓国が強気に出て居るのも、文大統領の対日強硬策が国内で評価されて居るからだ。文政権の支持率は、7月に7カ月振りに50%台を回復。韓国与党の「共に民主党」のシンクタンクは7月30日「日韓対立への強硬対応が来年の総選挙の為の好材料に為る」と記された報告書を同党の議員に送信して居た。(後に「不適切に配布された」と弁明)文大統領が、政権基盤を安定させる為に戦略的に日本への強硬策を執って居る事を窺わせる。

 国内向けのアピールだけでは無い。徴用工問題を初めとする戦後賠償の問題に付いても、文政権は或るシナリオを描いて居ると云う。JAROS21世紀フォーラムの服部年伸氏はこう話す。

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 「安倍首相は現在、金正恩との会談を求めて居ますが、日朝交渉をすれば、北朝鮮は2兆円とも言われる戦後賠償を求めて来ると言われて居ます。年内には朝鮮半島非核化への長期的なロードマップが米朝間で締結される可能性もありますが、トランプは経済支援を米国で負担する積りは無い。
 徴用工や慰安婦の問題で日韓関係が悪化する事は、韓国を中国寄りにシフトさせ、中国・韓国・北朝鮮と云う連合を生み出す事に繋がり兼ねません」


 まさかの南北協調に依る戦後賠償問題の解決と云うシナリオに、日本に有効な一手はあるのか。だが、複雑な国際政治のパワーゲームに外交素人の経産省が適切に対応出来るのかは心許(こころもと)無い。外務省の元幹部は「官僚は自分の専門以外の事に口を出してはいけ無い。経産省が外務省の仕事をして国益を損なった時、責任を取る積りはあるのか」と憤る。前出の服部氏は、こう話す。

 「米朝の交渉は、順調に交渉が進めば9月末にも首脳会談が開催される可能性があります。金正恩は日本とのコンタクトは否定して居ませんが、日朝会談が実現すれば、韓国も協調して戦後賠償の問題を強く求めることも考えて居るでしょう。日本は『前提条件無しで交渉を』と言って居ますが、金正恩は会談実現に前提条件を着ける筈です」

 安倍政権は強気の姿勢を崩して居ないが、振り上げた拳をどの様に動かして日本の国益を守るのか。戦略が問われて居る。


     (AERA dot.編集部 西岡千史) 以上


 




 【管理人のひとこと】

 田原氏が指摘するのは以下の文章に集約される・・・日本政府は、韓国は何かと言うと日韓併合時代の韓国国民の被害を強調するが、こうした問題は1965年の「日韓基本条約」で決着が付いて居る筈だと捉えて居るが、これは「正確」では無い。当時、韓国は国力が弱く貧しく、日本に頼らざるを得無かった。だから、敢えて韓国民が同意しない条約でも結びざるを得無かったかも知れ無い。

 詰まり〈何十年も前に結ばれた「日韓基本条約」で全てが解決済みなのに、韓国は、国際法で認められる条約を無視した大法院の判決を政権が認め日本に賠償を求めるのは国際法に反する行為だ〉とする日本の主張は、現実の状況を無視した或る種の一方的見解に過ぎ無い。
 当時の両国の関係、国力・経済力・民主主義・国民感情が今もそのママだとは言え無いのだから、万が一、相手側に残って居る不信や不満があるとする為らば、それを改めて議題に挙げるのが両国の友好を続けたいとする大人同士の知恵なのだ・・・今の安倍政権は、日本に従わ無い韓国政府に対して、大人として寛容性の無い報復を行って居るに過ぎ無い。そして多くのメディアが「韓国叩き」に連日躍起に為って居るのは嘆かわしいものだ・・・もし、安倍政権に大人としての器量が有れば、両国の関係回復に全力を尽くすべきだろう。
 韓国の、日本からの輸入品に対する安全保障に関わる取り組む態度を非難してホワイト国待遇の見直しを通告したのは日本側。韓国にしたら、日本の批判を真に受け「信用し無いのなら、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は意味の無いものに為ってしまうのだから・・・」との破棄通告は筋が通る訳で、日本の無理強いに過ぎ無く為る。



 




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日韓の対立を「 ヤタラとと煽るバカ」が増えるワケ




 日韓の対立を「 ヤタラとと煽るバカ」が増えるワケ

 




           〜プレジデントオンライン 9/5(木) 6:15配信〜

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             精神科医・評論家 和田秀樹氏


 〜何故、日韓関係はこんなに拗れてしまったのか。精神科医の和田秀樹氏は「日韓対立は双方に取ってデメリットしか無い。それなのに政治家や官僚、マスコミ等偏差値的には賢い人達が『バカ化』して拗れた。その原因の一つは『グループ心理』にある」と云う〜



 嫌韓・断韓感情を煽って居る「バカ」の正体

 日韓対立の解決の糸口が見え無い。所謂徴用工裁判の問題は、日韓の請求権協定に対する明らかな違反であり、その協定及びそのベースにある日韓基本条約を韓国が破棄して居ない以上、民間人の請求権は無い。それは日本として譲れ無い部分だろう。
 只、だからと言ってこのタイミングで日本が輸出時に優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を外すと云う対応をした事は、日本政府がその理由を「安全保障上の輸出管理の問題」としたとしても「報復」と受け止められても仕方が無いかも知れ無い。

 実際これを受けて、韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定した。殊は日韓の歴史認識問題から安全保障問題へと飛び火した形だ。以降、両国の政府の言い分は悉く対立し、それを双方のメディアは連日報道し、読者や視聴者の嫌韓・断韓感情を益々煽(あお)って居る様に見える。


  



 「政治家は冷静に為れ」損得勘定で冷静な一般市民

 そうした険悪な雰囲気の中に有りながら、韓国ではそれ程反日感情が高まって居らず、大衆は冷静だと云う指摘がある。韓国では他人の目のある処では、大っピラに「日本が好き」とは言え無い。だから日本旅行を取り辞める等の自粛ムードに為って居ると云う訳だ。
 これに依って、日本の、特に地方の観光産業は大打撃を被って居る。シワ寄せを受けた当事者を中心に日本でも「政治家にもう少し冷静に為って欲しい」と云う声が次第に大きく為って居る。韓国でも、日本と対立関係に為るデメリットに付いて、経済問題を挙げる一般市民が多い。長期不況が続き、失業率が高い中、喧嘩をして居る場合では無いだろうと云う考えだ。

 要するに、日韓共「賢い人」である筈の官邸や官僚の人々やメディア関係者が、経済的な損失を考え無い様な言動や判断を行い、一般大衆の邦画冷静に損得を考えて判断をして居ると云うことである。この度の日韓対立は、偏差値的に頭の好い人々のバカ化に依って泥沼化したと言っても好いのではないか。


 



 賢い人が意図も簡単にバカ化する集団心理の怖さ
 
 本来、頭の好い人々に依る、そうした誤った言動や判断は何故生まれるのか。心理学の世界では、可なり前から(特に第2次世界大戦の心理メカニズムの研究に於いて)人間は個人で判断・思考する場合と、集団でそれをする場合では、答えや思考パターンが変わってしまう事が知られて居る。
 そのひとつの現象が「リスキーシフト」と呼ばれるものだ。人間は自分一人で判断するより、集団で判断する方が返って向こう見ずな判断をし勝ちだと云う事である。

 又、社会心理学の実験では右の様なものがある。或る人物がベンチャー企業からヘッドハンティングを受けたと云うケースを仮定する。条件は、今貰って居る給料の2倍を出すと云うものである。但し、その会社は今の会社より不安定で、来年倒産するかも知れ無いと云う別の条件もある。この際、その会社が来年倒産するリスク(可能性)がどの位なら、そこに行くのを辞めるかと云う調査をする。

 集団に為ると何故か「強気の判断」をするバカ

 一人で判断する場合は、リスク10〜30%を選ぶ人が多い一方、複数人で話し合った後だとよりリスクを取る傾向があったと云うのだ。人間は、集団に為ると弱腰と思われたく無い為か、無理をして強気の判断をする傾向がある様だ。
 第2次大戦の開戦前も、国の舵取りをする人でさえ個人レベルでは「開戦をし無い方が好い」と思って居た人が多かったのに、御前会議に為ると強気の姿勢を示してしまって、アノ様な結果に為ったと云う。「三人寄れば文殊の知恵」と云う諺がある。一人で判断するより大勢で判断した方が、色々なアイデアも出るし、穏当な結論と為ると云う事だが、実際はそうで無い事もあると云う事だろう。

 この様な「集団の特性」は知って置いて損は無い。他にも社会心理学が明らかにして居る様々な集団心理がある。


 




 何故明らかに間違った事を正しいと主張するのか

 韓国でも日本でも、相手国に対する強気な態度や制裁を課すべきと云う議論をして居る時に、自分がその話の輪に入って居たら、それに同意し無いといけ無いと感じる事はあるだろう。
 これが同調圧力と言われるものだが、実は、圧力が掛かって居なくても、周囲の意見が概ね一致して居ると、遂自分もそうだと同調してしまう(詰まり口に出す前から考え方が変わってしまう)と云う特性が人間にある事が知られて居る。

 ソロモン・アッシュと云う社会心理学者が面白い実験をして居る。線分を3本見せて、ドレがもう1枚の紙に書いてある線分と同じ長さかを判断して貰うのである。目の錯覚が起こる様なテストでは無いので、95%以上の人が正解する。
 処が、被験者に3人以上のサクラを混ぜて、その人達にワザと間違った答えをさせると、それに釣られて誤答する人が出た。それも3割以上居たのである。圧力が掛かって居なくても明らかに間違って居る周囲の人が出した答えを3人に1人以上は選んでしまう。

 足った3人に1人か、と思うかも知れないが、これが選挙の時等であれば、相当過激な政策を打ち出して居ても、それに同調心理が加わる事で政権を得る様な大量の票を獲得する可能性を意味して居る。実際、戦前の日本の一般市民は所謂「大本営発表」に同調し、多くの人が開戦に賛成だったのだから。

   異論を唱える人達を敵視して排除する「集団的浅慮」 

         9-6-26.jpg アーヴィング・ジャニス氏

 集団で考えた方が無難と云う「定説」も怪しいと云う学説がある。一人で判断を任された時は、責任の所在が明らかなので、統計や過去のデータ等を踏まえる等多角的且つ慎重に取り組む。処が、集団合議で決める時は、その判断が甘く為る事がある。これをアーヴィング・ジャニスと云うアメリカの社会心理学者は「集団的浅慮」と呼んだ。
 自分達の道徳性を過度に信じ込み、それに都合の悪い情報を遮断し、又その意見に反対する人達を敵視し、グループ内(一つの国が集団的浅慮に陥ると国民全体)の人間が異を唱える事に圧力を掛ける。

 最近の、高齢者の免許は取り上げるべきだと云う議論にしても、仮に一人でそれに付いてどう考えるかと云うリポートを書けば、統計データなど調べた上で、実は16〜24歳の運転の方が高齢者より事故を起こす確率が高く、危険なドライバーだと気付くかも知れ無い。
 又、免許取り上げに依って地方在住者の中には交通手段を奪われて家に引き篭り、それが将来の脳や足腰の機能の低下に繋がり兼ね無い、或は、自転車に乗り換えて転倒・骨折し、寝た切りの原因に為るリスクがあると云ったデメリットも想定出来るかも知れ無い。

 しかし、集団に為ると「事故を減らす」と云う道徳的スローガンが過大評価され、それに対する反論が反道徳的な様に思えて来る事があり「皆がそう言って居るから」と云う非論理的な理由で、免許取り上げに殆どの人が賛成する流れが作り上げられる。(地方に行くと、反対がマジョリティに為って居ると逆の議論が起こって居るかも知れ無いが)
 課題が何であれ「集団で判断」する場合は、より冷静に検討した方が賢明だ。(勿論、集団での結論が妥当な事は珍しく無いが、チェックが必要だと云う事である)


 




 人が陥り易い「集団精神病」の3つのパターン

    9-6-27.jpg ウィルフレッド・ビオン氏

 精神分析学の立場では、社会心理学の様に実験をした訳では無いが、「集団」の人間観察から様々な仮説が呈されて居る。
 精神分析を集団治療に応用した事で知られるウィルフレッド・ビオンと云う精神分析医が居た。人間が何等かの集団に為った時、キチンとした課題が与えられ無いと不安に為って、一種の集団精神病の様な状態に為ると云う観察をして居る。ビオンに依れば、人間はそうした不安に対処して、集団でマトマロウとする傾向があり、以下の3つのパターンを執ると云う。

 ひとつは「依存グループ」と言われるもので、メシア(救世主)の様な強いリーダーに皆が頼って集団がマトマロウとする心理である。国の混乱期に独裁者が現れ易いのもこの心理が反映されて居ると考えられる。
 例えば、ロシアのプーチン大統領にしても、アメリカのトランプ大統領にしても、国内の混乱に乗じて救世主に見える様に振る舞い、国民の可なりの部分を「依存グループ」にして、選挙での強みに繋げて居る。(依存グループの心理で居る人は投票率が高いので、支持率以上の得票に繋がる)

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 文在寅大統領は「反日」を利用して韓国国民を操作

 2つ目は「闘争・逃避グループ」と言われるもので、グループの外側か内側に仮想の敵を作って、皆でそれと闘おうとしたり、皆でそれから逃げようとしたりする事で集団がマトマロウとする心理である。
 韓国の文在寅大統領が国民からの支持率を高める為に「反日感情」を利用するのはこの心理を応用したものだ。現実に韓国の市民がこの集団心理に巻き込まれる、反日で国が一つにマトマッテしまう。

 3つ目は「つがいグループ」と云うもので、集団の中でカップルが生まれると皆で祝福する事でグループがマトマロウとする心理だ。
 これは、つがいが生み出す子供に期待すると云う思いが含まれて居り、基本的には目出度い事を皆で祝い、未来への希望でグループがマトマル効果がある。2020東京五輪の招致が決まった際に、日本中が祝賀ムードに為り、景気が好転すると云う希望が一時満ち溢れたと云うのがこの心理を表す好い例だろう。

 安倍政権は国民の「グループ心理」を見分けたから長期政権に

 「ポピュリズム」と云う言葉が使われて久しいが、民主主義の社会では、政治家が大衆迎合の様な言動に依って、国民を以上の様な3つの「グループ心理」でマトメ上げ、選挙を有利に展開しようとする事がシバシバある。とは言え、人々の心は常に一定では無く、こうした「グループ心理」も絶えず移ろい易い状態にある。
 そうした傾向を熟知して居る政治家は、国民の「今の心理」を洞察しながら「国民は今どのグループ心理に近いか」を考えたり「どのグループ心理なら仕掛け易いか」を考えたりする。その戦術がピタリと嵌ると長期政権に繋がる。安倍晋三首相もそうした技量に優れた政治家と言えるだろう。

 民主党末期の混乱期にアベノミクスを掲げて、人々を「依存グループ」の心理にしたかと思うと、東京五輪を招致して「つがいグループ」の希望ムードをモタラシ、更に韓国や北朝鮮を仮想敵にして「闘争・逃避グループ」の心理を醸成する等時々流れを変える事で一定以上の支持を集めて居る。只、この手のグループ心理に巻き込まれて居る時は、人間は深くものを考え無く為る事も事実である。
 アベノミクスに依って株価は上がったが、実質賃金を下げドル建てのGDPを大きく下げて居る事は余り論じられ無い。来年のオリンピックに付いてもその反動の不景気も含めてデメリットを論じる声は小さい。韓国敵視政策も経済的にはデメリットの方が大きい可能性が高いが、被害を受ける当事者以外はその事実に鈍感だ。


 




 グループ心理で思考停止に為ってしまわ無い様な努力を

 グループ心理の怖い処は、その心理に染まる事である種の思考停止が起こる事だ。我が国が過去に戦争を始めると云う完全に間違った意思決定をした事からも判る様に、可なりの経験を積み可なりの知能を持ち、可なりの教育を受けた人々が、意図も容易くグループ心理に盲目的に従って致命的で間違った決定や判断をして仕舞う。
 勿論グループ心理そのものが必ずしも誤って居るとは限ら無い。問題は、それと違う思考が出来無い事なのだ。他の選択肢や考えを思いつか無く為る事だ。

 自分がグループ心理に染まって居ないか、或は、グループや世の中ではこう云う話に為って居るが、自分ならどう考えるか。相手の立場に立ったらどう云う見方が出来るか。そうした自己チェックやセルフモニタリングは、賢い人間がバカに為ら無い為に必須の事と言えるのではないだろうか。



 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 国際医療福祉大学大学院教授。アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹こころと体のクリニック」院長。大学受験生向けの通信指導事業「緑鐡受験指導ゼミナール」代表。I&Cキッズスクール理事長。東京大学医学部卒業。ベストセラーと為った『受験は要領』や『「東大に入る子」は5歳で決まる』他著書多数

       精神科医 和田 秀樹    以上


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 【管理人のひとこと】

 なかなかタイムリーなレポートだと感心する。確かに、殆どの部分に於いて納得せざるを得無い文章だ。流石、精神科医・和田 秀樹氏のレポートである。この様な賢い人が冷静に世の中を見詰めて居て頂く事に心から感謝申し上げたい。
 管理人は、政治家は元より、評論家やメディアの劣化が大きな原因だと考えるのだが、大きな声で誰かが強く発言しそれが表に出て或る程度評価されると、それに便乗し負けじとより過剰な発言で目立とうとする・・・そんな心理が働くのでは無かろうか。常識として云い難い事を、恰も正義だと大きな声で強く発言する方が勝る場合もあると云う事だ。恥ずかしい理屈だと感じても、恥を覚悟に言ってみる者の勝利なのだろう。何時かは、その主張が常識として固定されるからだ。



  








使わ無いなら家計に回せ! 企業「内部留保」が7年連続過去最大




 使わ無いなら家計に回せ! 企業「内部留保」が7年連続過去最大


            〜現代ビジネス 9/5(木) 7:01配信〜



 




 増え続けて居るが「好循環」には遠い

 企業が持つ「内部留保(利益剰余金)」が、又しても過去最大と為った。内部留保は、企業が上げた利益の内、配当等に回されず会社内に蓄えられたもの。2008年度以降毎年増え続け、7年連続で過去最大と為った。
 財務省が9月2日に発表した法人企業統計に依ると、2018年度の金融業・保険業を除く全産業の「利益剰余金」は463兆1308億円と前の年度に比べて3.7%増えた。全産業の経常利益が83兆9177億円と0.4%に留まる等利益の伸びが大きく鈍化した事もあり、剰余金の伸び率は2017年度の9.9%増に比べて小さく為った。

 安倍晋三内閣は「経済好循環」を掲げ、好調な企業収益を賃上げに依って家計に回す事や、積極的な設備投資や配当の増額等を求めて居る。
 同年度に企業が生み出した「付加価値額」は314兆4822億円。前の年度に比べて0.9%の増加に留まった。一方で、「人件費」の総額は1.0%増の208兆6088億円で、辛うじて付加価値の伸びを上回った。この為、付加価値に占める人件費の割合である「労働分配率」は2017年度の66.2%から2018年度は66.3%へと僅か乍ら上昇した。

 最も、2017年度の人件費の伸び率は2016年度に比べて2.3%増えて居たが、2018年度の人件費の増加率は1.0%に留まった。安倍首相は2018年の春闘に当たって「3%の賃上げ」を求めたが、結果を見る限り、程遠い実績と為った。
 又、企業が支払った「租税公課」は10兆8295億円と6.5%増えた。法人税率は下がって居るものの、企業業績の好調を背景に法人税収や消費税収が増えた。実際、国の集計でも、2018年度の税収は60兆3564億円と為り、バブル期を上回って過去最大と為った。

 人件費の1.0%増と云う伸びは、租税公課の6.5%増、内部留保の3.7%増を大きく下回って居り、「国」「企業」「家計」と云う3主体で見た場合、家計への分配が立ち遅れて居る事を示して居る。


 




 設備投資、税収、配当に比べ人件費が

 では一体、何故、企業の内部留保は増え続けるのだろうか。しばしば言われるのが、企業に取って魅力的な投資先が無い為、投資を手控えて居ると云うもの。政府が企業の投資に税制上の優遇策等様々な恩典を与えて居る。2018年度はそうした効果が出始めたのか、全産業で8.1%設備投資が増えて居る
 株主への還元も国際水準に比べて低いと云う指摘がされて来た。2018年度の配当金の総額は26兆2068億円。前の年度に比べて12.4%増えた。ここ数年、日本企業のコーポレートガバナンス改革が進み、大株主である生命保険会社や年金基金等が「モノ言う株主」へと変わり始めて居る。

 生保等機関投資家に対してはスチュワードシップ・コードに依って保険契約者等の最終受益者の利益を最大化する様行動する事が求められて居り、配当の引き上げや自社株消却と云った株主還元を企業に求める声が強まって居る。こうした圧力に企業が押されて居る面もあり、配当が増加傾向にある。
 矢張り問題は人件費の伸びが小さい事だ。安倍首相は散々経済界に賃上げを求め、最低賃金の引き上げも続いて居るが、統計数字で見る限り人件費の伸びは小さい。一方で、雇用者数は過去最多を更新し続けて居り、1人当たりの人件費は寧ろ減少して居る可能性が高い。

 10月から消費税率が引き上げられる等、税負担が増えて居る他、社会保険料負担も増して居り、家計の可処分所得は減少傾向が続いて居る。消費が一向に盛り上がら無いのは、家計が貧しく為って居るからに他為ら無い。働く側の主張が企業経営者に届か無いと云う問題もある。
 厚生労働省の「労働組合基礎調査」に依ると、2018年の労働組合の推定組織率は17.0%。組織率の低下が続いて居り、賃上げ要求等経営への「圧力」が益々掛から無い状態に為って居る。組合が無い企業や、組合があっても組合員に為ら無い社員が増えて居る。これが、賃上げ要求等の力を弱めて居る面もある。


 




 家計のみが犠牲に

 増え続ける内部留保に批判の声は強い。共産党だけで無く、立憲民主党や参議院議員選挙で躍進した「れいわ新選組」等野党は、引き下げられて来た法人税率の引き上げを求めて居る。高所得者や資産家と共に、大企業からももっと税金を取るべきだと云うのだ。
 第2次以降の安倍内閣は、法人税率を大幅に引き下げる事で、日本企業の国際競争力を維持しようと試みて来た。アベノミクスの大胆な金融緩和もあって円高が修正された事もあり、企業収益は過去最高に跳ね上がった。税率を引き下げても税収が過去最高に為った訳だから、政策としては間違って居なかったと言う事も出来る。

 想定外だったのは、企業収益が思った程家計に分配されて居ないと云う事だ。アベノミクスの恩恵を感じ無いと云う個人が多いのも、賃上げが進まず可処分所得が増えて居ないことが大きい。「れいわ新選組」の主張に共鳴する有権者が多かったのも、こうした不満が国民の間に溜まって居る事を示している。
 政府自身も内部留保の増加には頭を痛めて居る。日本が成長しない一つの理由として、企業が儲けを溜め込んで再投資しない点を問題視して居る。一部には内部留保に課税すべきだと云う意見もあったが「2重課税に為ると云う批判もあり、現実には難しい」(財務省幹部)と云う見方が一般的。

 一時は外国ファンド等が株主還元の増加を狙って、内部留保課税の導入を政府に働き掛けて居たが、今はその動きも消えて居る。このままでは、再び企業収益の伸びが大きく為れば、その分だけ内部留保が増える事に為りそう。果たして、この問題にどう安倍内閣は手を打って行くのか。
 消費増税で家計への負担が高まる中で、企業ばかりが懐を膨らませて居ると云う批判は、有権者の怒りに火を点ける可能性もある。


           磯山 友幸    以上


 




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海上自衛隊幹部学校の「特別講話」 改憲派〈安倍応援団〉が続々登壇の危うさ




 海上自衛隊幹部学校の「特別講話」 改憲派〈安倍応援団〉が続々登壇の危うさ


           〜HARBOR BUSINESS Online 9/5(木) 8:33配信〜 


 海自幹部学校の「特別講話」恐るべき実態

 海上自衛隊の「最高学府」でありシンクタンクでもある海上自衛隊幹部学校(以下海幹校*)の「特別講話」にて驚くべき事実が判明しました。以下に報告します。


  




 <海上自衛隊幹部学校・略称「海幹校」詳細は、公式HP「概要」欄を参照 「海上自衛隊の最高学府」であり「上級の部隊指揮官又は上級幕僚としての職務を遂行するに必要な知識及び技能を修得」又「シンクタンクとして、安全保障政策の立案並びに海上防衛戦略及び防衛構想の策定に寄与し「戦略」「作戦」「国際法・国内法」「戦史」等に関する調査研究を実施」とある> 

 何はトモアレ、先ずは海幹校の公式ページ「教育課程・特別講話」に在る講師陣とその内容をご覧ください。

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 著名な右派論客が続々登場


       9-6-2.jpg 櫻井よしこ氏

 現在、2012年まで遡って閲覧する事が出来ますが、一見して目を引くのは、ズラリと並んだ、櫻井よしこ氏・門田隆将氏・田中英道氏・平川祐弘氏・竹田恒泰氏・曽野綾子氏等、目が眩む様な右派言論人の面々です。

 2012年から毎年招聘されて居る櫻井氏が、小笠原雅弘氏(NEC航空宇宙システム)と共に最多の8回。辻哲夫氏(元厚生省、東京大学高齢社会総合研究機構特任教授)もこの秋招聘されればこれに並びそうです。続いて門田氏と並んで歌舞伎役者の片岡孝太郎氏が6年連続と為りますが、片岡氏が12〜17年迄なのに対し、門田氏は13年から昨秋迄の6回なので、今秋には7年連続と為るのかも知れません。
 最もこのサイトに12年から実施された全ての「特別講話」が掲載されて居るのかどうかは不明ですので、「現在のサイトの状況から読み取れる範囲で」と云う限定付きです。

 講話に依っては聴講した学生に依る簡単なレポートが付されて居るので、話者の日頃の言動と照らし合わせる事で、どの様な事が語られたのかは大よその見当が付きます。全てと云う訳にはいきませんが、幾つか見てみたいと思います。
 内容以前に人物選定のそのものの不適切さを指摘する事が本稿の趣旨なので、夫々の人物像に付いては一言ずつコメントしました。人に依っては指摘すべき重要な事実が他に有るのでは?と云うケースもあるかも知れません。重大な〈見落とし〉があれば対応を検討居たしますのでご教示頂ければ幸いです。

         9-6-3.jpg 門田隆将氏

 櫻井よしこ氏については後述するとして、先ずは門田隆将氏から見て行きましょう。門田氏と言えば、5月のトランプ大統領来日時、NHKの相撲中継で全国に放映されたトランプ大統領との握手シーンは、安倍首相との距離の近さを象徴する場面として記憶に新しい処。
 同じく熱烈な安倍支持者として知られる金美齢氏そして矢張り櫻井氏も含めた3人(実際には同行者は4人)が、来日中の第45代米国大統領・トランプ氏と握手を交わし歓喜する様子が多くの視聴者を驚かせました。アノ握手は、安倍総理の誘導に依って実現したものである事を毎日新聞のカメラは見事に捉えて居ました。


 




 本人としては「ソモソモ私は安倍親衛隊では無い。常に是々非々で、安倍政権の大批判もして居る」(毎日新聞)と云う設定の様です。しかし、門田氏が「日本の宝」と迄称揚する櫻井氏との関係に着目すれば、安倍総理との関係もそれ程距離があるとは思えません。門田氏の2018年11月19日の「『新潮45』休刊騒動が示したマスコミの岐路」は、学生レポートが掲載されて居ます。〈「言論・表現の自由」に付いて、読者側の「自由な思想空間」が侵されて居ると云う、問題の本質を突かれたご指摘は、本校学生・職員に取って非常に啓蒙されるものであり、大変意義深く、得難い機会と為りました〉

 ココでの門田氏の主張はその2ヶ月前に書かれた門田氏のブログ「『新潮45』休刊で失われたのは何か」の内容と重なる内容だったと思われます。読者だけで無く作家や出版業界からも非難の声が上がり、雑誌『新潮45』が「休刊」するに至った一連の問題に付いて詳述はしませんが、 ことの発端は、同性カップルを念頭に「『生産性』が無い」等と主張した自民党国会議員・杉田水脈氏の寄稿「LGBTを『ふざけた概念』」とした上で、LGBTと痴漢を同列に論じ「性的マイノリティ」に対する無知・無理解、誹謗を重ねた評論家・小川栄太郎氏の論文でした。
 そして、門田氏もブログで両名をアクロバチックに擁護(ブログに出て来る「杉田美脈」と云うのは別人なのかも知れませんが)して居る訳です。杉田氏に付いての「安倍系列の政治家」と云う的確な表現は流石ですが、杉田氏・小川氏・門田氏全てヒックルめて「安倍系列」なのでは?思うのは筆者だけでは無いでしょう。

 又、遡って2014年に行われた「朝日報道とジャーナリズムの行方」と云う「講話」から推測されるのは、年間を通じて、そして今も事ある毎に継続されて居る右派の猛烈な「朝日新聞バッシング」に於ける言説でしょう。
 この年「吉田調書」「吉田証言」を巡って繰り広げられた「朝日新聞バッシング」は、もう一つ、ドサクサ紛れに「慰安婦」問題そのものを消し去ろうとする右派の邪悪な動機から放たれたものです。既に福島第一原発の吉田所長に付いてのドキュメント小説を書き「日本を救った男」と迄吉田所長を称揚する門田氏が「命令に違反」「撤退」等の言葉を用いた朝日新聞のスクープ(14年5月20日)に噛み付いたのも当然の流れでした。

 処が、門田氏は原発事故報道の検証記事の中でさえも「日本を貶めたい朝日」と云う妄想的な理路から、話題を「慰安婦」報道に於ける「吉田証言」報道とその取り消しの件に迄飛躍させ、朝日新聞の「慰安婦虚報」等と云う言葉を用いながら、歴史否認言説を繰り返しすと云う実に乱暴な主張を各所で行って居ます。
 しかし、ソモソモ歴史研究者達が証拠としては採用すらして居ない「吉田証言」を新聞社が取り下げた処で、史実としての日本軍「慰安婦」制度が消滅する筈もありません。増してや原発事故調査に於ける「調書」の記事取り消しが歴史問題と全くリンクもし無い事は明白なのですが「朝日さえ貶めれば」と云う動機が消え無い限りは何度でもヤリ続けるのでしょう。

        9-6-4.jpg 田中英道氏

 次に、田中英道氏は「新しい歴史教科書をつくる会」の元会長。竹田恒泰氏と共に「日本国史学会」(代表理事・田中)の4人の発起人として名前を連ねる人物です。因みに残り2名は小堀桂一郎氏・中西輝政氏と云う右派の大御所)
 20世紀の終末から開始され2000年代に苛烈を極めた「ジェンダー・フリー・バッシング」の論客の一人で、頑迷な「フランクフルト学派陰謀論」者。昨年刊行された「国際勝共連合」の雑誌『世界思想』のインタビュー「20世紀支配したマルクス主義が家族破壊へ変容」にて未だにその論を展開して居るから驚き。


 

 


 まるで右派論壇誌の見出しの様なラインナップ

         9-6-5.jpg 平川祐弘氏

 又、平川祐弘氏は、櫻井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」の理事及び研究顧問です。「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」で多数派を形成した「保守派」の一人であり、ヒアリングでは「万世一系の世襲の天皇は神道の文化的伝統の中心的継承者」等と発言。
 第二次安倍政権誕生前に存在した「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人の一人でもあります。又、役員を務める「日本戦略研究フォーラム」(会長・屋山太郎)の内部に作られた「対外発信助成会」の代表として『慰安婦と戦場の性』(秦郁彦)の英訳出版(2018年)に取り組む等「歴史戦」でも活躍中。

         9-6-9.jpg 竹田恒泰氏

 更に、竹田恒泰氏は一般にも好く知られた人物ですが、海幹校に関連して、次の事実を指摘して置きたい処です。

            9-6-10.png 吉木誉絵氏

 2016年、竹田恒泰氏の弟子として紹介され、又、自認もして居る竹田塾門下生の吉木誉絵氏が海幹校客員研究員に就任し、その後「内規の特例を使って、吉木の任期を〈2年〉に延長」が為され、2018年3月迄同役職に就いて居ました。
 特に研究実績も無い吉木氏が「研究員」就任「特例」としての任期の延長等から考えても、今回の事案と無関係では無い事は明白だと思います。因みに、竹田氏の「講話」も吉木氏の任期中に行われたと云う事も興味深い事実です。

          9-6-11.jpg 曽野綾子氏

 曽野綾子氏の演題は「私のアフリカ体験」との事。ココで思い出すべきは15年2月産経新聞掲載のコラムに於いて開陳された曽野氏の人権感覚です*。有ろう事か、南アフリカで過つて行われて居た「アパルトヘイト」を容認した上「日本でも移民を受け入れた上で、居住区を分けた方が好い」等と主張した事は記憶に新しいと思います。
 当然ながらこの主張に対しては、アフリカ大使館を始め各方面から非難の声が上がりましたが、曽野氏は謝罪も撤回もして居ません(因みに、曽野氏は、朝日新聞の取材に「「アパルトヘイト称揚して無い」等と回答して居ます)。未だに紙面に登場させて居る朝日新聞(18年10月20日)の見識が疑われます。

 ザッと講師を紹介しましたが、右派論壇誌の見出しか何処かの右派団体が主催した講演の様です。問題は、これが自衛隊幹部学校の教育の一環として実施されて居たと云う事。正しく由々しき事態です。


  




 改憲運動の象徴的人物が海自の幹部学校で語ると云う「意味」

 言うまでも無く、櫻井氏は現在の右派運動を語る上では欠かせ無い最重要人物の一人です。様々なメディアにも露出、その旺盛な言論活動により、改憲や歴史否認と云う右派のアジェンダ実現に大きく寄与して来ました。共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の幟旗には櫻井氏の顔写真がプリントされて居る事が示す様に、正に改憲運動の象徴と言える人物だと云うことは衆目の一致する処でしょう。
 その櫻井氏が海上自衛隊の幹部を目指す人材に向けて行った「講話」の演題が「令和における日本の安全保障と憲法のあり方」(!)と言うのですから呆れる他ありません。

 海幹校のページには「講話」内容の全ては掲載されて居ませんが、類似のタイトルが付された6月3日産経新聞配信のコラム*を読めば、中国脅威論を唱え改憲の必要を訴えるものであったと考えるのが自然ではないでしょうか。
 同日の学生による短いレポートにも〈継続を続ける中国の台頭を背景に、令和と云う新しい時代を生きて行くにあたり、日本の歴史・文化のルーツに遡りながら、現在我が国が直面する安全保障上の諸問題に付いて、周辺国の最新の地政学的動向を交えた非常に示唆に富む的確なご意見を頂けた〉とある通り、矢張り櫻井氏は日頃の主張を繰り返したものと思われます。
 憲法遵守義務は当然の事ながら、嫌、実力組織の自衛隊員には特に厳しくその事が求められて居る筈ですが、こんな事が公然としかも長期に渉り続けれて居るとは、全く言語道断と言わ無くてはなりません。

 櫻井氏の語る「正しい歴史観」!?
 
 また、2017年5月の「講話」の演題「激動する世界と日本の進路」の学生に依るレポートには〈日本だからこそ出来る国際貢献、正しい歴史観に基づき、日本人の寛容さとその価値観を発信して行く重要性をご指摘頂きましたことは、日本人としての誇りを強く再認識させられ、本校学生・職員に取って大変意義深いお話となりました〉等とあります。
 歴史否認派の櫻井氏が言う処の「正しい歴史観」とは何なのか。その歪んだ「歴史観」を植え付けられた自衛官が考える「国際貢献」がどう云ったものに為るのか。従来の櫻井氏の主張を鑑みるに、例えば特攻隊と云う無謀かつ非人道的な作戦を考案した日本海軍幹部の責任を問う事無く、只管その死を美化する如き発言が為されたのではないかとの疑念が拭えません。

 もう一度言います。只の講演会では無いのです。講師が語り掛ける相手は、命を落とす可能性がある隊員達に命令を下す立場に為るかも知れ無い未来の上級の部隊指揮官又は上級幕僚です。リストアップした講師の様な対外強硬論者、日本軍が起こした戦争を美化する歴史否認論者が、自衛隊の幹部学校で累次に渉って「講話」をすると云うことが何をモタラスか。その事を想像力を以て考えれば問題の深刻さは明らかでしょう。

 後述する様に過つての「田母神問題」(特に「歴史・国家観」講座の問題)の経緯から考えても、人選の時点で既に「アウト」だと言えますが、櫻井氏・門田氏に限らず全ての講師の講話内容を海幹校は明らかにすべきです。

  




 問題化した「田母神問題」の総括も反省も皆無

           9-6-12.jpg 田母神氏

 櫻井氏に限らず、リストアップした言論人の歴史認識・国家観は、アノ「田母神問題」で露呈した航空幕僚長にして元統合幕僚学校校長でもあった田母神俊雄氏のそれと根っこの部分は同じだと言えるでしょう。
 田母神氏は「歴史・国家観」講座を統合幕僚学校学校に新設、講師は「新しい歴史教科書をつくる会」ゆかりの人物ばかりでした。国会で追及を受けた防衛省は「歴史・国家観」講座の中止を表明、政府は「極めて遺憾な事と考えて居り、この様な事が再発する事の無い様努めて参りたい」と約束した筈でした。
 しかし「再発」処か少なくとも2012年以降、今度は海上自衛隊幹部学校を舞台に、繰り返し右派的な歴史観・国家観・道徳観の注入が施されて居たのです。

 イラク日報問題で露呈したシビリアンコントロールの機能不全「自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるのであれば非常に有難い」と等と放言しながら何の処罰も受け無かった前統合幕僚長・河野克俊氏(現・防衛省顧問) 野党議員に暴言を浴びせた航空自衛官。
 そしてこの度の海幹校の「特別講話」で施されて居る右派言論人に依る幹部教育「一体自衛隊はどう為って居るのか」「誰の為の自衛隊なのか」と思わせる事案が絶えません。

 一方で、「ありがとう自衛隊」キャンペーンを実施しつつ、同時に自衛隊明記の「改憲」を主張する右派運動。そしてその運動の中心或は周辺に、ここでピックアップした言論人の存在があります。
 そうした全体の構図を考えれば、如何に現在の改憲論議が危ういものであるかは明白。遣るべき事は先にあります。先ず海幹校特別講話の全容解明、そして今度こそは自衛隊の有り方を根本から見直す事が必要なのではないでしょうか。メディアによる報道、来る臨時国会での徹底追及を望みます。



 統合幕僚学校「歴史・国家観」講座の問題に付いては下記を参照

・自衛隊統幕学校講座で「つくる会」正副会長が講師
・自衛隊幕僚学校「歴史観」講座を中止
・「政府見解と異なる歴史認識を発表し更迭された前航空幕僚長に対する防衛省の任命責任等に関する質問に対する答弁書」>
・統幕長「憲法明記有難い」発言、菅長官「問題無い」朝日新聞デジタル、防衛省発令


 ※本記事執筆に当たりSNS等で多くの方に情報提供等ご協力頂きました。ありがとうございます。

 文 赤菱耕平 【赤菱耕平】 右派言論ウォッチャー「歴史戦」や教科書問題等に関心あり。Twitter IDは@akabishi2


   ハーバービジネスオンライン    以上


 




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