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2017年11月29日

【IT’S MY LIFE】マンガ 感想&あらすじ 元騎士のおうち大好きおじさんとダメダメな魔女っ子が織り成すアットホームファンタジー

裏サンデー/MangaONE。2014年12月15日から連載中。既刊8巻
著者:成田芋虫



あらすじ

帝都ユースティティアの聖騎士団で隊長を務めていた35歳の男性・アストラは、騎士団を早期退職し、頑張って貯めたお金で購入した念願のマイホームへ引っ越していった。

最果ての断崖で築500年の物件、利便性は悪く、決してよくはない立地ながらも、自分の城を持てたことに胸を躍らせていたアストラ。

これかはら穏やかに晴耕雨読な生活を送る・・・・・そう思った矢先、叫び声と共に空を飛んできた何物かが壁を突き破っていき、引越し早々大事なマイホームを破壊されることに。

家を突き破っていった謎の小さき者の正体は、誇り高きアンティキティラ族の魔女を名乗るダメダメ魔法少女・ノア。

激昂するアストラだったが、それがまだ年端も行かぬこどもだと判明したことで、自分を大人気ないと反省し、穏便に収めようとする。
ところが、アストラの威厳と風格、謎に包まれた風貌によって、ノアが捜し求めていた邪神と勘違いされてしまい、下僕にして仕えさせて欲しいと懇願されてしまう。

アストラは何とか誤解を解いて帰ってもらおうと考えるも、ノアの事情を知ったことで、彼女を下僕でも弟子でもない「対等な友人」として迎え入れる。

こうして、引退した元騎士と小さな魔女との、不可思議で愉快な同居生活が始まったのだった――。


ネタバレそれなりに含んでいるので注意
長くなってしまったので折り畳んでおきます。


【eBookJapan】 IT’S MY LIFE 無料で試し読みできます


感想・見どころ

ファンタジー作品を読むたびに――やっぱり私はなんだかんだでファンタジーが一番好きだなぁ――と思っております。もうそれなりにいい歳してますけど、まだまだ離れられる気がしません。
何がそんなに好きなのかと聞かれると、理由はたくさんあげられるので、それだけでいくらでも語れそう。一番の理由を改めて考えたときはちょっと悩みましたけど。ストーリーも大事、キャラクターだって大事、それが漫画ならもちろん絵も大事。
でも、やはりそれらを総じて、現実ではありえない世界で、現実ではあり得ないキャラクターたちが、現実ではまずあり得ない物語を紡いでいく様子を見るのが好きなのかなと。さらに、そのファンタジーに現実味を感じさせるくらいの緻密さが加わったら最高ですね。やっぱ私にとっては世界観が一番大事。

さて本日は、35歳と8歳の年の差コンビが魔法世界でゆるゆると、時にドタバタと、そして時折切なくなるファンタジー漫画『IT’S MY LIFE』を紹介させていただきます。

スローライフに憧れて35歳で田舎に引っ込んだ元・騎士隊長の男性と、彼の家に迷い込んできたダメダメ魔法少女を中心に、家族と友人たちがマイホームで繰り広げていくゆるゆるでドタバタな日常を描いた物語。そして、少女と元騎士が背負った遥か過去から続く悲哀と愛を描いた物語。
元・騎士と魔女っ娘のアットホームファンタジーコメディ。帯での謳い文句は「『魔法使いの嫁』ヤマザキコレ先生!!」、「悲しまないで?貴方を愛してくれる人は この世界のどこかに 必ずいるから――。」など。
作者は本作で連載デビューを果たした女性漫画家でイラストレートの成田 芋虫(なりた いもむし)先生。

元騎士(35歳)と魔女っ娘(8歳)のほのぼのライフ

ファンタジーと言っても、血湧き肉踊る冒険のワクワク感を楽しむ作品ではありません。最近増えてきたファンタジー世界での日常系、癒し系作品。
基本的にはコメディテイストが強めの日常を描いたほのぼのファンタジーが展開され、ときどきシリアスもアリといった感じの内容です。

主人公は、騎士団を引退して憧れのスローライフをド田舎で始めたアストラと、彼の家に貫通するほどの勢いで突っ込んで来たちびっこ魔女のノア。
35歳の家をこよなく愛する元騎士と、8歳のダメダメ魔法少女の年の差コンビが、心温まるお話を紡いでいきます。たまに激しく暴走してますけどね。

おっさんと魔女っ子の組み合わせと聞くと、あまり乗り気しない人も多いと思いますけど、巷に溢れるそれ系統の作品ほど萌えに媚びてはいないと思います。
もちろんノアがめちゃくちゃ可愛いのも事実。でもそれだけではなく、ストーリーが上質でとても美しく、「笑えて・泣けて・ほっこり」のエピソードばかりですので、読後に得られるのは感動と心地よさ。
まあ、ノアはアストラの「妻」の座を無邪気に狙ってますけど、アストラからすると大事には思っていても、娘ぐらいの感覚しか持ってませんから。

あと、根っからの悪人キャラもほとんで出て来ないので、そこは安心して読める理由ですね。全くいないとは言いませんけど、現在刊行されている中では過去編に1人登場したぐらい。
主人公に因縁持って突っ掛かって来るキャラにも、盗賊に身を落としたキャラにも、ラスボスみたいなキャラにも、それぞれ相応の理由があってのことですし、愛嬌もあるので憎めません。どのエピソードも鬱々した結末にならないのはこの作品の良いところ。

そのせいで物足りなさを感じることもなかったです。コメディとシリアスのバランスがよく取れているため、たまに挟まれる真面目な話が良いスパイスになってたかと。
それに、元々コメディ面の強い作品ですから、アストラとノアを中心に、クセの強い登場キャラが次々に登場し、彼らがドタバタ騒動起こしまくってるので、十二分に楽しんでもらえると思います。

おうち大好きおじさん「アストラ」

この作品、主人公のひとりでもあるノアが8歳の可愛い幼女ということもあって、ロリコンホイホイみたいに思われそうですけど、個人的に全キャラクターで最もいい味出していたと思えたのは・・・・おっさんである「アストラ」。はっきり言って、この作品はアストラ抜きでは成り立たないと確信してます。

元騎士隊長、年齢35歳、身長202cm、体重109キロ、筋骨隆々の毛深い中年男性。寒い日も、暑い日も、仮面と兜は決して外すことはなく、誰にも素顔は晒しません。もし現実にいたら即効で職質されるでしょうね。

彼の最大の特徴と言えば、「マイホーム」に傾ける異常なまでの愛

作中屈指の強者であり、真面目で優しく、頼れる男でもあるのですけど、家が関わるとどうにも暴走しがちになってしまうおうち大好きおじさんです。元々騎士をやっていたのもマイホーム購入資金を貯めるためですし。
家を傷つける者には殺意さえ抱き、容赦ない制裁を加えます。もちろん、ノアや友人たちを傷つける者にも容赦ないですけどね。

DIY回は恒例ともいえるエピソード。インテリア製作に夢中で取り組み、ウキウキ完成後を妄想してる全身鎧姿のおっさんという構図は、なんともシュール。
ただ、思っていた形にならないことも珍しくありません。アストラは若干抜けてるところがあり、天然も入ってるうえ、彼の周りに集まってくるキャラも一筋縄でいかない連中ばかりのため、だいたい可哀相なオチ付きとなっております。

その厳つい風貌とのギャップが可愛く、不憫さと苦労もあって、「がんばれ!」と応援してくなりますね。
幼いノアよりも、むしろアストラに萌える読者が多いかも?

時折挟まれるシリアス回が切なさと感動を演出

アストラとノアを中心に、ごあごあやカイアスなどの2人を取り巻くキャラクターたちとの、ゆるい日常とコメディが基本ではありますが、合間合間に真面目なシリアス回が挟まれています

この辺りは物語の核心とも言える重要なパートも含まれているため、笑いの要素は薄く、いつもドタバタしてる彼らが打って変わって、真剣な面持ちで巻き起こる事態へと当たっていきます。

魔法が上手く扱えず、出生も不明なノアの隠された秘密。ノアと同じ顔を持つ少女が何人もいること。神話として語られていた邪神と聖女の真実。そして、実は無関係ではなかったアストラの過去と、素顔を晒さない一つの理由でもある彼の体に起こり始めた変化。

核となるストーリーと世界観がとても良く作り込まれているので、通常のコメディ回とはまた違った見方が出来、引き込まれる面白さがありましたね。

アストラとノアだけではなく、サブキャラたちへ焦点を当てたエピソードも素晴らしい。特に「エリーゼとカイアスの回」と、「ごあごあの過去回」は感涙必死の切なさと感動を味わえると思います。

コメディからシリアス、シリアスからコメディへの路線切り替えも違和感なく展開され、このスパイスが効いたシリアスのおかげで、普段の日常パートがより心地よい光景に見えてきました。

最後に

ということで、元騎士の35歳おうち大好きおじさんと、8歳の無邪気なダメ魔女娘のアットホームファンタジー漫画『IT’S MY LIFE』の紹介でした。

受けた印象としては、「美しい漫画」だなと。まず絵が最高にキレイです。作者先生の画力が抜きん出て高く、特にエピソードごとに挿し込まれているカラーイラストは素晴らしいの一言。息を呑む美しさとはまさにこのことかなと感じるほどで、それだけでも一見の価値アリだと思います。

ストーリーとそこから醸し出される雰囲気も同様。良く練り込まれたストーリーの完成度は高く、シリアスとコメディのバランスが絶妙でもあるため、とても読み易い。「キレイないい話」が多いので、読後感が最高です。
あと、美しいと言えば、褐色騎士のローズさん。なんとも素敵な女性ですので、個人的に登場してくれるとすごく嬉しい。

メインからサブまでキャラクター一人一人をしっかり掘り下げてるところも良かったです。アストラとノアは言うまでもなく、周りのキャラにもどんどん愛着が湧いてきます。アストラ大好きカイアスおじさんも面白いですけど、私としてはペットのドラゴン・ごあごあが可愛いので好き。ただ、飼うとなったらエサ代ばかにならないだろうなと、そんなことも思ったり。

でも、やっぱり何と言っても一番の魅力はアストラですね。強くて優しい、それでいて面白いマイホームパパ。

物語も佳境なってきまして、どう決着するのか非常に気になります。気になると言えば、アストラの素顔は公開してくれるのかな?ノアたちには見せて、読者には見せない終わり方もありそうですけど、是非拝見したいものです。

ファンタジー好き、ほのぼの日常系が好きな人なら特に楽しんでもらえると思いますので、よければ読んでみて下さい。自信を持って強くおすすめさせていただきます。

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2017年10月19日

【フラウ・ファウスト】マンガ 感想&あらすじ 不死の少女と悪魔をめぐる禁忌と再会のダークファンタジー

ITAN。2014年10月発売22号から連載中。既刊4巻
著者:ヤマザキコレ



あらすじ

昔々、あるところにファウストという男がおりました
ファウストはある日、悪魔と出会いこう言われました
「おまえの魂をくれるなら、おまえが死ぬと定められた時まで言うことをきいてやろう」
ファウストは甘い言葉に飛びついて契約をしました

そんな物語を馬車の中で幼い子供に聞かせる謎めいた少女ヨハンナ・ファウストは、立ち寄ったとある街で本泥棒として捕まりそうになっていた少年・マリオンを助ける。

勉強して知識をたくさん身に付けたいと望むも、貧乏なために学校へ通うことが出来ないマリオン。本以上に豊富な知識を持つヨハンナにしばらく教師役を務めてもらう変わりとして、彼女がこの街へ立ち寄った目的を手伝うことになった。

その目的は、フラっといなくなった“あるモノ”を捜し出すこと。そしてマリオンが頼まれたのは、“新月の夜に教会の扉を開けてヨハンナを招き入れる”、ただそれだけ。

新月の夜、ヨハンナを招き入れたマリオンが目にしたモノは、遠い昔に彼女が契約を交わした悪魔「メフィスト・フェレス」の封印された腕だった。

少女は少年を引き連れて旅をする。バラバラになった悪魔の欠片を捜し、封印から解放し、再会するために。

主要登場人物

ネタバレも若干含まれているので注意

・ヨハンナ・ファウスト
悪魔と契約を交わした女性。小柄な体型とメガネが特徴。語学・歴史・天文・数学・錬金術・医術など、幅広い学問に深く精通しているうえ、魔術まで扱います。知識欲と好奇心が強い。百を生かすためなら一を切る非常さを持つも、根っこには深い情愛と優しさ、そして強い信念を持つ。ただ、それを上手く伝えられない不器用な性格でもあります。
五体をバラバラに封印された契約悪魔・メフィストの身体を、100年もの長い間捜し続けています。不死の呪いを受けているため、教会などの神聖な場所へは誰かの招きを受けなければ入ることは出来ません。世間では100年前に死んだとされており、男として描かれているおとぎ話にもなって広く知られています。科学の分野から蹴り出された異端の者たちからはカリスマ的な人気者。
今はヨハンナと名乗っていますが、メフィストと契約を交わした頃に使っていた名前は「ファウスト」。幼い頃から貪欲に知識を求めるも、メフィストとの契約によって一瞬で知識を得ることは拒んでいます。それは、この世界の知りうる限りのことを、実感の伴う“自分の感覚”として知りたいから。そのため、メフィストとの契約で望んだモノは、自身の手足とあるメフィストそのもの。
不老不死ではあっても呪いであることに変わりなく、傷を負うごとに自らの身体を削いで修復されているため、その度に身体は小さく若返っていきます。残ってる物資で体を持たせてるだけであることから、なくなれば死ぬとヨハンナは考えています。

・マリオン
ヨハンナの旅に同行している少年。純粋で優しく、とても知りたがりな性格。本泥棒として捕まりそうになっていたところをヨハンナに助けられました。父親が商売に失敗したことで財産はあらかた借金取りに持っていかれ、現在は貧しくなったことで学校にも通うことができない状況。
学ぶことに積極的な知識バカで、ヨハンナの捜し物を手伝うかわりとして、街にいる間だけ教師役となって学問を教えてもらう約束を交わしました。ヨハンナが実はファウスト博士であり、不死の化物だと知っても尚、彼女のそばで学んでいたいと望み、強引に旅へ同行することになりました。
力もなく手先も器用でない何もできない自分にとって、ヨハンナという知識の塊のような存在に出会えたことはチャンスだと思い、彼女から学ぶことに賭けています。一度はヨハンナについての記憶に鍵を掛けられて置いて行かれるも、強い思いが暗示を解き、ニコと一緒に彼女を追いかけました。

・メフィスト・フェレス
ファウストと契約を交わした伝説の悪魔。鳥のような面を付け、黒いコートを纏っている見た目は男性の悪魔。理由なく人に不死を与えた罪によって、身体をバラバラにされて封印されたことになっているが、それは表向きの理由である可能性が高い。身体の全ては揃っていない現状でも普通に動くことができ、ファウストの危機には助けに現れます。
契約中に「おまえが己を捕らえたならおまえの勝ち。おまえが立ち止まったら己の勝ちだ。」とゲームを持ち掛け、ハンデとしてファウストを不老不死の身体にした後、彼女の前から居なくなってしまいました。
簡単には堕ちない強い意志を持つファウストに惹かれているようです。ファウストが一度死んでいるため、既に契約は切れているにも関わらず、彼女を様々な脅威から守っています。

・ロレンツォ・カランドラ
異端査問官の男性。ヴェールで顔上半分が隠れているため、素顔は不明。寡黙で真面目な性格。冷静沈着な思考と高い戦闘能力を持つ優秀な人物ではあるものの、協調性は欠けているため、1人でフラフラどこかへ行ってしまうことも度々あります。
悪魔やそれに通じる者を抹殺することに躊躇がなく、メフィスト復活を阻むためにファウストを執拗に付け狙ってきます。悪魔を匂いで嗅ぎつけることが可能。
腹違いの義妹がいますが、親を亡くした2人を引き取った叔母と名乗る大主教・オルガに引き離され、会うことを禁じられていました。異端審問官でいるのは妹を守るため。
どうやらファウストの娘であるニコのことを気に入ってる様子。あと、絵が壊滅的に下手なことから、彼の似顔絵によって人物を特定することはまず不可能。

・ニコ・バーンスタイン
ヨハンナを「お母さま」と呼び慕い、彼女の娘を名乗る若い女性。端整な顔立ちと抜群のスタイルを持つ黒髪ロングストレートの美女。ヨハンナの隠れ家でもある薬屋を兼ねた孤児院で暮らし、そこで彼女が通り掛かりに拾ってきた孤児たちの面倒を見ています。
普段は柔らかい丁寧口調で話し、子供たちにも好かれている優しい先生ですが、メフィストのことは激しく嫌っています。
実は普段の姿は自動人形の身体であり、本体は体内に内臓されているホムンクルス。現状はフラスコの中でしか生きられない手の平サイズの小人。そのため、定期的に点検と整備が必要。
ヨハンナによる生命を人の手で作る研究から偶然生まれるも、異端審問官の襲撃を受けたことで雲隠れし、人の目を欺くためにヨハンナの友人である人形師のサラによって外見が組み上げられました。

・アナスタシア
大主教。ロレンツォの腹違いの妹。
兄とは会うことを禁じられていますが、ロレンツォは月に一度だけ誰にも悟られないように姿だけを見せに来てくれるようです。いつも守ってくれている兄には、自分から離れて自由になって欲しいと思っています。
メフィスト復活を阻もうとする教会の異端審問局局長で大主教の叔母・オルガによって、半強制的に悪魔・イーノーと契約を結ばされてしまいました。しかし、囚われたヨハンナと会話を交わしたことによって、自身の行いに疑問を持ち始めています。

・イーノー
女悪魔。大きな尻尾が生えていて、手足には足ヒレと水かきが備わっている悪魔。ある教会の主教の娘を悪魔の末席に加えようとするも、ヨハンネの介入により契約は不履行となり失敗。その後、大主教・オルガの手引きによって、アナスタシアと契約を交わしました。
通常、悪魔や魔獣は流れる水を嫌うものですが、イーノーは水から生まれた悪魔であるため弱点にはなりえません。転んで足掻いて血反吐を吐きながら歩む人間が好き。

・オルガ
老齢の大主教。異端審問局局長。アナスタシアの叔母。謎が多いメフィスト・フェレス封印の真実を知っていると思われる存在。
悪魔を穢らわしい存在と忌み嫌い、人の理から外れた者をおぞましいと蔑んでいながら、目的のためなら悪魔の力も利用する人。




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感想・見どころ

どんな作品においても世界観と設定って大事ですよね。私はその辺りを凝ってる作品にはほんと弱いもので、物語の世界に没入して読みながら、自分の頭の中でも色々と想像膨らませて楽しんでおります。
逆にそこをおざなりにされてしまいますと、いくらストーリーやキャラクターが良くても、ちょっと読み続けるのが辛くなってしまうこともしばしば。それが例えファンタジーであったとしても、世界観によって臨場感を出せているかいないかではだいぶ評価も変わってしまいます。
個人的に良いなと思う作品を一部あげるなら、『ハクメイとミコチ』と『Landreaall(ランドリオール)』。あと、最近では『映像研には手を出すな!』にもハマっていす。これらはしっかりした土台があるので、キャラクターもイキイキ動いてますね。

今回紹介させていただく漫画はヤマザキコレ先生の『フラウ・ファウスト』。不思議な香り漂う独特な雰囲気を纏わせている作品です。

死ねない呪いを受けて100年以上も生きている少女の姿をした女性が、教会によって施されているかつて契約を交わした悪魔の封印を解く為、旅の途中で出会った少年と共にバラバラになった欠片を捜して駆け巡る物語。
悪魔と不死の少女をめぐる禁忌と再会のダークファンタジー。帯での謳い文句は「死ねない少女と不完全な悪魔、100年の年を超えた再会までの物語――」(1巻)、「100年以上まえ、博士と悪魔、ふたりだけの旅の記憶」(4巻特装版)など。
作者はアニメ化もされた現代魔法ファンタジー『魔法使いの嫁』で広く知られる漫画家・ヤマザキコレ先生。

錬金術師「ファウスト博士」を下敷きにして描かれる新たな伝説

“ヨハン・ゲオルク・ファウスト”という人物をご存知ですか?
16世紀ドイツに実在されたと考えられている錬金術師。本人に関するはっきりとした資料はあまり残されていないのですが、錬金術や占星術を扱う魔術師であったなど、色々と妙ちきりんな風聞がささやかれていたことから、彼をモデルにしたファウストと悪魔・メフィストの物語は多く存在します。

代表的なのは、ドイツの小説家であるトーマス・マンによる『ファウスト博士』。そして、ドイツの文豪・ゲーテよって生み出された長編戯曲『ファウスト』ですね。

ゲーテ作品では、神と悪魔のメフィストが賭けをします。貪欲に知識を渇望するファウストを誘惑し、闇へと堕ちたらメフィストの勝ちで、それでも向上心を持って光の道を歩めたらメフィストの負けという賭け。
そして、「結局何もわからない」と自殺しようとしていたファウストの前に現れたメフィストは、肉体を若返らせる変わりとして、有名な言葉「時よ止まれ!お前は美しい」と彼が発したら魂を貰うという契約をします。つまりファウストが満足しちゃったら魂はメフィストのもの。
美女と恋したり、国の窮状を救ったり、領土を持ったり、なかなか歩みを止めないファウストでしたが、とある失敗によって失明してしまいます。ベッド上でメフィストが彼の墓を掘る音を聞き、それを領民が開拓に勤しむ音だと勘違いしてしまったことで、幸福感に包まれたことからついに・・・「時よ止まれ!お前は美しい」と言ってしまいます。
賭けはメフィストが勝ったことで魂を連れていかれそうになるも、天から現れたかつての恋人によって救われ、ファウストは天国へ引き上げられていきました。


かいつまんで説明するとこんな感じだと思います。間違ってたらすみません・・・。

本作はこの辺りの伝説を下敷きに、オリジナルの新たなファウスト博士を描いた物語になってます。魔術や剣などアクションバトル要素もそれなりに加味されているダークファンタジー作品。
系譜に連なるその他の作品では、ファウスト博士はモデルの人物そのままに男性として描かれることが多いのですが、このヤマザキコレ作品では女性。タイトル『フラウ・ファウスト』の「フラウ」というのは、ドイツ語で「ミセス」という意味です。

禁忌と再会の物語

内容をおおまかに説明してしまうと、主人公のヨハンナ・ファウストが五体バラバラにされて封印中の悪魔メフィストを捜す話。ヨハンナ(ファウスト)曰く、見つけてシメるらしいです。
物語の主軸は、バラバラにされて各地の教会に封印されているメフィストを、ヨハンナと仲間たちが妨害してくる敵とぶつかりながら、ひとつひとつ回収していくという流れ。

現在封印されてはいますが、元々は契約している最中にメフィストが持ちかけてきたとゲームが始まりです。

「おまえが己を捕らえたならおまえの勝ち。おまえが立ち止まったら己の勝ちだ。」というもの。

そうして勝手にゲームを始めてフラッとどこかへ消えてしまうのですが、このままではメフィストが勝つことは明白なことから、とあるハンディを与えられます。
1巻冒頭で少年・マリオンと出会ったときは、彼とほとんど年の頃は変わらない少女と言っても差し支えない姿。しかし、メフィストが封印されたのも、ファウストが死んだとされたのも、いまから100年以上前のこと。生きていることすらありえないのに、当時既に大人だったファウストは明らかに若返っており、身体に大きな傷を負っても自然に完治。
つまり時間の制限が無くなった不老不死の身体になったのですが、そうなるに至った謎のヴェールに包まれている過去についても、この作品の大きな見どころのひとつになってます。

そして何より強い輝きを放っているのがヨハンナ・ファウストというキャラクター。聡明であっても知識の探求欲が過ぎることから、その所業は大多数の人たちには理解されず、強欲な狂人として知れ渡っています。しかし、人の評価も、望みを叶えてくれる悪魔との契約すらも、彼女が元々抱いていた根本的な欲望に変化を与えることはありませんでした。
欲する知識を一瞬でくれてやるというメフィストに対し、「実感のない知識なんていらない。私は、私の力でつかめるだけの知識を手に入れる。」
この異質の欲望と信念の強さは凡人には理解し難いもの。しかし、その危うさを孕んだ彼女の情熱は、メフィストがそうであったように、魅力にもなって強く惹かれてしまう輝きを放っていたと思います。

謎、謎、謎の先の読めない展開、そして結末

細々としたところまで理解するとなると、なかなか骨が折れる作品ではあります。ただ、下敷きがあるとは言え独自のストーリーであることから、先の展開やどういう結末に至るかは読みづらいため、続きが気になって仕方なくさせる面白さを持っています。

肝心のメフィストフェレスに関しては、傍にいるとはいえ頭部がまだ封印されているため、語ってくれる口がない状態。なので、その行動の意図や想いはヨハンネの回想の中でうっすらと触れることしかできず、元々ピエロみたいな読み辛い悪魔だったことからも、何をどうしたいのか、何で封印されているのかなど、既に佳境に入っているにも関わらず分からないことが多々あります。

何かの目的なのためなのか、ただ楽しんでいるだけなのか、はたまた愛ゆえなのか、原作とはだいぶ異なる姿をみせているだけに、ある意味物語の展開以上に読めない困った悪魔です。

ヨハンネの旅にむりやり同行しているマリオンもなかなか興味深い。知識を貪欲に欲っする彼は、かつてのファウストそのものとも言えなくもない少年。彼女から知識を得ていくマリオンは、果たして同じような道を歩むことになるのか、それとも別の道や可能性を見出していくことになるのか、その動向も気になるところです。

結局のところ、全てはメフィストのゲームによるところだったりするのかも?
そうだとしたら、果たして勝者の栄冠は何処へ・・・。

最後に

こんな感じでいかがだったでしょうか?女版ファウスト博士と悪魔メフィストフェレスの新たな物語を描いた漫画『フラウ・ファウスト』の紹介でした。

濃密な世界観、伏線が少しずつ紐解かれていく謎多きストーリー、個性半端なく強烈なキャラクター陣、どの要素も素晴らしい出来栄え。謎解きモノとしてだけではなく、アクションありの冒険モノとしても楽しめる作品です。

ゲーテ作品を読んでいなくても何ら問題なく読める作品ではありますけど、もちろん下敷きになっている作品ですので、読んでたらその分想像が膨らむのも確かです。

5巻で完結とのことなので、残された謎がどう解かれてどのような真実を目にすることになるのか、そしてヨハンネ・ファウストはどのような結末を迎えることになるのか、楽しみで仕方ないですね。

作者の『魔法使いの嫁』とはまた違った魅力を持つファンタジー作品ですので、よければ読んでみてください。自信を持って強くおすすめさせていただきます。

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2017年08月30日

【とつくにの少女】マンガ 感想&あらすじ 少女と人外の優しくも切ない交流を独特な世界観で描いた御伽噺

月刊コミックガーデン。 2015年10月号から連載中。既刊3巻
作者:ながべ



あらすじ

昔々、遥か遠い地に、別たれたふたつの国があった。人間が住まう「内つ国(うちつくに)」と、異形の者たちが棲まう「外つ国(とつくに)」。

人間はふれるだけで呪いをもたらす異形の者たちを恐れ、内で生きる者たちを守るため、高い壁を築き、疑わしき者は問答無用で処分されていた。

本来ならば人が寄り付くことはなく、交わるはずのないふたつの国。しかし、呪いに覆われた外つ国の領域でありながら、呪いを受けることなく生きる一人の幼い少女が――。

その者の名は「シーヴァ」。
世界のことも、自分の身に何が起こったのかも、まだ何も知らないあどけない彼女は、「せんせ」と呼び慕う異形の者に拾われ、いつか迎えが来ることを信じて一緒に暮らしていた。

シーヴァに呪いを移すまいと決して彼女とふれあうことはしない先生。その庇護の下で明るく無邪気に暮らすシーヴァだったが、その存在が他の異形の者たちに、そして内つ国の一部の人間たちに知られ・・・。

いま、ふたりの物語がひっそり動き出す。

登場人物

ネタバレも含まれているので注意

・シーヴァ
主人公。幼い人間の少女。肩ぐらいまで伸ばした白い髪と、いつも着ている白い服が特徴。年相応の天真爛漫さを見せる明るくて優しい性格の女の子。若干おてんばな面もアリ。一貫してセリフはひらがなのみ。
「せんせ」と呼び慕う異形の者と一緒に「外つ国」で暮らしています。1人で呪いだらけの外へ出歩くことを禁じられているため、せんせと一緒のお出かけや、おちゃかいをすることが楽しみ。「内の国」で育ててくれたおばさんから貰った本を大事にしながら、いつか迎えに来てくれることを無邪気に信じています。
教会からの使命を受けたおばさんに内つ国の村へ連れて行かれるも、おばさんが呪いを受けて変異し、村中で呪いが発生。兵士に追われて村を出たところで、迎えに来てくれたせんせいと遭遇し、異形の姿になったおばと一緒に外つ国の家に帰りました。

・せんせい
もう1人の主人公。シーヴァと一緒に暮らしている異形の姿をした「外の者」。シーヴァからは「せんせ」と呼ばれています。
元は普通の人間でしたが、呪いを受けて外つ者になってしまいました。見た目は全身の肌が真っ黒に染まり、立派な山羊の巻き角を生やした竜骨のような頭。味覚も空腹感もないので食事を必要とせず、睡眠をとることもなく、さらに痛覚もないことから炎に触れても矢を体に受けても平気。
シーヴァに呪いがうつってしまうことを恐れ、肌が触れないよう常に気を配っています。健気に迎えを待つ彼女に、実は「内つ国」からの捨て子であることを打ち明けられず悩んでいました。
安全を脅かすあらゆる害からシーヴァを守っていますが、他でもないせんせい本人が彼女との暮らしを大切な拠り所にしています。

・外の者
名称不明。シーヴァの頬に触れた外の国に棲まう異形の者。体全体が黒く、木の枝か鹿のような角を生やした大柄な外の者。せいせいのことを「黒の子」と呼び、「よそ者?」「呪われた者か?」と問うていたことから、呪いを受けて異形の者になった人間ではなく、元から外の国に居た異なる存在である可能性あり。
彼らが言うには、「おかあさん」と呼ぶ得体の知れない存在のため、奪われた「魂」を取り返そうとしているらしい。シーヴァに対して「魂をだれから取り返したのか今度教えてね」という意味深な言葉を残して去っていきました。

・おばさん
内つ国でシーヴァを育てていた老婆。内つ国でシーヴァが呪いの疑いをかけられて処刑されそうになったことから、止むを得ず本と手紙をそえて外つ国に置いて来たというのが経緯。
呪いの疑いが晴れたと報せを聞き、教会の使命を受けてシーヴァをせんせいの元から引き剥がすも、連れて帰った内つ国の村で呪いを受けて異形の姿に変異。兵士から逃げて村を出たシーヴァと迎えに来たせんせいと共に、外つ国の家まで付いていきました。
面倒を見ていたシーヴァとは血の繋がりも縁も何も無く、実はおばさんが外つ国で拾った子。


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感想・見所

ヤマザキコレ先生の『魔法使いの嫁』が異例の大ヒットを記録して以来、マンガやアニメ、ラノベなどで盛り上がりをみせる「人外モノ」。このブログでも個人的にアタリだった同ジャンルのマンガを何作か紹介させていただきました。
波が起これば乗りに来る人も増えるは道理。そうなると、当然ハズれも増えます。というより、ハズれの方が遥かに多いわけで、かくゆう私も・・・。
全体的に薄い上に方向性すら不明だったり、その手の知識をひけらかすばかりでストーリーがおざなりだったり。まあ、私は雰囲気さえ良ければ楽しめてしまう浅い人間だったりするわけですが、さすがに人外モノと謳っておきながら人外である必要皆無だと静かに本を閉じたくなりますね。もちろん、それは人それぞれ評価は変わりますけど。
だからこそ、アタリに出会えたときの喜びもひとしお。

今回紹介させていただく漫画は『とつくにの少女』。
数多ある人外モノの中でも特に異彩を放つ作品。人外モノが苦手な人でも読めそうな絵本や童話感覚で楽しめるファンタジーになってます。

ふたつの隔たれた世界――。本来なら交わることのなかった幼き人間の少女と、異形の姿をした人外の者、ふたりが出会ったことで動き出したヒトと人成らざる者との御伽噺。
少女と人外のダークファンタジー。帯での謳い文句は「新たな人外×少女の物語、始まる――。」(1巻)、「これは絵本、これは童話、これは詩集。」(2巻)、「運命に翻弄される命ある者と、なき者」(3巻)。
作者は『部長はオネエ』で商業デビューした漫画家「ながべ」先生。

白と黒のコントラストが魅せる絵本的な御伽噺

こちら、魔法使いの嫁と比較されることが多い作品。手に取ったときは、かの作品の二番煎じぐらいにしか思ってなかったのですが、読んでみると萌え要素ほぼ無しの全く異なる内容。あえて似てる点をあげるなら、メインキャラである人外さんのデザインぐらい(主に頭部)。

人間の領域である「内つ国」と、タイトルにもなっている異形の者の領域「外つ国」、このふたつの国が壁によって隔てられている世界。
内の者は外の者がもたらす呪いを恐れ、少しでも疑いある者は処分されてしまう闇を抱えています。

主人公は、本来内の者が立ち入ることのない外つ国で暮らしていながら、呪いを受けていない人間の少女・シーヴァ。そして彼女の保護者的存在である呪いを受けた異形の者・せんせい。
この物語は、肌でふれあえない二人の心の交流を描いた切なくも優しい御伽噺のようなお話になっています。

背景にしろキャラクターにしろ「黒」(ベタ)を多く使い、それによって対照的な「白」がよく栄えて見え、またそのおかげで闇に溶け込みそうな「黒」の印象も高まっているのが特徴。
黒と白、このモノトーンのコントラストが幻想的で独特な世界観を演出し、さながら「絵本」を見ているかのような不思議な感覚に包まれることになります。

あと、今更なこと、感想書いてるときに気づいたことがひとつ。この作品、漫画制作で用いられることの多いスピード線とか集中線といった「効果線」、つまり人や物の動作を引き立てる線が全く引かれて無かったことに今やっと気がつきました。ほんと今更・・・。
巧みな画力と表現力によって想像を掻き立てられるようです。こういった作者さんのこだわりが、漫画でありながら絵本のように見える作品に仕上がっているのでしょうね。

「呪い」とは?

本作で気になる事と言えば、やはり外の者がもたらす「呪い」。

人間は外の者にふれられると呪いをうつされてしまいます。そうなると、物の感触も温度も感じられなくなり、そのうち食事も睡眠も必要なくなり、徐々にあらゆる感覚を失っていき、終いには彼らと同じような黒く染まった異形の姿へと変異してしまいます。
ただ、これはあくまで「せんせい」の体に起こったことを基にした例です。

はっきり言って現時点では謎が深まるばかり。

せんせいを「よそ者」と呼ぶもとから外つ国にいたと思われる外の者。彼らが言う「魂」、「おかあさん」とは何なのか。呪いは外の者がかけたのではなく、内の者のせいだと言い、とく方法は「奪われた魂を取り返す」こと。
外つ国とは黄泉の国のようなもので、内つ国は現世のようにも見えます。呪いを受けた者は「命無き者」なのでしょう。だからこそ空っぽじゃない魂を求めてやまないのかも。

分からないと言えばせんせい自身のことも。いったいその正体は誰なのか。いつ、どこで、誰に呪いを移され、今の姿になってしまったのか。そして、シーヴァとの関係は?
さらにさらに、そのシーヴァもこれまでは普通の人間の少女だと思っていたら、実はおばさんが外つ国で拾ってきた子だと言うからもう何が何やら・・・。

いつも絶妙なところで終わるから歯がゆい。引きが上手いのも困りどころですね。

ダークな世界観に温もりを灯す“やさしさ”

さて、全体的にダークな空気が漂っている世界観とストーリーですが、この作品におけるテーマのひとつは「やさしさ」であることは間違いありません。

シーヴァを守ろうとするせんせいのやさしさ、シーヴァの無垢で無邪気なありのままのやさしさ。

せんせいはシーヴァを傷つけようとする者から、呪いを移す外の者からはもちろんのこと、自分からも彼女を守ろうとしています。
せんせいも外の者であることに変わりなく、ふれてしまったらシーヴァが呪われてしまいます。手を繋ぎながら歩いてあげたくても、頭をなでてあげたくても、抱きしめてあげたくても、決してふれようとはしません。大切だからこそ直接的なふれあいはせず、加えて真実を隠したやさしい嘘もつく。

とても残酷なことではありますし、二人でいても孤独を感じてしまうことから寂しくも感じます。ただ、直接的なふれあいがないからこそ言葉と心でのふれあいは意味も効果も大きく、この世界の中で確かな温もりを感じることができ、その様子は穏やかで微笑ましい光景に見えました。

また、シーヴァの無垢な姿にも和ませてもらえます。あの無邪気さはせんせいにとっても救いになっていることが伺え、父と娘のようなかけがえのない存在になっていそうですね。
暗い影はいつだって彼等に付き纏っていますが、あの笑顔だけは是非とも守ってほしいものです。

最後に

といった感じで、絵本のように読める人外と少女の交流を描いた御伽噺『とつくにの少女』の紹介でした。万人受けはしないでしょうし、アニメ化もまず無いでしょうが、他の作品にはない魅力と不思議で彩られていますので、好きな人はハマってしまうこと請け合い。
ストーリー、キャラクター、世界観、どの要素からもダークな雰囲気が放たれ、そしてどの要素からも「やさしさ」を感じることが出来る内容になってます。
2人の行き着く先は残酷な未来を予感させられる要素が多くあります。しかし、出来ることなら手を取り合って歩く2人の姿を見たい、そう願わずにはいられません。
どういった方におすすめすればいいのかはちょっと困るところ。ただ、個人的には先が気になって仕方ないとても気に入ってる作品なので、よければ読んでみてください。あえて自信を持っておすすめさせていただきます。

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2017年07月05日

【ソマリと森の神様】マンガ 感想&あらすじ 「人外の父」と「人間の娘」の絆を深める旅の記録を描いた擬似家族ファンタジー

WEBコミックぜにょん。2015年4月26日から連載中。既刊3巻
作者:暮石ヤコ



あらすじ

森の中で私はそれ≠ニ出会った。それ(人間)は、わたし(ゴーレム)を父と呼んだ――。

太古の時代に起きた人間と人外との争い。勝利した人外は地上を支配するようになり、あっさり敗北した人間はヒト狩りによって愛玩用・食用として捕獲され、現在では絶滅の危機に瀕していた。

ある日のこと、森の“守り人”と称される「ゴーレム」は自身が守護する森の中で、首輪と足枷を付けられて放置されていた人間の幼い少女と出会う。
その子はゴーレムの姿を目にすると、なぜか嬉しそうな笑顔を浮かべて「おとうさん」と呼びかけてきた。

人間が生きるには過酷な世界で、ゴーレムは彼女の両親を見つけて手渡すため、少女の手を引き旅に出る。滅びに瀕した種族である人間の少女・ソマリと、活動を停止させようとしているゴーレムは、旅の中で父娘としての絆を深めていく。

登場人物

ネタバレも含まれているので注意

・ソマリ
主人公。種族「人間」。6歳か7歳ぐらい。
ゴーレムが守り人をしていた森に首輪と足枷を付けられて放置されていた少女(?)で、彼を見るなり「おとうさん」と呼びました。普段は角の付いたフードを被って人間だということを隠し、「牛角(ミノタウロス)」に属する種族と偽って旅をしています。ゴーレムの寿命が残りわずかだということは知らされておらず、これからもずっと一緒にいたいと思っています。
食いしん坊で旅先の料理に目がなく、美味しいメシを食べると無邪気にはしゃぐ。あと、モフモフが好きなので、そのような種族や動物に出会うと、嬉しそうに撫でたり抱きついたりします。

・ゴーレム
主人公。種族「ゴーレム」。ソマリからは「おとうさん」と呼ばれています。
清浄で神聖な森を守る丁度1000年生きる長命な種族。森を守る為に生きる“守り人”の中でも、特にゴーレムは神話じみた存在とされるほど珍しい。普通の食事をとる必要はなく、酸素・日光・水さえあれば活動可能。顔には大きな目が一つあって、万物の構成物質が視て分かります。動物との意思疎通も可能。あと1年と少しで活動停止することから、ソマリの両親を探し出して引き渡すために旅へ出ました。
ゴーレムなので感情はありませんでしたが、ソマリとの旅を通して様々な感情を学び、次第に本当の父娘のようになっていきます。

・ザザ
種族「人間」。
とある森の守り人が死に絶えた“終わりの森”に1人で住んでいる高齢の男性。元々は生き延びた人間が寄せ集まった村で母と2人で暮らしていましたが、ヒト狩りに見つかったことで母とも会えなくなり、その後は旅人として生きていました。隠れて生きることに疲れ果て、人外があまり寄り付かない現在住んでいる森を見つけて定住。安心

・シズノ/ヤバシラ
種族「鬼」
小鬼のシズノは薬師を生業とし、鬼のヤバシラは助手兼家政婦的存在。薬草の採取が便利なことから街を離れて森で暮らしています。ゴーレムの体の一部と交換に薬作りを伝授してもらいました。心配

・イゾルダ・ネヴゾルフ
種族「魔女」
魔女の村にある世界中のありとあらゆる本が保管されている「魔女印図書館」の館長。彼女の高祖母・フェオドラが見聞き体験した人間とハライソと呼ばれるゴーレムとの交流を、人間と多種族がゆっくり歩み寄れるようにと本にすることを禁じて口伝によって代々伝えられていましたが、その意図に気づかず「ハライソの伝記」と「ハライソの調書」の2冊の本を作成。人間と人外が交流を始めた時代に盗まれた「ハライソの調書」が歩き渡り、このことが原因で人間を死に追いやったとのではないかと罪の意識を背負って生きていました。彼女の勧めでソマリとゴーレムは地図の途切れた最果ての地を目指すことに。

・キキーラ
種族「ムク毛シュリガラ族」
アリの巣のように入り組んだ繁華街「アリの穴街」で出会った少年で、ソマリにとっては初めて出来たモフモフな友人。ソマリのゴーレムとずっと一緒いたいという願いを叶えるため、枯らさず持ち帰れば願いが叶うと言い伝えられている“夜覚めの花”のことを教え、危険な地下へ一緒に探しにいきます。結構やんちゃ。

・ウゾイ/ハイトラ
種族:ウゾイは「ハラピュイア」。ハイトラは鳥の頭をした「ファルコホル」を名乗っていますが、実は「人間」。
砂漠越えをしているときに立ち寄ったサカズキ村で出会った2人組。ハイトラの病を治す薬を探して旅をしています。ウゾイは人間であるソマリの血ならハイトラの病を治せるのではないかと考え、攫って血を奪おうとしましたが、結局仲良くなったソマリを傷つけることはできませんでした。


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感想・見所

異形の人外が地上を支配する世界で、滅びに向かう種族「人間」の少女と、彼女を拾った森の番人であるゴーレムが、少女の両親を探す中で父娘の絆を深めていく旅の記録を綴った物語。
人外×少女の擬似家族ファンタジー。『魔法使いの嫁』で知られる漫画家・ヤマザキコレさんも推薦されている作品です。
作者は新鋭漫画家・暮石ヤコさん。当初はサスペンス設定で制作されていましたが、作者の画力を活かすためにファンタジーへ方向転換したそうです。

独特の設定と世界観、様々な種族からなる個性豊かなキャラクター、息を呑む美麗な絵、心がワクワクするストーリー。このような現実ではまずありえない魅力を放つファンタジー作品は、個人的にも子供のころからのめり込んできた大好きなジャンル。その世界に浸っていると、自分の創造や夢がどこまでも広がっていきそうな気さえします。
最近では『魔法使いの嫁』、『ハクメイとミコチ』、『とんがり帽子のアトリエ』など、若干呆れるほど(誉め言葉として)細かく丁寧に描き込まれた絵や、作り込まれた世界観で魅せるファンタジー作品が多くて嬉しい限り。漫画として読み終えた後に絵だけを眺めてみたり、設定や世界観を確認してみたりと、2度3度度読み返したくなる面白さがそれらにはあります。
今回紹介させていただく『ソマリと森の神様』も、とても美しい絵で描かれたファンタジー作品。絵だけではなく、ストーリーやキャラクターの心情にも美しさが溢れてる内容になってます。

「異形の父」と「人間の娘」の絆を描いた御伽物語

作品の舞台は、人間との戦争にあっさり勝利した人外が地上を支配し、敗れた人間は迫害を受けたことで絶滅に瀕している世界。
そんな世界で、1000年の寿命を終えようとしている森の守り人であるゴーレム(998歳)と、彼(?)に拾われた人間の少女・ソマリ(6〜7歳)が、両親を探す中で多種多様な人外や僅かに生き残っている人間と出会い、様々の経験を通して父娘としての絆を深めていく旅の記録を綴った御伽物語

ここ数年でいっきに数を増やしてきた人気ジャンル、人間の少女と異形の人外との交流を描いた作品。この作品では種族の壁を超えた父と娘の「親子愛」をテーマにしています。
中心は、少女と出会うまでは余計な感情を持っていなかったゴーレムと、彼を“おとうさん”と呼び慕う少女・ソマリ。現状この2人意外のキャラがレギュラー登場することはなく、エピソードごとに別れありきの出会いを繰り返すという構成。

かつては人外が人間を狩りの対象とし、食用にしたり、ペットにしていたというダークな設定をしていますが、グロい描写は全くなく、バトルも極稀にゴーレムがソマリを守るために戦うだけでほとんどありません。全体的にはほのぼのファンタジーといった感じで、優しさと切なさのあるストーリーと、穏やかな雰囲気、それからソマリの愛らしさを楽しむ漫画だと思います。

圧倒的な画力で描き込まれている美しい世界観

何より素晴らしいのは、丁寧に描き込まれている一切妥協がない精緻で美しい絵
表紙イラストだけはよく出来ていて中身が残念な詐欺のような作品もたまにありますが、この作品に関してはどのページを捲っても、どのコマを覗いても、全く手抜きのない綺麗な絵を見ることができます。
様々な種族、動物、建築物、道具、洋服、そして川や森や砂漠などの雄大な自然背景など、どの描き込みも凄いの一言。ファンタジーらしい幻想的な描写がこれまた美しく、絵を見るだけでも価値はありそうです。

描き込みが凄ければ上手いと言うつもりはありませんし、絵も緩めるところは必要だと思いますが、個人的にはファンタジー作品の作画はどちらかと言うと密度が濃い方が好きです。本来は現実のどこにも存在しない作者の頭の中にある世界なので、しつこいぐらい描き込んでくれてる方が世界観を理解しやすいかなと。もちろんそれが全てではなくですけどね。

旅の中で芽生える感情と育まれる父娘愛

本来は感情のない機械的な存在であるのがゴーレムという種族。当然表情の変化なんてありませんし、行動は合理的で遊び心はなく、言動も若干堅苦しいです。まあ、他者とふれあうことのない森にいたのだから語彙が乏しいのもある意味では当然なのかな。

そんなゴーレムがソマリとの旅で変化を見せるようになりました。様々な出来事や出会いを経験していくなかで、最初は「安心」を、次に「心配」をといったように、少しずつ感情を知るようになり、ゴーレム自身にも感情が芽生え出しているように見えます。
当初は「余分な感情は備わっていない」という言葉通りの受け答えや行動しかしていませんでしたが、ソマリのことを本気で心配する様子を見せ、自身の変化に若干戸惑いはありながらも、確実に父性が目覚めているゴーレム。ソマリも彼のことを「おとうさん」と慕ってずっといっしょに居たいと願ってます。
今のほのぼの感が心地良いだけに、この先の別れを思うと本当に切ない気持ちになります。

最後に

ということで、幼い人間の少女と人外が父娘の愛を深める旅の記録を描いた『ソマリと森の神様』の紹介でした。謎はありますけどそれほど深く考察する必要はなく、テンポも悪くないのでとても読みやすい作品だったと思います。
最たる魅力は絵の美しさでしょうが、父性を持ち始めたゴーレムがソマリのことを大切に想う心も非常に美しかったです。少しずつでも着実に別れが近づいていることは切なさを感じますが、親子のように一緒に旅をする様子はとても温かい気持ちにもさせてもらえます。
手を繋いで旅をするソマリとゴーレムの姿が印象的で、その光景を見てると、この先に待つ旅の終わりは2人にとって良い形になって欲しい、そう心の中で祈らずにはいられません。
ファンタジー好きや、丁寧に描きこまれた絵が好きな方なら楽しめると思いますので、よければ読んでみてください。自信を持っておすすめさせていただきます。

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2017年04月19日

【かつて神だった獣たちへ】マンガ 感想&あらすじ 心を無くしたかつての戦友を葬る哀悼の旅を描いたダークファンタジー

別冊少年マガジン。2014年7月号より連載中。既刊5巻
著者:めいびい
他作品:黄昏乙女×アムネジア



あらすじ

国土を二分する内戦が長く続いた時代。劣勢に追い込まれた北部が現状打開のために戦場へ送り出したのは、禁忌の技術を用いて生み出された異形の兵士たち――その名も「擬神兵(ぎしんへい)」。

人の姿と引き換えに得た人智を超えた圧倒的な力を振るい、擬神兵部隊は戦乱の国を和平へと導いていく。人々から“神”とまで称えられ、戦争終結の立役者として英雄になった擬神兵たち。しかし、平和な時代に彼等の居場所はどこにもなく、神の力に心を蝕まれた擬神兵たちの中には各地で問題を起こす者まで現れ、いつしか“獣”と呼ばれる存在に・・・。

ある者によって解き放たれた擬神兵を殺すことを目的に、旅を続けている”獣狩り”のハンク。擬神兵だった父を殺された少女・シャールは、父が殺されるべきだったのかを自分の目で確かめるため、ハンクの旅について行くことを決意した。

かつての戦友をその手で葬るため、ハンクは約束と悲しみを胸に、異形の者を駆り続ける旅路を歩んでいく。

主要登場人物

・ハンク・ヘンリエット
主人公。擬神兵「ウェアウルフ」。かつて擬神兵部隊の隊長を務めていた男性。軍での階級「特技曹長」。「心無くした者は仲間の手で葬る」という部隊員たちとの約束を胸に、各地で問題を起している擬神兵たちを殺し続け、いつしか「獣狩り」と呼ばれるようになりました。数少ない人と獣を行き来できる擬神兵で、夜の間だけ真価を発揮できる稀有な特性の持ち主。夜になると普段の黒髪が白髪になります。擬神兵としての姿は人間より少し大きい狼男ですが、本来の姿は巨大な狼。力を使う度に獣になっていくこと、そして約束を果たせなくなることを恐れ、仲間のことを覚えたまま死にたいと思っています。シャールに欲しかった言葉を貰えたこと、彼女との約束によって、深い苦しみと迷いから立ち直りました。

・ナンシー・シャール・バンクロフト
もう1人の主人公。ハンクと一緒に旅をしているおさげ髪の少女。父親・ウィルはかつてハンクの部下だった擬神兵「ニーズヘッグ」。父の仇であるハンクを見つけて殺すつもりでしたが、父の死の意味を知るために彼の旅へ同行することを決意。父の形見である像撃ち銃とティーセットを常に携帯。父の、そして擬神兵たちの最後の望みと言葉を知りたいと思っています。擬神兵たちを想い、彼らは神でも獣でもなく人間だと思っている優しい子。旅を通じてハンクは擬神兵たちの想いを守るために彼らを葬っていることに気づきました。人でなくなることを恐れるハンクに対して、獣になってしまったときは自分が人として殺すことを約束し、ハンクの迷いを晴らしました。

・ライザ・ルネキャッスル
軍の情報局戦後処理部に所属し、ハンクのサポートをしている女性。軍での階級「少尉」。金髪でナイスバディな体型をしているお色気お姉さん。ハンクが必要とする様々な情報や物資の調達をして後方サポートをしてくれる人物。ハンクに気があるようで、シャールにも対抗意識を燃やしていましたが、「男は顔とステータスがあればそれでいい」と堂々宣言。

・エレイン
擬神兵を生み出した技術者の女性。戦争終結間近、平和な世界に自分たちの居場所はないと語り、擬神兵たちが心を失う前に命を奪うことが自分の責任であるとし、ハンクに銃を向けました。協力者だったはずのケインに撃たれ行方不明とされていましたが、ケインの元で体が保管されていることが判明。生死は不明。シャールと同じ青い瞳をしています。ハンクのことをを愛していました。

・ケイン・マッドハウス
かつてのハンクの友人であり、擬神兵部隊の副隊長だった男性。擬神兵「ヴァンパイア」。血と夜をつかさどる不死の存在であり、驚異的な再生力の持ち主。この世界に獣を解き放った張本人でもあります。常にある幼い少女を隣に連れています。元は名門貴族のお坊ちゃん。友人であったエレインの計画に協力するフリをし、彼女を銃で撃ちました。戦後の待遇に不満を感じていた軍人・南部貴族、貧困に喘いでいた市民を扇動し、彼が率いる擬神兵たちと共に自由国家「新パトリア」を建国。元の名は「ケイン・ウィザース」。

クロード・ウィザース
パトリア連邦中央政府が設立した擬神兵討伐部隊「クーデグラース」隊長。軍での階級は「少佐」。パトリア連邦大統領の息子で、新パトリアを建国した擬神兵・ケイン・マッドハウスの弟。生真面目で使命感と責任感が強く、部下思いの青年。ハンクも討伐対象でしたが、使命を果たすために彼と共闘する道を選びました。



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感想・見所

かつて英雄と讃えられていた異形の兵士たちが平和な世界で居場所を無くし、心を蝕まれたことによって中には人々に害なす獣に成り下がった者まで現れ、そんな異形の戦友たちを葬るために旅を続ける元隊長の男と、彼に粛正された父を持つ少女、そして悲しみを抱える異形の者たちを巡る物語。
愛と暴力の旅路を描いたダークファンタジー作品。著者は『黄昏乙女×アムネジア』、『結婚指輪物語』で有名な男性2人組の漫画家・めいびいさん。タイトル上げた作品はシリアスとコメディのバランス良い作品ですが、この作品はほぼシリアスの内容。

基本重苦しい雰囲気で描かれるダークファンタジー。コメディ要素は薄く、残酷・凄惨な描写が目立ち、悲劇的な展開と結末を迎える作品も多いですね。ハッピーエンドで終わる作品もなかにはありませんが、誰も彼もが救われて皆ハッピーな展開になることはほとんどなく、目を背けたくなるようなグロシーンも多様することから、結構好き嫌いも分かれるジャンルだと思います。
『ベルセルク』や『CLAYMORE』、『ユーベルブラット』あたりが有名ですね。最近では『銀狼ブラッドボーン』も個人的には好きな漫画。
今回紹介させていただく『かつて神だった獣たち』もダークファンタジーに分類される1つ。少し重いテーマとストーリー展開を見せ、残酷で切ないシーンも多く描かれますが、優しさと愛も強く感じられる内容で、結末が非常に気になる作品になってます。

かつては「神」、平和な世では「獣」、人生を翻弄された異形の者たちを巡る物語

北部と南部で国を二分した内戦が長く続いた時代、劣勢に追いやられた北部が禁忌の技術をもって生み出したのが、異形の兵士「擬神兵(ぎしんへい)」。怪物と化した擬神兵は、人の姿を捨てる代わりに得た神にも喩えられるほどの強大な力を振るい、内戦を和平へと導いていきました。
だが、戦時下では神と称えられていた擬神兵も、平和な世では“獣”として畏怖される存在に・・・。そして、「獣狩り」と呼ばれる男・ハンクは心を無くした彼らを葬り続け、彼の前にかつて殺した擬神兵の娘・シャールが現れました。
この作品は、暴力と哀悼の旅を続けるハンクの物語であり、父の仇である彼の旅に同行しながら擬神兵の心にふれていくシャールの物語であり、神の力に翻弄された擬神兵たちの物語でもあります。
コメディ色はほとんどなく、全体的に悲しみと切なさを多く含んだシリアス重視の内容で、グロテスクな描写も少なくはないです。1巻はシャールが仇であるはずのハンクの旅に同行する件など、若干あっさり感はありましたが、巻を重ねるごとにストーリーは大きくなり、盛り上がりと共に読み応えも増してると思います。

悲しみを抱く擬神兵を通して見る人間の弱さ

家族や国のために人の姿を捨ててまで戦い続けたにも関わらず、戦争が終われば守ってきた人々から獣扱いされる擬神兵。神の力が敵に向いているときは彼らを賛美し、手に負えなくなれば畏怖し粛正しようとするなど、人間の心の弱さと醜さが嫌ってほど伝わってきます。現実にも通じるものがあるような気もします。
擬神兵たちとて例外ではなく、たとえその身に神の力を宿したところで、心は人間のまま。精神は力に飲み込まれ、心の抑制は次第に外れていき、自らが叶えたい望みのままに行動するようになったことで、人々からさらに恐れられるようになります。ただ、その多くは本当にささいな願望。「居場所を失いたくない」「見たい景色がある」「歌を聴いて欲しい」「安心したい」。力の代わりに失ってしまったものを取り戻すため、制御を失いながらも望みに執着する彼らを見ていると、切なさと悲しみで胸がいっぱいになります。敵だとしても憎むことはできません。
そして、彼らは自分たちを葬るハンクに対して恨みを言うことはなく、あるのは哀しみと解放。

想いを守るために戦い続ける哀悼の旅

擬神兵部隊を率いていた隊長でありながら、戦友を殺し続けていく男・ハンク。ただ、裏切り者・ケインに対してはさすがに恨みもあるのでしょうが、それ以外の擬神兵たちに対して恨みや憎しみはなく、かつて仲間たちと交わした「心無くした者は仲間の手で葬る」という約束を果たすべく、シャールたちと出会うまで1人旅を続けていました。
ハンクは仲間たちが抱いていた大切な想いを、他でもない心を失ってしまった自分たちの手で壊してしまわないように、それを守るために悲しみならがも葬っていたんですね。
はっきり言って、やりきれない気持ちになる結末ばかりです。しかし、だからこそ寄り添ってくれる人の温かさ、愛情、優しさも強く伝わってくる内容だったと思います。

最後に

ということで、人の弱さ、愚かさ、愛情を描いたダークファンタジー作品でした。おすすめしといてなんですが、間違いなく万人受けするような作品ではないですね。好きになった人はとことんハマるタイプかと。
特に序盤のエピソードは短くても綺麗にまとめられ、テンポ良く進行しています。人によってはあっさりし過ぎと感じるかもしれませんが、ストーリーが進んでいくと話も大きくなり、丁寧な描写も増えて深みと厚みも出ていたと思います。画力に関しては申し分なく、キャラクター、背景、バトル描写、どれも見事でした。中でもシャールの可愛さは必見。
切なくも熱く、胸に刺さる内容で、結末が非常に気になる作品。切ない話やダークファンタジー系が好きな人なら楽しめると思いますので、よければ読んでみてください。おすすめさせていだきます。



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プロフィール
ハネ吉さんの画像
ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
プロフィール
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