2019年10月25日
【パックンコラム】裏切られ続けるクルド人の苦境に思うこと
【パックンコラム】裏切られ続けるクルド人の苦境に思うこと
〜ニューズウィーク日本版 10/24(木) 18:24配信〜
トルコ軍の攻撃を逃れてシェルターに避難したクルド人の母子 Muhammad Hamed-REUTERS
〜アメリカがクルド人を利用しては見捨てる・・・と云う歴史の繰り返しの中でも、今回のトランプ大統領の裏切りは特に酷い〜
パックン(パトリック・ハーラン)
「日本人に生まれて好かったナ〜」と思う瞬間はありますか? 温泉に浸かってアニメを観ながら、豚骨ラーメンを召し上がる時とか?では、逆に「〇〇人に生まれ無くて好かったナ〜」と思う瞬間は?
僕は、ニュースを見てそう思う事は多い。特に最近だと「クルド人に生まれ無くて、本当に好かった」とばかり思って居る。
多少失礼な言い方だが、貶(けな)す積りは全く無い。主にイラン・イラク・トルコ・シリアの国境地帯に住む山岳民族のクルド人は、独自の文化・立派な伝統芸能や音楽・文学を持って居る。ノーベル平和賞受賞者や世界一の水切りヨーグルトのメーカーの創立者等、世界に貢献して居る著名なクルド人も居る。勿論、クルド人に生まれた為らば、それを「好かったナ〜」とキット思う筈だ。
でも、苦境に置かれて居るのは間違い無い。ナンせ、世界一のSTATELESS NATION詰まり、国を持た無い民族だからだ。
勿論、クルド人は自分の国が欲しいと思って居る。その名も「クルディスタン」今のシリア・トルコ・イラン・イラクの4カ国に跨ったエリアの理想の国に為るなら、その面積は39万平方キロでクルディスタンは日本より大きい。世界に拡散して居るクルド人を国民として集められれば、その人数は3500万人。
クルド人はマレーシア人より多い。更に、食べた事は無いが断言させて貰えれば、クルド料理はイギリス料理より美味しい。
ナンで国が無いのか?理由は複数あるが、大国の裏切りが大きな要因と為る。19世紀から自国創立を求める運動を起こしたクルド人は、第一次大戦でイギリス軍やロシア軍と共に、その地域を支配して居たオスマン帝国対戦に参加した。
そのご褒美も含め、イギリスは終戦後のセーブル条約(オスマン帝国の分割案が定められた)で、将来クルディスタンを建国させる約束をした。ナノに裏切った。
分断されたママのクルド人は、それからも、主にアメリカに利用されては見捨てられる。例えばアメリカは、イラク政府と敵対するとクルド人の民兵を武装して、政府への抵抗を勧める。しかし、自分達の目的が達成出来ると、イラク政府から反撃を受けたクルド人が虐殺されてもアメリカは動か無い。
この悲劇はジョンソン政権の時にも、ニクソン政権の時にも、レーガン政権の時にも、ブッシュ・パパ政権の時にも起きて居る。
クリントン政権の時は、トルコ政府がトルコ国内のクルド人を、ブッシュ・ジュニア政権の時は、矢張りトルコ政府がイラク国内のクルド人を攻撃して大勢殺しても止め無かった。
アメリカの民主党と共和党はドンな課題においても対立する、両党の支持者が居ると夜ご飯を喧嘩せずに食べる事すら出来無いのに「クルド人を守ら無い」と云う点においてだけ仲良く一致して居るね。
アメリカ人に生まれ無くて好かった?
そんな悲惨な歴史の中でも、今回の裏切りは特に酷い。2014年にアメリカは、テロ組織ISIS(自称イスラム国)の支配圏拡大を止めるべく、又もクルド人の協力を要求。武器と金を渡し訓練と後方支援を行ったが、戦闘自体は殆どクルド人が担当し、犠牲もクルド人が負った。
ISIS対戦で亡く為ったアメリカ兵は200人以下の処、命を落としたクルド人は1万1000人にも上る。そして、高く点いたが、勝利は出来た。全ての領土を奪還した後、ドナルド・トランプ米大統領が2018年12月に「僕等はISISに勝った」と宣言したが、その時の「僕等」と云うのはクルド人を差して居る筈だ。
そして、そんなトランプが、そんな「僕等」を又裏切った。10月6日に、トルコのエルドアン大統領と電話会談した後、シリアからの米軍撤退を発表し、側近や専門家の反対を押し切って実施。すると、誰もが予測した事・・・最悪の展開が起きた。
トルコ軍がシリア北部のクルド自治区に侵攻した。トルコ系の民兵がクルド人の市民を殺した。クルド難民が大勢逃げた。クルド人の女性政治家が車から引き降ろされ射殺された。収容所からISIS戦闘員や関係者が逃走した。
この5年間で大量の血を流して勝ち取った自由・自治・領土・安全・平和が一瞬にして取り消された。失礼ながら、このニュースを見て、マタマタ「クルド人に生まれ無くて好かったナ〜」と思った。
多大な代償を払いながら戦って呉れた仲間を裏切った大統領。対立国のシリア・イラン・ロシア、そして反米テロ組織のISISを利する決断を衝動的にした大統領。その後の残酷な結果を見ても、トルコの侵略を認める形の作戦一時停止に合意して「クルド人は大喜びだ」「文明に取って最高の日だ」と豪語した大統領。
そんな、非道徳的で無知なトランプ大統領を見た時も、マタマタ「アメリカ人に生まれ無くて好かったナ〜」とも思った。アァー・・・!
パックン(パトリック・ハーラン)
【関連報道】クルド人を見捨てたのはアメリカだけでは無い
〜ニューズウィーク日本版 六辻彰二 2019年10月17日(木)15時20分〜
〜アメリカが裏切ったと言われるが、シリアもロシアもイランもトルコも、クルド人は「消滅」した前提でシリア内戦後の未来図を描いて居る〜
・トルコは、シリアのクルド人の独立運動がトルコのクルド人を触発する事を恐れシリアに軍事侵攻した
・これに対して、シリア政府やこれを支援するロシアも、トルコを批判し衝突の危機も指摘されて居る
・しかし、トルコによる攻撃でクルド人がシリア政府やロシアの保護下に入った事は、これ等各国に取っても利益と為る
いよいよトルコ軍がシリア領内に入り、クルド人と衝突し始めたが、クルド人を殲滅させる程徹底的な攻撃は想定出来無い。寧ろ、トルコの攻撃を恐れてクルド人がシリア軍やロシアに接近した事で、トルコの最優先の目標は既に達成されて居り、適当な処で矛を収める公算が高い。
予期されて居たクルド攻撃
日本のメディアでは、10月10日からのトルコ軍による攻撃がマルで突然始まったかの様に報じられ易いが、筆者がこれ迄度々取り上げて来た様に、クルド攻撃は予て予期されて居た事だ。
シリアの少数民族クルド人の組織「人民防衛部隊」(YPG)は、2011年からのシリア内戦で勢力を伸ばし「イスラーム国(IS)からの防衛」を大義名分にシリア北部を制圧した。元々クルド人はシリアからの分離独立を目指して居り、言わば内戦の混乱の中で本来の目標に近い状態を作り出したのだ。
しかしこれは、シリア政府だけで無くトルコ政府に取っても無視出来無い。クルド人はトルコ国内にも居り、矢張り分離独立を目指して居る。シリアのクルド人が半ば独立する事は、トルコのクルド人を触発し兼ねない。
この危機感の元、トルコ軍はこれ迄も屡々シリアに侵入し、ISだけで無くYPGとも衝突。一方、NATO同盟国のアメリカはIS対策としてだけで無く、元々関係の悪かったアサド大統領率いるシリア政府を封じ込める為にYPGを支援し(シリア政府の許可の無いまま)アメリカ軍をシリアに駐留させて来たが、トルコ政府はこれを繰り返し批判して来た。
シリアから引き揚げたいアメリカ
そのトルコのクルド攻撃を後押ししたのは、トランプ大統領だった。シリア撤退を大統領選の公約にして居たトランプ氏は、以前から度々撤退を示唆して来た。マティス国防長官やボルトン大統領補佐官など、これに抵抗する高官は相次いで政権を去った。
こうして反対派を排除したトランプ政権は、トルコ軍の進撃に合わせ、13日にシリアから1000人のアメリカ兵を撤退させる方針を発表。シリア内戦で利用して来たクルド人を見限ったと云う悪評を避ける為「同盟国(トルコ)と戦争は出来無い」「トルコには制裁を加える」と息巻いて居るが、トランプ氏とトルコのエルドアン大統領に利害の一致があった事は確かだろう。
以下 略 以上
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