明治維新150年　何故今更西郷さん? 　その4　その5: 素敵な「自転車と家庭水族館」

<< 2022年02月 >>
日	月	火	水	木	金	土
		1	2	3	4	5
6	7	8	9	10	11	12
13	14	15	16	17	18	19
20	21	22	23	24	25	26
27	28

2018年06月19日

明治維新150年　何故今更西郷さん? 　その4　その5

　　　　　　　　　　先崎彰容氏

　その4　西郷の中に潜む「日本人を知る為の何か」

送料千円値引【GT】（ジーティー）2018 フューリープロ（1x7s）MTB27.5”【マウンテンバイク】【自転車完成車】【日時指定・代引き不可】 MTB-27

価格:498,578円
(2018/6/19 17:16時点)
感想(0件)

　片山　本書では、司馬遼太郎を終章に持って来て、それが読者への一つの謎掛けの様にも読めたのですが、司馬を通して先崎さんが問いたかった事は？

　先崎　先ず驚いたのは、三島由紀夫も江藤淳も司馬遼太郎も皆、眼前の「五十五年体制」を批判する際西郷に言及して居る事です。司馬が西郷を評価して居なかった事は比較的知られて居ると思いますが、同時に大久保利通の作る官僚組織に付いても懐疑的だった。大久保に理想の国家像を仮託出来無い。でもそれに対する反旗の翻し方が征韓論や西南戦争では困るのです。
　司馬は征韓論を、本来冷静に対処すべき「外交」に民族的な対立意識の情念を持ち込んだ最初の事例だと批判して居ます。と同時に、西南戦争に付いても最初から敗北を分かって居ての無意味な戦争だったと辛口です。国内外の政治に於いて西郷にはリアリズムが足り無いと。そして司馬は、眼前の「55年体制」も叉何一つ変わって居ないではないかと言うのです。
　社会党は最初から政権交代等出来ないと分かって居て、無意味な自民党批判ばかり行って居る。叉外交で自民党を批判する際も近隣諸国との情念深いナショナリズムを焚き点けるだけで冷静な対応を目指さ無い。以上の司馬の西郷評価はとても合理的で納得出来るものです。しかし、と私は立ち止まりました。
　でも何故西郷の人気は衰え無いのか。そこには何か日本人が抱える思考と行動のあるパターンが読み取れるのではないか。国民作家と呼ばれる司馬ですら見落としてしまう「日本人を知る為の何か」が潜んで居るのではないかと。

　片山　そうですね。そうした思考展開に先崎さんの西郷ビイキとしての真骨頂がありましょうね。
　サテ、先崎さんが要領好くしかも厚く整理して下さっているので、江藤淳を含めた夫々が西郷に仮託した思想はとても好く分かります。しかし明治150年に、近代を一遍にヒックリ返す事は無理にしても、異議申し立ての思想的原基を西郷に求め続けるべきなのか。

　先崎　結論は出し難いのですが、何倮かの形で現状を変えたいと思う時、その方法論の幾つかのパターンが西郷を巡る思想の系譜に凝集されて居る事は確かだと思うんです。
　例えば橋川文三や島尾敏雄・吉本隆明は日本の近代化を天皇制国家であると定義し、その体制を相対化する手段として南島時代の西郷に注目した訳ですが、同時期の三島由紀夫は別の問題意識から西郷と天皇の関係に注目して居る。

送料無料ビアンキ(BIANCHI) マウンテンバイク JAB 27.5 Matt Black 【2018年モデル】【完全組立済自転車】【北海道、九州、沖縄、離島は送料別】

価格:121,066円
(2018/6/19 17:16時点)
感想(0件)

　三島に取って明治以来の近代化とは、天皇本来の在り方が失われて行く時代だった。三島に取って天皇とは日本文化を象徴する存在であって立憲政治に限定されては為ら無い。天皇は勅撰和歌集は勿論、叙事詩からセックスに至る人間の営み総体を抱擁し非合理な暗部に迄眼の届く存在であるべきだった。
　だから三島は、明治立憲体制に批判的で取り分け治安維持法が嫌いでした。何故なら治安維持法は共産主義者対策の法律である事から、日本の「国体」を資本主義だと言って居る・・・これが三島には我慢為ら無かった。そして理想の天皇像の復活を求めて1970年に割腹自殺をした訳です。明治以降の「近代」日本を呪い、天皇と天皇を愛した西郷の革命思想に期待を寄せたと云う訳です。
　詰り天皇を軸として観れば、橋川や島尾と三島由紀夫は正反対の立場に立って居る。でも彼等には共通点もある事に注意せねば為ら無い。彼等は総じて反近代の立場に立って居た。「西郷隆盛」を語る饒舌な議論の中に、日本の近代化の是非を問い質す発言の典型的なパターンが出揃って居る「事実」は、驚くべき事だと思います。
　私達が社会改革を云々する時西郷はその存在感を増して来るのは間違い無い。ここに福澤諭吉の情報革命に翻弄される西郷像、中江兆民の自由主義経済批判、更には頭山満の西郷思慕とテロリズムの発生を思い出せば、日本の近代化が生み出す諸問題の如何に多くが西郷に依って語り出せるかに改めて気づくと思うのです。
　「敬天愛人」を説く西郷の中に、近代を超克する「アジア主義」の一面と、真面目さ故の狭量さ暴力性が同居して居た。西郷の多様性を肯定すると同時に、西郷の中に或るキナ臭い部分も見詰め、危うさも含めた日本人の思考パターンを知る事は、今の世の中にも必要だと思って居ます。

　その5　150年の時間軸　死から生を問い直すべき時

　片山　その通りですね。しかしこの複雑化した現代社会で、福澤諭吉が理想とする様な情報の適正な流通が可能でしょうか。中江兆民の様に人間の欲望を儒教的な倫理に依って修正して経済の道徳化・公益本位・社会主義的な方向付けを目指すと云うのもどうでしょうね。
　既に歴史の中で試されシクジッテ居る事柄とも言え、今後に生かすのは難しい様に思ってしまいます。頭山が仮託したアジア主義思想も、西洋近代を相対化する為のカウンターとしては機能するけれど、民族の連帯が絵に描いた餅と云う事は・・・

　先崎　そうですね・・・屡々(しばしば)言われる様に、現代社会で包括的な改革案、世界観自体を問い直す具体的運動は困難なのでしょう。だから小規模な形での、しかも生活に密着した感じのする「もう一つの近代」を求める動きがある。「生活に密着した」と言ったのは、要するに政治的な匂いが少無いと云う意味です。
　例えば、有機栽培の食材を使ったレストランや地方都市で古民家カフェが注目を集めたりする事。叉物を持た無いシンプルな生活が返ってスタイリッシュに思えるのは、近代社会の価値観・通念に対する柔らかなアンチテーゼなのだと思います。
　それは何処か岡倉天心が過つて語った、インドの夕刻に木陰で人々が憩う光景に繋がる、近代的な速度から降りた生活感があります。アジアの原風景への衝動と云うか。資本主義の加速から降りると云う選択肢が今、経済成長の減速と共に意識されて居る。そしてその先駆者こそ西郷隆盛なのだ、西郷のアジア的で反西洋文明風の価値観なのだと云う事に為って来る。「もう一つの近代」の先駆者と云う記号として西郷はあるのです。

送料千円値引【8月下旬】【ANCHOR】(アンカー) 2018 RL9（DURA-ACE 2x11s）ロードバイク完成車【自転車完成車】2006106810077ブリヂストンアンカー BRIDGESTONE 202

価格:589,248円
(2018/6/19 17:17時点)
感想(0件)

　この本では、近代社会の弊害と共に、処方箋も示す様に心掛けましたが、福澤諭吉の場合、性急な改革と過剰な文明開化に精神的な安定を奪われ無い為の「地方自治」が処方箋と為ります。最近、東京一極集中型の社会から、地方へのシフトチェンジが語られる機会が増えて居ますよね。
　中江兆民の場合、過剰な自由主義経済化を戒め個人の欲望追求と他者との競争に明け暮れる状態を近代であるとし、理想の共同性を復活させる為に儒教道徳の「浩然の気」が処方されて居ます。ルソーの一般意志も叉、眼前の西洋社会が殺伐とした人間関係であり、その無秩序から理想の共同性を模索した書物だと、兆民は理解し評価して居たのです。これは現代で言うと、東浩紀さんの『一般意志2・0』の議論に重ねて考える事が出来るのかも知れません。
　東さんは、ネットを活用する事で政治参加をせずに引き籠って居る人々を連帯させて、政治的な一般意思を作る道を模索します。人と人がどうすれば社会に繋がれるのかは、兆民以来の課題な訳です。
　そして拙著『未完の西郷隆盛』の一応の結論は、西郷隆盛に私達は「政治家」以上のものを読み込んで来たのだ、それは西郷と云う人物の中にこの近代社会を生きて行く際の指針、少し大袈裟に言えば私達の死生観、理想の人間イメージを読み込んで来たのだと云うものです。

　近代150年は、富国強兵や高度成長と云った過剰な生の情熱が満ち満ちた時代でした。一方で、反乱、暗殺、戦争、テロ等過剰な暴力と死への憧れを生んだ時代でもありました。
　西郷は離島流罪時代に「生と死の論理は二つに分けられるものでは無い。これを呑み込む事が出来れば、あらゆる行為は天理から外れ無いのだ」と言っています。こうした死生観に支えられて幕末維新期を駆け抜けた西郷に、私達は何か政治家以上のものを嗅ぎ着け憧れて居るのではないか。
　私達が生きる近代社会が排除し続けて来たもの、徹底して眼を逸らして来た死の匂いを西郷に嗅ぎ当てて居るのではないか。テロや暴力と云った過剰な形で日常生活に死を呼び込むのでは無く、どう生と死を等分に見渡せる価値観を取り戻せるのか。キナ臭い形では無い生と死の共存は、現代社会であり得るのかと。

　つづく