2018年06月08日
モンゴル異聞 その1
モンゴル異聞 その1
世界初の生物兵器が ルネサンスを高揚する から引用してます・・・
クリミア半島その昔、中央アジアのクリミア半島にカッファ（現フォドシア）と云う町がありました。この街はアシュケナジム系ユダヤ人の源流と言われるハザール王国の都市でしたが、ハザールがモンゴル帝国（キプチャク汗国）に滅ぼされた後も、ユダヤ商人の経済力をバックにイタリアのジェノバやベネチアとの貿易で栄え、軍事的にはジェノバの後押しも得て黒海最大の貿易港として繁栄を続けて居ました。
勿論、この繁栄をモンゴル人が見過ごす筈はありません。1346年キプチャク汗国の皇帝ジャニベク・ハーン率いる大軍がカッファの街を包囲したのです。しかし海軍の無いモンゴルに対して、黒海の良港で海軍国ジェノバの支援も受けたカッファの街は容易には落ちませんでした。圧倒的なモンゴル軍を前にしても、数週間経っても一向に陥落の気配さえ見せ無かったのです。
カッファの予想外の抵抗に激怒したジャニベク・ハーンは、事此処に至り悪魔の様な計画を思い着きます。中央アジアの”風土病”で死んだ兵士を、カタパルトで弾丸代りにカッファの街に打ち込み狭い町の中で病気を流行させて町を滅ぼそうと考えたのです。
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この史上初の生物兵器使用の結果は、真に致命的なものでした。衛生施設が整って居なかったカッファの街ではモンゴル軍の思惑通りこの”風土病”が爆発的に流行し、遂には全市民の半分を死に至らしめたのです。生き残った僅かなユダヤ人達は、辛うじて船で街を脱出する事に成功しました・・・この“風土病”の病原体を持ったまま。
最初にこの風土病の保菌者達が辿り着いたのは、地中海切っての大都市であるコンスタンチノープル（今のイスタンブール）でした。
人工100万人を誇るこの大都市は、カッファのユダヤ人避難民が到着した後、僅か2か月余りでこの“風土病”の大流行により”人口の3分の１が失われました” 次いでカッファの避難民が到着したのがシチリアそしてサルジニアそしてジェノバでした。最後の避難民達は、同じユダヤ人の居住区のあるマルセイユを目指しました。
タタールのくびき
かくて悲劇の幕が切って落とされました。これ等の都市から発生したこの新たな風土病・ペストに対しては西欧の人達は全く抗体を持って居なかったのです。僅か1年の間にこの伝染病は地中海一帯を燎原の火の如く覆い尽くしたのでした。
やがて人々は奇妙な事に気が着きます。それはペストが”ユダヤ人の居る場所のみ発生する”と云う事でした。しかも、ユダヤ人達は早くからこの病気への対応策を見付け、感染した死体を適切に処理する等して居た為、周りと比べると感染者自体が少なくその事も周囲の疑心を招く元に為ったのです。
誰も遥か黒海の都市からユダヤ商人達が伝染病を持ち込んだ事等知ら無い市民達の間では、ユダヤの長老の秘密会議がトレドで開かれ、非ユダヤ人を絶滅させる為ユダヤ人が井戸に毒を投げ込んで居ると云う噂が広まる様に為りました。
かくて虐殺が始まりました。ナポリのユダヤ人居住区は怒り狂った市民に蹂躙され、虐殺された多くのユダヤ人達が地中海に投げ込まれました。その動きは各地のユダヤゲットーにも広がり、ユダヤ人達は止む無く住居を捨てて他国へと避難する様に為ります。そして結果的にですが、その事がペストをヨーロッパ全土に拡大させる事に繋がってしまったのです。
最終的にペストによる死者は、当時の全ヨーロッパの人口の三分の一とも四分の一とも言われる2500万人に上りました。ヨーロッパがこの失った人口を元に戻したのは実に200年後の事だったと言われています。
50年に渉るペストの流行は荘園農業を基本とするヨーロッパ社会の根本を覆す出来事と為りました。皮肉な事ですが、ペストに為す術が無かった教会の権威がガタ落ちに為り、宗教に代わって科学的な考え方が台頭する様に為ったのです。
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この事は、ルネッサンスと言われる新たな黄金期をヨーロッパにもたらしました。同時に人口の減少によって”労働力＝人間の価値が上がり”中世封建制から近代資本主義への道筋が開かれる事に為り、この後のヨーロッパの世界制覇の伏線と為ります。
一方余りに巨大な犠牲は、古代から続くユダヤ人に対する恐れと蔑視を決定的なものにしました。この影響は今に至る迄続いて居るのはご存知の通りです。今に至ると云えば、ローマ人が大のお風呂好きだったにも関わらず、現代のヨーロッパでお風呂に入る習慣が薄いのは、ペストの伝染を恐れて入浴を禁止した事が現代に繋がって居るのだと云います。
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サテこの様に伝染病は時として歴史を大きく変える事があるものです。この冬もH5N1型トリインフルエンザウイルスの世界的な流行が懸念されて居ますが、多寡がインフルエンザと侮らず、万全の態勢で病気の制圧に努めて欲しいものです。
以上
モンゴル帝国の一部の国のハン(王)の思い付きの「生物兵器」が、ペストを流行らせ、罹患者であるユダヤ人が世界へと逃れた事でペストが世界的に蔓延した。それが曳いてはユダヤ人排斥と虐待を生み育て現在に至る。
そしてこの人口を激減させた世界的伝染病が、教会支配を弱め中世封建体制を崩壊させ。更にそれが、人間の価値を高めネルネサンスの高揚をもたらせた・・・何とも巡り巡った奇怪なお話です。瀕死の伝染病患者を敵の城砦に投げ入れる・・・戦争とはあらゆるものを乗り越える非道なものだと判る物語であり、誰にでも考えそうな作戦でもあろうとも考えられます。
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そこで、このクリミア半島について簡単にご説明しましょう・・・
クリミア半島
黒海に突き出た半島で、オスマン帝国の支配下にあったが、18世紀を通じロシアが進出しクリミア戦争と為った。ソ連時代ではウクライナの管轄と為り、1991年のウクライナの独立でもその一部と為った。ウクライナ人より多数を占めるロシア系住民は、2014年一方的に住民投票を実施してロシア編入を宣言、国際的な非難が持ち上がって居る。
クリミア半島は南ロシア平原から黒海に突き出した三角形の半島。紀元前８世紀には、遊牧騎馬民族のスキタイが活動し次いでキエフ公国の支配が及んだ。13世紀中頃にモンゴル人が大遠征を行ってこの地方に侵入し、後キプチャク＝ハン国の領土と為ったが、14世紀頃からキプチャク＝ハン国が弱体化する中で、15世紀に幾つかの地方政権が成立した。
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・クリム＝ハン国 クリミア半島にはクリミア＝タタール人がクリム＝ハン国を成立させた。キプチャク＝ハン国はイスラーム化して居たので、クリム＝ハン国もイスラーム教を継承し、同じイスラーム教国のオスマン帝国の保護下に入りその宗主権のもとにあった。
ロシアの南下 一方、ロシアは過つてのタタールのくびきから脱してロシア人国家を成立させ、ロマノフ朝の下で大国化の道を歩み始め、アジア系民族の支配する黒海北岸の南ロシアを解放し、更に黒海方面に進出する事を悲願としていた。17世紀にピョートル１世の下で南下政策を進め、1696年には黒海の北に繋がるアゾフを占領した。
第１次ロシア＝トルコ戦争 更に、エカチェリーナ２世は1768年、クリミア半島の領有を狙ってオスマン帝国に宣戦した。これを第１次ロシア＝トルコ戦争と言い、ロシアは陸上と海上でオスマン帝国軍を破り1774年にキュチュク＝カイナルジ条約で講和し、それによってクリム＝ハン国の保護権を獲得した。
しかし、クリム＝ハン国のクリミア＝タタール人は依然としてオスマン帝国のスルタンをカリフとして認め、それに従う姿勢を崩さ無かった。そこでロシアのエカチェリーナ２世は将軍ポチョムキンを派遣して、1783年に強制的にクリム＝ハン国を併合しロシア化を図った。
第２次ロシア＝トルコ戦争 その為多くのクリミア＝タタール人がオスマン帝国に逃れその保護を求めたので、オスマン帝国はクリミア半島及び黒海北岸からのロシア軍の撤退を要求、ロシアはそれを拒否して1787年、ロシア＝トルコ戦争が再開された。これを第２次ロシア＝トルコ戦争と云う。
この戦争では、イギリスとスウェーデンがオスマン帝国を支援し、オーストリアがロシアを支持するという東方問題と云う国際問題へと転化した。ロシア軍は陸軍を主体に戦いイズマイル要塞を陥れイスタンブル（ロシア側はコンスタンチノープルと称した）に迫った。
イギリスとスウェーデンが戦争から手を引いた為、孤立したオスマン帝国は1792年講和に応じた。このヤッシーの和約で、オスマン帝国は正式にロシアのクリミア併合を認め、ドニエストル川とブグ川の間を割譲した。
クリミア戦争 更に1853年にクリミア戦争が勃発、この地のロシアのセヴァストーポリ要塞の攻防を主戦場としてロシアとトルコ、イギリス、フランス等の諸国との間の激戦と為った。
ヤルタ会談 1945年２月、第二次世界大戦後の世界史の在り方を規定する事に為った連合国首脳によるヤルタ会談が開催された。ヤルタはクリミア半島の先端にあり、ロシアで最も温暖な地であり保養地として有名であった。ヤルタが選ばれた理由は、対独戦争に謀殺されるスターリンがソ連領を離れられ無いと英米首脳に申し入れ、病身のローズヴェルトに配慮し温暖な地が選ばれた。
開場と為ったロマノフ王家のリヴァディア離宮は、1860年代にロシア皇帝アレクサンドル２世がマリア皇后の健康の為に建てたもので、小振りではあるがサンクトペテルブルクの宮殿とは違った清楚な趣のある白亜の宮殿で会った。＜黒川祐次『物語ウクライナの歴史』2002 中公新書 p.227＞
ウクライナに編入 第二次世界大戦後の1954年 ソ連のフルシチョフ第一書記の時にクリミア半島はロシアからソ連を構成する一共和国であるウクライナ共和国に移管された。これはロシア人の多いクリミア半島をウクライナに移管させる事で、ウクライナのロシア人比率を高めようとしたものであった。＜黒川『同上』 p.240＞
クリミア領有問題 1991年12月、ソ連の解体に伴ってロシア、ウクライナ、ベラルーシ三国首脳が協議したベロべージ会談では、独立国家共同体（CIS）の結成と同時に国境の再確認が行われた。
その時、ロシアはクリミア半島の領有を主張したが、ウクライナ共和国は1954年に移管されて居る事を根拠に領有の維持を主張し意見が対立した。もう一つの問題である核の保有を維持する事を優先したロシアは、ウクライナの核保有を認め無い代わりにそのクリミア半島領有を認めた。その為、ロシアはヤルタの保養地も、セヴァストーポリも失う事に為り、黒海への出口を塞がれる格好と為った。
ロシアはモンゴル帝国の後継者? 動画☟
以上
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