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2022年01月06日

日本は「先進国」から脱落目前 2022年は歯止めの正念場



 日本は「先進国」から脱落目前 

 2022年は歯止めの正念場 !





 1-6-1.png 1/6(木) 6:01配信 1-6-1



 〜日本の1人当たりGDPは 20年程前からOECDでの位置が低下しOECD平均を下回ろうとして居る〔先進国時代の終わり〕に為り兼ねません〜

 

          1-6-5.jpg

             一橋大学名誉教授 野口悠紀雄氏


 1-6-2.jpg

           写真はイメージです Photo:PIXTA 1-6-2


 ● 半世紀の先進国時代の終わり?  OECD内で下がり続ける1人当たりGDP  

 新年に当たって、日本の国際的な地位の変遷を振り返リ、今日本が何をし無ければ為らないかを考える事にしたい。次に在る図表1は可成りショッキングだ。日本はこれ迄約50年間に渉って先進国の地位を享受して来たが、今ソコから滑り落ちる寸前に在る事を示して居る。


 1-6-3.jpg
 

 1960年から現在に至る各国の1人当たりGDP(市場為替レートに依るドル換算値・世界銀行のデータ)に付いて、OECD(経済協力開発機構・加盟38カ国)諸国の平均値を1とする指数の推移を示したものだ。  
日本は、1970年頃から約50年間に渉って、1人当たりGDPでOECD平均よりも高い水準を維持して来た。OECD諸国の平均値は先進国の水準を表す指標と考える事が出来るだろう。だが今やその水準を維持出来無く為って来て居る。

 1970年以降半世紀の期間、日本は先進国の位置に在った。しかし20年程前からその位置が低下し続けて居る。日本はOECDの平均レベルに逆戻りし、そして今正にこのレベルを下回ろうとして居る。詰まり、先進国としての地位を失おうとして居るのだ。

  先進国に為ろうとして居た  60年代末〜70年代初めと同じ  

 詳しく云うと、2015年に日本の値は0.981と為り既にOECD平均の1を下回った。しかし、これは円安の影響で在り一時的なものに終わった。又世界銀行のデータでは無くOECDの統計に依ると、2020年に日本の値は既にOECDの平均を下回って居る。只20年はコロナの影響で長期的な傾向が乱されて居るので余り参考に為ら無い。
 
 此処ではOECD平均を先進国の水準と定義したが〔先進国〕に付いては様々な定義が在る。例えばIMF・国際通貨基金では、1人当たりGDPの他、輸出品目の多様性やグローバル金融システムへの統合度合いを考慮して40の国・地域を先進国として居り日本はその第24位だ。
 この定義で云うと、日本の地位が下がっても未だ暫くは先進国で在り続けるだろう。だから〔先進国〕と云う表現を用いる事には注意が必要だ。  

 此処で強調したいのは、日本が今歴史的な転換点に在る事だ。図表1に示されて居る日本のグラフは、1995年頃を軸にしてホボ左右対称形に為って居る。現在と丁度対称の位置に在ったのが、1960年代末から70年代初めに掛けての時期だ。
 日本は1964年(前回の東京オリンピックの開催年)にOECDに加盟をするのだが、60年代末から70年代初めに掛けての時期は、日本は高度成長の結果先進国の仲間入りを果たした直後だった。68年度の『経済白書』のタイトルは〔先進国への道〕だった。図表1で見ても、日本が急成長の結果OECD平均のラインに近付き追い抜いて行く状況が好く判る。  

 他方で、第2次大戦後、圧倒的な経済力を誇って居たアメリカの相対的な地位は低下して居た。これは、図表1でアメリカの線が傾向的に低下して居る事で示されて居る。1985年頃に一時的に上昇して居るが、これは85年のプラザ合意でドル高が修正された事に依る一時的回復だ。
 だがそれでも、1973年にアメリカの1人当たりGDPは日本の約1.7倍だった。アメリカに行けばその豊かさに圧倒された。尚、1973年の韓国の1人当たりGDPはOECD平均の10.4%で在り、日本101.3%とは比べ物に為ら無かった。

 ● 左右対称形のグラフは続くか  2030年頃にはOECD平均の半分に?  

 今の日本の1人当たりGDPは、図表1で見る様にOECD平均とホボ同じだ。又OECDとの対比でも、又、アメリカとの対比でも、1960年代末から70年代初め頃と同じ状態に在る。アメリカの1人当たりGDPは日本の約1.6倍だ。この数字も70年代の初めとホボ同じだ。  
 95年を軸とする左右対称の姿が続いて行くとすると、日本は今後OECDの平均を下回って行く事に為り、2030年頃には日本の1人当たりGDPがOECD平均の半分程度の水準に為ってしまうだろう。  

 詰まり、日本はドンな定義に依っても〔先進国〕とは言え無く為ってしまう。尚、韓国の指数はこのグラフのホボ全期間を通じて上昇を続けて居る。1960年には、韓国の1人当たりGDPはOECD平均の11.9%に過ぎ無かったが94年に50%を超えた。
 98年にはアジア通貨危機で38.1%に落ち込み、2009年にはリーマンショックの影響で再び落込んだ。しかし、こうしたショックは短期的な影響に留まり、今韓国はOECD平均に迫って居る。  

 この図には示して居ないが台湾もホボ同様の傾向だ。今の状況が続けば、日本と韓国・台湾の位置が逆転し差が開いて行く可能性が在る。実際、OECDに依る長期経済予測はその様な姿を描いて居る。

 ● 1960年代には緊張感が在った 〔脱落〕目前なのに今危機感が無い  

 日本がOECD加盟国に為った年は、日本の1人当たりGDPがOECD平均に為った年(1972〜73年頃)の8〜9年前だ。仮に、今後の事態がその時の対称形で起こるとすれば、今から8〜9年後・・・詰まり2030年頃に、日本がOECDから〔脱退〕する事に為事に為っても不思議で無い。 しかし、今の日本人の意識は1960年代当時とは非常に違うと思う。

 60年代、日本人は先進国の仲間入りする事を手放して喜んで居た訳では無い。先進国に為れば厳しい国際競争の時代が始まる事に身構えて居た。63年に、日本はGATT(関税と貿易に関する一般協定)11条国に移行した。
 これに依り〔保護貿易が許されず世界に向けて市場を開く事が義務付け〕られた。64年には、日本はIMF8条国に移行した。これに依り〔国際収支上の理由で為替レートを変更出来無く〕為った。  

 こうした事で自由貿易の荒波に晒されれば、日本経済が外資に支配されてしまうかも知れ無いと云う緊張感が在った。今日本は逆の意味での分水嶺に居るが、危機意識は感じられ無い。本当はこの傾向を食い止め無ければ為ら無いのだが、その様な声は上がら無い。それ処か、図表1の対称図形がOECD平均の下に向かって居る事も気が付かれて居ないで居る。

 ● 米国はIT革命で下降に歯止め  日本は〔大変化〕を起こせるか  

 これ迄の傾向が今後も続いて行く事に為るのか? 或いはこれ迄の傾向を逆転出来るのか?  歴史的低下傾向に歯止めを掛け、変化を逆転する事は不可能では無い。実際、図表1で見る様に、アメリカは1995年頃迄下降を続けたがその辺りで止まり、その後は上昇過程に入って居る。これはIT革命に依って実現したものだ。  
 80年頃に言われたアメリカ経済力の低下は、歴史的な必然では無かったのだ。しかし、日本でそれに匹敵する様な大変化は起きて居ない。  

 だから、意識して積極的な対応をし無ければこれ迄の傾向が今後も続く事はホボ確実だ。こうした事態を食い止める為の条件は何か? それは、結局、経済成長率を高める事しか無い。そして、その為の様々な条件を整備する事だ。
 
 2022年度の予測経済成長率は、コロナからの脱却を見込んで高い値と為るだろう。しかし、それは世界のどの国も同じ事だ。OECD諸国との相対的な地位の低下を食い止める為には、最低限、OECD諸国平均の成長率を実現し無ければ為ら無い。 そして、日本の過つての地位を挽回するには、OECD諸国平均より高い成長率を実現する必要がある。
 
 処が、10年から20年に掛けての直近の10年の1人当たりGDPの増加率は、OECD平均が1.09倍なのに対して日本は0.89倍だ。00年から20年では、OECD平均が1.66倍なのに対して日本は1.03倍だ。この傾向を逆転するのは容易なことでは無い。  

 しかし、そうしない限り図表1に示されている日本の左右対称の図形が更に〔先進国からの脱落〕に向かってしまう事に為る。22年の世界の主要国はコロナ禍からの経済回復を図り、先端分野での競争力強化を通じて長期的成長の基礎を固め様とするだろう。そして、米中は未来世界での覇権を巡って更に激しい経済競争を展開するだろう。



   1-6-4.png


            一橋大学名誉教授 野口悠紀雄



 【管理人のひとこと】

 日本は先進国から脱落する・・・既に既定の事実の様に語られて居るのだが、少子高齢・長期的人口減少の続く我が国に果たして今後〔経済成長〕〔日本の再興〕が期待されるのだろうか? 20年以上続くデフレも克服出来ず少子化の歯止めも掛けられず、日本は日毎に瘦せ細って居る状況なのに、政治の変化・・・今より増しな政治の未来は一つとして期待出来ない。
 何一つの政策も全う出来無い自公政権を選択する国民にも、そんな期待は何一つ感じられ無い。「こんな我が国に、今後の経済成長を求めても無理・無駄だ、別の目標を考えるべきだ!」と、既に今後の経済成長を諦める政治家が多く為って居る。後退期に在る現在、成長期と同じ次元で考えても成功する確率は余りに低い。新たな経済的思想の下であらゆる政策を動員して〔やってみる〕しか無いのかも知れない。
 何故なら、少子高齢・人口減少傾向は他の先進国でも同じなのに、殆どの国が我が国より成長して居るのが現実なのだから、足った一つ政治を変えれば不可能では無い筈だ。



















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