2021年10月27日
広がら無い再生エネルギー 問われる政府の本気度
【#貴方の衆院選】「何を如何すれば?」
広がら無い再生エネルギー 問われる政府の本気度
10/24(日) 18:06配信 10-24-20
地元の間伐材から加工した撒きを積むNPO法人「まめってぇ鬼無里」のメンバー 再生可能エネルギーの普及に向けた活動の一環だ 長野市鬼無里地区で2021年10月15日 藤渕志保撮影 10-24-21
水力発電が盛んで、再生可能エネルギー普及の「優等生」とされる長野県。NPO法人「まめってぇ鬼無里(きなさ)」は県北部の山間(やまあい)に在る長野市鬼無里地区で活動する。その再エネ事業が2年前「因縁の敵」とも言える化石燃料に行く手を阻まれた。
広がら無い再生エネ 経済効率の壁
同NPOは、カラマツやスギ・ナラ等の間伐材を木質バイオマス燃料の薪に加工。間伐に依って森の木々に陽光が行き届き、二酸化炭素(CO2)を吸収する機能が高まる。薪は燃やすとCO2が発生するが、再エネとされるのはこの為だ。
その薪をキャンプ場や飲食店・住宅のストーブ用に販売して来たが、年間の売り上げの約3分の1を占める大口顧客を突然失った。地区の公共温泉宿泊施設が、運営事業者の交代を切っ掛けに、燃料を薪から灯油に切り替えたのだ。
「灯油はボタン一つで湯を沸かせるが、薪は全て手作業なので拒絶反応を示されてしまった」
NPO事務局長の吉田広子さん(62)は溜め息を着く。地産エネルギーで温泉の湯を沸かして客を呼ぶ・・・施設への薪提供は、再エネ普及と地域活性化を追求する活動の象徴だっただけに、吉田さん達のショックは大きかった。
実はこの施設は以前灯油を使って居た。吉田さん等NPOのメンバーが2017年12月から数カ月間に渉り、薪を使って加熱する作業を実践しマニュアルを作成。当時の運営事業者に引き継ぎ、灯油から切り替えて貰う事に成功した。
だが、現在の事業者の元で再び灯油に戻ってしまい、吉田さんは「供給側と運営側の両輪が機能し無いと上手く行か無い『現実』を思い知った」と振り返る。再エネの先進地域で在っても経済効率が優先され、再エネの普及が容易には進ま無い現実が在る。
政府目標に矛盾 問われる本気度
菅前政権は50年迄に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする〔カーボンニュートラル〕に向け、今年4月、30年度に13年度比で46%削減する目標を掲げた。毎年約5,000万トンの削減が必要と為る計算で、国・地方が一体で取り組ま無ければ実現出来無い高い壁だ。
だが、政府は再エネ活用の拡大を目指す一方で、石炭火力発電事業を継続する方針も示す。比較的CO2排出量が少ない高効率のタイプに限ると云うが、脱炭素への本気度に疑問符が付く。
吉田さんは「目標と遣って居る事がチグハグだ」と首を傾げ戸惑いの表情を浮かべた。「国の方針がグラ着けば、私達は『何を如何すれば好いのか』と思ってしまう」
自民、政権交代で原発へ回帰
政府のエネルギー政策の変遷1 10-24-22
2020年10月、菅義偉首相(当時)が「50年迄に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」と云うカーボンニュートラル(CN)を宣言し、注目度が上がった電源は再生可能エネルギーだけでは無かった。自民党内で推進派の動きが活発に為ったのが原発だ。
「基幹エネルギーとして積極的に推進」 旧民主党政権は10年に改定したエネルギー基本計画(エネ基)で原発推進を唄った。だが、翌11年の東京電力福島第1原発事故を受け、12年に「革新的エネルギー・環境戦略」を策定。「30年代に原発稼働ゼロを可能とする様政策資源を投入」「新増設は行わない」と方針転換した。
政府のエネルギー政策の変遷2 10-24-23
12年末の政権交代で発足した第2次安倍政権は、翌13年の参院選勝利で政権基盤を強化すると原発回帰へと動き出す。14年に改定したエネ基で原発を重要なベースロード(基幹)電源と明記した。只、深刻な事故を起こした原発に対する厳しい世論に配慮し「原発依存度を可能な限り低減させる」との表現も盛り込んだ。
表向きは「原発推進」と「脱原発」の両論併記にも見える安倍政権の方針だが、原発を維持したい思惑は明らかだった。
14年のエネ基では各種エネルギーの割合を示す「電源構成」の明記を見送ったが、18年の改定で原発比率を「20〜22%」とし、今月22日の改定でもこの比率を据え置いた。都留文科大の高橋洋教授(エネルギー政策)は「『脱原発はし無い』と云う意思表示だ」と言い切る。
今回のエネ基は元々「50年実質ゼロ」のCN目標を打ち出した菅政権が内容を固めた。自民党内の原発推進派は菅氏のCN目標に乗って原発の新増設やリプレース(建て替え)を求める議員連盟を発足させる等動きを活発化させたが、菅氏に近い脱原発派の河野太郎行政改革担当相(当時)と小泉進次郎環境相(同)が原発推進派を押し切り、再エネを「最優先」とする方針が明記された。
ただ、原発も「実用段階にある脱炭素電源」と位置付けられて居り、CN目標の道筋は必ずしも明確では無い。東京大先端科学技術研究センターの小林光研究顧問は今回のエネ基について「原子力等をどれだけ使うか、CN目標をどう達成するか不明だ」と疑問視する。
「分が悪い」争点化避ける各党
岸田政権の発足に伴い、党役員や閣僚が入れ替わり、甘利明幹事長ら原発推進派の影響力が強まって居る。「再生可能エネルギーの一本足打法では無く、原子力に付いても考えて行か無ければ為ら無い」 岸田文雄首相は17日、福島第1原発を視察後、記者団に原発維持を滲ませた。
エネルギー政策が与野党の明確な対立軸に為れば、衆院選の争点として有権者の注目が集まる。処が、原発政策に関する論戦は低調だ。高橋氏は「原発に否定的な国民は多く、自民党も国民的議論に為れば分が悪いと分かって居るから争点化を避けて居る」と解説する。
原発政策を巡っては、旧民主党の流れを汲む旧民進党・立憲民主党等も揺れ続けた。電力総連等電力系労組を抱える日本労働組合総連合会(連合)から支援を受けて居り、脱原発を前面に押し出し難い事情を抱える。「原発ゼロ」等のスローガンを打ち出しても、積極的に争点化する機運は高まって居ない。
立憲民主党の枝野幸男代表は19日、中国電力島根原発が在る松江市の街頭演説で、福島第1原発事故に言及し「様々な忸怩(じくじ)たる思いが在る」と語ったが、訴えたのはエネルギー政策では無く危機管理体制の強化だった。
原発事故から10年が過ぎた今も、約3万人の福島県民が県外で避難生活を余儀無くされる等、事故の影響は終わりが見え無い。原発を含むエネルギー政策の方向性は未だ見え難く、国民的な議論が求められて居る。
各党公約、脱炭素化の行程に違い
エネルギー政策に関する各党の公約 10-27-1
各党の衆院選公約は2050年迄に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」を目指す点で一致する。省エネルギー対策の徹底に加え、太陽光・水力・風力等再生可能エネルギー導入拡大の方向性も共通するが、その方法や行程には差が見られる。
CNの中間目標と云える「30年度迄に温室効果ガス46%削減(13年度比)」の政府目標を踏襲して居るのは自民・公明両党と日本維新の会だ。
一方で、更に高い目標を主張したのは立憲民主・社民・共産の3党。立憲は13年比で「55%以上減」社民は「60%減」を掲げた。共産は30年度により厳しい目標と為る「10年度比」で「50〜60%減」を目指す。れいわ新選組と国民民主党は具体的な数字に言及して居ない。
温室効果ガス排出量の多い石炭火力を巡っては、欧州を中心に脱却の動きが広がる。一方、日本は「非効率」な旧式の石炭火力発電を徐々に停止(フェードアウト)するが、排出を抑えた新型の発電所に付いては利用を継続する方針を変えて居ない。
これに対して共産・社民・れいわは何れも30年迄に石炭火力を「ゼロにする」又は「全廃」と明記した。不足分の電力は再エネで賄う考えだ。
立憲は「石炭火力からの転換」を掲げ「緊急時のバックアップ電源」としての利用を想定する。自民、公明は石炭火力の停止には触れず、次世代型で高効率な火力発電所や燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出し無いアンモニア燃料の研究開発を支援する。
CO2を排出しない原子力に付いては、活用方法や将来的な位置付けで明確な違いが表れた。自民は原発を「CN実現に向けた不可欠な電源」と位置付け、再稼働を進めるとした。
高レベル放射性廃棄物が出無い「高効率な発電」が出来るとされる核融合の開発や小型炉への投資にも積極的だ。「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」も原発再稼働を主張する。
維新は、既存の原発は「市場原理の下でフェードアウトを目指す」としながらも、小型高速炉等次世代原子炉の研究を促進する必要性を訴えた。連合傘下の電力総連出身議員等を抱える国民民主は、代替エネルギー源が確立される迄は「電力供給基盤に於ける重要な選択肢」として当面の間は原発を利用する考えだ。
一方で、将来的に原子力に依存しない「原発ゼロ」を目指すのは公明・立憲・共産・れいわ・社民だ。公明は新設を認め無いが、安全基準を満たし「立地自治体の理解と協力」を得られる原発に付いては再稼働を判断して行くとして居る。立憲は原発の速やかな停止と廃炉決定を目指す。
共産は原発ゼロを実現する期限を「30年迄」と明示。れいわは原発を「即時禁止」とした。社民は「脱炭素は脱原発とセット」と訴え「原発ゼロ基本法案」の施行後5年以内に全原発の廃炉を決めるとして居る。
【藤渕志保】
〜管理人のひとこと〜
政党・人・政策・・・来る選挙で選択する要因を分析すると、コレだ! と決め付けるのは誠に難しい気がする。経済政策では同意出来ても、国防やエネルギー政策・CN政策では不満足だったり教育政策も杜撰だったり・・・100点万点の人等は存在しないかも知れ無い。
既存の歴史ある政党は、既に色々な柵で自由な身動きが出来ず何かと制限される。かと云って何の柵も無いであろう〔れいわ〕の様な新しい政党では、力強さや政策の広がりに難点を抱えてしまう。選択する我々も、各政策の字面から来る印象では捉え切れ無い行間の意思を汲み取る努力も必要かも知れ無い。
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