2020年05月02日
「女性リーダーの国」がコロナを抑え込む理由
「女性リーダーの国」が コロナを抑え込む理由
〜東洋経済オンライン 5/2(土) 5:40配信〜
正確なデータを持って語り国民を納得させたドイツのメルケル首相 / ニュージーランドのアーダーン首相 は死者の居ない段階でロックダウンを敢行し感染の抑え込みに成功した(写真ロイター)
〜巨大クライシスを乗り越えた後の世界の秩序や常識はどう為るのか・・・ポストコロナの「ニューノーマル」・新常態に付いて、様々な予測・提言・議論がされて居るが、リーダーシップとコミュニケーションに付いて長年、研究して来た筆者が予言、いや期待する「ニューノーマル」は「女性リーダーと新世代リーダーの台頭と活躍」だ。
ニュージーランド・台湾・ドイツ・フィンランド・デンマーク・・・世界的に見て、このコロナ危機に上手に対処して居る国のリーダーに女性が多いと云う事が話題に為って居る。こうした非常事態時には、力強さを体現する男性の方が向いて居るのではないかと云う思い込みもあるが、何故、この未曽有の危機に女性リーダーが真価を発揮出来るのか。その理由と女性リーダーの強みに付いて考えてみよう〜
成功する女性リーダーは「カメレオンタイプ」
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(39歳) 今回のコロナ危機では死者の居ない段階でロックダウンを敢行する等、迅速で的確な対応と人々の琴線に触れるコミュニケーションで、感染の抑え込みに成功、全世界から注目を集めて居る。
実は筆者は、昨年9月、とある仕事で彼女と直接会う機会が在った。ニュージーランドから到着したばかりだと云う彼女だったが、印象に残ったのは、確りとカールされた髪・発色の好いルージュの口紅・ピンヒールと云うフェミニンな井出達だ。一方で、カッチリとしたパンツスーツを着熟し、ロジカルで明快・熱量と勢いの有る話し方等・・・柔らかさや優しさと強さやカッコ好さの絶妙なバランスを醸し出して居た。
女性のリーダーとしてのスキルや才能は、男性と比べて全く遜色は無い。寧ろ、優れて居る面も多い。しかし、政治、経済のリーダーの中での女性比率はマダマダ低く、特に日本は男女平等度を示すジェンダーギャップ指数が153カ国中121位と云う「女性活躍劣等国」である。
女性がリーダーに為る為には数々の障壁と「ガラスの天井」が有る訳だが、その中の1つに「ダブルバインド」・二重拘束と云うものがある。女性がコミュニケーションをする上で、強い態度を見せる・・・例えば怒ったりすると「ヒステリック」「冷たい」と言われ、柔らかく優しい態度を見せると「弱々しい」と批判されると云うものだ。
だから、アメリカの大統領候補だったヒラリー・クリントン氏や立憲民主党の蓮舫氏の様に、怒り・叫ぶ女性は殊更に批判を浴び易い・・・参考記事「怒りながら叫ぶ女」はどうして嫌われるのか。詰り、強過ぎても弱過ぎてもいけ無い・・・と云う非常に微妙なバランスを要求されると云う訳だ。スタンフォード大学の研究では、最も成功する女性リーダーは「男性的特質と女性的特質を上手に使い分けるカメレオンタイプ」であると結論付けて居る。
女性らしさ、男性らしさと云った言葉は好きでは無いが、ジェンダーの枠を超えて、強さと優しさをベストマッチした女性リーダーが成功すると云う事で有ろう。
そう云った視点で見て行くと、コロナ対策に成功して居ると云われるニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(39歳)台湾の蔡英文総統(63歳)ドイツのアンゲラ・メルケル首相(65歳)フィンランドのサンナ・マリン首相(34歳)アイスランドのカトリーン・ヤコブスドッティル首相(44歳)ノルウェーのアンナ・ソールバルグ首相(59歳)デンマークのメッテ・フレデリクセン首相(42歳)・・・全てが、マサにこの資質を満たして居る事が判る。
彼女達の的確な対応の要因の1つに、リスクに対する捉え方が挙げられる。例えば、ニュージーランドのアーダーン首相は「We must go hard and go early・厳しく早く」有るべきと唱え、断固たる処置を一刻も早く執ると云う姿勢を堅持して来た。ドイツのメルケル首相も、物理学者の経験を生かして「科学の声」に耳を傾け、徹底した検査と行動制限で感染者数の抑え込みに成功して居る。
男性の方が女性よりリスクの高い行動に出易いと云われるが、このコロナ問題に付いても、女性の方が男性より遥かに心配をし、予防行動に出て居る事が判って居る。男性の中には「男らしさ」とはウイルスと云う敵を恐れず戦い抜く事で、外出しないと云う選択肢は負けを認めること、と捉えるマッチョな人も極一部に居る。
初期対応を誤り「消毒薬を注射すれば好い」等数々の虚言・妄言をはき続けるアメリカのドナルド・トランプ大統領や外出制限にデモ活動を行う人々・一切の対策を拒否するブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領等、特に強硬な保守層程、リスクを軽視し科学を無視する傾向も有る。リスクの受容度の違いが感染抑止の取り組みに影響を与える側面は有るだろう。
コロナ禍で発揮された女性リーダー達の共感力
更に、女性リーダーに共通して居るのは際立ったコミュニケーション力だ。男女のコミュニケーションの特質的な違いに付いては、拙著『世界一孤独な日本のオジサン』に詳述して居るが、特に大きく異なるのが共感力だ。
数々の研究から、女性の方が人の感情を読み取る・感情を表現する力が高いと云う結果が出て居るが、人の気持ちを察し同情する、悲しみや不安に寄り添うと云った言動に躊躇いが無い。彼女達は軒並み70%・80%台の高い支持率を得て居るが、コレだけの信頼を得て居る理由として、この危機の特殊性も有るだろう。仮想敵国を叩く事で「ゼロサムゲームを勝ち抜くのだ」と奮い立たせる様なレトリックはこのウイルスとの戦いでは役に立た無い。
敵は見え無いウイルスだけでは無く、人々の恐怖や孤独・不安と云う内なる感情でも有る。その痛みを感じる想像力・寄り添い・勇気付け・称え・励ます共感力が求められると云う事だ。繋がりを渇望する国民は女性リーダーの優しく力強い言葉に「そうそう」「それそれ」と背中の痒い所を掻いて貰うが如く、感情のツボを刺激されてしまう。
例えば、デンマークのフレデリクセン首相やノルウェーのソールバルグ首相、フィンランドのマリン首相は、テレビを通じて子供向け記者会見を開催、質問に丁寧に答え共感を集めた。フレデリクセン首相はロックダウンの最中に、歌を歌いながら皿洗いをする映像をFacebookにアップしたが、炎上する事も無くそのユーモアが評価されて居る。
アーダーン首相は、子供を寝かし着けた後、部屋着姿で国民にライブ中継でメッセージを送り、国民を励まし続けて居る。助け合いや支え合い、連帯を訴え人間の根源的な「力」や「愛」を想起させるメッセージは不安で寂しい国民の心を打つのだ。
勿論エモーショナルなサポートだけでは無い、極めてロジカルに説明する力も有る。メルケル首相は、1人の感染者が新たに何人を感染させるかを示す「再生産数」に付いて「再生産数が1.1に上昇すれば10月、1.2に為れば7月、1.3に為れば6月に医療システムが限界を迎えてしまう」と、正確なデータを持って語り、国民を納得させた。
足った2つしかICUベッドが無い人口4万1500人のカリブ海のオランダ領シント・マールテンのシルベリア・ヤコブス首相は危機的状況に「シンプルに言います。動か無いで。貴方の家にパンが無いなら、クラッカーを食べてシリアルを食べてオーツ麦を食べて、イワシを食べて」と呼び掛け、単刀直入で迫力有る語り口がネット上で大きな話題に為った。
日本を根本から変える好機に
「女は感情的だから、難局等乗り切れる訳が無い」そんな偏見は未だに在るが、こうした極めて冷静沈着で肝が据わった女性リーダーと、メディアの質問に暴言をブチ撒けたり、キレて嫌味を言ったり、野党の質問にヤジを飛ばしたりする男性リーダー達を比べると、果たして「感情的な性はドチラなのか」と問いたく為る。
そして「女の嫉妬より男の嫉妬の方が怖いですよ。男同士の嫉妬は国だって滅ぼす程だから。嫉妬を女偏にし無いで欲しい」と我が国の「緑のカメレオン」小池都知事も形容して居たが、多分、男の嫉妬の方が女の嫉妬より余程質が悪い。
結局の所「女性がリーダーに為る為には、男性より優れて居なければ為ら無い。男性の半分でも真剣に受け止めて貰う為に、2倍働か無ければ為ら無い」英The Guardianと云う様に、男性社会の中で上り詰める女性は超優秀で有ると云う事だ。その当たりは、オジサン達への媚びが評価される我が国の一部の女性政治家とはスペックが随分と違う。
勿論、女性だけでは無い。例えばギリシャでは、ハーバード大学卒業、マッキンゼーの元コンサルタントと云う52歳のキリアコス・ミツォタキス首相が、混乱するヨーロッパの中で大健闘し評価を高めて居る。日本でも、地方自治体の若手首長が実力を発揮し、注目を集めて居る。国政に於いても、柵の無い女性や次世代のリーダーにバトンを渡し、日本を根本から変える好機とするべきではないだろうか。
岡本 純子 コミュニケーション・ストラテジスト 以上
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