2020年03月30日
遅過ぎ ショボ過ぎ 安倍政権のコロナ対策はマルで話に為ら無い
遅過ぎ ショボ過ぎ 安倍政権のコロナ対策はマルで話に為ら無い
〜現代ビジネス 2020・3・30発信〜
写真 現代ビジネス
もう1ヵ月以上遅れて居る
経済学者 橋 洋一氏
安倍首相は28日に記者会見し「緊急経済対策の策定と、その実行の為の補正予算案の編成を、この後指示する。今まさにスピードが求められて居り、10日程度の内に取りまとめて速やかに国会に提出したい」と述べ、今後10日程度でリーマンショックの時を上回る規模の緊急経済対策を策定し、新年度の補正予算案を編成する考えを示した。
筆者の結論を言おう。これ迄の本コラムを読んで貰えれば判ると思うが「余りに遅過ぎで、シャビー・みすぼらしい」だ。
先ず「遅過ぎ」から行こう。28日に記者会見が行われたのは、27日に2020年度予算が成立したからだ。この段階で、財務省の手順に従ってしまって居り「遅過ぎる」のだ。
筆者はこれ迄の本コラムでも、3月中の2020年度予算の「修正」を主張して来た。2020年度予算を成立させてから「補正」で対応すると1ヵ月以上も遅れるのだ。又、中身に関わる話でもあるが、安倍首相は、現金給付の規模や対象に付いて「リーマンショックの時の経験や効果等を考えれば、ターゲットを或る程度置いて、思い切った給付を行って行くべきだと考えて居る」と述べ、全ての国民に一律の現金給付には慎重な考えを示した。
これは、所得制限した上で現金給付をする積りなのだろう。今回の様な大きな経済危機の時には、何よりスピードが優先される。なので先進国では先ず現金給付をする。具体的には、筆者が本コラムで書いて来た様な政府振出小切手を国民に配ると云う遣り方だ。
所得制限とは、通常は配布前に所得制限を掛けて行うものだ。具体的には、所得に応じて給付金を配布すると云う方法に為る。しかし、実際に行うには可成りの時間を要する。ソコで、政府振出小切手を一律に配布すると云う方法が執られる。この方式は、アメリカなら2週間程度で実施可能だ。
ヤッパリ財務省が障害か
「高額所得者に対しても一律に給付金を出せば批判される」と、財務省は国会議員を脅す。実際に、今回もその様な事が有った様だ。しかし、その脅しは簡単に切り返す事が出来る。と云うのは、アメリカでも同じであるが、税法の非課税措置を手当し無ければ(詰り何もし無ければ)、給付金は税法上「一時所得」に該当する為、高額所得者は限界税率が高く、それ為りの調整が為されるのだ。
こうした危機に所得制限を示唆するとは、日本の国会議員はコロっと財務省に騙されてしまった様だ。序に言って置くが、日本の現金給付は政府振出小切手を使って居ないので、とても2週間では出来無い。
リーマンショック時に給付された定額給付金は、所謂地方事務である。地方自治体から国民に、定額給付金の「申請書」が送られる。国民はソレに銀行口座等を記載し、本人確認書類などと共に地方自治体に「申請」する。受け取った地方自治体は、本人確認をして、銀行口座に振り込む。この間、1〜2ヵ月を要する。
一方、政府振出小切手では、本人の処に小切手が届く。本人はソレに署名して銀行に持ち込む。銀行が本人確認して現金が付与される。この方式の方が簡便なので2週間位で実施出来る。
官邸が財務省に遣られて居る
次に、対策そのものの規模も情け無い程シャビーだ。一応「リーマンショックの際を上回る規模」と云うが、これは事業規模の話だ。リーマンショック時に政府が56兆円の事業規模で対策したのは事実だが、真水ベースだと15兆円程度だった。
経済対策には、大別すれば(1)公共事業 (2)減税・給付金 (3)融資・保証がある。「真水」とは、(1)の内用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分 (2)は全額 (3)は含め無いで (1)(2)を合算したものを指す事が多い。
実際の政策としては(2)でも消費に回ら無いと短期的にはGDP創出に繋がらないし (3)が無いと企業倒産に繋がり雇用の喪失を通じてGDPへの悪影響が出る。
その意味では、全ての政策が相まって重要なのだが「真水」の考え方は「マクロ経済政策による有効需要増のGDPに対する比率」で表すことが出来る。その為、経済ショックで需給ギャップがGDPの一定割合に生じた際、どの程度まで穴埋め出来るかが簡単に判るので、景気の先行きを占う上で有効である。
実は、筆者は、2010年1月5日から本コラムを書いて居る。最初の原稿「何故日本経済だけが一人負けなのか」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60)では、リーマンショックのGDPギャップとその埋め方を、日米英独で国際比較して居る。その中で「日本は財政政策も金融政策も酷い」と論じて居る。
安倍政権に為って、少しは民主党政権より経済運営が真面に為ったが、ここに来て、メッキが剥げて居る。自民党内の一部は真面であるが、今の安倍政権は官邸が機能して居ない。この為、財務省に遣られて居る。流石の安倍首相も、パワーが失われて居る様だ。
「真水」で無いと意味が無い理由
その結果、今回の経済対策も事業費ベースでは50兆円を超えるが、真水ベースではシャビーな案に為って居る。GDPに影響を与える真水ベースだと、精々20兆円ともい割れる。これではGDPの僅か4%である。アメリカでは2兆ドルベースの経済対策で与野党が一致して居り、これがGDPの10%に達する事と比べると、日本はシャビーと言わざるを得無い。
何故「真水」が重要なのかと言えば、先に紹介した本コラムの第1回にも書いた様に、今回の様な経済ショックが有ると、有効需要が失われGDPが低下するが、それはGDPと失業率の関係を示すオークンの法則から判る様に「雇用の喪失」を意味するからだ。
何処の先進国でも、雇用の確保はマクロ経済政策のイロハである。経済ショックが各国のGDPに与える悪影響も均一では無く、又それが失業に与える悪影響も同じでは無い。しかし、雇用の確保と云う観点から見れば、経済ショックに対する各国のマクロ政策には自ずと相場観が出て来る。そうした議論の為には「真水」の考え方で経済対策を見た方が適切だ。
「真水」をシャビーにするのは財務省の意向だ。彼等がその言い訳に使うのが財政事情である。本コラムでは、日本の財政事情は悪く無いと何度も繰り返して来た。特に、今回の様な経済危機に於いては、先進国では同時に金融緩和も行われる。それは、財政問題を起こさ無い為でもある。
実は「経済対策を国債発行で賄い、それと同時に金融緩和する」と云うのは、発行した国債を中央銀行が購入する事を意味する。そう為ると、国債の利払いは中央銀行に為されるが、それは納付金として政府の収入に為るので、実質的な利払い負担が無く為るのだ。
この事は、前回のコラムにも書いた。しかし、実際の政治の現場では、政治家は財務省の言い為りに為ってしまう。どうしてなのか。
「ポスト安倍」との絡み
それには、自民党の党内力学が働いて居る様だ。ポスト安倍で、財務省に近い岸田文雄氏が図抜けて居ると云う事だ。岸田氏の派閥は宏池会だ。宏池会は、大蔵官僚から首相迄登り詰めた池田勇人氏を創設者とする自民党内の伝統派閥で、官僚出身議員が多く財務省の影響を強く受けて居る。
麻生太郎財務大臣は、宏池会では無いが宏池会に近いとされて居る。勿論財務大臣なので、財務省の伝統的な手法をそのママ実施しようとして居る。消費減税や小切手案は、財務省が最も嫌う政策であり、岸田氏や麻生財務相も否定的なので、現段階で実施は政治的に無理なのだ。
筆者も或る宏池会系の議員や記者から「貴方の言う消費減税や政府小切手等の政策は経済的には正しいが、財務省が否定するので政治的には採用され無い」と言われた事もある。それにしても、28日の記者会見で、消費減税に付いて質問した記者は足った1人。新聞社が軽減税率の恩恵を受けて居て、消費減税に反対して居るから質問出来無いのでは無いだろうかと思った位、残念だ。
このママで自民党は大丈夫なのだろうか。先週末に行われた共同通信の世論調査では「望ましい景気対策」として、現金給付32.6%・商品券給付17.8%・消費減税43.4%と為って居る。意外と世論は好く見て居るのかも知れず、ポスト安倍は国民と財務省の板挟みで苦しむかも知れない。
その他の対策も可笑しい
何れにしても、今の安倍政権は一寸可笑しい。筆者が強くそう思うのは、経済対策だけでは無い。ひとつは新型インフルエンザ対策特別措置法の運用だ。コレは民主党政権時代の法律を改正したもので、3月13日公布・14日施行だった。
筆者が驚いたのは、14日施行なのにこの法律に基づいて直ぐに政府対策本部を立ち上げ無かった事だ。既に首相官邸には新型コロナウイルス感染症対策本部が在ったので、それをソックリ移行させれば好かった筈だ。政府対策本部が発足したのは何と27日だった。
緊急事態宣言が未だ出されて居ないのも奇妙だ。特措法改正時の3月10日、筆者は或るネット番組で「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員と対談したが、一刻も早く緊急事態宣言を出すべきとの意見で一致した。
その時は未だ、今日の事態を必ずしも正しく予測して居た訳で無いが、各都道府県知事が強制措置を執るべき時になれば法的根拠を確保できるし、とるべきでなければやらなければいいだけだからだ。他国では軒並み緊急事態宣言やそれに準ずる状況であり、今更日本が緊急事態宣言を出しても特に問題には為ら無いので、遣らない選択肢は無かった。
しかしながら、未だに宣言は為されて居ない。政府は「ギリギリの状況だ」と言う。特措法は医療崩壊を防ぐ為のものなので、それ程「ギリギリ」なら緊急事態宣言を政府が行い、各都道府県知事に対策の法的根拠と実施権限を与えて置くべきだ。
小池百合子東京都知事が「ロックダウン」等と言っているが、法的根拠無しで行うのは危うい。
最早終息のメドは立た無い
その小池都知事も、モッと前に都民へ強く注意喚起をして置くべきだった。これは、3月19日の政府専門家会合で示されたデータだ。
「感染源が未知の患者数の推移」であるが、これを見ると、東京と大阪で急激に増加して居り危ないと読める。実際、吉村洋文大阪府知事は、3月20〜22日の3連休前に兵庫・大阪間の往来自粛を呼び掛けて居る。その時の根拠として、吉村知事はTwitterで厚労省から説明を受けた事を明かして居る。(https://twitter.com/hiroyoshimura/status/1240892069507256320)
厚労省から受けたこの提案を重視し方針を決定した。単なる有識者やコメンテーターが作成したものじゃ無い。国がこの書類を持って大阪府と兵庫県にワザワザ説明に来て提案された。重要な事実と判断して外に出した。多くのコメンテーターはこんな数字為る訳無いと思うだろうが僕は無視出来無い。 pic.twitter.com/hRvR85tcC6 ― 吉村洋文(大阪府知事) (@hiroyoshimura) March 20, 2020
大阪府が厚労省から説明を受けて居るのであれば、東京都も同じで在る筈だ。しかし小池都知事は、3月20〜22日の3連休前には何もしなかった。幾ら東京五輪の延期に手間を取られて居たとしても、これは重大なミスである。
因果関係は判らないが、結果として、感染者数は急激に増加して居る。下図は☟、これ迄筆者が示して来た患者数推移予測の図を更新したものだ。従来の政策が有効で有るとの前提で立てた先週迄の予測は範囲内に収まって居たものの、今では大きく外れて居り終息のメドは立た無く為って居る。全く違うフェーズに入って居ると言わざるを得無い。
筆者は色々な場で「何時迄にこの騒ぎは収まるか」と聞かれて「東京と大阪が大丈夫なら○○までに」等と答えて来たが、その前提が崩れた今、当面確たることは言い難く為った。
橋 洋一 経済学者 以上
【管理人のひとこと】
安部氏の経済対策は「ゼロ」に等しいものだ・・・とするのは誠に同感だ。ゴモゴモ何を言ってるのか判ら無い「何もしません!」と最後に言ったのだけが理解できた。この様な時に何もせず要らぬ時に要らぬ事だけを一生懸命遣り遂げた男だった。
産業界は、安倍氏に頼らず新たな指針を以て考えなければ為ら無い。無論コロナ対策に協力し乍らであるが、例えば今迄日本が弱かった面を、これを機会として出直す決意で以て構築する事である。詰り日本の構造の電子化・ネット化だろう。例えば、国会から地方議会での、そして企業・学校関係のものであり、そこと家庭・個人との連結だ。それには或る程度の投資が必要で時間も必要だ。
韓国や中国でも、無論アメリカやその他の国でもだが、個人の行動が制限されると直ぐにネットに依る仕事・教育へと切り替わって、何とか遣り繰りをする。日本では未だに進んで居ないのでこの切り替えが出来無かった。その他、色々な事が考えられる・・・色々な提言が待たれる時なのだから。
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/9740857
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック