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2020年01月25日

「人類の未来は決して暗くない」世界注目のハーバード大学教授が喝破する ジャーナリズムの罪


  
  「人類の未来は決して暗く無い」

  世界注目のハーバード大学教授が喝破する ジャーナリズムの罪


              〜文春オンライン 1/25(土) 6:00配信〜


        1-25-16.jpg

             スティーブン・ピンカー氏 コピーライトマーク大野和基


       「我々は未来に付いて楽観主義に為るべきでしょう」

 そう語るのは、ハーバード大学心理学教授のスティーブン・ピンカー氏だ。国内では、崩壊する年金制度や人口減少、移民の受け入れ等の問題が山積し、国外に目を向けても、異常気象や緊迫した国際情勢が待った無しの状況・・・現状をそう捉え、絶望して居る人々は多いだろう。
 しかし、こうした希望の無い評価に対して「それは『地球は平らだ』と主張する位、全くの誤りだ」とピンカー氏は断言する。

 何故人は科学による進歩を正しく認識出来ないのか?

 進化心理学の第一人者であるピンカー氏は、2004年にタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2005年にはフォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」に選ばれた。米国科学アカデミー会員で『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の語法諮問委員会議長も務めて居る。
 又、2011年に刊行した『 暴力の人類史 』では、人類史を通じて暴力が確実に減少した事を、データを基に立証して話題と為った。最新刊の『 21世紀の啓蒙 理性、科学、ヒューマニズム、進歩 』では、現代に蔓延るシニシズムを危惧し「進歩」への信頼を説いて居る。我々が未来に期待出来る根拠に付いて、ピンカー氏が語った。

 「データを見れば、人類を取り巻く環境が良く為って居る事は自明です。18世紀中頃には29歳だった平均寿命は今や71.4歳に延び、食糧状態に付いても、1960年代には1日1人当たり約2200キロカロリーだった摂取量が、現在では約2800キロカロリーです。又、世界総生産は200年でホボ100倍と富も増えました。
 インフラや政治形態も改善して居ます。特に先進国では、清潔な水が蛇口から流れ、権力者を批判しても投獄され無い民主主義の下で暮らす事が出来る。更に、機械化が進み、世界の知識を小さな端末で持ち歩けます。しかし、世界はドンドン悪く為って居る、未来は暗いと云う認識が広がって居ます。人は何故理性や科学による進歩を正しく認識出来ないのでしょうか」

 
 その理由としてピンカー氏は「ジャーナリズムの責任」を指摘する。

 この25年で12億人超が極度の貧困から脱した

 「ジャーナリズムは、毎日、銃撃やテロ攻撃、内戦、飢餓、病気の大流行に付いて報道して居ます。その様な悲惨なニュースを見ると、世界中がバイオレントに為り、病気が流行し、貧困に向かい、危険に陥って居ると思うでしょう。
 一方で、平和に暮らしている地域はニュースに為りません。又、良い事は年に2、3%の割合で徐々に進み、10年・20年を掛けて大きな進歩に為りますが、その進歩は漸進的なので新聞は報道しないのです。
 例えば、極度の貧困(1日1.9ドル未満で生活する人)は、この200年間で、世界の人口の90%から10%迄減少して居ます。しかし『今日、13万7000人の人が極度の貧困から脱出しました』と云うヘッドラインを新聞で見る事はありません。この25年で12億5000万人が極度の貧困から脱したと云う事実に、人は気が付いて居ないのです」


 貴方も「フィルターバブル」に入って居る

 その様にして作られた我々の「世界に対するイメージ」を、より強固にしてしまうのが「SNSにより作られるバイアス」だ。情報が溢れるSNSへの接し方には注意が必要だと続ける。

 「インターネットやSNSにおいては、自分が見たい情報しか見え無く為り勝ちです。それを『フィルターバブル』と言います。我々は、自分と異なる意見を持つ人々に対して『彼等はフィルターバブルに入って居る』と一蹴し勝ちですが、貴方自身もフィルターバブルに入って居る事には気が付きません」
 
 バイアスの影響を容易く受けてしまう我々に必要な能力、それは「データを理解する事」だと云う。目の前の危機に印象論で惑わされ無い事、その重要性をピンカー氏は強調した。

 「調査や分析によって得られるデータから考え、自分自身の考えだけを信頼し無い事を常に心に留めて置くべきなのです」
 
 環境問題や原発、AIに対する恐怖、所得の格差・・・我々が怯える問題の中で、本当に向き合うべきテーマは何だろうか。豊富なデータを基にピンカー氏が語った「 人類はモッと未来に期待すべき 」は「文藝春秋」2月号及び「文藝春秋digital」に掲載されて居る。


        「文藝春秋」編集部 文藝春秋 2020年2月号   以上










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