2020年01月24日
立憲民主党と国民民主党が 一つにまとまれ無い理由
立憲民主党と国民民主党が 一つにまとまれ無い理由
〜JBpress 朝比奈 一郎 青山社中筆頭代表・CEO 1/24(金) 6:00配信〜
国民民主党代表の玉木雄一郎氏(写真 アフロ)
中国のIR関連企業「500ドットコム」から賄賂を受け取ったとして、自民党の秋元司議員が逮捕されました。事件は更に他の議員に広がる可能性を秘めて居ますが、個人的にはこの事件、その構図から見ても、授受された金額から見ても「大疑獄」と呼ぶ様な事件には為ら無いと感じて居ます。
一方で不可解なのは「何故、国会議員が外国企業から贈賄の『カネ』を易々と貰ってしまうのか」と云う事です。そうしたお金の授受が問題に為る事は素人でも分かること。なのに、何度も当選して居る国会議員が、ホイホイ現金を受け取ってしまう。これは、明らかに「政治の劣化」の表れだと思うのです。
朝比奈 一郎 青山社中筆頭代表
二大政党制は自民党が割れる事で実現する
こう云う話をすると、その原因を「選挙制度」に求める人も居ます。詰まり、中選挙区制の時には、自民党が政権を取るのが前提で、各々の選挙区では自民党の派閥同士の争いが在った。そう云う環境の下で、政治家個々人は派閥の中で政治家としての振る舞いを学び、人間力を鍛えられた。
勿論、そうした派閥同士の熾烈な争いの中で政治とカネの問題は有りましたが、金額も案件ももっとスケールの大きな話が中心でした。しかし、これが小選挙区制に為ると、選挙は政党同士の勝負と為った。極端に言えば、夫々の候補者は政党の駒みたいなもので「自民党公認」とか「立憲民主党公認」と云う立場にして遣れば誰でも好い。だから政治家が小粒に為り劣化したのだ・・・と云う理屈です。
その論旨には納得出来る部分も多いのですが、だからと云って今更中選挙区制に戻すべきでは無い、と私は思います。今中選挙区制に戻したからと云って、政治家の人間育成が急に進む、と云う事も無いでしょうから。
小選挙区制の導入で想定されて居たのは二大政党制の実現です。そこで大事なのは、二つの主要政党が夫々切磋琢磨する事です。それが出来れば、政治家の人間形成も自然に行われる筈です。只残念な事に、小選挙区制が導入されはしましたが、現実は二大政党制には全く為って居ません。
今の選挙制度がキチンとその理念を実現して行く為には、先ずはキチンと二大政党制を作る事が必要です。日本の改革を進める為にも、政治家の質を高いものにして行く為にも、そこに期待したいと思って居ます。
では、どうしたら二大政党制が実現出来るのでしょうか。遂最近迄交渉が行われて居た立憲民主党と国民民主党との合流に期待すべきだったのでしょうか。実は私はそうは思いません。本質的な二大政党制は、ハッキリ言って自民党が割れる事でしか実現出来ないと考えて居ます。そして、近い将来、それが現実に為る事を期待して居ます。
自民党分割は「有り得る」
何故、立憲民主党と国民民主党の合流に期待出来なかったのか。その理由は明確です。立憲民主党が取って居るスタンスは「野党戦略」です。
「今の与党に取って代わる」と云うよりは「与党が遣って居ることを徹底的に批判する」と云う戦略です。このスタンスは、将来的にも野党と云う立場を貫こうと云うものですから、本質的な二大政党の一方には為りません。旧社会党の様なスタンスです。
対して、国民民主党は、規模や支持率はマダマダですが、今の与党に取って代わって遣ろうと云う、何でも反対では無く、タブー無く議論しようと云う与党志向のスタンスです。
同じ野党と云う立場に在りながら、見て居る風景が全く違います。この両党が一緒に為っても、上手く機能する筈が無いのです。
では、自民党が割れて行くと云う事等現実として或るのでしょうか。私は「在り得る」と見て居ます。安倍政権が長期政権化する中で、自民党の中で、日本の本質的改革を進め様とするグループの存在感が非常に希薄に為って着て居ます。
安倍政権の前半は、アベノミクスや安保法制・TPP参加と云った様な国論を二分する様な問題で果敢に勝負を掛けて居ました。夫々の賛否はあるにしても、そこでは「改革するぞ」と云う気迫が見られました。処が、後半はその改革機運は停滞して居ます。ソコで、安倍政権に対して不満を募らせる集団が必ず出て来ると思うのです。
勿論安倍総理も、日本の本質的な構造改革・・・例えば年金制度、国と地方の関係、行政の在り方・・・等を根本的に見直して行こうとはして居ます。問題はそのスピード感です。少しずつ、徐々に改革して行こうと云うグループと、大きく大胆に改革して行くグループがあります。
現在の安倍政権は、前者のグループが主導権を握って居ると言えます。「それでは遅過ぎる」と考える集団が、自民党を割って飛び出す。そう云う形での二大政党制が望ましいのではないかと云うのが私の見解です。
小泉進次郎が「近衛文麿化」する懸念
政界再編と云うのは、一つが動き出すと一気に大きな流れが出来る事があります。その意味では、2020年にこうした事が起きても不思議ではありませんし、私自身はぜひとも起きて欲しいと願って居ます。その上で今年、期待したいキーパーソンを3人挙げてみたいと思います。
1人目は小泉進次郎さんです。小泉さんとは数回お会いした事がありますし、我が青山社中フォーラムにもゲストスピーカーとして登場して頂いた事もありますが、改めて感じるのは進次郎さんには人を惹き着ける話し方や強いオーラがあると云う事です。
政治の重要なポイントのひとつに国民の感情を動かして行く事が求められて居ます。そこからすると進次郎さんのカリスマ性やオーラと云うのは稀有なものです。話の切り返しや聴衆を惹き着ける力も兎に角凄い。アノ若さで、政治家としての才能を備えて居るのです。それ等を存分に使って、大きく改革を進めて行くグループの旗頭に為って貰いたいのです。
只、現在の進次郎さんを見ていると、私には或る懸念が浮かんで来ます。それは進次郎さんが「近衛文麿化」してしまうのではないかと云う懸念です。近衛文麿と小泉さんは3つの共通点があります。
近衛文麿は1937年(昭和12年)45歳と云う若さで総理に為ります。これは伊藤博文の44歳に次ぐ史上2番目に若い就任でした。進次郎さんも38歳で大臣に為る等、矢張り若い頃から頭角を現し国民的期待を集めて居ます。これが1つ目の共通点です。
2つ目の共通点は、実の親に育てられて居ないと云う事です。近衛は成人する迄継母のことを実母だと思って居たとされて居ますが、進次郎さんも両親の離婚後、母親代わりをして呉れた伯母さんを「ママ」と呼んで育ったと報じられて居ます。近衛と進次郎さんは、心象風景として、同じ様な家族観を持って居るとしても可笑しくありません。
3つ目の共通点は、兄弟に芸能関係者が居ると云う事です。近衛文麿は、弟の秀麿・直麿が共に音楽家に為って居ます。進次郎さんはご存知の様に、兄・孝太郎さんが俳優です。華やかな世界で活躍する兄弟が居り、その影響で本人も、他の政治家以上に世の中の関心の的に為り易い存在と言えます。
近衛文麿と小泉進次郎さんに共通するこの3つの要素を重ね合わせて浮かび上がって来る人物像は、常に周囲からの視線を意識しながら、集まって来る期待に出来るだけ応え様と、バランス好く立ち回ろうとするものです。
それで居ながら、エッジの立った事を遣って居る感を出す能力に長けて居る。進次郎さんの一寸した発言がメディアで大きく取り上げられるのもそうした能力の為せる業です。只、バランス好く立ち回ると云う性格は、悪く言えば、敵を作ろうとしない「八方美人」的なものとも言えます。
近衛文麿は、この「敵を作らず八方美人」的性格の為、大切な決断が出来なかった政治家です。
近衛の第一次政権は、日中戦争に入って行く少し前の時期に成立します。私が見る処、近衛自身は泥沼化が見えて居る日中戦争をしたくは無かった筈です。しかし彼は、軍部を初め各所の期待に応え様としてバランスを考えました。その結果、日中戦争に足を踏み入れ、結局政権を投げ出すと云う事に為ってしまいます。
近衛の第二次・第三次政権は正に日米開戦前夜の時期でした。この時に近衛は、米国のルーズベルト大統領と首脳会談を持って戦争回避の方向に持って行こうとして居ましたが、矢張り「敵を作ってマデ」と云う程の覚悟はありませんでした。結局、日米開戦が避けられ無い事態と為り、近衛は又もや政権を投げ出してしまいます。近衛の跡を受けて首相に為ったのが東条英機でした。
この様に、周りに気を配り、全てに於いてバランス好く立ち回ろうとする近衛には、誰かと激しく対立してでも断固として自分のスタンスを貫くと云う気概が有りませんでした。そう云う傾向が、小泉進次郎さんにも少々見える様な気がして為ら無いのです。
敢えて敵を作る気概は有るか
又進次郎さんも、非常に人を引き付ける力を持って居ますが、現在の処「これ」と云う実績はありません。しかし、自身をエッジの効いた存在に見せる技術は長けて居ます。それが又周囲の期待値を高めてしまう訳なのですが、只最近は、国民もソコを揶揄して、進次郎さんの発言を「ポエム」と称したり、平易な事をサモ大切な事の様に言う事を「進次郎大喜利」等と批判的に呼んだりする様に為って着て居ます。しかし、30代でアソコ迄発信力のある政治家は他に例を見ません。だからコソ叩かれて居るのでしょう。
自民党の中で四方八方に気を配りながら、ソツナク政治家を熟して行くだけの存在には為って欲しくはありません。高い能力のある人だからコソ、進次郎さんには大胆な改革を進める旗頭として、自民党と対峙するもう一つの政党を作る旗頭に為って欲しいと希望します。
例えば進次郎さんは、自民党の非主流派に収まって居る石破茂さんと近いので、石破さんと連携して自民党を割る様な行動を起こし、そして与党的志向を持つ野党関係者を糾合する事も出来ると思うのです。もしもそう為れば、本格的な二大政党制に大きく近付くことが出来ると思うのです。
私が期待する2人目の人物は、国民民主党代表の玉木雄一郎さんです。実は玉木さんは私が官僚時代の上司だったので、その人物像や仕事振りは良く知って居ます。
ドンなに大変な事態に直面しても常に沈着冷静で、前向きで明るくて、キャパシティが大きい人です。行政改革担当大臣秘書官として、石原伸晃、金子一義、村上誠一郎の三大臣に仕えた事もあります。通常、大臣が変われば秘書官も変わるものですが、三人の大臣に仕えたと云う事実は、玉木さんの有能さと人柄の好さを裏付けるものでしょう。
その玉木さんが政界に転身され、現在は国民民主党の代表に為って居ます。玉木さんが国民民主党で目指して居るのも二大政党制の筈です。要するに「何でも反対」の野党戦略では無く「将来的には与党に為る」と云うスタンスで党運営をして居る。確かに支持率では伸び悩んで居ますが、だからと云って今「野党戦略」を基本とする立憲民主と一緒に為るのは好い方法とは思えません。
互いに妥協を重ねて合流したとしても、基本思想の違う政党同士ですから、何時かは又離れ離れに為る筈です。である為らば、ここは歯を食い縛って合流を見送るべきではないかと思うのです。寧ろ、自民党内の非主流派に党を割らせ、彼等と組んで与党たり得るもう一つの党を作る。その方向に進んで欲しいと思うのです。
橋龍以降、大きな改革図を提示したのは橋下徹だけ
期待したいもう一人の人物は、橋下徹さんです。私が1997年に当時の通産省に入省した時の総理大臣は橋本龍太郎さんでした。政策通で要らした橋本さんは、政策によって日本を変えようとした素晴らしい総理の一人だったと今でも思って居ます。
総理に為った当初、橋本龍太郎さんは「5つの改革」を唱えて日本の大改革に手を掛けます。当時は金融危機に襲われて居たので「金融制度改革」更に「経済構造改革」として、今で云う成長戦略を描きます。
又、それ迄景気を良くしようとして財政政策を推進した結果、財政赤字が膨らんで居たので「財政構造改革」更に行政改革と社会保障改革です。その後、ソコに「教育改革」が加わって「6つの改革」と称しますが、これらを遣ろうと取り組んだのでした。
今の時点で、橋本龍太郎さんの問題意識を眺め直して感じる事は「当時と現代とで、何も変わって居ないじゃないか」と云う事です。金融危機は落ち着きましたし、行政改革にしても内閣人事局が出来る等進展した部分もありますが、20年程前に橋本さんが危機意識を抱いて居た課題は、何も解決されて居ないのです。
只この間、こうした日本の課題を根本から変え無ければいけ無いと主張して、大きな改革の画を提示した人が一人だけ居ました。日本維新の会を率いた橋下徹さんです。橋下さんは橋本さんの改革等を横目で見つつ、諸政策を改革マインドでもってスピーディに進めるにはガバナンス改革をするしか無いと考えたのだと思います。
即ち、一院制、道州制、首相公選制等統治機構改革から始まり、経済・財政、社会保障、エネルギー政策、外交・安全保障等、幅広い分野で根本的な制度改革・政策転換を訴えたのでした。
私が官僚だった当時、霞が関の若手の中にも「このママでは日本は立ち行か無く為る。大きな改革が必要だ」と主張する人が数多く居ました。しかし、現実に政策を作り、遂行して行く仕事をして行く中で、一気に改革する事の困難さに直面します。
そうした中、霞が関では大胆な改革を実現出来ないとして、私の様に外の世界に飛び出す人も出て来れば「改革は現実を見ながら徐々に、漸進的に変えていか無ければ為ら無い」と考える人も出て来ます。
安倍政権の前半は前者的な「急進的」性格が強かったのですが、後半は後者の「漸進的」改革にシフトチェンジして居ます。橋下徹さんは、明らかに「今直ぐ大胆に改革し無ければ」と云う前者的な思考を持った人です。
これからの二大政党制とは、例えば「保守vsリベラル」と云う対立軸では無く、改革に対して「急進的vs漸進的」と云う軸で形成されるべきではないでしょうか。
現在の自民党は「漸進的」な改革を志向して居ます。で有る為らば、小泉さんや玉木さん、橋下さん達に協力し合って貰い、急進的改革政党を作り上げて貰い、日本にも真の意味での二大政党制を確立して欲しいと思うのです。
朝比奈 一郎 以上
【管理人のひとこと】
「ウーン」と何か考え込む様なご提言でした。確かに切り口は斬新的ですし、過去の歴史も引用し説くのも適切な文章でした。この中で大きく頷けるのが、小泉進次郎さんに石破さんと連携して自民党を割る・・・急進派の自民党を作るの件(くだり)です。
確かに父親の小泉氏は、殆ど自民党の反主流・傍流を歩んで来られ「自民党をぶっ壊す」と叫んで政権を捕った人でした。その息子だからコソ「主流派に腰を落ち着け安穏として居る」としたら、彼の将来は寂しいものに為るでしょう。
そして、玉木氏と橋下氏に至っては、優柔で不断な性格を批判される人であり、方や口から溢れる程の達者な言葉で相手を翻弄する「ペテン師」品格ゼロの「喧嘩師」なのです。大阪と云う反骨心溢れる土壌に生まれた稀有な「詐欺師」とも云われる。「人を翻弄し弁舌で圧倒する技術を磨きに磨いた稀有な道化師」でもあると本人も似た様な事を話して居る。彼等の様な人達に日本の将来を託すとしたら・・・と、ツイツイ考え込んでしまったのです。
確かに小選挙区制の目的は「政権交代可能な二大政党」確立の為もありましたが、一番には「選挙資金」の問題が大きかったのです。中選挙区制での選挙活動には莫大な資金が必要と為り、その資金獲得の為に「汚い金」迄を必死に集め無ければ為ら無い事情から解放される事でもあったのです。その金は所属する派閥からと自分達個人で賄うのは大変だったのです。
官僚並びにOB・OG達が、全て保守・与党に与す訳では無く、中には多くのリベラル・革新に属する人も居ますが、押し並べて周囲とのバランス感覚に長けた優秀な人達です。その分面白味に欠け、突飛なアイデアは生まれ難い感じで、一人気を吐くのが「積極財政」を標榜する高橋洋一氏位でしょうか。
文章から受ける印象は、何と無く全体的にお坊ちゃまの作文的な、読む人の心に訴え無い安易なものと為ってしまいます。決して著者を愚弄する意味は有りませんが、もう少し重みを持ったものへ・・・と期待したいのです。野党合同が為ら無かった分析は、その通りだと感心致しました。
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