2020年01月23日
「絶対に選挙に落ちない男」は何故野党共闘に奔走するのか?『無敗の男 中村喜四郎 全告白』著者、常井健一氏に聞く
「絶対に選挙に落ちない男」は何故野党共闘に奔走するのか?
『無敗の男 中村喜四郎 全告白』著者、常井健一氏に聞く
〜HARBOR BUSINESS Online 1/23(木) 8:32配信〜
『無敗の男 中村喜四郎 全告白』
「選挙の鬼」と呼ばれた男
「日本一選挙に強い男」と呼ばれる中村喜四郎氏が再び注目を集めている。1月14日には共産党の党大会にゲストとして出席し、野党共闘を訴え話題に為った。
自民党を離党して無所属と為り、更には有罪判決を受けても選挙で負けず。初当選から現在まで14戦無敗と云う恐るべき強さだ。マスコミ嫌いとしても知られる中村氏を追い、その言葉を聞き出したノンフィクション『無敗の男 中村喜四郎 全告白』(文藝春秋)も、政治をテーマにしたノンフィクションとして非常に好調な売れ行きを見せている。
『月刊日本 2020年2月号』では、そんな『無敗の男 中村喜四郎 全告白』の著者、常井健一氏自身を直撃して居る。今回はそのインタビューを転載・紹介したい。
常井健一氏
何故中村喜四郎に注目するのか
・・・常井さんの新著『無敗の男 中村喜四郎 全告白』は、中村喜四郎衆議院議員を題材としたノンフィクションです。中村議員は長らく沈黙を守って来た為、中村さんの事を知ら無い人も多いと思いますが、何故中村さんに注目したのですか。
中村さんは1980年代後半に「自民党のプリンス」として将来を嘱望され、43歳迄に2度も大臣に為りましたが、その直後の1994年にゼネコン汚職で逮捕され、天国から地獄へと一気に転落します。この事件は、当時中学生だった私の政治家に対する考え方にも影響を与えましたが、中村さん自身は「過去」を一切語って来なかった。その為、ズッと描きたいと思って居たのです。
もう一つは、私は中村さんと同じく「自民党のプリンス」である小泉進次郎さんを10年に渉って追って来ました。小泉さんは当初は被災地や農村・過疎地等を隈無く回り、庶民に目線を合わせる心掛けを意識して来ましたが、段々傲岸不遜(こうがんふそん)に為り、今では国民の信頼を失い始めて居ます。何故「自民党のプリンス」と呼ばれる人達は必ず躓(つまづ)くのか、その敗因を知る為にも中村さんを読み解く必要があると考えたのです。
・・・中村さんは有罪判決を受けた後も、無所属で選挙に勝ち続けています。その強さの秘密は何処にあると考えていますか。
選挙では普通、地元企業の社長や地元の名士を味方に着ければ、その下に居る人達の票も取り込めると考えられて居ます。これに対して、中村さんは企業のトップでは無く、社員一人ひとりに頭を下げて居ます。こうすれば、例えトップにソッポを向かれたとしても、大衆の支持が一度に離れる事は無い訳です。
実際、中村さんの後援会「喜友会」には大物支援者は居ません。田中角栄の弟子でありながら、地元の建設会社が丸抱えする様な「企業ぐるみ選挙」も排除して居ます。支援者達自身、喜友会の事を「偉い人が居ない組織」と言って居ます。
中村さんがどれ程真剣に一般有権者と向き合って居るかは、例えば弔辞にも現れて居ます。中村さんはお葬式に呼ばれると、1時間近くも弔事を読むそうです。故人の生い立ちや仕事振り等を調べ上げ、弔辞に盛り込む。参列した人達は故人の回顧録を聞かされて居る様な心地に為ると言って居ました。こうした積み重ねが中村さんへの根強い信頼に繋がっているのだと思います。
・・・中村さんの選挙の戦い方に、最近注目されている「れいわ新選組」と似て居る処はありますか。
「れいわ新選組」が熱心に取り組んで居るのはポスター貼りです。山本太郎さんに話を聞くと「自民党や共産党の様な古い政党がポスター貼りを重視して居るのは、効果があると云う証拠だから、自分達もポスターを隈なく貼る」と言って居ました。
他方、中村さんは無所属ですので、政党掲示板を設置出来ません。故に茨城7区で中村さんのポスターを見掛けることはありません。それでも「無敗」なのですから、衆院小選挙区で勝つ上でポスター貼りがどれ程役に立つかは疑問です。
また「れいわ新選組」は全国遊説を行い、街頭演説の会場まで人々に足を運んで貰って居ますが、中村さんは自ら有権者の生活の場に足を運び、一人ひとりと繋がる事を重視して居ます。「誰も居ない場所で演説を続けられたら政治家として一人前だ」とも説く。人々に集まって貰うか、自ら足を運ぶかと云う点でも、中村さんと「れいわ新選組」は対照的です。
今こそ「竹下派の政治」を見直す
・・・中村さんは野党共闘の枠組み作りの為に積極的に動いて居ます。その原動力は何ですか。
それは安倍一強政治に対する反発です。中村さんは司法権力の暴走によって逮捕されたと云う意識を持って居るので、安倍政権が権力を非抑制的に行使して居る事に対しても批判的です。その為、安保法制や共謀罪に賛成せず、野党の側に回ったのです。
処が、野党と関わる様に為ると、野党が余りにも子供染みた政治を行って居ることが分かり、虚しさを感じたと言って居ました。彼等は口を開けば以前同じ政党に居た仲間達を罵り、一緒の席に着きたく無いと意地の張り合いを繰り返して居る。これは政治家では無い。安倍政権に対抗出来る勢力には為り得無い。そこで、「昔の政治」を知って居る自分が「保守の知恵」を伝授する必要があると考えたそうです。
ここで言う「昔の政治」とは「竹下派の政治」と言い換えても好いでしょう。戦後政治を振り返ると、自民党政権が改革を強引に進めたり、党内がゴタ付いたりすると、それに対する安定装置として竹下派、過つての田中派の党人派達が水面下で動いた。彼等には「一致結束・箱弁当」や「汗は自分で、手柄は人へ」の精神がありました。
現在の安倍政権で言えば、二階俊博さんが安倍総理と違ったカラーを出す事で党内融和を図り、参議院ではこの間亡く為った吉田博美さんが安倍総理に苦言を呈して居ました。二階さんは元々竹下派ですし、吉田さんは金丸信の秘書を務めて居ました。
今中村さんの存在感が浮上して居るのは、野党の中に安定装置が無いからです。過つて民主党が政権を取った過程でさえ、剛腕・小沢一郎だけで無く、渡部恒三さんや石井一さん等竹下派出身のベテランが存在し、その役割を老獪に果たした。その意味で、これ迄古いと見られて来た「竹下派の政治」を見直す時期に来ていると言えます。
野党の若手が中村氏の手法をどう捉えるか
・・・しかし、野党共闘がそれ程上手く行って居る様には見えません。中村さんは元々自民党に属して居たのだから、野党を立て直すよりも、自民党を立て直す事に注力した方が好いのではないですか。
自民党には中村さんの様な役割を果たせるプレーヤーが未だそれ為りに居ますので、それ程重宝され無いでしょう。中村さん自身、野党共闘がそう簡単に行くとは考えて居ません。常に「最短距離」で結果を急ぐ小沢さんの手法とは対照的で、本格的な政権政党が出来上がる迄には10年は掛かると見て居ます。
その時に問題に為るのが、矢張り野党の若い議員達が中村さんの遣り方を「古い政治」と考え、拒絶する可能性があることです。実際、中村さんが野党の若手議員が集まる勉強会で熱弁を奮っても、皆キョトンとして居る。
令和の政治家達が「中村喜四郎」を時代遅れと捉えるか、それとも古今東西に通じる政治の美徳として学ぶのかによって、野党結集の行く先は大きく左右されると思います。
12月24日 聞き手・構成 中村友哉
常井健一(とこい・けんいち)1979年生まれ ライブドア・朝日新聞出版・オーストラリア国立大学客員研究員を経て2012年に独立 著書に『決断のとき トモダチ作戦と涙の基金』(小泉純一郎氏との共著)『小泉純一郎独白』など多数
【月刊日本】げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
ハーバー・ビジネス・オンライン 以上
【管理人のひとこと】
本を出版すると云う作業は、並大抵の努力や根気・やる気が無ければ簡単には済まない、相当のエネルギーを必要とするものだろう。対象に近付き観察し調べトコトン話し合い調べ尽くす。何度も何度も確認しながら進め、著者が納得した上で発表する・・・一つ一つの文字が一つ一つの言葉と為り、読む人に向かって、或る意識・物語を伝え著者の心を伝え様とする。その著書の出来不出来は、著者の努力の結晶であり「説得」し「共感」を得る読者の心の重さに現れる。
このブログでは、何度か中村喜四郎氏に関わるものを取り上げた。旧自民党の本流を駆け上り活躍した政治家・・・しかし、検察の力で一度は捻じ伏せられたが、不死鳥の如く政治の場に蘇り、無所属として孤塁を守り続け、後援者と共に政治を正そうと努力する。
保守・革新を問わず「泥臭い」政治理念を通し続けるのは、矢張り「根っからの政治家」だからなのだろう。直ぐに結果を期待する若手の政治家には、到底無し得無い格別な思いだろう。中村氏や小沢氏が野党合同を後押ししたが、残念ながら今回は見送り・・・中村氏に言わせると何度も何度も遣ることが大切なのだろう・・・10年掛かるとも。そう、一度や二度の失敗でサジを投げたら何事も為さ無い。どの様な方法を持ってしてでも新たな政権を作らねば、日本の未来は・・・安倍氏には任せられ無い。
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