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2020年01月15日

発展目覚ましいアジア諸国と日本 この10年の決定的な違い




 発展目覚ましいアジア諸国と日本 この10年の決定的な違い

          〜ITmedia ビジネスオンライン 1/15(水) 10:10配信〜


       1-15-13.jpg

 先方が用意して呉れたケーブルが信用出来無い事も多々ある為 場合によってはケーブルすらも持ち込む(ベトナム)

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 色々な国を放浪して居ると、様々な文化や考え方に触れる為、どうしても日本と比べてしまいます。「日本人がお酌をするのは何故か」と聞かれて調べてみたり「日本人は駅のホームで別れ際に頭を何度もピョコピョコと下げるがアレは何の意味があるのか(主に宴会後のサラリーマンの事を指して居る」同じく「別れ際に車が見え無く為るまで外で立って居るのはナンなのか」等、様々なことを聞かれます。

 価値観の違いはコンな処にも。マレーシアの友人に紅葉の写真を見せた時に「葉っパの写真ナンか撮って何が楽しいの?」と聞かれたのですが、彼にしてみると、一年中暖かく自然が色取り取りなのは当たり前で、日本の秋独特の色付きには何の感慨も無い様でした。けれども当人が日本に来た時に新宿御苑に連れて行き、秋の紅葉を見せた処確りと感動して居た、と云う後日談があります。

 これは飽く迄一例ですが、日本では当たり前の事が海外の人には不思議に思える、と云う事に好く遭遇し続け、何処の国の人にも通用する様に意識して行動する様に為って行った気がします。そうこうして居ると、段々と日本人的な感覚を失って行く自分に気付きます。
 最近は、日本社会の常識を守り続ける事はホボ諦めて居ます。「宴会の締めの挨拶も出来ないのか」と笑われる事がありますが、知ら無いものは知ら無いし、昔ながらの遣り方を踏襲し無ければ為ら無い必要性も感じません。定型的な対応が必要なのであれば、それが出来る人に頼んで欲しいです。

 トレーニングをする様に為って自分が得られたもの

 前置きが長く為りましたが、今回はセキュリティ技術者向けのハンズオントレーニングや、管理者向けの机上演習の実施経験から感じたことをご紹介します。
 私のこれまでのキャリアの中で、セキュリティのトレーニングを多く行ってきました。2007年頃から、主に海外のセキュリティ技術者向けのハンズオントレーニングや演習を行ってきました。

 当時の私はロクに英語もしゃべれなかったのですが、月曜から金曜、朝9時から夕方5時まで、英語でトレーニングをし続けました。助けてくれる日本人はおらず、講義資料の作成も説明も質問も全部自分で対応しなければなりません。そういうセルフスパルタ英語教育を続けていたら、何時の間にか仕事で困らない程度には英語が話せるようになりました。
 初期のトレーニング受講者はすこぶるヘタクソな英語で付き合うのも大変だったろうによく5日間も耐えてくれたと感謝しています(当時の参加者に今でも会うことがありますが、笑い話のネタにされます)。

 こういったトレーニングは、どこかの国の政府機関に依頼されて実施する場合もあれば、国際的なセキュリティカンファレンス会場の一室で行う場合もあります。ハンズオントレーニングの場合には日本から機材を持って行ったり、現地で借りたりしますが、ネットワークの敷設からセットアップした環境の確認などいろいろ手間がかかります。
 セキュリティの技術研修になりますので、会場のネットワークのセキュリティ対策機器によって外部との通信が遮断されてしまったりすることもよくあります。このため早めに現地入りして調査するのですが、昨日大丈夫だった通信が今日になったらダメになったということもしばしばあるので、ネットワークを使う場合の環境準備はいつもヒヤヒヤしています。

 ハンズオントレーニングを始めた頃は、課題を出して一人一人にそれを解いてもらう方式でやっていました。さまざまな手法を試してみましたが、その中でも特に記憶に残っているのは日本の塾のように回答が分かったら紙に書いて、前に持ってきてもらい、○×をつける方式を試みたところ、「これは日本ではよくあるやり方なのか?」と聞かれたことです。これもまた、日本独自の方式なのかと思った記憶があります。今ではオンライン回答フォームを用意してそこに記入してもらうようにしています。

 こういった形であちこちでトレーニングをやると、さまざまなトラブルも経験しますので失敗しない環境構築をする能力や土壇場でなんとかする能力、トレーニング自体の運営ノウハウなどさまざまなスキルが身につきます。最近は仕事として技術的なことを担当する機会はめっきり減りましたが、普段からトレーニングの環境構築などをしていることでリハビリにもなるし新しい技術に触れる機会も少なくありません。









 参加者に取って効果を最大化する工夫

 ある時期からは、なるべくグループになり参加者同士で議論しながら問題に取り組んでもらうようにしているのですが、このやり方になってから、理解度が上がったように感じています。参加者のフィードバックには、「他の参加者の考え方が聞けてよかった」とか「自分が想定できていないポイントが明らかになった」とか「継続して情報交換できそうな関係を構築できた」といったものがあり、講師と参加者という一方向のやりとり以上にさまざまな効果があると感じています。

 この参加者同士の関わり方もさまざまなパターンがありますが大きく3つに分けて特徴をご紹介します。

 グループが皆同じ国からの場合で参加者が皆同じ組織の場合

 まず全員同じ組織で同じ国からの参加者では、言語の問題は生じません。また、同じ組織からの参加者なのでハンズオントレーニングにしろ机上演習にしろ自組織のことを想定して議論を進めます。「こういうことが起きたら○○さんに相談するよなあ」とか「自組織の場合これは起きないよなあ」とか、議論の内容がより具体的になり、その組織にとっての課題の発見につながることは多いです。
 マイナスの側面としては参加者自身があくまで自組織のルールや業界特性から外れて考えることができないという特徴があります。このグループの分け方だと、参加者からは「自組織に足りていない点が分かった」とか「同じ問題に対する他部署の考え方を聞けてよかった」いうコメントが多く出てきます。

 参加者全員が同じ国だが夫々違う組織からの場合

 参加者全員が同じ国の場合は、言語の問題が無くコミュニケーションがスムーズです。一方で、それぞれが違う業界や組織から参加してるので、法規制に対する考え方、何か問題が起きたときの優先順位、対処方針の考え方など参加者それぞれで違う価値観を持っており、双方の考え方ややり方を議論しながら対応を検討します。
 最終的にグループ発表を課している場合には、グループとしてどうするかを決める必要がありますので、それなりに議論が白熱することもあります。このグループの分け方だと、参加者からは「他の組織(または人)の考え方や理由が学べて良かった」というコメントが多くでてきます。

 グループ参加者が多国籍の場合

 このグループの分け方では、コミュニケーション手段が基本英語になる(参加者のほとんどが英語が母国語ではなく、英語に慣れ不慣れの差異が出てくる)ので、英語のコミュニケーション能力の高い人がグループの議論をリードするようになります。技術的知識が豊富な人ほど英語が苦手だったりする傾向はあるので、グループとしての議論は真の実力が発揮されにくいのですが、一方で参加者同士の関係構築という観点では多様な考え方に触れたり、関係構築もできたりというメリットがあるようです。多国籍な参加者の場合にコミュニケーションの問題をどの程度考慮するかというのは難しいのですが、なるべく参加者同士のコミュニケーションがとりやすくなるように配慮してグループ分けをしています。

 日本人参加者と海外参加者

 トレーニングを始めた2007年当時は、東南アジア、特にASEAN10カ国の参加者向けに実施する機会が多くありました。これらの国は、この10年ちょっとでめざましい発展を遂げました。それは、参加者の質もレベルもどんどん上がっていることからもよく分かります。当時と今では参加者の英語レベルも段違いです。今の参加者(特に若者に顕著)は欧米で教育を受けて自国に戻ってきている人も多いため、英語で活発に議論し、資料もきれいにまとめてプレゼンテーションしてくれます。

 トレーニング後も質問に来るし、FacebookやLinkedinで私のアカウントを見つけてコネクションを維持しようとする人も珍しくありません。参加者から数年ぶりに連絡が来たかと思えば「今度セキュリティのイベントをやるんだけど講演者として来てもらえないか?」というようなこともあります。一緒に食事などをすると彼らからは「自分の国の発展を支えたい」という言葉が自然と出てきます。

 一方、多国籍な参加者でトレーニングに日本人がいる場合、知識や経験は豊富なはずなのに英語の問題であまり活躍できていないことが多くあります。日本国内で日本人向けにトレーニングを行う場合も、参加者同士で議論してもらうきっかけを作るのが大変です。
 日本は何年も経済成長が止まっているとよくいわれていますが、トレーニング参加者の質問の豊富さや内容、参加者同士の議論のアクティブ度を見ると、10年前と現在で、日本はあまり発展していないのだなと感じさせられることが多いです。

 何が違うのか、というとさまざまな観点はあるかと思いますが、決定的に違う、と私が感じているのは「遊び心」ではないでしょうか。ちょっとしたジョークを言う、笑える雰囲気を作る、プレゼンテーション資料に少し遊び心を入れておくといった柔らかくするための工夫が日本人にはまだまだ少ないように思います。そういった、積極的に場を作る能力の差異が質問や議論といったところに現れているのではないか、と最近は考えるようになりました。

 仕事は仕事、遊びは遊び、と区別するように教えられ育ってきた日本の社会人にはまだまだ難しいのかもしれませんが、仕事の中に遊びの要素を取り入れていくことが円滑なコミュニケーションの下地となり、楽しく仕事ができる環境にもつながっていく、そういった側面は無視できないと感じています。
 私自身もいろいろなところで遊び心を発揮し、ときには「ふざけている」というコメントもいただきますが、不寛容社会と呼ばれて窮屈な思いをしている若者が伝統的な日本企業を避け始めている原因の一つはそこにもあるのではないでしょうか。やはり海外の人と関わり、世界のあちこちを見ていると、日本がずれていると感じる場面が多くあります。

 サイバーセキュリティの話から大分逸れてしまったように見えますが、各組織が抱えるサイバーセキュリティの問題点は、技術的なことよりも組織的なことである場合が多いと思います。サイバーセキュリティに限りませんが、コミュニケーションギャップは大きな課題の一つです。
 とくに大企業では、さまざまな年齢層の人が同じ環境で働いていますが、年の差による価値観の違いが年々大きくなってきているように感じます。「コミュニケーション能力」が重要視されるようになってからずいぶんたちますが、その裏には、コミュニケーションする者同士の価値観(何をヨシとするか)の違いによるコミュニケーションギャップが大きな敵として潜んでいるのだろうと感じます。


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                ITmedia エグゼクティブ  鎌田敬介








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