2020年01月08日
日本の存在の大きさを認めて「下働き国家」への凋落を回避せよ
日本の存在の大きさを認めて 「下働き国家」への凋落を回避せよ
〜ニューズウィーク日本版 1/7(火) 17:10配信〜
外交アナリスト 河東哲夫氏
〜「おもてなし」を自動翻訳機に頼る日本・五輪イヤーの今年コソ自らの国力を理解して世界に開くべき〜
今年はオリンピックイヤー。世界が日本に遣って来る。にも関わらず、日本は内向きムードだ。大学入試共通テストでの英語民間試験の活用、そして国語と数学での記述式導入は何れも見送りが決定した。これでは「おもてなし」をするにも自動翻訳機に頼り、何かを聞かれても自分の意見を言え無い日本人が再生産され続ける事に為る。
加えて景気は下り坂。「日本は縮む」と云う、自縄自縛の呪文が再来するだろう。財政・金融の大盤振る舞いで何とか耐えて来た安倍政権も、アメリカのカジノ王との統合型リゾート(IR)を巡る利権構造が暴かれれば、突然死を迎えるかも知れない。世界でも内向き傾向が強まる中、日本でも「国際化」の機運が逆回りしそうだ。
だが、世界における日本の店構えはマダマダ大きい。日本のGDPが世界全体の5.7%(2018年)に迄下がったと憂う日本人も居るが、人口比で世界の1.6%でしか無い国がこの規模のGDPを有する事は大した事で、これはカネと技術が日本に集中して居る事を示す。
人口減少でも労働人口は増えて居り、これ迄稼いだカネを死蔵せずに投資で増やせば、経済の縮小を防ぐことは容易だろう。
そして、円の価値は過小評価されて居る。円高に為ればドルベースのGDPはグッと上がる。更に日本は、海外に1000兆円分を超える資産を持って居り、それが生む利益の一部(18年で約23兆円)は日本に還流されている。
日本の富の基本を稼ぐ製造業では、電機・電子製品コソ輸出競争力を失ったが、先端部品や素材・製造機械の分野で過つての電子立国時代と同程度の輸出額を維持して居る。幸運な事に、自営農業が村落の主流だった江戸時代からの良き伝統なのか、日本人には自主性や自助努力の気概を持つ人間が多く居る。これが製造業やサービスの質を、現場から支える。
アジアとアフリカでは中国マネーが幅を利かせて居るが、長期低金利の円借款を初めとする日本のODAの総額(2017年)は年間2兆円を超え、世界でも3位の規模。
アジアでも、アジア開発銀行(アメリカと並び日本は出資比率トップ)を通じて円借款にも劣ら無い規模の資金を供与し、インフラ建設支援を続けて居る。日本のODAと直接投資はASEAN(東南アジア諸国連合)経済の飛躍に大きく貢献し、それは韓国や中国に付いても言える。
世界との関係あってコソ
だから途上国に住んでみると、日本の存在感の大きさが身に染みる。日本での出稼ぎを望む人の為の日本語学校は花盛りで、日本企業の工場建設の要望は引きも切ら無い。昨年末に来日したウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領は、火力発電所の建設等に1800億円もの円借款の約束を得て帰国したが、これは同国の中国に対する負債額にホボ匹敵する程のマグニチュードを持つ。
そして日本政府は、中東への自衛隊派遣を決定し、自国の利益を自ら守る気概と能力がある事を示す等、可成り大きな存在感を維持して居る。ツケ上がる事無く国際社会と付き合い、そこから利益を引き出すと同時に、国力に見合った責任を果たさ無ければ為らない。
世界との関係あってコソの日本。世界は日本にドンドン入って来て居る。単純労働だけで無く、企業の幹部にも外国人は増えて居るのだ。この「国際化」の時代、国民全員とは言わずとも英語で自在に議論出来る日本人を増やし、質を高めないと、日本は様々な面で「下働き国」に為ってしまう。「自動翻訳機でおもてなし」では、日本は世界から置いてきぼりだ。
本誌2020年1月14日号掲載 河東哲夫 外交アナリスト 以上
【関連報道1】2020年「アベノミクス破綻」で日本経済はコンなにヤバく為る
〜現代ビジネス 1/7(火) 7:01配信〜
文 町田 徹氏(右)
分厚いお化粧をした「政府経済見通し」
安倍政権は昨年12月20日に閣議決定した2020年度予算で、神業の様な編成を行った。と言っても、決して褒めて居る訳では無い。皮肉を込めて神業と形容して居るのである。
何故ならば、歳出を102兆6580億円と過去最大に膨らませたにも関わらず、歳入では新発国債の発行額を2019年度比で1000億円減らして10年連続で前年より減らすと云う魔法の様な編成と為って居るからだ。ココだけ見れば、長年掛け声倒れの財政規律も死守したかの様に映る。
しかし、当然ながらこの様な編成には裏がある。それは、63兆5130億円と云う、過去最高の税収を確保出来ると云う見通しだ。
家計に例れば、収入がガンガン増えるから、無計画に散財しても借金は増やさ無いで済むと言って居る様なものである。そんな事が現実に可能な訳が無い。税収は、万能の打ち出の小槌では無い。そして、ここからが本題だが、政府の高い税収見積もりには、2020年度の政府経済見通しでGDP(実質国内総生産)の伸び率を1.4%と、大方の民間シンクタンクの3倍近い高成長が実現すると云う乱暴な予測が根拠に為って居る。
バラ色の予算編成を装う為、分厚いお化粧が施された「政府経済見通し」を鵜呑みには出来ない。年度途中には、恐らく3〜4兆円規模の歳入欠陥が出て、今年度同様、赤字国債を追加発行する事態が予想されるのだ。今日は、2020年度の経済見通しをもう少し真面目に考えてみよう。
超強気の税収見通しだが・・・
安倍政権は経済成長や財政運営に付いて、羊頭狗肉の見通しを示す事が多いが、今回も突っ込み処満載だ。先ず、史上最大の税収の内訳を見て置こう。
2019年度補正予算では税収見通しを下方修正したばかりだが、その2019年度と比べて、2020年度当初予算案における税収は63兆5130億円と3兆3330億円も増えると政府は云うのである。一体、どの税金が幾ら入ると云うのだろうか。
税収トップの座に躍り出るのは、昨年10月に税率を10%に引き上げた消費税だ。税収額は21兆7190億円と、2019年度の補正後の予算と比べて2兆6570億円の増収に為る。
税収2位は、消費税に抜かれてトップの座から滑り落ちた所得税だ。コチラは税収の見込み額が19兆5290億円で、給与所得の増加等を背景に4650億円の増収に為ると云う。
3番目は、年明け以降の輸出回復が見込めると云う法人税だ。2019年度より3500億円増えて12兆650億円に為るとして居る。
何れも超強気の想定と言え、2019年度の当初予算で税収を62兆4950億円と見込んで居たにも関わらず、米中貿易戦争に伴う輸出の減少等に見舞われて、法人税収の当てが外れて、補正予算で税収総額を60兆1800億円に下方修正した反省が全く見られない。
政府の乱暴過ぎる「水増し予測」
更に無責任なのが、本稿の主題と言うか、この異常な高収入を当て込む税収の前提に為った経済見通しである。前述の様に、政府経済見通しは、2020年度の実質GDPの成長率を1.4%として居る。そして、その根拠は、12月上旬に決めた経済対策が内需を押し上げる事だと云う。それ故、2020年度の日本経済は2019年度見込みの0.9%増より加速するとして居る。
しかも、政府は、経済対策に加えて、個人消費や設備投資と云った内需全体が2020年度の日本経済を牽引するとバラ色の状況に為ると喧伝して居る。
しかし、この政府の予測は、民間シンクタンクの予測の平均値より1ポイント近く高い。具体的に言うと、日本経済研究センターが12月初めに36人のエコノミストに聞き取りを行い、35人から回答を得てまとめたESPフォーキャスト調査の平均値は0.49%増と2019年度からの減速を予想して居る。この格差だけでも、政府見通しの乱暴さは明らかで水増し予測と言えそうだ。
繰り返すが、この水増しの背景に、高い成長シナリオを描き、歳入増加を見込む事で、財政を悪化させずに過去最大の政府予算を編成出来ると装う狙いがあったと見られるのである。
アベノミクスは完全に破綻した
第2次安倍政権は昨年末と為る12月26日で発足から丸7年を迎えた。連続在任期間はオリンピック後の今年8月に史上最長と為るが、この異例の長期政権を支えて居るのが、戦後最長と喧伝して居る景気拡大だから、無理を言い続けて居ると云う事も言える。
安倍政権としては、前回2014年の消費増税時の大幅減速の前例があるから、消費増税で経済が悪く為ったとは口が裂けても言え無い処だ。ソコで、赤字国債を出さずに大盤振る舞いの景気対策をする為に、ソモソモ経済は良いのだと言い張る事にしたのだろう。しかし、これが、矛盾の塊の様な議論である事は一目瞭然だ。
先ず、消費増税前に、増税に伴う増収が5兆5000億円程度なのに対し、それを上回る6兆5000億円規模の経済対策を決め下駄を履かせた。処が、7月から9月の駆け込み需要が予想外に盛り上がったので「景気の山が高ければ、景気の谷深し」と慌て、2019年度補正に加えて、過去最大と言う2020年度当初予算を併せて「15ヵ月予算で切れ目無く経済対策を遣る」と言い出した。
だが、ココに矛盾がある。国債を発行し無くても税収が十分確保出来る程景気が良いのなら、予防的なものも含めて巨大な経済対策としての財政出動は不要の筈だろう。
一体、何が本当なのか。2012年末に第2次安倍内閣が誕生、翌年打ち出された当時から、アベノミクスは矛盾に満ちて居たが、ここに来て完全に破たんしたと言わざるを得まい。
民間エコノミストには、去年秋辺りから景気が後退期に入ったと見る人が多い。にも関わらず、政府がズッと強気と云う矛盾もある。今回の政府経済見通しでも、政府は「製造業を中心に弱さが一段と増して居る」としながら、全体では「穏やかに回復して居る」と訳の分から無い主張を続けて居る。
個人消費は落ち込むばかり
政府と民間で経済見通しに大きな開きがある原因として、何と言っても、個人消費の見通しの差が大きい事を指摘せざるを得ない。政府が1.0%増を見込んで居るのに対して、民間平均は僅か0.15%増に留まって居る。
今年10月の消費増税の影響に付いて、政府は、軽減税率の導入や幼児教育の無償化、或いはキャッシュレス決済を利用した場合のポイント還元と云った対策を打った事を根拠に、個人消費が2020年度の早い時期に回復すると見込んで居るのに対して、民間シンクタンクは増税前の駆け込み需要が無く為る事の影響を重く見て居る。加えて、ポイント還元が来年6月で終了する事等を理由に、民間には消費を抑制する効果が残存するとの見方が多い。
因みに、経済対策の内財政投融資の効果に関しても、政府と民間は見方が割れて居る。民間は押し上げ効果が政府の10分の1位しか無いと見て居るのだ。
この違いの背景に有るのは、建設現場の需給動向に関する評価の違いの大きさだ。民間投資の中で、不動産と言えば最も盛り上がって居る分野で、既に深刻な人手不足に陥って居る。この為、公共投資額を増やしても、政府が期待する通りには予算執行が進まず、景気浮揚効果も少ないと民間は見て居るのだ。
ゼロ成長、マイナス成長もあり得る
筆者は、政府に比べ堅実な経済見通しを出して居る民間の経済見通しでサエ、未だ楽観的過ぎるのではないかと不安に思って居る。その理由の第一は個人消費である。既に長期に渉って実質所得が伸びて居ないので、民間が期待する程回復し無くても不思議が無いのだ。加えて、もう一つ気掛かりなのが外需である。
ナカナカ本格的な終息に向かいそうに無い米中貿易戦争とこれから燃え盛りそうなアメリカとヨーロッパの貿易戦争。そして来月末に掛けてジョンソン首相が主張する形でブレグジットが進んでも、今後1年程度でイギリスとEU・ヨーロッパ連合がEPA・経済連携協定交渉で合意するのは容易で無いと見られる事等から、経済成長の大黒柱の一つである純輸出が、伸び無い処か落ち込むリスクを念頭に置く必要がある。ココは、潜在成長力が低く、外需と云う他人任せの日本の経済構造の弱点に注目せざるを得無いのである。
マイナス要因が重なれば、2020年度の経済成長は1%前後とされる日本の潜在成長力の半分程度の0.5%増に留まると云う民間予測の達成も難しく、ゼロ成長やマイナス成長に陥っても可笑しく無い。筆者は、その様に2020年度の経済を分析している。
こうした現状で必要なのは、経済見通しをお化粧して大盤振る舞いのバラマキ予算を組む事では無い。寧ろ、日本の構造的な弱みである人口減少、労働力不足、労働生産性の低さ等に手を付けないと、ゼロ成長やマイナス成長が長引く可能性は大きい。ここは小手先の財政政策では力不足なのだ。
安倍総理、ソロソロ耳触りの良さだけが取り柄のアベノミクスを磨き直すべき時期ではないだろうか?
町田 徹 以上
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