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2020年01月07日

「日本の借金1000兆円」はヤッパリウソでした それ処か財政再建は実質完了してしまう!





 


 

  「日本の借金1000兆円」はヤッパリウソでした 

   それ処か財政再建は実質完了してしまう!



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              〜経済学者 嘉悦大学教授 橋 洋一〜


 鳥越俊太郎氏もダマされて居た

 先週26日(土曜日)大阪朝日放送の番組「正義のミカタ」に出た。大阪のニュース情報番組だが、東京とは違って自由な面白さがある。ソコで「日本経済の諸悪の根源はZ」と云うコーナーをやった。Zとは財務省である。
 その中で筆者が強調したのは「借金1000兆円のウソ」である。借金が1000兆円も有るので、増税しないと財政破綻に為ると云う、殆どのマスコミが信じて居る財務省の言い分が正しく無いと指摘したのだ。借金1000兆円、国民一人当たりに直すと800万円に為る。
 皆さん、コンナ借金を自分の子や孫に背負わせて好いのか。借金を返す為には増税が必要だ・・・こんなセリフは誰でも聞いた事があるだろう。財務省が1980年代の頃から繰り返して来たものだ。

 テレビ番組は時間も少ないので簡単に話した。「借金1000兆円と云うが、政府内にある資産を考慮すれば500兆円。政府の関係会社も考慮して連結して観ると200兆円に為る。これは先進国と比較しても大した数字では無い」 
 これに対して、番組内で、ゲストの鳥越俊太郎さんから「資産と云っても処分出来ないものばかりでしょう」と反論があった。それに対して、多くの資産は金融資産なので換金出来ると言った。

 筆者がこう言うのを財務省も知って居るので、財務省は多くのテレビ関係者に対して「資産は売れ無いものばかり」と云うレクをして居る。鳥越さんも直接レクされたかがどうかは定かで無いが、財務省の反論を言って来たのには笑ってしまった。
 番組が昼に掛かり15分位の休憩があった。その時、鳥越さんから「金融資産とは何ですか」と筆者に聞いて来た。「政策投資銀行(旧日本開発銀行)やUR都市機構(旧住都公団)等の特殊法人、独立行政法人に対する貸付金・出資金です」と答えた。それに対して「それ等を回収したらどう為るの」と更に聞かれたので「民営化か廃止すれば回収と云う事に為るが、それらへの天下りが出来なく為る」と答えた。

 この遣り取りを聞いて居た他の出演者は、CM中の方が為に為る話が多いと言っていた。実際に、番組中で言う積りだったが、時間の都合でカットせざるを得無くなった部分だ。借金1000兆円・・・これは二つの観点から間違って居る。

 バランスシートの左側を見てみれば・・・

 第一に、バランスシートの右側の負債しか言って居ない。今から20年近く前に、財政投融資のALM・資産負債管理を行う為に、国のバランスシートを作る必要があった。当時、主計局から余計な事をするなと言われながらも、私は財政投融資が抱えて居た巨額の金利リスクを解消する為に、国のバランスシートを初めて作った。
 財政が危ういと云う、当時の大蔵省の主張はウソだった事は直ぐに判った。但し、現役の大蔵官僚であったので、対外的に言う事は無かった。

 筆者の作った国のバランスシートは、大蔵省だからか「お蔵入り」に為ったが、世界の趨勢から、その5年位後から試案として、10年位後から正式版として財務省も公表せざるを得無く為った。今年3月に、2013年度版国の財務書類が公表されて居る。
 http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/national)

 その2013年度末の国のバランスシートを見ると、資産は総計653兆円。その内現預金19兆円・有価証券129兆円・貸付金138兆円・出資66兆円・・・計352兆円が比較的換金可能な金融資産である。その他に、有形固定資産178兆円・運用寄託金105兆円・その他18兆円。

 負債は1143兆円。その内訳は、公債856兆円・政府短期証券102兆円・借入金28兆円・・・これ等が所謂国の借金で計976兆円。運用寄託金の見合い負債である公的年金預り金112兆円・その他45兆円。
 ネット国債・・・負債の総額から資産を引いた額 詰まり、1143兆円−653兆円は490兆円を占める。先進国と比較して、日本政府のバランスシートの特徴を言えば、政府資産が巨額な事で政府資産額としては世界一である。政府資産の中身に付いても、比較的換金可能な金融資産の割合が極めて大きいのが特徴的だ。

 なお、貸付金や出資金の明細は、国の財務書類に詳しく記されて居るが、そこが各省の天下り先に為って居る。実は、財務省所管の貸付先は他省庁に比べて突出して多い。この為、財務省は各省庁の所管法人にも天下れるので、天下りの範囲は他省庁より広い。要するに「カネを付けるから天下りも宜しく」と云う事だ。

 財政再建は、実は完了して居る?

 第二の問題点は、政府内の子会社を連結して居ない事だ。筆者がバランスシートを作成した当時から、単体ベースと連結ベースのものを作って居た。現在も、2013年度版連結財務書類として公表されて居る。http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/national/hy2013_renketsu.pdf

 それを見ると、ネット国債は451兆円と為って居る。単体ベースの490兆円よりは少なく為って居る。但し、この連結ベースには大きな欠陥がある。日銀が含まれて居ないのだ。日銀への出資比率は5割を超え、様々な監督権限もあるので、紛れも無く日銀は政府の子会社である。
 経済学でも、日銀と政府は「広い意味の政府」とマトメて一体のものとして分析して居る。これを統合政府と云うが、会計的な観点から言えば、日銀を連結対象としない理由は無い。筆者は、日銀を連結対象から除いた理由は知ら無いが、連結対象として含めた場合のバランスシート作る事は出来る。

 2013年度末の日銀のバランスシートを見ると、資産は総計241兆円、その内国債が198兆円である。負債も241兆円で、その内発行銀行券87兆円、当座預金129兆円である。そこで、日銀も含めた連結ベースでは、ネット国債は253兆円である。(2014.3.31末)
 直近ではどう為るだろうか。直近の日銀の営業毎旬報告https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac151220.htm/を見ると、資産として国債328兆円、負債として日銀券96兆円、当座預金248兆円と為って居る。

 直近の政府のバランスシートが判らないので正確には言えないが、敢て概数で言えば、日銀も含めた連結ベースのネット国債は150〜200兆円程度であろう。そのママ行くと、近い将来にはネット国債はゼロに近く為るだろう。それに加えて、市中の国債は少なく資産の裏付けの有るものばかりに為るので、或る意味で財政再建が完了したとも言えるのだ。
 ここで「日銀券や当座預金も債務だ」と云う反論が出て来る。これは勿論債務であるが、国債と比べてホボ無利子であり、しかも償還期限も無い。この点は国債と違って、広い意味の政府の負担を考える際に重要である。

 滑稽過ぎる 「日本の財政は破綻する」論

 この様にバランスシートで見ると、日銀の量的緩和の意味がハッキリする。政府と日銀の連結バランスシートを見ると、資産側は変化無し、負債側は国債減・日銀券(当座預金を含む)増と為る。詰まり、量的緩和は、政府と日銀を統合政府で見た時、負債構成の変化であり、有利子の国債から無利子の日銀券への転換と云う事だ。

 この為、毎年転換分の利子相当の差益が発生する・・・これをシニョレッジ〔通貨発行益〕と云う。毎年の差益を現在価値で合算すると量的緩和額に為る。又、政府からの日銀への利払いは直ちに納付金と為るので、政府に取って日銀保有分の国債は債務で無いのも同然に為る。これで、連結ベースの国債額は減少する訳だ。
 量的緩和が、政府と日銀の連結バランスシートにおける負債構成の変化で、シニョレッジを稼げるメリットがある。と同時にデメリットもある。それはシニョレッジを大きくすればする程、インフレに為ると云う事だ。だから、デフレの時にはシニョレッジを増やせるがインフレの時には限界がある。

 その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲内であればデメリットは無いが、超えるとデメリットに為る。幸いな事に、今の処、デメリットは無く、実質的な国債が減少して居る状態だ。

 こう考えてみると、財務省が借金1000兆円と言い「だから消費増税が必要」と国民に迫るのは、前提が間違って居るので暴力的な脅しでしか無い。実質的に借金は150〜200兆円程度、GDP比で30〜40%程度だろう。
 ちなみに、アメリカ・イギリスで、中央銀行と連結したネット国債をGDP比で見よう。アメリカで80%・65%、イギリスは80%・60%程度である。これを見ると、日本の財政問題が大変で直ぐにでも破綻すると云う意見の滑稽さが判るだろう。

 以上は、バランスシートと云うストックから見た財政状況であるが、フローから見ても、日本の財政状況はそれ程心配する事は無いと云うデータもある。本コラムの読者であれば、筆者が名目経済成長でプライマリー収支を改善出来、名目経済成長を高めるのはそれ程難しく無い、財政再建には増税では無く経済成長が必要と書いて来たことを覚えて居るだろう。
 その実践として、小泉・第一安倍政権で、増税はしなかったが、プライマリー収支がホボゼロと為って財政再建出来た。これは、増税を主張する財務省に取って触れられたく無い事実である。実際、マスコミは財務省の言い為りなので、この事実を指摘する人は先ず居ない。

 更に、来2016年度の国債発行計画を見ると、新規に市中に出回る国債はホボ無く為る事が判る。これは、財政再建が出来た状況とホボ同じ状況だ。こうした状態で、少しでも国債が市中に出たらどう為るのか。金融機関も一定量の国債投資が必要なので、出回った国債は瞬間蒸発する。詰まり、とても国債暴落と云う状況に為ら無いと云う事だ。
 何しろ市中に出回る国債が殆ど無いので「日本の財政が大変なので財政破綻・国債暴落」と言い続けて来た、デタラメな元ディーラー評論家・・・元と云うのは使い物に為ら無かった人達と云う事・・・には厳しい年に為るだろう。

 今の国債市場は「品不足」状態

 2016年度の国債発行計画http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2016/gaiyou151224.pdfを見ると、総発行額162.2兆円・・・その内訳は市中消化分152.2兆円・個人向け販売分2兆円・日銀乗換8兆円である。
 余談だが、最後の日銀乗換は、多くの識者が禁じ手として居る「日銀引受」である。筆者が役人時代、この国債発行計画を担当して居た時にもあったし今でもある。これは、日銀の保有長期国債の償還分40兆円程度(短国を含めれば80兆円程度)迄引受可能であるが、市中枠が減少する為、民間金融機関が国債を欲しいとして日銀乗換分を少な目にして居る筈だ。

 要するに、今の国債市場は国債の品不足なのだ。カレンダーベース市中発行額は147兆円であるが、短国25兆円を除くと122兆円しか無い。ここで、日銀の買いオペは新規80兆円、償還分40兆円なので、合計で120兆円と為ると、市中消化分は、最終的にはホボ日銀が買い尽くす事に為る。
 民間金融機関は、国債投資から貸付に向かわざるを得無い。これは日本経済に取っては望ましい事だ。と同時に、市中には実質的に国債が出回ら無いので、これは財政再建が出来たのと同じ効果に為る。日銀が国債を保有した場合、その利払いは直ちに政府の納付金と為って財政負担無しに為る。償還も乗換をすれば好いので償還負担も無い。それが、政府と日銀を連結してみれば、国債は無いに等しいと云う訳だ。

 こう云う状態で国債金利はどう為るだろうか。市中に出回れば瞬間蒸発状態で、国債暴落ナンて有り得ない。何しろ必ず日銀が買うのだから。こうした見方から見れば、2016年度予算http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2016/seifuan28/01.pdfの国債費23.6兆円の計上には笑えてしまう。23.6兆円は、債務償還費13.7兆円・利払費9.9兆円に分けられる。
 諸外国では減債基金は存在しない。借金するのに、その償還の為に基金を設けて更に借金するのは不合理だからだ。なので、先進国では債務償還費は計上しない。この分は、国債発行額を膨らせるだけで無意味と為り、償還分は借換債を発行すれば好いからだ。

 利払費9.9兆円で、その積算金利は1.6%と云う。市中分がホボ無く国債は品不足なのに、そんなに高い金利に為る筈無い。実は、この高い積算金利は、予算の空積・架空計上であり、年度の後半に為ると、そんなに金利が高く為ら無いので不用が出る。それを補正予算の財源にするのだ。

 マスコミは何時まで財務省のポチで居るのか

 この様な空積は過去から行われて居たが、その分、国債発行額を膨らませるので、財政危機を煽りたい財務省に取って好都合なのだ。債務償還費と利払費の空積で、国債発行額は15兆円程度過大に為って居る。こうしたカラクリは、予算資料を貰ってそれを記事にするので手一杯のマスコミには決して判ら無いだろうから、今コラムで書いて置く。

 何れにしても、政府と日銀を連結したバランスシートと云うストック面、来年度の国債発行計画から見たフロー面で、共に日本の財政は、財務省やそのポチに為って居るマスコミ・学者が言う程には悪く無いことが判るだろう。にも関わらず、日本の財政は大変だ・財政再建が急務・それには増税と云うワンパターンの報道ばかりである。軽減税率のアメを貰ったからと言って、財務省のポチに為るのはもう辞めにして欲しい。


                    以上







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