明日死んでも後悔しない生き方をする

地下鉄に乗っていた。

車両連結部分の扉が開いて、
小さい子を連れたご夫婦が移動してきた。

僕のすぐ隣にその子、その右隣にお母さん、
お父さんが座れるスペースが足りなかった。



僕はとっさに、どうぞと席を譲った。
お父さんはニッコリ笑ってくれた。

心がほっこり温かくなった。



僕は席を立ち上がった後、すぐ近くの柱に掴まり、
スマホを凝視している他の乗客を眺めていた。

18時過ぎ、帰宅する人たちだろうか。
疲れた顔をしてる人も多い。

ゲームに夢中になってる人も多い。

これから雪祭りか、飲みに行くであろう人たちの
弾んだ声も聞こえる。



その家族は僕と同じ駅で降りた。

雪祭りのメイン会場の最寄り駅であり、
市の中心部。

家族で雪祭りか食事に行くところかも知れない。



降車時、お母さんから声をかけられた。

「ありがとうございました。」

ニッコリ笑ってそう言ってくれた。
心がほっこり温かくなった。



この日の天候は吹雪。気温もかなり下がる。

僕は地下鉄とバスを乗り継いで、
今日のバスケ練習会場の近くまで着いた時、
既にけっこうな吹き荒れ方だった。

22時前に練習を終えて外に出た時は
さらに吹きすさいていた。



こんな天気だから、
雪祭り会場、大変だったろうなぁ。

あのご家族、
今日はすごく寒かったけど楽しめたかなぁ。

今頃どこかで食事しながら、
温かい飲み物でもいただいてたらいいなぁ。

一生の思い出がたくさんできてればいいなぁ。



今日は僕がありがとうと言われたけど、
むしろ僕の方こそありがとうといいたいんだ。

虚しさ、無力感に押し潰され
人生に折れてしまいかけている。

自分が生きる価値すら疑わずにいられない
この追い詰められた状況の中で、

人の役に立たせてくれてありがとう。
人に感謝されること、心がほっこり温かくなったこと。
嬉しかったよ、ありがとう。

あなた方ご家族に救われたのは
むしろ僕の方だよ。

また頑張ろうと思ったよ。