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2017年01月05日

月光と闇

遥か昔に大火事に襲われた国を、全てを凍らせてしまう剣が救ったという伝説がある。永遠に続く業火の苦しみから人々を救ったとされていた。その剣の周りには何千もの人型の氷像が佇んでいた。

世界中の武器を探し求める男が、剣の前に現れた。男は剣に幾重にも布を巻いて、剣を持ち出した。しかし、背中の荷物に入れて運んでいると、知らず知らずの間に布もろとも男は凍ってしまった。

旅の巫女が剣の前に現れた。巫女は神に祈りを捧げた後に剣を取ったが、指先からみるみる身体が冷えていく。巫女は神への冒涜の言葉を叫びながら凍っていった。

奴隷の女がある日、洞窟で岩を削る作業中に剣を見つけた。女はこんな苦しい毎日を送るなら、剣を突き刺して楽に死にたいと思い剣の柄を握った。しかし、女は凍ることもなく、剣で自分の体を貫くことも出来なかった。女が主に叩かれながら連れられていく様子を、月明かりに照らされた剣の刀身は映し続けた。
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2017年01月04日

涅槃の短剣

少女は生まれた時から婚約者がいると聞かされて育てられました。家の中で日々花嫁修業に励み、夜は窓から見える景色に向かって婚約者へ祈りを捧げました。「●●様、早く迎えに来てくれる日をお待ちしています。」

少女が暮らす家には、同じ年頃の少女が何人も暮らしておりました。少女たちは全員が同じ婚約者の為に、日々花嫁修業に励み、夜は祈りを捧げました。「●●様、早く迎えに来てくれる日をお待ちしています。」

ある日、婚約者として選ばれるのは、最も優れた一人ではないのかと少女たちが喧嘩をしました。自分が婚約者として一番優れている、と譲らない少女達に世話係の女は少女たちに優しく話しかけます。「大丈夫、あなた達は全員●●様のお嫁さんになれますよ。」それを聞いた少女たちは皆笑顔になりました。

婚約の日に少女たちが連れてこられたのは、家の窓から見える石畳が並ぶ場所でした。少女たちに一つの短剣が渡されます。婚約者に会うにはこの場所で命を絶たねばならない、そう聞かされた少女たちは我先にと短剣を奪い合いながら自害しました。その後、少女たちが死んだ場所に神殿が建てられました。神殿の名称は少女たちの婚約者の名前でした。

2017年01月03日

ゆりの葉の剣

アイシテル。私は彼を心から愛していました。彼も私を愛していました。外で目が合えば私にだけ分かる合図を送り、私の贈るものはなんでも喜んで、「勿体無いから金庫にしまっておく」と言うくらい大事にしてくれました。自慢の恋人でした。

シンジナイ。私の親友が彼をたぶらかし、私から彼を奪ってしまいました。忽然と私の前から消えてしまった彼。残ったのは、私と、部屋に錯乱した私の贈り物の数々。金目のものは、村の市場で売られていました。

ユルサナイ。彼は私を棄てたんじゃないわあの女に騙されてるのよ。彼はきっとまだ私に未練があるわ。だってあの女より私のほうが素敵ですもの彼を理解しているもの。早く、早く目を覚ましてねえ!あの女を引き離さないと、あの女を殺さないと!ハヤク、ハヤクコロセ!

狂人と化した女はそのうら若き夫婦を、持っていた剣が歪む程殴りつけ、叩きつけ虐殺した。以来女は行方をくらまし、残されたのは元は人だったとも思えない男女の肉塊と、真っ直ぐな刀身が醜く歪んでしまった剣。刀匠たちがいくら直そうとしても、その刃はもとに戻ることはなかった。

2017年01月02日

名もなき刀工の剣

ガツ ガツ ガツ ガツ
採掘場で男達が汗を流しながら鉄の石を削っている。
男達の陽気な歌が暗い洞窟に響き渡る。
俺達は労働者。鉱山の労働者。土にまみれた労働者。
今日も元気に鉄を掘る。
ガツ ガツ ガツ ガツ……

ブオ ブオ ブオ ブオ
たたら場で女達がふいごを踏む音がする。
真っ赤に焼けた砂から鉄を取り出す音がする。
私達は労働者。たたら場の労働者。風を送る労働者。
今日も元気にたたら踏む。
ブオ ブオ ブオ ブオ……

カン カン カン カン
鍛冶場で刀匠が槌を振るう音がする。
鋼を鍛え刃とする為の力強い槌の音が鳴る。
我は刀鍛冶。一振りの刀を生み出す刀鍛冶。鋼を御する刀鍛冶。
カン カン カン カン……

ザク ザク ザク ザク
戦場で肉が切られる音がする。
敵を殺して、誰かを殺して、人間を殺す音がする。
だれかたすけて。いたいよ。くるしいよ。おかあさんたすけて。
ザク ザク ザク ザク……

2017年01月01日

鉄パイプ

5月21日
とうとうお金がなくなってしまった。戦争のせいで食べ物の値段が高い。教会にいったけどケガをした人で一杯でぼくらを助けるよゆうはないって言われた。ヨナがやせてきている。何かおいしいものをたべさせてやりたい。

7月15日
親切なおばさんにあって食べ物をもらった。ぼくらと同じホームレスみたいだけど、何でも国の「救援しえんさく」っていうのに参加するみたいだ。いっしょにつれていってもらう事にした。ヨナも今日は元気そうだ。

8月1日
親切なおばさんが例の本を使ったら黒いオバケになった。あわてて逃げたけどおばさんはもう人間じゃなくなってしまったと思う。あの大人達が言っていた事は嘘だった。お金なんかもらえないしヨナの病気も診てくれない。街は高い壁で封鎖されていて出られなくなっている。こんなところに来なければ良かった。

8月5日
今日もすごく寒い。夏なのが嘘みたいだ。息も白い。オバケから逃げるためにスーパーマーケットに隠れる事にした。しばらくはそこに残っていた缶詰とかを食べていたけどそれはもうなくなってしまった。ヨナの咳は止まらない。何か良くない感じがする。

2016年04月12日

ワンの戦輪


私が元始であり唯一であればよかった。ワンと言う名の示す通り。

滅びを招く愚かな姉に相応しい愚かな末路を。世界を正しく律し、動かすのは私達の使命。

何を望み、何を失い、何を奪い、何を求めるのか、私は理解していた。私の中に流れるウタの力を知るのは、もう少し先だということを。

だが、本当にそうなのだろうか。私達の全てが誤っていないと、何故言えるのだろうか?

2016年04月11日

マナの杖

私が知っているのは喪失だけ。大きく何かが欠落している、虚ろの体。埋めるように救済を与えては、こみ上げる空虚から目を逸らす。

私が知らないのはかつての私。首を傾げ問いかけてくるのは、何も知らない真っ白な小さな子供。「天使はうたう?」

私を駆り立てるのは恐怖だけ。逃げても追い付かれる暗闇が、逃れられない業が。飲み込まれてしまってはいけない、いけない、と叫んでいる。

私に残るのは、記憶だけ。若く未熟で迷いながらも進む強い眼差し。あの眼差しに、いつか再び、見える事を糧としながら。

2016年04月10日

聖帝の棺

恵まれた土地があった。豊かな資源が約束された土地。国が飢えることなく穏やかに豊かに暮らせる理想の地。その地を争って人々は長きにわたり争いを繰り広げていた。

約束の地を手にし、国を疲弊させつつも守り続けていた王は老い、そしてついに病に倒れる。王は光を失った目で息子に語る。「本当にここは恩恵をもたらす約束の地なのだろうか?」

なぜ人々はこの地を巡り血で血を洗う様な争いを続けるのか?本当に生命の恩恵を人々にもたらすのならば、なぜこんなにも多くの者が苦しみ、憎み、その命をいたずらに散らすのだろう。

老いた王は息を引き取った。若き王子は王の死を静かに見つめ、その棺に密やかに誓いを立てる。王子は王となる。若き王が再び新たな物語を紡ぐのだが、それはまた別の話。

2016年04月09日

未亡人の咎

昔々ある所に、いつも一緒に遊ぶ三人の子どもがいました。少年二人と少女が一人。少年のうち一人は庭師の弟子となり、もう一人の少年は将校となり、少女は美しい娘に育ちました。

ある日娘は父を失い、貧困に窮した家を守るため、結婚することになりました。相手は幼馴染の将校の青年です。夫になった将校の青年は翌日戦地に赴くと決まっていました。

翌朝必ず戻ると笑った夫を見たのはそれが最初で最期でした。一晩で未亡人となった娘は、窓から外を眺めていました。彼女の心を慰めたのは夫が残した美しい庭の景色でした。

庭は季節や朝晩に応じて異なる景色を見せ、彼女を癒しました。けれど彼女は庭を整え続けていたのが幼馴染の青年だとは終ぞ知ることもなく、病で早逝したのでした。

2016年04月08日

天翔る碧風

命尽きようとしている女が居た。女は悪事に手を染めていたため、捕まり、拷問を受けた後火あぶりにされる処刑を待つだけだった。

女は叫ぶ。「我が子を奪った男がこの国の王だ。王を殺せぬまま火あぶりに処され死ぬ訳にはいかない」と憎悪の言葉を吐いた。ふと前を向けば、女の前に美しい青い目をした白馬がいた。

汚れない白馬に向かい女は罵詈雑言を吐き、やがて我が子を想い、嗚咽を漏らした。死にたくない。殺したい。気が付けば女は白馬に跨り王の前にいた。いつの間にか見知らぬ刃を握りしめて。

狂喜した女は王を殺した後、脱走の為白馬に跨がろうとしたが既に白馬の姿はなく、突如女の体はその場で発火し灰となった。どこからか軽やかな風が流れ、灰を舞い上げ、やがて空に消えた。

2016年04月07日

ヴィドフニルの羽根

昔、この地に鶏の兄弟がいた。兄は雄々しく力強い爪を持っていた。弟は知性あふれる頭脳を持っていた。

ある夜。気まぐれな神々は、世界中の鳥を集めこう伝える。「世界樹の頂点に登りし鳥にこの大空の支配権を与えよう」鳥達は我先にと世界樹の頂を目指した。

翼があるものは空を飛んだが陽光に焼かれて落ちた。爪があるものは幹を伝ったが蛇に食われて死んだ。二羽の鶏だけが力を合わせ頂点に辿り着く事が出来た。

「どちらか一方にだけこの大空を与えよう!争うがいい!」神が言い終わるやいなや、鶏の兄弟は神の喉を喰い千切った。世界樹を血で染めながら兄弟はいつまでも神を喰い続けた。

2016年04月06日

理の神判

十ノ刃「偽神ノ玉座」
其ノ威厳 神ノ如ク 鳴リ響カン

十一ノ刃「騎士ノ闇」
其ノ魂 騎士ノ如ク 誉レ高ク

十二ノ刃「女王ノ棘」
其ノ美 女王ノ如ク 清廉ニ

十三ノ刃「王ノ雷鳴」
其ノ力 王ノ如ク 滅ボサン

2016年04月05日

貴婦人の舞踊

華美なドレスを着て、華奢な髪飾りをつけ、豪華な靴を履いて鈴が鳴るような声で語り、たっぷりといたずらに微笑んで、それからあの方へと少し距離を縮めて耳元で愛を囁くのです。

滅びた鳥の羽飾り、小さな獣からいくつも剥いだ毛皮のコート。最も美しく咲いた瞬間にもぎ取った多くの花をお湯に浮かべ、教えて貰ったばかりの吟遊詩人の恋の歌を口遊むのです。

足下に跪いた何人もの男が愚かしい声で私の愛を乞い、聞き飽きた恋の詩をさも大事のように囁いていく。同じような毎日。同じような男達。煌びやかで退屈な日々。

誰か華美に飾り立てた刃でこの毎日を切り裂いて下さらない?なんて冗談にも思っていないことを口にして、路傍に朽ちる身汚い蛆虫のような連中を、今日も遠目に眺める毎日なのです。

2016年04月04日

紺碧の鋭刃

海に囲まれた小さな島があった。自然溢れる美しい島は人々が暮らす静かな場所であり、かつて大罪人が流され、そうしてそのまま朽ちた場所でもあった。

海が見える崖に作られた大罪人の墓には蒼い輪刀が突き刺さり、絶えず美しい花々が尽きることはなく添えられている。「誰のお墓なの?」幼い孫の問いかけに老人は答える。

「罪人の墓だよ」孫は更に問う。「悪い人なのになぜ皆お花をあげるの?」我々の生活を憂い革命を首謀した男が罪人として島に流されてきた。その清廉な罪人は慎ましく生き、死んだ。

それだけなんだよ。老人は遠くを眺めそれきり黙った。崖の上の蒼い輪刀は空と海の青を反射し、その刀身の紺碧をただ静かに深めるばかり。

2016年04月03日

慟哭する円環

どうして私の魔術を誰も認めない。なぜ私を称賛し、敬わない。なぜどうしてあいつがあいつがあいつが。あいつに勝ちたい。勝ちたい。あいつを打ち負かしたい。

あいつがいるから全ての魔術を奪うあいつがいるから私は正当に評価されないのだ、全てにおいてあいつが悪い。だからあいつを殺すのは私の責務だ。人類の糧だ。正義だ。

禍々しく歪んだ刀紋は呪いの言葉をたやすく飲み込む。やはり私は間違っていない。この呪われた剣であの魔術師を滅ぼし、私こそが偉大なる魔術師として崇めたてられるのだ。

ああ面白い!ああ嬉しい!ああ楽しい!さっきまで魔術師だった血塗れの物体を眺めながら大笑いし、興奮に足がもつれ枯れ井戸に落ちるまで、私は確かにこの世で最も偉大な魔術師だった。
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