昨日、飼育していたベトナムクシトカゲが亡くなりました。その事を報告したさい、大変多くのアクセスをいただきました。治療の記録のつもりで書いていたクシトカゲの記事ですが、意外と気にされていたのかな?と認識したりしました。
実際、自分がクシトカゲを飼育するにあたっては情報のあまりの少なさに悩まされました。マイナーなトカゲであるとともに、リアクションの少ないトカゲなのであまり記事にする事がないのかな?と思ったりしていました。それでも、悩める飼育者は自分だけではないでしょう。
それで、非常に短い期間ではありましたが、自分がクシトカゲに面して経験した事・思った事を書き綴ってみようかと思います。
ほんの三ヶ月弱程度の経験で、何が分かったのかと言う事もありますが、クシトカゲの情報を探している同胞に幾ばくかの参考になればと思います。
@「飼育は簡単」を鵜呑みにしない
クシトカゲに関しては、過去に某雑誌において「飼育は容易」といった感じで記載された事があります。自分を始め、それに惹かれて飼育してみようと思った方もいるかもしれません。さらに言うと、数少ないネットでの情報でもいい感じで飼えているものが多いので、尚更「飼うのが簡単」と思ってしまうのかもしれません。
ただ、ここで気をつけなければいけないのは、こう言う風に「飼育は容易」と言う方々はある程度の下地を持っている方々だと言う事です。
専門雑誌の記事を書いている方は当然、この道のプロですし、ネットで見る方々も何かしらの経験がある方達が多いです。
例えてみれば、コンピューターの仕組みを熟知した人がパソコンを簡単と言う様なものです。
玄人と素人。双方が言う「簡単」には大きな隔たりがあります。
そこの事を頭に入れておかずに手を出すと、多分自分の様な事になります。
自分もそれなりに色々な生体を飼育してきましたが、上手く飼えたのはレオパやフトアゴ、アオジタと言った基本種ばかり。
難しいとされる樹上性トカゲは、まだまだ経験も気の入れ方も足りなかったのだと思います。
そんな自分でも、ある程度の期間は好調を保てたのですから、クシトカゲが強健なのは確かです。
樹上性トカゲの入門種として、適しているのも確かだと思います。
ただ、その「簡単」はレオパやフトアゴの「簡単」とは別物です。
その事を、忘れないでください。
A 飼育環境について
一応、自分が飼育していた環境も記しておきます。
ケージは大体40×40×30の爬虫類用ケージを使用していました。
樹上性なので、ケージは高さがある方がいいのは確かです。
このケージの中に、黒土とピートモス、赤玉土を混ぜたものを厚めに敷き、太めの木の枝を二本、斜めに立てかけていました。また、垂直に止まる事を好むので、ケージの壁に鉢底ネットを貼り付けていました。調子のいい時は、これに縦止まりしている事が多かったです。
温度はエアコンで26°を維持し、さらに熱電球で保温。昼28°の夜25°。一番弱いW数の紫外線灯(スパイラルタイプ)を朝8時から夜8時まで点灯させていました。
バスキングランプは強い光と高温を好まないと言う事で、使用していませんでした。
水入れはトカゲが浸かれる程の大きさのタッパーに、エアレーションをかけて水を動かしていました。
この手のトカゲは止まっている水を認識出来ないので、この方法を使っていました。最初はドリップ式を使っていましたが、容器の水がなくなるとそれまでなので、水量に左右されないエアレーション式に変えました。
なお、どちらでも水を飲んでいる事を確認しています。
これに加え、朝夕の霧吹きで湿度を60〜100%に維持していました。
B 日常の世話
健常時には、朝と夕方に霧吹きで強めに散水。餌は2日に一度、レッドローチかジャイミルのダスティングしたものを食べるだけ与えていました。餌付きはよく、止まっている場所から飛び降りて餌を追ったりしていました。
体調を崩してからは、霧吹きを口元に吹き付けて水分を補給。朝夕に病院から出された薬を一滴ずつ投与。朝に爬虫類用ビタミン剤を一滴。カルシウムと整腸剤をダスティングしたハニーワームを毎日3〜4匹アシスト給餌していました。
C 気づいた事・注意すべき事
朝夕の散水は、かなり思い切って行った方がよい様です。ネットで得た情報ですが、自分は床材がヒタヒタになるまで散水していました。
歯が非常に鋭く、咥えた餌をザクザクにします。ジャイミルなどは途中で切れて落ちたりしますが、好調ならそれも追いかけて拾って食べます。
ピンセットへの反応もよく、敏感に反応して餌を奪い取ります。
ワーム系はピンセットで、ローチやコオロギは容器に入れておけば降りてきて食べます。
逆に、食欲がなくなってくると餌に手を出そうとして捕り損ねるとすぐに諦める様になってしまいます。
こんな様子が見えてきたら要注意です。
特に、餌がローチやコオロギの場合、羽根だけを噛んでしまい、そのまま本体を口に入れられずに食べる気をなくしてしまう事があったので、羽根のある餌は羽根をとって与えるといいと思います。
また、排泄を水に浸かって行う事が多かったので、水入れは必ず身体が浸かるものを。
最後に、拒食になってしまった場合の強制給餌ですが、自分はこれを最も後悔しています。
ウチの場合、2週間餌を食べなかった時点で強制給餌に踏み切りました。
掴むなり頭を撫でたりした際に、威嚇して口を開けてくれるなら良いのですが、頑固に口を閉じてしまう子がいます。
うちの子がそれでした。
こう言う場合、カード等の薄いものを口に差し込んで開けさせるのがセオリーですが、このトカゲは歯が固く噛み合っているのでカードが入りません。
仕方なく、口先に指先を引っ掛けて強引に開けていたのですが、これが最悪の手でした。
何回か行うウチに、負荷に耐えられずに下顎から歯列が剥がれてしまったのです。
病院の先生は、仕方のない事と言ってくれましたが、これが飼育失敗の最大の原因だと思っています。
なので、餌を食べなくなったからと言って、無理強いは決してしないでください。
彼らの身体は華奢で、簡単に損傷してしまいます。
なので、もし彼らを飼う際には拒食になる事も考慮にいれて、掴んだ時に口を開けて威嚇する子を選ぶのが有効だと思います。
選べる環境でなかった場合には、近くに爬虫類を診てくれる病院を確保しておき、そこの判断を仰いでください。
これらの条件が満たせない場合は、相応に技術を高めた上で、飼育に踏み切ってください。
最後に
これまでの事が、自分がクシトカゲの飼育について言える事です。
所詮、短期間で殺してしまった未熟者の言う事です。
無視していただいても構いません。
それでも、同じ事で悩んでいる方へのせめてもの助言になればと、これらをここに記します。
最後に、自分の所の様に、不幸なクシトカゲが少しでも減る事を祈っています。
ごめんね。クシトカゲ。
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