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2017年04月03日

金融庁Webサイトを散歩してみたA:金融レポートが深くて面白い(前編)



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金融レポートの中身を斜め読み

 前回の記事の続きです。

 金融庁のWebサイトを引き続き散歩していると、面白いレポートがありました。


  平成27事務年度 金融レポート


 金融庁が何を指向しているのか、どのように考えているのかを赤裸々に綴ったレポートです。
 金融システムの現状、重点施策の進捗と評価、投資商品の評価、FinTechへの対応、金融庁自身の改革など
 およそ金融の全てを網羅しています。全123ページという大作ですが、一度は読む価値があると思います。

 この中で、今回は投資商品の評価とFinTech(特にクラウドファンディング)への対応を取り上げてみます。
 (長くなりましたので、前後編に分けさせてください)

なかなか攻めている金融庁

 投資商品の評価については、レポートのp.59から
 「金融機関の顧客本位の業務運営を巡る課題と今後の対応策」
 という題名で掲載されています。
 (この「顧客本位の業務運営」が、前回記事のフィデューシャリー・デューティーに繋がります)

 レポートの内容は、なかなか攻めています。
 (以下、特記ない限り全ての画像や図表は、金融庁レポートより引用しています)

1.日本の投資信託は、アメリカに比べてダメすぎる

 20170403REP1.png

 上図の通り、日本の投資信託の上位5つとアメリカのそれを比較して、
 日本の方が販売手数料も信託報酬も高いわりに収益率低い、と切り捨てています。

 この原因は下記で述べますが、「顧客本位の業務運営をしていない金融機関」側の問題と、
 「金融リテラシーが低く目先ばかり追う投資家」側、両面の問題がある、というのが金融庁の意見です。
 (レポートではさらにこの現状を受けて、国民の中長期的資産形成を図る施策に繋がっていきます)

2.投資家側も、流行りばかり追うな

 投資信託がダメすぎるのは、日本の金融機関が顧客本位の業務運営をしていない結果でもあるのですが、
 一方で金融庁のレポートでは、投資家側にも問題がある、と言っています。
 それが下の表。アメリカと日本の、人気投資信託の変遷です。

 20170403REP2.png

 アメリカの人気投資信託は、株式・債券のインデックスが多く、10年間であまり変わっていません。
 一方で日本はインデックスファンドが少なく、10年で人気ランキングが様変わりしています。

 日本で多いのは、その当時のトレンドを追うテーマ型のアクティブ投資信託ですが、こういう商品は
 流行り廃りが激しくロングセラー商品として定着しにくいという特徴があります。
 また、パッシブ(インデックス)運用の投信に比べ、信託報酬などの手数料も高くなりがちです。

 この内容、金融庁は暗に「流行りばかり追ってないで、手数料の安い鉄板の投信で堅実に運用しろ」
 言っているのではないでしょうか。

3.回転売買で収益上げてるんじゃない

 特に、銀行の販売姿勢については、金融庁は痛烈に批判しています。

 20170403REP3.png

 銀行の投資信託の販売額・収益(左のグラフ)が順調な伸びを見せている一方、窓口販売の投資信託の
 総額(右のグラフの赤線)がほとんど伸びていません。

 ということはこれ、顧客の無知につけ込んで銀行が回転売買繰り返して手数料稼いでる、という事です。
 手数料は銀行側の得になる一方、顧客側の損になるわけで、非常に分かりやすい利益相反です。

 この問題を、「被害者の顧客と、悪人の銀行」という単純な構図にしていては、根本的解決はできません。
 銀行側にも否があるのは明らかなので、そこは是正しなければならないでしょうが、一方で顧客側も
 金融機関に運用を投げっぱなしにせず、知識と経験を積む事が必要とされる時代
なのだと思います。

4.顧客の運用方針考えて投信勧めなさい

 次に、「投信ランキング」のようなものがあると必ず上位に顔を出す、毎月分配型投信についてです。

 なお、私は毎月分配型投信は悪ではないと思っています。
 例えばリタイア後に資産を取り崩しながら生活するような場合、「能動的な投信の解約」という行為は
 分かっていても心理的壁が高いですが、毎月分配ならその行為を抵抗なく代わりにやってくれます。
 そう、要は使い方しだい、です。

 20170403REP4.png

 だと言うのに、グラフの真ん中3つ、「短期的収益」「中長期的収益」「バランス」と投資方針が異なる
 顧客相手に、分配頻度の高い投信を勧めている割合がほとんど同じ
なのはどういうことでしょうか。

 一般論ですが、利益は分配せず再投資した方が投資効率は高くなります。
 にも関わらず、すぐに現金を必要としない顧客にも、「人気商品だから」という理由で毎月分配型投信を
 勧めるのなら、それは「顧客の事を何も考えていない販売姿勢」と言われても反論できないでしょう。

5.その他の懸念

 これに加え、金融庁は以下のような事例があると懸念しています。


 ・系列会社の商品を意図的に高く評価し、グループ内の収益確保を優先している

 ・分配金利回りランキングなど、分配金利回りが高い=優秀な投信、と誤解される情報を提供している

 ・運用内容が同じ投信で、年1〜2回分配型があるのに、毎月分配型を推奨している

 ・四半期決算月に販売額が増加しており、業績目標達成のための営業をしていると思われる



 後編では、「保険商品」と「ファンドラップ」と「クラウドファンディング」について取り上げます。


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