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2017年06月16日

十角堂の殺人 --- 首のない死体の都市伝説

十角堂の殺人 --- 首のない死体の都市伝説

風花:
 そんみんおじさん。せっかく来たんだから、なんか事件の話しをして。

 ここは奈良県大塔村にある黃聰明(ファンソンミン)おじさんの家だ。そんみんおじさんは、今は鬼籍に入っているわたしの祖父の友人で、あの「こくしかんさくじんじけん」を見事に解決し、「正義と真実の使徒」と呼ばれている。わたしは、免許取り立てで、父のミニを勝手に駆ってルート168をてんそく村から一気に3時間半かけて南下したのだ。

そんみんおじさん:
 これは、「あのてんそく伝説さつじんじけん」が起きる1か月ほど前に、てんそく神社の十角堂でおきたおぞましい殺人の話しだ。
 この事件の根本は「犯人は誰か」でなく、「なぜ被害者の首がなかったのか」その原因こそが恐怖でだった。そして、犯人を指摘してのは、風花、おまえの父さんだ。

風花:
 えっ、そんな話し聞いたことないよ。

そんみんおじさん:
 あたりまえじゃ。その後の、「てんそく伝説さつじんじけん」「こくしかんさつじんじけん」の恐ろしさの中では、色あせてしまう事件ではあった。この、なぜ、被害者には首がなかったのか、こそが「こくしかんさつじんじけん」の根本であり、そのアンチテーゼが「てんそく伝説さつじんじけん」だからじゃ。

風花:
 もう、何でもいいから早く聞かせて・

そんみんおじさん:
 これはあの「てんそく伝説さつじんじけん」が起きる一週間ほど前、てんそく神社の十角堂で、ひとつの死体が見つかった。現場自体は密室での何でもなかった。十角堂という、てんそく神社の境内にあるてんそく湖の浮かぶ夢殿形のお堂は、風景を見る展望台のとして、一般に開放されているからだ。だから、トリックというようなミステリではない。

風花:
 どうして、それほどすごい事件じゃないやん。

そんみんおじさん:
 いや、衆目を集めたのは、おそらく頭を鈍器で殴られて殺されたと見られるその死体に、首がなく、死者がだれなのか分からなかったことだ。それと、どうして死体に首がないのか、それも都市伝説級の謎であった。 しかし、「てんそく伝説さつじんじけん」が解決した今となっては、どうでもよいのだが。

風花:
 首のない死体と言うことは、被害者と思われた人が犯人という、お決まりのエンディングでしょ?それとも連続殺人で、バラバラ死体で、被害者と思われる人の中で、頭部が見つかっていない人が犯人という、あの有名な「<3文字抹消>殺人事件」と同じトリック。

そんみんおじさん:
 違う。死体発見当初は、被害者が誰かを知っている村民はおらず、被害者は村外からきたと思われていたのじゃ。

風花:
 じゃ、死体に首がなかったのは、犯人が持ち去ったのじゃなかったのね。

そんみんおじさん:
 そのとおり。だから、頭はそこにあった。鈍器で殴られたとわかったのじゃ。

風花:
 それじゃいったい、どうして、首がなかったんだろう・・・。
 えっ? そんみんおじさん!さっき、「頭を鈍器で殴られて」と言わなかった?

そんみんおじさん:
 言ったよ。

風花:
 じゃ、どうして首がなかったが問題になるのよ!

そんみんおじさん:
 それは、わしの言い方が悪かった。正確に言うと、首が見つからなかったのじゃ。

風花:
 どういうこと?

そんみんおじさん:
 頭は見つかったが、首が見つからなかったのじゃ。

風花:
 何それ?

そんみんおじさん:
 そう、それこそがこの事件のキモなのじゃ。ところで、オバケのQ太郎知ってる、それともエリザベスを知ってる?

風花:
 Q太郎は知らないけど、エリザベスってあの「○魂」に出てくる看板に字を書いてコミュニケーションする生き物でしょ。

そんみんおじさん:
 そうじゃ。そのエリザベスに首はあるか?

風花:
 エリザベスに首なんかあらへんわって、そういうこと?

そんみんおじさん:
 そういうこと。死体はとにかく太っていて、首がなかった。胴の上に頭が乗っていた。どうすれば、こんなに太ることができるんだろう、というのが謎じゃった。
 とはいえ、お前の父さんは、被害者の尻にあった横向きの「ふ」の文字から、「寝るふ」の地下実験室での極秘実験とてんそく村伝説との関連に気付いた。それも、「てんそく伝説さつじんじけん」が発生するまで、全くの謎だったのだ。

風花:
 それじゃ、被害者が太ったのはその極秘実験が原因というわけ。

そんみんおじさん:
 そう、つまり、犯人は診療所の後宮金蔵医師だった。

風花:
 わかりました。でも、これじゃ「十角堂の殺人」と名付ける程の大事件じゃないでしょ。

そんみんおじさん:
 そうかもしれん。しかし、われわれは、首のない死体は、捜査陣を撹乱しようという意図で行われるとは限らない、と言いたかったのじゃ。

風花:
 ようするに、首のない死体の新たなパターンとして、読者や聞き手を騙す「叙述トリック」もあるわけね。

 こうして、大塔村の夜はふけていくのであった。

                        おしまい。
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とつぜんですが、目に抜けたまつ毛が入ったら辛いよね。

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ペトロニウス
事故と遭難の臨死体験から甦った、メンタルケア心理士、上級心理カウンセラー、行動心理士、キャリアカウンセラー、日本語教育能力試験合格、文学博士、法学修士です。 「三行日記」をはじめてから救われました。これは宗教じゃなく、「引き寄せ」、「思考は現実化する」を最も簡単確実に実現する方法です。しかも、副作用は無いです。
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