○第二章 身体を侵す放射線被害
・放射線とは何か:内部被曝で主に問題となるのは、アルファ線とベータ線なのです。これは、原爆で直瀑を受けるなど、外から強いガンマ線を大量に浴びるのに比べると、放射線の総量としては、少ないので「低線量被曝」といって今まで無視され続けていました。しかし今、特に福島第一原発の事故に関しては、これこそが問題なのです。
・放射性物質の「半減期」とは:プルトニウムは化学的毒性も強く”世界最凶の猛毒”と言われています。「プルート」、つまり地獄の冥王の名前が元素名についているのも、そのためです。
・ベクレル、グレイ、シーベルトという単位の違い:「シーベルト」という単衣は実際に機械で直接測れる値、つまり実測値ではありません。過去の研究に基づいてグレイに係数をかけたものであって、それは”過程によって成り立っている”ということにも必要です。それがどこまで現実と合致しているか、実は未だによくわかっていません。つまり、内部被曝の量を正確に知る手立てはまだないというのが実情なのです。
・放射線が身体を壊すメカニズム:DNAをはじめ、原子や分子はすべて電気の力でつながっています。また、新陳代謝のメカニズムも、全部電気の力が関係する化学反応です。その力はせいぜい数電子ボルトから数十ボルト。ところが電離放射線の力は数百万電子ボルトです。とてつもなく大きな力で電子をふっ飛ばし、DNAを壊してしまうのです。
・放射性物質別、人体への影響:年齢が若いほど甲状腺はヨウ素を取り込みやすいので、特に小さい子供ほどその影響は大きくなります。チェルノブイリ原発事故の後、近隣の集落で子供たちの甲状腺ガンが急増したのが最もわかりやすい令でしょう。
・セシウムは男性の方が蓄積しやすく、心筋梗塞を起こす:福島第一原発で起きた、心筋梗塞による原発作業員の死。彼は事故後、まだ誰も入ったことがなかった建屋内の部屋に入って作業をしていました。その2日後、突然心筋梗塞で亡くなったのです。この人はセシウムを吸い込んだのではないかと強く疑っています。
○第三章 低線量被曝のメカニズムを解明した「ベトカウ効果」
・「ベトカウ効果」が低線量被曝の問題を証明した:ベトカウは同じ実験を何度も繰り返しましたが、いずれも同じ結論になりました。そして、より低線量の放射線を長く浴びせることで細胞膜が壊れてしまうことを実証しました。そして、放射線の照射時間を長くすればするほど、細胞膜を壊すのに必要な放射線量が低くてすむこともわかりました。これは一部の研究者からはノーベル賞に値する大発見だと言われました。なぜかというと「浴びる放射線量が高ければ高いほど、細胞膜などの体組織に悪影響を与える」という当時の常識を180度ひっくり返したからです。こうして「低線量の慢性的な被曝は、高線量の短時間照射よりも影響が大きい」ということが証明されたのです。
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○第6章 被曝に対抗するにはどうしたらいいか
・被曝から逃れるのは難しい:大気や水は離れれば離れるほど放射能は薄まりますが、食べ物は全国に拡散してしまいます。ですから「汚染された農作物や魚介類を農業者や漁業者のために積極的に受け入れよう」という話には賛同できません。それどころか、それによって病気が増えて医療費が上がり、逆に被害者への補償が十分にできなくなる可能性すらあるのです。補償はすべきですが、食べ物の話は別です。
・放射線に対抗する唯一の方法は、生まれつき持っている免疫力を弱めないこと:私は「自分で自分の身体を守るしかない」とはっきり言います。特別な方法はありません。「放射線に対する免疫力を弱めないように、健康に生きる」という、この1点につきます。
・フリーラジカルから身体を守る栄養素:食べ物から採れる抗酸化物質の筆頭はビタミンEです。ビタミンEは確実に細胞膜に定着し、活性酸素による急激な連鎖反応を止める役割を果たします。フリーラジカルによる細胞膜の破壊は、例えて言うなら数百本のマッチ棒に点火するようなものです。ビタミンEはその家事を消火する役目を果たします。また、ビタミンEは血液中を循環する脂質も酸化から防御するので動脈硬化も防ぐとことができます。ビタミンCもセレニウムという原子とともに細胞膜を防御します。また、ビタミンA、ベータカロチンも抗酸化作用をもっています。亜鉛、銅、マンガンなどの微量栄養素も、酸化から身体を守る働きをします。これらは体液中に溶け込んでイオン化するとフリーラジカルと反応し、身体の中のフリーラジカルを適正な量に保ってくれることがわかっています。
・頼りになるのは医者でも薬でもなく自分自身:世な中で頼りになるのは医者でも薬でもなく、自分自身なのです。特に放射線による影響に対しては、薬を飲んでも注射を打っても効きません。そもそも、放射線のことを知らない医者に診てもらっても何もわからないでしょう。それよりも免疫力を弱めないためにはどうすればいいのかなど、自分で情報を集めて勉強して、「この情報は信用できる」と判断できるようになることが必要です。
また、政府も私達を守ってくれません。福島県二本松市で除染を求めて仮処分申請を起こしたゴルフ場に対する東電の回答は「そのゴルフ場に降りかかった放射性物質は「無主物」、つまり持ち主がいないものだから、ゴルフ場の責任で除染すべきだ」というものでした。驚くべきことに裁判所もこれを追認したのです。日本中除染するのは不可能だと国が判断したのではないでしょうか。これでは、原爆の時の日本政府以下の対応です。
○解説 肥田先生からの手紙 竹野内真理
・2011年3月15日、世田谷区にある東京都産業労働局で立法メートルあたり数百ベクレルの放射性物質が測定されていた。また、後に小出裕章・京都大学助教が台東区で3月15日に調べたデータが発表された。小出氏はデータの発表を「パニックになるから」と上司から止められたという。
・チェルノブイリの教訓とバンダジェフスキー論文:2006年にアカデミー賞ドキュメンタリー部門を受賞した映画「チェルノブイリ・ハート」も記憶に新しいもので、まだご覧になっていない方にはおすすめしたい。そこではチェルノブイリ原発事故の影響で健康な新生児の割合が2割に落ち込んでしまったという衝撃的な事象を紹介している。そして心臓欠陥をもつ子供が数多く生まれ、手術を待つ子供が間に合わずになくなってしまうという過酷な事実。2011年12月本書にも幾度か引用されているバンダジェフスキー著「放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響」という本が正式に出版された。セシウムの内部被曝による人体への影響を詳細に著したもので、この本は今最も読まれるべきだ。ゴメリ医科大学の学長であったバンダジェフスキーは、亡くなった多数の患者を解剖し、各臓器のセシウム蓄積量と病変を徹底的に研究した。もちろんこのような研究は日本にも、また世界にも皆無と言ってよいだろう。
・子供たちは今からでも強制疎開にすべき:最近福島のある高校で自転車通学をしていた学生二人がほとんど同時期に心筋梗塞で死亡していたという悲しいニュースを聞いた。二人共先天的な心臓病疾患は持っていなかったにも拘らずである。「放射能との因果関係がない」とは、解剖して心臓にセシウムが溜まっていないことを確認したのでない限りは言えないはずである。
・子供たちがガンになるのを待っているのか:山下氏は福島事故直後「年間100ミリシーベルト以下の被曝であれば大丈夫だ」と講演して回ったと聞く。ところが前述の2009年の同論文には、「主として20歳未満の人たちで、過剰な放射線を被曝すると、10から100ミリシーベルトの間で発がんが起こりうるというリスクを否定できません」と書かれている。過去に自分が書いたことと、福島で住民に説明している内容が全く違うのだ。現松本市長の菅谷市長も5年半に渡るチェルノブイリ救援活動の経験から「甲状腺がんにかかった子供の6人に1人が、その後肺に転移している」と書いている。憂慮する自体は福島に限ったことではない。2012年3月初頭、東京都にある医師が3.11後に体調を心配する市民60人ほどの血液検査をしたところ、異型リンパ球の患者が東京や千葉の高汚染地帯に、そして特に乳幼児に多く発見されたという。関東であっても高度に汚染された場所から子供たちは避難すべきなのである。国による異常といえるこの無策状態に私達は麻痺されることなく行動しなければ、子供たちの命と健康が機器にさらされるのである。
本書には様々批判もあるようだ。しかし、こうした論点はきちんと整理をしておくことが必要であろう。
何事も十分な議論が必要である。
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