その道路は、その橋はいらない、我慢するから、という選択が重要だ。
インフラで便利になった状態から後退するには苦痛を伴う。
以下の論説によれば410兆円のインフラ維持費がかかるということ。
ばらまきは過疎を放置することではなく、額を減らしてゆっくりやることで対応をしてきたのが経緯。
簡単に、あの限界集落はつぶしましょう、見捨てましょうができれば、こんなに効率的なことはない。
NHKより。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/146669.html
視点・論点 「インフラ老朽化とどう向きあうか」2013年02月05日 (火)
東洋大学教授 根本祐二
昨年12月に発生した中央自動車道笹子トンネル事故をきっかけに、インフラの老朽化問題への注目が高まっています。
日本のインフラ整備は、1960年代、70年代に始まっていますので、今後急速に老朽化することになります。老朽化の症状が、笹子トンネルの天井板だけに表れ、他は安心だという理屈はあり得ません。同じような事故は、日本中どこで起きても不思議ではないことに、まず、気づくべきだと思います。
先日、首都高速道路会社の調査研究委員会は、老朽化著しい首都高速環状線や羽田線の作り変えや改修のため、最大9100億円の投資を速やかに行うことが必要であると発表しました。全国で、老朽化が原因と考えられる水道管の破裂事故や、市役所の倒壊危険例が少なからず報告されています。
わが国のインフラ整備は、トンネルだけでなく道路、橋、水道、下水道、学校、公営住宅などすべてにおいて、短期間に集中して整備されたあと、大幅に減少するというピラミッド型を描いています。この結果、更新も短期間に集中するとともに、今の公共投資予算では大幅に不足することになります。
こうした認識を受けて、安倍政権では対策を打ち出しました。先月12日に閣議決定した緊急経済対策では5兆2千億円の公共事業費が計上されています。さらに、先月29日に閣議決定した平成25年度予算では、防災・安全交付金などの公共事業予算が5兆3千億円計上されています。当面10兆円を超える予算が確保されることになります。
今まで、インフラは一度作ったら半永久的に使えると誤解されていました。私たち一般の国民はもちろん、政治家も役人も学者もマスコミも民間企業も、老朽化問題を軽んじてきました。この流れを断ち切り、国民の安全を守るために使うのは正しいことです。大いに、この政策を進めていただきたいと思います。
しかしながら、この政策には大きな問題があります。
第1に「予算の不足」です。私の試算では、日本全国のインフラを今のまま更新するだけでも、年間8.1兆円の投資を50年間続ける必要があります。
1、2年は可能でも50年間続けていくことは不可能です。インフラ老朽化問題は日本人が長いあいだ見過ごしてきた構造的な問題であり、1、2年予算を増やしたぐらいで解決できるものではありません。
息長く続けるためには借金、つまり国債を増発し続けることが必要になります。これが第2の問題である「高まる負債依存」です。民間企業は、設備投資を減らしている時期は、同時に負債も減らして将来の支出に備えています。しかし、日本の国は、90年代以降、公共事業を大幅に減らしながら、負債は逆に増やしています。今や、事実上破たんしたギリシャをもしのぐ負債依存国になってしまいました。子供や孫の世代のことを考えると、さらに負債を増やすのは絶対に避けなければなりません。
では、どうすれば良いでしょうか。
まず、国には、インフラの維持補修・更新に重点を移し、補助金・交付金を組み替えることを求めます。維持補修・更新の重要性は90年代から指摘されていましたが、現実には成果が出てきませんでした。その理由は、同時に「新規投資も重要である」というメッセージを出したからです。政治家や住民は、地味な維持補修よりも、見た目に分かる新規投資を優先してしまいます。その結果、重要なはずの維持補修・更新に予算が回らなくなりました。
今後は「維持補修・更新投資を優先する」、さらに言えば「新規投資を後回しにする」というメッセージが必要です。私たちも、国や自治体が、優先度の低い新規投資に安易に予算を使わないように厳しく監視しなければなりません。抵抗もあるかもしれませんが、現在あるものすら更新できず、国民を危険にさらしている状態ならば、「新規投資を後回しにする」という主張は十分に理解されると思います。
また、インフラの9割を所有する地方自治体は、できるだけインフラの負担を減らす方法を考えるべきです。私は、10を超える自治体の活動をお手伝いしながら、さまざまな工夫を進めています。公共施設と道路、橋などに分けてご紹介します。
まず、公共施設に関しては、施設の種類によって管理する3階層マネジメントという方法が有効です。
自治体に一つしかないような中央図書館、文化ホール、大型体育施設などは、隣町と一緒に使う「広域化」という発想に変えます。自分の町にすべてそろえるというワンセット主義を捨てることを意味します。
小中学校区単位では「多機能化」が有効です。老朽化した学校を建て替える際に、校区内の公民館、地区図書館、保育所、幼稚園、児童館、デイケア施設などと一体的に建設し、将来のニーズに応じてさまざまな機能に変えられるようにします。
集会所、公営住宅などの住区単位の施設は、自治体が資産を持たない「ソフト化」が有効です。公営住宅の建て替えをやめ、民間アパートの空室を借りて家賃を補助すれば、財政負担を下げ民間も助かります。
こうした方法を通じて発生する土地や建物の余った分を、民間に売却または賃貸すれば、さらに効果が出ます。東洋大学が最近調査した東京都国立市の例では、早目に都市化した分老朽化が著しく、今までの予算規模では半分しか更新できないと予測されました。しかし、3階層マネジメントをすべて取り入れれば、不足が解消することが明らかになっています。
一方、道路、橋、トンネルなどは、「事後保全から予防保全への転換」が有効です。今までは、「道路の穴をふさぐ」、「天井の雨漏りを補修する」という事後保全でした。笹子トンネルの例を見るまでもなく、事後保全では住民の生命を守れません。これを、「穴があかないように、雨漏りしないように管理する」予防保全に切り替えます。民間に委託するなど予防保全費用はかかりますが、事後保全費用がかからなくなり寿命も延びるので、全体費用は削減できます。
私の試算では、これらの方法で、負担を3割から5割削減できることが明らかになっています。隣町に行くとか、古い施設を使うとか多少不便にはなるかもしれません。しかし、公共サービスとしての機能はしっかり維持されています。何より住民の安全と健全な財政が実現します。
そもそも、立派で新しいインフラが豊かさを意味するのでしょうか。
その昔、幕末に来日したペリー提督は、日本の商家の奉公人が自筆で親元に手紙を書いているのを見て驚いたといいます。専用施設を持たず、専任教員すら不足している中で、人々の知恵と協力による寺子屋システムが、当時世界でも群を抜く識字率、読み書きできる人の割合を実現しました。
今、ユネスコは、この方法が現在の新興国の模範になると考え、普及活動を開始しています。ワールド・テラコヤ・ムーブメントと名付けられたこの活動は、日本人の「節度あるライフスタイル」を賞賛するものでもあります。
今、インフラに依存しない先人の知恵に学び、節度を守る日本人に戻るべきときだと思います。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image