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2018年08月13日
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である
高齢者高血圧患者に投薬する際、注意していること
高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS‒HT2017)」2017/7/20から
高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療を実施
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。
高齢者においても降圧治療による
脳卒中や
心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や
慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、
高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。
ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。
生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。
原則、認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意
高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、
軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が強いため、降圧治療を行う。
ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。
一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。
また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。
転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨
サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、
転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。
しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる能性があるため、注意が必要である。
Ca拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性
もっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。
そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。
また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。
一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。
しかし、「利尿薬」という名称から、患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。
個別判断が必要なケースも。
終末期は、降圧薬の中止も積極的に検討
高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、
65〜74歳では140/90mmHg未満、
75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。
また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、
身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、
降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。
終末期の高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。
「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載
第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、
原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。
心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。
また、高齢者の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、
「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間〜3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。
さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシー(多剤投与)やアドヒアランス(服薬遵守)の対策などのポイントが挙げられている。
■参考
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」
(ケアネット 後町 陽子)
高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS‒HT2017)」2017/7/20から
高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療を実施
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。
高齢者においても降圧治療による
脳卒中や
心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や
慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、
高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。
ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。
生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。
原則、認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意
高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、
軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が強いため、降圧治療を行う。
ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。
一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。
また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。
転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨
サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、
転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。
しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる能性があるため、注意が必要である。
Ca拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性
もっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。
そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。
また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。
一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。
しかし、「利尿薬」という名称から、患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。
個別判断が必要なケースも。
終末期は、降圧薬の中止も積極的に検討
高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、
65〜74歳では140/90mmHg未満、
75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。
また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、
身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、
降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。
終末期の高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。
「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載
第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、
原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。
心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。
また、高齢者の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、
「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間〜3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。
さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシー(多剤投与)やアドヒアランス(服薬遵守)の対策などのポイントが挙げられている。
■参考
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」
(ケアネット 後町 陽子)
2018年08月12日
私が、高齢者高血圧患者に投薬する際、注意していること 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である
私が、高齢者高血圧患者に投薬する際、注意していること
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。
高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS‒HT2017)」2017/7/20から
「高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療を実施」
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。
高齢者においても降圧治療による
脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や
慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、
高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。
ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。
生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。
原則、認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意
高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、
軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が強いため、降圧治療を行う。
ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。
一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。
また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。
転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨
サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、
転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。
しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる能性があるため、注意が必要である。
Ca拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性
もっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。
そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。
また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。
一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い
しかし、「利尿薬」という名称から、患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。
個別判断が必要なケースも。
「終末期は、降圧薬の中止も積極的に検討」
高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、
65〜74歳では140/90mmHg未満、
75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。
また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、
身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、
降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。
終末期の高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。
「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載
第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、
原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。
心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。
また、高齢者の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、
「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間〜3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。
さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシー(多剤投与)やアドヒアランス(服薬遵守)の対策などのポイントが挙げられている。
■参考 日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」 (ケアネット 後町 陽子)
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。
高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点
日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS‒HT2017)」2017/7/20から
「高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療を実施」
高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。
高齢者においても降圧治療による
脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や
慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、
高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。
ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。
生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。
原則、認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意
高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、
軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が強いため、降圧治療を行う。
ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。
一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。
また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。
転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨
サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、
転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。
しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる能性があるため、注意が必要である。
Ca拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性
もっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。
そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。
また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。
一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い
しかし、「利尿薬」という名称から、患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。
個別判断が必要なケースも。
「終末期は、降圧薬の中止も積極的に検討」
高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、
65〜74歳では140/90mmHg未満、
75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。
また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、
身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、
降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。
終末期の高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。
「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載
第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、
原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。
心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。
また、高齢者の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、
「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間〜3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。
さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシー(多剤投与)やアドヒアランス(服薬遵守)の対策などのポイントが挙げられている。
■参考 日本老年医学会「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」 (ケアネット 後町 陽子)
熱中症に関してよくある三つの間違い(2)
熱中症に関してよくある三つの間違い(2)
熱中症と脱水症対策
◇脱水時の水分補給
高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。
汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。
スポーツドリンクや、0.1%〜0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。
また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。
暑い時期には常備しておくのがお勧めです。
日本スポーツ協会のホームページにもこのことが書かれていますので、参考にしてください。
ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。
病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。
血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。
このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。
◇体の冷やし方
顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。
体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。
体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。
熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。
万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。(了)
熱中症と脱水症対策
◇脱水時の水分補給
高温環境下で活動し、多量の発汗で失われた水分を、水やお茶など電解質の少ない飲料で補うと、体液が薄まり、かえって脱水が悪化する危険性があります。
汗をかくと、水分と同時にナトリウムなどの電解質が失われるため、電解質を十分に含む飲料での補水が重要です。
スポーツドリンクや、0.1%〜0.2%の食塩水を使って水分補給を行うのがよいでしょう。
また、経口補水液は、脱水の際に飲むには理想的な選択肢の一つです。
暑い時期には常備しておくのがお勧めです。
日本スポーツ協会のホームページにもこのことが書かれていますので、参考にしてください。
ちなみに、熱中症で外来受診された方に点滴を行うことがありますが、一般的な点滴の量は1本500ml、つまり、小さなペットボトル1本分です。
病院まで行って1本点滴をするくらいなら、作業中や運動中に同じ量の水分を補給する方がよいでしょう。
血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がよほど生理的で適切な水分補給と言えます。
このことは、スポーツや炎天下での作業に関わるチームの指導者の立場にある方に、十分ご理解いただきたいと思います。
◇体の冷やし方
顔がほてってきたり、体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温を下げるのには役に立ちません。
体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。
体の中で太い血管が通っている場所は、首と脇の下と足の付け根(そけい部)です。
熱中症の応急処置としては、この部分を氷や保冷剤でしっかり冷やすことが大切です。氷や保冷剤がなければ、この部分に水をかけてうちわであおぐのも効果的です。
万が一のときの正しい応急処置の方法をしっかり覚えておくとよいでしょう。(了)
2018年08月11日
熱中症に関してよくある三つの間違い(1)
熱中症に関してよくある三つの間違い(1)
熱中症と脱水症対策
外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。
今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。
熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。
倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。
重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。
一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。
高齢の方が重症になる理由は二つあります。
一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。
もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。
例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。
また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。
一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。
◇若い人の対策
確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。
しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代〜50歳代くらいの比較的若い方です。
典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。
周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。
また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。
体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。
よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。
これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。
熱中症と脱水症対策
外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。
今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。
熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。
倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。
重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。
一般的に、熱中症が重症化しやすいのは高齢者と子供(乳幼児)です。
高齢の方が重症になる理由は二つあります。
一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。
もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。
例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。
また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。
一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。
◇若い人の対策
確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。
しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代〜50歳代くらいの比較的若い方です。
典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。
周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。
また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。
体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。
よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。
これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。
タグ:熱中症
2018年08月10日
おやつには,ドライフルーツやナッツを常備しましょう
おやつには,ドライフルーツやナッツを常備しましょう
ヒトの脳は「脂質+糖質」を好むようにできている
提供元:HealthDay News 公開日:2018/07/10
ヒトの脳は、本能的に脂質と糖質の組み合わせを好むようにできている可能性のあることが、米イェール大学精神科のDana Small氏らによる研究で示唆された。
この研究では、脂質と糖質のいずれかを多く含む食品よりも、ファストフードや加工食品などの両方を含んだ食品の方が、脳内の報酬系のシグナル伝達を増強することが明らかになったという。
詳細は「Cell Metabolism」6月14日オンライン版に掲載された。
これまでの研究で、食欲を司る脳領域に空腹感や満腹感を伝えるシグナルは、主に腸管から伝達されることが分かっていた。
一方、最近の研究では、脂質を摂取したときと糖質を摂取したときでは、異なるシグナル伝達経路が使われることも示されている。
こうした結果を踏まえ、Small氏らは、脂質と糖質の両方を含む食品を摂取すると、カロリーは同じだが一方だけを含む食品を摂取するよりも、相乗作用によってシグナル伝達系への影響が強まる可能性があると考え、今回の研究を実施した。
研究では、健康なボランティアを対象に
(1)キャンディーなどの糖質を多く含む食品、
(2)ミートボールやチーズなどの脂質を多く含む食品、
(3)クッキーやケーキなどの糖質と脂質の両方を多く含む食品のいずれかの写真を見てもらい、
MRIによる脳画像検査を実施した。なお、対象者には、オークションで競り落とせば自分が好きなものを食べることができると説明した。
その結果、脂質+糖質を多く含む食品に対して最も高額な値が付けられた。
また、脳画像検査の結果、脂質+糖質を多く含む食品の写真を見せられた際に、自分の好きな食べ物や、より甘い食品やより高カロリーな食品、量が多い食品の写真を見せられたときよりも、報酬系を司る脳領域の神経回路が活性化していた。
この結果について、Small氏は「脳内の報酬系は単純にカロリー量の増加に応じて活性化するわけではないことが分かり、驚いた」と話す。
また、今回の研究では、脂質が多い食品のカロリーを推測できる人は多いが、糖質が多い食品のカロリーを推測できる人は少ないことも明らかになった。
このことから、同氏は「多くの人は、脂質と糖質の両方を含む食品から正確にカロリーを推測することは難しいと思われる」と述べている。
Small氏は、脂質と糖質を多く含む食品は、ヒトの食欲を司るシグナルを“ハイジャックする”と表現する。
「現代人が食べるほとんどの食品は脂質と糖質の両方を多く含んでいるが、
こうした食品は母乳を除けば自然界には存在しない」と説明し、
「現代的なこれらの食品が脳内の報酬系のシグナル伝達をより増強するのであれば、肥満や糖尿病が蔓延していることの説明がつく可能性がある」との見方を示している。
専門家の一人で米レノックス・ヒル病院肥満外科部長のMitchell Roslin氏は、
この研究結果について「食べ過ぎに気づかずに、スナック菓子を一袋食べてしまう理由となるものだ」とした上で、
「消費者には、自分の空腹感や満腹感に従うのではなく、適切な食品を選ぶように啓発する必要がある」と話している。
米ロサンゼルスの管理栄養士であるMascha Davis氏は、ドライフルーツやナッツなどを含む健康に良いおやつを常備しておけば、脂質と糖質を同時に摂取でき、満腹感も得られるとアドバイスしている。
[2018年6月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay.
原著論文はこちら
DiFeliceantonio AG, et al. Cell Metab. 2018 Jun 6. [Epub ahead of print]
ヒトの脳は「脂質+糖質」を好むようにできている
提供元:HealthDay News 公開日:2018/07/10
ヒトの脳は、本能的に脂質と糖質の組み合わせを好むようにできている可能性のあることが、米イェール大学精神科のDana Small氏らによる研究で示唆された。
この研究では、脂質と糖質のいずれかを多く含む食品よりも、ファストフードや加工食品などの両方を含んだ食品の方が、脳内の報酬系のシグナル伝達を増強することが明らかになったという。
詳細は「Cell Metabolism」6月14日オンライン版に掲載された。
これまでの研究で、食欲を司る脳領域に空腹感や満腹感を伝えるシグナルは、主に腸管から伝達されることが分かっていた。
一方、最近の研究では、脂質を摂取したときと糖質を摂取したときでは、異なるシグナル伝達経路が使われることも示されている。
こうした結果を踏まえ、Small氏らは、脂質と糖質の両方を含む食品を摂取すると、カロリーは同じだが一方だけを含む食品を摂取するよりも、相乗作用によってシグナル伝達系への影響が強まる可能性があると考え、今回の研究を実施した。
研究では、健康なボランティアを対象に
(1)キャンディーなどの糖質を多く含む食品、
(2)ミートボールやチーズなどの脂質を多く含む食品、
(3)クッキーやケーキなどの糖質と脂質の両方を多く含む食品のいずれかの写真を見てもらい、
MRIによる脳画像検査を実施した。なお、対象者には、オークションで競り落とせば自分が好きなものを食べることができると説明した。
その結果、脂質+糖質を多く含む食品に対して最も高額な値が付けられた。
また、脳画像検査の結果、脂質+糖質を多く含む食品の写真を見せられた際に、自分の好きな食べ物や、より甘い食品やより高カロリーな食品、量が多い食品の写真を見せられたときよりも、報酬系を司る脳領域の神経回路が活性化していた。
この結果について、Small氏は「脳内の報酬系は単純にカロリー量の増加に応じて活性化するわけではないことが分かり、驚いた」と話す。
また、今回の研究では、脂質が多い食品のカロリーを推測できる人は多いが、糖質が多い食品のカロリーを推測できる人は少ないことも明らかになった。
このことから、同氏は「多くの人は、脂質と糖質の両方を含む食品から正確にカロリーを推測することは難しいと思われる」と述べている。
Small氏は、脂質と糖質を多く含む食品は、ヒトの食欲を司るシグナルを“ハイジャックする”と表現する。
「現代人が食べるほとんどの食品は脂質と糖質の両方を多く含んでいるが、
こうした食品は母乳を除けば自然界には存在しない」と説明し、
「現代的なこれらの食品が脳内の報酬系のシグナル伝達をより増強するのであれば、肥満や糖尿病が蔓延していることの説明がつく可能性がある」との見方を示している。
専門家の一人で米レノックス・ヒル病院肥満外科部長のMitchell Roslin氏は、
この研究結果について「食べ過ぎに気づかずに、スナック菓子を一袋食べてしまう理由となるものだ」とした上で、
「消費者には、自分の空腹感や満腹感に従うのではなく、適切な食品を選ぶように啓発する必要がある」と話している。
米ロサンゼルスの管理栄養士であるMascha Davis氏は、ドライフルーツやナッツなどを含む健康に良いおやつを常備しておけば、脂質と糖質を同時に摂取でき、満腹感も得られるとアドバイスしている。
[2018年6月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay.
原著論文はこちら
DiFeliceantonio AG, et al. Cell Metab. 2018 Jun 6. [Epub ahead of print]
血中ビタミンD(25(OH)D)濃度が低いと間質性肺疾患(ILD)を発症するリスクが高まる
血中ビタミンD(25(OH)D)濃度が低いと間質性肺疾患(ILD)を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示された。
研究の詳細は「Journal of Nutrition」6月19日オンライン版に掲載された。
ILDとは肺に炎症や肺組織の線維化をもたらす疾患で、米国では年間に約20万人がILDと診断されている。
ILDの原因はさまざまで、アスベスト(石綿)などの大気汚染物質やウイルス、細菌などの感染によるもの、自己免疫疾患であるもの、薬剤の副作用として引き起こされるものなどがある。
米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、
今回、米国の大規模なコホート研究であるMESA(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)研究に参加し、
ベースライン時に心血管疾患の既往がなく、
血中25(OH)D濃度を測定し、
CT検査を実施した6,302人を対象に10年間以上追跡。
ベースライン時の血中25(OH)D濃度とILDの発症およびその後のILDの進行との関連を調べた。
解析対象者の平均年齢は62.2歳で、女性が53%であった。
対象者を血中25(OH)D濃度で3群
(不足:20ng/mL未満、
20ng/mL以上30ng/mL未満、
充足:30ng/mL以上)
で分けて解析した結果、
ベースライン時に血中25(OH)D濃度が充足していた群に比べて、
不足していた群ではベースライン時にILDの初期の徴候を示すリスクが高く、
また、中央値で4.3年間の追跡期間中にILDが進行するリスクも高いことが分かった。
さらに、ベースライン時における血中25(OH)D濃度の不足は、10年後のILD有病率の上昇とも関連していた。
これらの結果から、研究グループは「血中ビタミンD濃度が不足することはILDの発症や進行のリスク因子の一つである可能性が示唆された」と結論づけている。
論文著者の一人で同大学心血管疾患予防センター副部長のErin Michos氏によると、これまでの研究で、活性型ビタミンDには抗炎症作用があり、免疫系の制御に働くことが分かっている。
また、ビタミンDは喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の発症や進行にも重要な役割を担うことが報告されているが、同氏は「今回の研究から、ビタミンDの血中濃度は肺組織の線維化が進むILDとも関連することが示された」と指摘している。
今回の結果は、これらの因果関係を証明するものではないが、
Michos氏らは「肺の健康を保つには、十分な血中ビタミンD濃度を維持することが重要な可能性が示された。
今後は、ILDのリスク因子として、大気汚染物質や喫煙に加えてビタミンD不足を加えるべきなのか、
また、サプリメントの摂取や日光浴などのビタミンD補充対策がIDLの予防や進行抑制に有効かどうかを検討する必要がある」と話している。
なお、同氏らによれば、現時点でILDの根治療法は見つかっておらず、多くの患者は診断から5年以内に死亡するという。
(HealthDay News 2018年6月25日) https://consumer.healthday.com/…/vitamin-d-deficiency-could… Copyright 2018 HealthDay. All rights reserved.
研究の詳細は「Journal of Nutrition」6月19日オンライン版に掲載された。
ILDとは肺に炎症や肺組織の線維化をもたらす疾患で、米国では年間に約20万人がILDと診断されている。
ILDの原因はさまざまで、アスベスト(石綿)などの大気汚染物質やウイルス、細菌などの感染によるもの、自己免疫疾患であるもの、薬剤の副作用として引き起こされるものなどがある。
米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、
今回、米国の大規模なコホート研究であるMESA(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)研究に参加し、
ベースライン時に心血管疾患の既往がなく、
血中25(OH)D濃度を測定し、
CT検査を実施した6,302人を対象に10年間以上追跡。
ベースライン時の血中25(OH)D濃度とILDの発症およびその後のILDの進行との関連を調べた。
解析対象者の平均年齢は62.2歳で、女性が53%であった。
対象者を血中25(OH)D濃度で3群
(不足:20ng/mL未満、
20ng/mL以上30ng/mL未満、
充足:30ng/mL以上)
で分けて解析した結果、
ベースライン時に血中25(OH)D濃度が充足していた群に比べて、
不足していた群ではベースライン時にILDの初期の徴候を示すリスクが高く、
また、中央値で4.3年間の追跡期間中にILDが進行するリスクも高いことが分かった。
さらに、ベースライン時における血中25(OH)D濃度の不足は、10年後のILD有病率の上昇とも関連していた。
これらの結果から、研究グループは「血中ビタミンD濃度が不足することはILDの発症や進行のリスク因子の一つである可能性が示唆された」と結論づけている。
論文著者の一人で同大学心血管疾患予防センター副部長のErin Michos氏によると、これまでの研究で、活性型ビタミンDには抗炎症作用があり、免疫系の制御に働くことが分かっている。
また、ビタミンDは喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の発症や進行にも重要な役割を担うことが報告されているが、同氏は「今回の研究から、ビタミンDの血中濃度は肺組織の線維化が進むILDとも関連することが示された」と指摘している。
今回の結果は、これらの因果関係を証明するものではないが、
Michos氏らは「肺の健康を保つには、十分な血中ビタミンD濃度を維持することが重要な可能性が示された。
今後は、ILDのリスク因子として、大気汚染物質や喫煙に加えてビタミンD不足を加えるべきなのか、
また、サプリメントの摂取や日光浴などのビタミンD補充対策がIDLの予防や進行抑制に有効かどうかを検討する必要がある」と話している。
なお、同氏らによれば、現時点でILDの根治療法は見つかっておらず、多くの患者は診断から5年以内に死亡するという。
(HealthDay News 2018年6月25日) https://consumer.healthday.com/…/vitamin-d-deficiency-could… Copyright 2018 HealthDay. All rights reserved.
2018年08月09日
キャベツ、ブロッコリー、白菜、アブラナ科の野菜を食べよう アブラナ科野菜を摂取するほど全死亡リスク減
キャベツ、ブロッコリー、白菜、アブラナ科の野菜を食べよう
アブラナ科野菜を摂取するほど全死亡リスク減
約9万人の日本人男女を解析、JPHC研究
臨床ニュース 国際医学短信2018年7月4日 (水)配信
40歳代半ば以降の日本人の男女は、キャベツやブロッコリー、白菜などのアブラナ科の野菜を多く摂取するほど全死亡リスクが低減する可能性があると、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループが発表した。
研究の詳細は「Clinical Nutrition」4月23日オンライン版に掲載された。
アブラナ科の野菜には、抗炎症作用や発がん抑制作用で知られる「イソチオシアネート」と呼ばれる成分が豊富に含まれている。
しかし、アブラナ科の野菜の摂取量と死亡との関連を包括的に検討した大規模な観察研究は実施されていなかった。
研究グループは今回、JPHC研究に参加した45〜74歳の男女約9万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、アブラナ科の野菜の摂取量と全死亡、がんや心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患および外因による死亡リスクとの関連を調べた。
今回の研究では、ベースライン時(1990年および1993年)に全国11地域に在住し、がんや心筋梗塞、脳卒中の既往がなく、研究開始から5年後の食物摂取頻度質問票に回答した45〜74歳の8万8,184人(うち男性4万622人)を対象に、2014年まで追跡を行った。
質問票では漬け物を含む11項目のアブラナ科の野菜(キャベツ、大根、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ、からし菜、フダンソウ、たくあん漬け、野沢菜漬け、白菜漬け)からアブラナ科の野菜の総摂取量を推定した。
中央値で16.9年の追跡期間中に1万5,349人が死亡した。
男女別にアブラナ科の野菜の総摂取量で5つの群に分けて解析した結果、
全死亡リスクは、摂取量が最も少ない群と比べて最も多い群で
男性では14%、
女性では11%それぞれ有意に低下することが分かった
(傾向P値はそれぞれ0.0002、0.03)。
また、疾患別の死亡リスクを比較した結果、
男性ではアブラナ科の野菜の摂取量が最も少ない群と比べて最も多い群でがんによる死亡リスクが16%有意に低下した
(P=0.001)。
一方、女性では摂取量が最も多い群で心疾患リスクが27%
(P=0.01)、
外因による死亡リスクが40%
(P=0.005)有意に低下し、
脳血管疾患リスクも22%
(P=0.05)低下した。
さらに、野菜の種類別の摂取量と全死亡リスクとの関連について解析したところ、
男性ではブロッコリー、たくあん漬けの摂取量が最も多い群で、
女性では大根、ブロッコリーの摂取量が最も多い群で死亡リスクが低減した。
以上の結果について、研究グループは
「アブラナ科の野菜に多く含まれるイソチオシアネートや抗酸化性のビタミンによる抗炎症作用と抗酸化作用が
死亡リスクの低下に寄与している可能性がある」と指摘。
今後の研究ではイソチオシアネートの種類を詳細に解析したり、
尿中イソチオシアネートなどの生体指標を用いた検討を行う必要があるとしている。
アブラナ科野菜を摂取するほど全死亡リスク減
約9万人の日本人男女を解析、JPHC研究
臨床ニュース 国際医学短信2018年7月4日 (水)配信
40歳代半ば以降の日本人の男女は、キャベツやブロッコリー、白菜などのアブラナ科の野菜を多く摂取するほど全死亡リスクが低減する可能性があると、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループが発表した。
研究の詳細は「Clinical Nutrition」4月23日オンライン版に掲載された。
アブラナ科の野菜には、抗炎症作用や発がん抑制作用で知られる「イソチオシアネート」と呼ばれる成分が豊富に含まれている。
しかし、アブラナ科の野菜の摂取量と死亡との関連を包括的に検討した大規模な観察研究は実施されていなかった。
研究グループは今回、JPHC研究に参加した45〜74歳の男女約9万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、アブラナ科の野菜の摂取量と全死亡、がんや心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患および外因による死亡リスクとの関連を調べた。
今回の研究では、ベースライン時(1990年および1993年)に全国11地域に在住し、がんや心筋梗塞、脳卒中の既往がなく、研究開始から5年後の食物摂取頻度質問票に回答した45〜74歳の8万8,184人(うち男性4万622人)を対象に、2014年まで追跡を行った。
質問票では漬け物を含む11項目のアブラナ科の野菜(キャベツ、大根、小松菜、ブロッコリー、白菜、チンゲンサイ、からし菜、フダンソウ、たくあん漬け、野沢菜漬け、白菜漬け)からアブラナ科の野菜の総摂取量を推定した。
中央値で16.9年の追跡期間中に1万5,349人が死亡した。
男女別にアブラナ科の野菜の総摂取量で5つの群に分けて解析した結果、
全死亡リスクは、摂取量が最も少ない群と比べて最も多い群で
男性では14%、
女性では11%それぞれ有意に低下することが分かった
(傾向P値はそれぞれ0.0002、0.03)。
また、疾患別の死亡リスクを比較した結果、
男性ではアブラナ科の野菜の摂取量が最も少ない群と比べて最も多い群でがんによる死亡リスクが16%有意に低下した
(P=0.001)。
一方、女性では摂取量が最も多い群で心疾患リスクが27%
(P=0.01)、
外因による死亡リスクが40%
(P=0.005)有意に低下し、
脳血管疾患リスクも22%
(P=0.05)低下した。
さらに、野菜の種類別の摂取量と全死亡リスクとの関連について解析したところ、
男性ではブロッコリー、たくあん漬けの摂取量が最も多い群で、
女性では大根、ブロッコリーの摂取量が最も多い群で死亡リスクが低減した。
以上の結果について、研究グループは
「アブラナ科の野菜に多く含まれるイソチオシアネートや抗酸化性のビタミンによる抗炎症作用と抗酸化作用が
死亡リスクの低下に寄与している可能性がある」と指摘。
今後の研究ではイソチオシアネートの種類を詳細に解析したり、
尿中イソチオシアネートなどの生体指標を用いた検討を行う必要があるとしている。
<空気のプロからのアドバイス・上手なエアコンの運転方法> ダイキン工業の実証実験から
<空気のプロからのアドバイス・上手なエアコンの運転方法>
ダイキン工業の実証実験から
1日を日中(9:00〜18:00)・夜(18:00〜23:00)の2つの時間帯に分類し、
それぞれの消費電力の傾向から、何分までの外出であれば「つけっぱなし」の方が安いのかを計算した。
時間帯 平均消費電力量/h 外出時間目安(分)
つけっぱなし(kWh) こまめに入り切り(kWh)
日中(9:00〜18:00) 0.37 0.40 35
夜 (18:00〜23:00) 0.34 0.27 18
あくまで今回の実験の条件下ではありますが、以下のことが推察されます。
1. 日中は、35分までの外出であれば、エアコンを「つけっぱなし」の方が安い。
2. 夜は、18分までの外出であれば、エアコンを「つけっぱなし」の方が安い。
これらを一つの目安として、例えば日中は30分程度の外出ならエアコンをつけっぱなしにし、夜間はこまめに停止させるといった調整を行うことで、お得な運転が出来ると考えられます。
エアコンは、基本的に運転を開始した直後の室内温度と設定温度の差が大きいときに電力を多く消費します。
自転車に乗るときにこぎ始めの方がペダルが重く、体力を使うのと同じです。
「こまめに入り切り」が電気代的にはお得ですが、日中30分程度の外出の際には「つけっぱなし」の方が電気代、冷房効率ともにお得と結論付けています。
<検証実験の環境>
● 実験場所:大阪府大阪市
● 建物構造:鉄筋コンクリート造(14階建て)
● 築年月:2006年3月
● 部屋の広さ:約14畳
● 2階と3階の階違いの同じ間取りの部屋を使用
● 使用したエアコンの機種:『うるるとさらら Rシリーズ』 AN40TRP-W 4.0kW(主に14畳用))
● エアコン設定:冷房26℃、風量自動
ダイキン工業の実証実験から
1日を日中(9:00〜18:00)・夜(18:00〜23:00)の2つの時間帯に分類し、
それぞれの消費電力の傾向から、何分までの外出であれば「つけっぱなし」の方が安いのかを計算した。
時間帯 平均消費電力量/h 外出時間目安(分)
つけっぱなし(kWh) こまめに入り切り(kWh)
日中(9:00〜18:00) 0.37 0.40 35
夜 (18:00〜23:00) 0.34 0.27 18
あくまで今回の実験の条件下ではありますが、以下のことが推察されます。
1. 日中は、35分までの外出であれば、エアコンを「つけっぱなし」の方が安い。
2. 夜は、18分までの外出であれば、エアコンを「つけっぱなし」の方が安い。
これらを一つの目安として、例えば日中は30分程度の外出ならエアコンをつけっぱなしにし、夜間はこまめに停止させるといった調整を行うことで、お得な運転が出来ると考えられます。
エアコンは、基本的に運転を開始した直後の室内温度と設定温度の差が大きいときに電力を多く消費します。
自転車に乗るときにこぎ始めの方がペダルが重く、体力を使うのと同じです。
「こまめに入り切り」が電気代的にはお得ですが、日中30分程度の外出の際には「つけっぱなし」の方が電気代、冷房効率ともにお得と結論付けています。
<検証実験の環境>
● 実験場所:大阪府大阪市
● 建物構造:鉄筋コンクリート造(14階建て)
● 築年月:2006年3月
● 部屋の広さ:約14畳
● 2階と3階の階違いの同じ間取りの部屋を使用
● 使用したエアコンの機種:『うるるとさらら Rシリーズ』 AN40TRP-W 4.0kW(主に14畳用))
● エアコン設定:冷房26℃、風量自動
2018年08月08日
痩せすぎているひとの方が、太っているひとより乳がんリスクが4.2倍 20歳前後のBMIで、BMIが最低(17.0未満)の群では最高(35.0以上)の群に比べ、乳がんリスクが4.2倍
痩せすぎているひとの方が、太っているひとより乳がんリスクが4.2倍
20歳前後のBMIで、BMIが最低(17.0未満)の群では最高(35.0以上)の群に比べ、乳がんリスクが4.2倍
提供元:ケアネット 公開日:2018/07/02
BMIと乳がんリスクの間には、閉経前女性では逆相関、閉経後女性では正相関がみられる。
今回、閉経前女性のBMIと乳がんリスクの逆相関がこれまで報告されていたよりも強く、
成人初期(18〜24歳)で最も強く関連することが、米国・国立がん研究所コホートコンソーシアムが推進するPremenopausal Breast Cancer Collaborative Groupの研究で示唆された。
JAMA oncology誌オンライン版2018年6月21日号に掲載。
本研究では、BMIと閉経前乳がんリスクの逆相関について年代ごとに調査し、
現在の年齢、
乳がんリスク因子、
ホルモン受容体の状態
についても検討した。
研究グループは、19件の前向きコホートにおける閉経前女性75万8,592人の個々のデータをプールし、
18〜24歳、
25〜34歳、
35〜44歳、
45〜54歳でのBMIについて
閉経前乳がんのハザード比(HR)を、
Cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。
追跡期間中央値は9.3年(四分位範囲:4.9〜13.5年)、1万3,082例で浸潤性もしくは非浸潤性乳がんが発症した。
参加者のリクルートは1963年1月1日〜2013年12月31日、分析は2013年9月1日〜2017年12月31日に実施した。
主な結果は以下のとおり。
・75万8,592人の閉経前女性(年齢中央値:40.6歳、四分位範囲:35.2〜45.5歳)のデータを分析したところ、
BMIと乳がんリスクとの線形の逆相関は、
45〜54歳のBMI(5kg/m2当たりのHR:0.88、95%CI:0.86〜0.91)に比べ、
18〜24歳のBMI(同:0.77、95%CI:0.73〜0.80)で強かった。
・この逆相関は、過体重ではない女性でも観察された。
・18〜24歳において、BMIが最低(17.0未満)の群では最高(35.0以上)の群に比べ、
乳がんリスクが4.2倍であった
(HR:0.24、95%CI:0.14〜0.40)。
・現在の年齢や他の乳がんリスク因子の群間で、HRに大きな差はなかった。
・ホルモン受容体陰性乳がんよりも、エストロゲン受容体(ER)陽性および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性乳がんのほうが、すべての年齢層でBMIと強い相関を示した。
たとえば、18〜24歳のBMIについて5kg/m2当たりのHRは、
ER陽性およびPR陽性乳がんでは0.76(95%CI:0.70〜0.81)、
ホルモン受容体陰性乳がんでは0.85(95%CI:0.76〜0.95)
であった。
・25〜54歳でのBMIは、トリプルネガティブまたはホルモン受容体陰性の乳がんと関連はみられなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Premenopausal Breast Cancer Collaborative Group. JAMA Oncol. 2018 Jun 21:e181771. [Epub ahead of print
20歳前後のBMIで、BMIが最低(17.0未満)の群では最高(35.0以上)の群に比べ、乳がんリスクが4.2倍
提供元:ケアネット 公開日:2018/07/02
BMIと乳がんリスクの間には、閉経前女性では逆相関、閉経後女性では正相関がみられる。
今回、閉経前女性のBMIと乳がんリスクの逆相関がこれまで報告されていたよりも強く、
成人初期(18〜24歳)で最も強く関連することが、米国・国立がん研究所コホートコンソーシアムが推進するPremenopausal Breast Cancer Collaborative Groupの研究で示唆された。
JAMA oncology誌オンライン版2018年6月21日号に掲載。
本研究では、BMIと閉経前乳がんリスクの逆相関について年代ごとに調査し、
現在の年齢、
乳がんリスク因子、
ホルモン受容体の状態
についても検討した。
研究グループは、19件の前向きコホートにおける閉経前女性75万8,592人の個々のデータをプールし、
18〜24歳、
25〜34歳、
35〜44歳、
45〜54歳でのBMIについて
閉経前乳がんのハザード比(HR)を、
Cox比例ハザード回帰分析を用いて推定した。
追跡期間中央値は9.3年(四分位範囲:4.9〜13.5年)、1万3,082例で浸潤性もしくは非浸潤性乳がんが発症した。
参加者のリクルートは1963年1月1日〜2013年12月31日、分析は2013年9月1日〜2017年12月31日に実施した。
主な結果は以下のとおり。
・75万8,592人の閉経前女性(年齢中央値:40.6歳、四分位範囲:35.2〜45.5歳)のデータを分析したところ、
BMIと乳がんリスクとの線形の逆相関は、
45〜54歳のBMI(5kg/m2当たりのHR:0.88、95%CI:0.86〜0.91)に比べ、
18〜24歳のBMI(同:0.77、95%CI:0.73〜0.80)で強かった。
・この逆相関は、過体重ではない女性でも観察された。
・18〜24歳において、BMIが最低(17.0未満)の群では最高(35.0以上)の群に比べ、
乳がんリスクが4.2倍であった
(HR:0.24、95%CI:0.14〜0.40)。
・現在の年齢や他の乳がんリスク因子の群間で、HRに大きな差はなかった。
・ホルモン受容体陰性乳がんよりも、エストロゲン受容体(ER)陽性および/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性乳がんのほうが、すべての年齢層でBMIと強い相関を示した。
たとえば、18〜24歳のBMIについて5kg/m2当たりのHRは、
ER陽性およびPR陽性乳がんでは0.76(95%CI:0.70〜0.81)、
ホルモン受容体陰性乳がんでは0.85(95%CI:0.76〜0.95)
であった。
・25〜54歳でのBMIは、トリプルネガティブまたはホルモン受容体陰性の乳がんと関連はみられなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Premenopausal Breast Cancer Collaborative Group. JAMA Oncol. 2018 Jun 21:e181771. [Epub ahead of print
2018年08月07日
小さい子だけではなく,大人にも当てはまります 未就学児の一律の昼寝習慣はNGか
小さい子だけではなく,大人にも当てはまります
未就学児の一律の昼寝習慣はNGか 2018年06月29日 06:20
日本において、在園時間の短い幼稚園では昼寝(午睡)が一般的ではない一方、保育園では日課として実施されてきた。
しかし近年、昼寝が夜間睡眠に悪影響を及ぼすなどの指摘や、小学校入学後の生活リズムに慣れさせる目的などから、未就学児の昼寝の在り方を見直す動きが広まっている。
そこで愛媛大学病院睡眠医療センター長で同大准教授の岡靖哲氏は、宇部フロンティア大学短期大学部保育学科教授・伊藤一統氏らと共同で、幼稚園児と保育園児の睡眠習慣の違いについて検討。
昼寝が夜間睡眠に悪影響を及ぼしている可能性があることを、第32回米国睡眠学会(SLEEP 2018、6月2〜6日、ボルティモア)で報告した。
保育園児は幼稚園児より昼寝をする
岡氏らは、山口県山口市の幼稚園または保育園に在籍する4〜5歳の小児328例(幼稚園159例、保育園169例)を対象に、児童青年期睡眠チェックリスト(CASC;Child and Adolescent Sleep Checklist)を用いて、就床時刻や起床時刻、睡眠時間、睡眠に関する問題などの睡眠習慣の違いについて、幼稚園児と保育園児の2群で比較検討(t検定)した。
在園中または帰宅後を問わず1週間当たりの昼寝習慣を比較したところ、幼稚園児の50.9%が昼寝を全くしていなかったのに対し、保育園児の55.1%が週4日以上昼寝をしていた。
また1日当たりの平均昼寝時間は、幼稚園児が15.1分、保育園児が37.2分と、保育園児の方が有意に長いことが分かった(P<0.001)。
総睡眠時間に有意差はなし、昼寝習慣が夜間睡眠に影響か
さらに、平均帰宅時刻は幼稚園児が15時1分、保育園児が17時41分と、保育園児の方が有意に遅かった(P<0.001)。
平均就床時刻も同様に、幼稚園児(平日20時56分、休日21時16分)に比べ保育園児(同21時13分、21時38分)の方が有意に遅かった(P<0.001)。
一方、平均起床時刻は、平日では幼稚園児が7時2分、保育園児が6時52分と、保育園児の方が有意に早かったが(P=0.011)、休日は順に7時27分、7時20分と有意差は認められなかった。睡眠時間(昼寝時間を含む)は、幼稚園児の方が平日は約30分、休日は約15分長い傾向が見られたが、有意差は示されなかった。
睡眠状況については、保育園児の方が入眠までの時間が有意に長く(P=0.007)、就床に対する抵抗(bedtime resistance)も有意に大きかった(P=0.018)。
これらの結果から、岡氏は「保育園では日常的に園児の昼寝を実施しており、幼稚園児より帰宅時刻が遅く、就寝時刻も遅く、就床への抵抗も大きいという睡眠習慣の違いがあることが示された」と結論。
またMedical Tribuneの取材に対し、「幼稚園児も保育園児も昼寝時間と夜間睡眠を合わせた総睡眠時間に差は認められなかったことから、保育園児では昼寝により夜間の睡眠に影響しうる可能性が示唆された」と指摘した。
さらに「昼寝習慣が生理的に必要かどうかは、未就学児では年齢による差や個人差が大きいだろう。
昼寝の必要度を考慮しないで一律に昼寝を習慣化させることで、夜間睡眠に影響が出ていないかについて、さらなる検討が必要」とコメントした。(SLEEP 2018取材班)
未就学児の一律の昼寝習慣はNGか 2018年06月29日 06:20
日本において、在園時間の短い幼稚園では昼寝(午睡)が一般的ではない一方、保育園では日課として実施されてきた。
しかし近年、昼寝が夜間睡眠に悪影響を及ぼすなどの指摘や、小学校入学後の生活リズムに慣れさせる目的などから、未就学児の昼寝の在り方を見直す動きが広まっている。
そこで愛媛大学病院睡眠医療センター長で同大准教授の岡靖哲氏は、宇部フロンティア大学短期大学部保育学科教授・伊藤一統氏らと共同で、幼稚園児と保育園児の睡眠習慣の違いについて検討。
昼寝が夜間睡眠に悪影響を及ぼしている可能性があることを、第32回米国睡眠学会(SLEEP 2018、6月2〜6日、ボルティモア)で報告した。
保育園児は幼稚園児より昼寝をする
岡氏らは、山口県山口市の幼稚園または保育園に在籍する4〜5歳の小児328例(幼稚園159例、保育園169例)を対象に、児童青年期睡眠チェックリスト(CASC;Child and Adolescent Sleep Checklist)を用いて、就床時刻や起床時刻、睡眠時間、睡眠に関する問題などの睡眠習慣の違いについて、幼稚園児と保育園児の2群で比較検討(t検定)した。
在園中または帰宅後を問わず1週間当たりの昼寝習慣を比較したところ、幼稚園児の50.9%が昼寝を全くしていなかったのに対し、保育園児の55.1%が週4日以上昼寝をしていた。
また1日当たりの平均昼寝時間は、幼稚園児が15.1分、保育園児が37.2分と、保育園児の方が有意に長いことが分かった(P<0.001)。
総睡眠時間に有意差はなし、昼寝習慣が夜間睡眠に影響か
さらに、平均帰宅時刻は幼稚園児が15時1分、保育園児が17時41分と、保育園児の方が有意に遅かった(P<0.001)。
平均就床時刻も同様に、幼稚園児(平日20時56分、休日21時16分)に比べ保育園児(同21時13分、21時38分)の方が有意に遅かった(P<0.001)。
一方、平均起床時刻は、平日では幼稚園児が7時2分、保育園児が6時52分と、保育園児の方が有意に早かったが(P=0.011)、休日は順に7時27分、7時20分と有意差は認められなかった。睡眠時間(昼寝時間を含む)は、幼稚園児の方が平日は約30分、休日は約15分長い傾向が見られたが、有意差は示されなかった。
睡眠状況については、保育園児の方が入眠までの時間が有意に長く(P=0.007)、就床に対する抵抗(bedtime resistance)も有意に大きかった(P=0.018)。
これらの結果から、岡氏は「保育園では日常的に園児の昼寝を実施しており、幼稚園児より帰宅時刻が遅く、就寝時刻も遅く、就床への抵抗も大きいという睡眠習慣の違いがあることが示された」と結論。
またMedical Tribuneの取材に対し、「幼稚園児も保育園児も昼寝時間と夜間睡眠を合わせた総睡眠時間に差は認められなかったことから、保育園児では昼寝により夜間の睡眠に影響しうる可能性が示唆された」と指摘した。
さらに「昼寝習慣が生理的に必要かどうかは、未就学児では年齢による差や個人差が大きいだろう。
昼寝の必要度を考慮しないで一律に昼寝を習慣化させることで、夜間睡眠に影響が出ていないかについて、さらなる検討が必要」とコメントした。(SLEEP 2018取材班)