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2018年08月17日

小児にも使えるスギ花粉症の減感作療法薬「シダキュア舌下錠」

小児にも使えるスギ花粉症の減感作療法薬「シダキュア舌下錠」【下平博士のDIノート】
公開日:2018/07/17 企画・制作 ケアネット

今回は、「スギ花粉エキス舌下錠2,000JAU/5,000JAU(商品名:シダキュアスギ花粉舌下錠)」を紹介します。

本剤は、国内で初めて成人のみならず小児においても使用可能となったスギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法(減感作療法)薬です。

本剤を継続することで、スギ花粉症の諸症状軽減や抗アレルギー薬の減量によるQOL改善などが期待できます。

<効能・効果>

スギ花粉症(減感作療法)の適応で、2017年9月27日に承認され、2018年6月29日より販売されています。

減感作療法とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを少量から投与開始し、徐々に増量することで、アレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法です。

重症の気管支喘息患者では、本剤の投与により、喘息発作を誘発する恐れがあるため、投与することができません。

なお、国内臨床試験において、小児(5〜17歳)と成人(18〜64歳)の有効性および安全性は同等であることが確認されています。

<用法・用量>

通常、投与開始後1週間は、シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、5,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込みます。

その後5分間は、うがいや飲食を控えるようにします。投与期間は3年以上が推奨されています。

初回投与時は医師の監督のもと、投与後少なくとも30分間は安静な状態を保ち、ショックやアナフィラキシーなどが発現した際に救急処置ができるようにします(一般にI型のアレルギー反応は30分以内に発現するため)。

なお、スギ花粉飛散時期は、アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている可能性が高いため、新たに投与を開始することはできません。

<副作用>

国内第II/III相臨床試験において、783例中394例(50.3%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められています。

主な副作用は、
口腔浮腫113例(14.4%)、
咽頭刺激感112例(14.3%)、
耳そう痒症98例(12.5%)、
口腔そう痒症67例(8.6%)、
咽喉頭不快感57例(7.3%)、
口腔内不快感47例(6.0%)でした。

なお、ショック、アナフィラキシーなどの重篤な副作用は報告されていません。

<患者さんへの指導例>

1.スギ花粉症の原因であるアレルゲンを長期間投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげることができます。
治療は、「3年以上」続ける必要があります。

2.舌の下に置くと唾液で溶けてなくなりますが、薬の溶けた唾液はすぐに飲み込まず1分間舌の下に保持してください。
飲み込んだ後、5分間はうがいや飲食を控えてください。

3.錠剤は吸湿性があるため、服用直前までシートを開けないでください。

4.シートから取り出す際は、裏のシートを剥がした後、爪を立てずに指の腹で押し出してください。
取り出す際に割れてしまっても、全量を服用すれば問題ありません。

5.口の中の違和感や口内炎、唇の腫れ、咽頭や耳にかゆみなどがあらわれた場合は、相談してください。

6.お子さんが服用する場合は、飲み終わるまで目を離さないようにしてください。

7.飲み忘れた場合、同日中に気付いたときは服用して構いませんが、1日空いてしまった場合、前日の用量から再開してください。

<Shimo's eyes>

減感作療法は、対症療法とは異なり、治癒あるいは長期寛解が期待できる治療方法です。

原因アレルゲンを投与する治療法であるため、服用中はショックやアナフィラキシーの発現にとくに注意が必要です。

従来、アレルゲンを皮下注射により取り込む皮下免疫療法が主流でしたが、
2014年にはスギ花粉エキス舌下液(商品名:シダトレンスギ花粉舌下液)が発売され、
舌下免疫療法が開始されました。

皮下免疫療法と比べ、2日目からは自宅で服薬可能で、
長期に渡る定期通院が不要になること、
注射による痛みなく治療できることなどから、
患者さんの負担軽減につながりました。

本剤は、舌下液の問題点を改良したものと言えます。

錠剤になったことで扱いやすくなり、
かつ舌下の保持時間が2分間から1分間に短縮され、
煩雑だった増量期間も開始1週間後の1段階のみになるなど、
服用方法が簡便になりました。

また、保管方法も、冷所から室温になったので、出張や旅行がある患者さんにとってはとくに喜ばしいことでしょう。

本剤は、維持期の投与量が舌下液の2,000JAUよりも高力価の5,000JAUになったため、高い有効性が期待できます。

よって、舌下液から本剤への切り替えが想定されますが、
その場合も初回投与として扱われますので、注意が必要です。

なお、本剤は新有効成分含有医薬品として承認を受けているので、
2019年4月末までは、1回の処方につき14日分までの処方日数制限があります。

本剤は、講習会やeラーニングなどの受講を修了し、
鳥居薬品株式会社の製品適正使用eラーニング受講およびeテスト合格を経て登録された医療機関・医師のみが処方可能です。

薬剤師は、本剤の処方せんを受け取ったとき、必ず処方医が「受講修了医師」であることを、登録医師確認窓口で確認しなくてはなりません。また、患者に交付されている「患者携帯カード」の記載内容について、確認を行う必要があります。

下平 秀夫 ( しもだいら ひでお ) 氏  帝京大学薬学部教授
[略歴]
薬剤師、博⼠(薬学)。
1957年⻑野県出⾝、東京薬科⼤学卒業後、
株式会社⼋王⼦薬剤センター次⻑、
東京薬科⼤学客員助教授を経て2007年から現職。
帝京⼤学薬学部で薬局管理学、実務薬学について教鞭を執る傍ら、株式会社ファーミックでは現役薬剤師として活躍。
株式会社ファーミック専務取締役、医薬品情報専⾨薬剤師、国立市薬剤師会会長、東京都薬剤師会編集委員長 。
ファーミックでは新薬情報をわかりやすく紹介するwebサイト「薬局薬剤師のためのお薬情報」の運営も行っている。

2018年08月16日

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カフェインではなくて,豆の成分が健康にいい! コーヒーによる寿命の延長効果は1日何杯まで?

カフェインではなくて,豆の成分が健康にいい!
コーヒーによる寿命の延長効果は1日何杯まで?


コーヒーにはさまざまな健康効果が報告されているが、1日に何杯飲むべきなのかという問いに、いまだ答えは得られていない。

今回、新たな研究で、コーヒーの摂取量が多い人は早期死亡リスクが低下し、この効果は1日8杯以上のコーヒーを飲む人でも認められることが分かった。

また、こうしたコーヒー摂取による寿命の延長効果は、カフェインの有無にかかわらず認められたという。

詳細は「JAMA Internal Medicine」7月2日オンライン版に掲載された。

この研究は、米国立がん研究所(NCI)のErikka Loftfield氏らが行ったもの。

同氏らは、英国の地域住民を対象とした大規模なコホート研究である英国バイオバンクに参加した成人49万8,134人(平均年齢57歳、女性54%)を対象に、2006年から2016年まで追跡してコーヒーの摂取量と死亡率との関連を調べた。

なお、対象者の78%にはコーヒーを飲む習慣があった。

10年以上の追跡期間中に1万4,225人が死亡した。

解析の結果、コーヒーの摂取量が多いと全死亡リスクは低下することが分かった。

コーヒーを全く飲まない人に比べて、1日8杯以上飲む人は、追跡期間中に死亡するリスクが14%低く、1日6〜7杯飲む人はリスクが16%低かった。

一方で、1日1杯以下の人では全死亡リスクの低下は6〜8%にとどまっていた。

また、コーヒーの摂取による寿命の延長効果は、レギュラーコーヒーやインスタントコーヒーだけでなく、カフェインレスコーヒーでも同様に認められた。

さらに、カフェインの代謝に関係する遺伝子多型の違い(カフェインの分解が遅いため多くは飲めない人、あるいは代謝が速く多く飲める人)で効果に差はみられなかった。

このことから、Loftfield氏は「コーヒーにはカリウムや葉酸をはじめ、身体に影響を及ぼす化学物質が1,000種類以上含まれている。

今回示されたコーヒー摂取による早期死亡の抑制効果は、カフェイン以外の成分によるものである可能性が高い」と説明している。

また、この結果はコーヒー好きには朗報だが、コーヒーを飲まない人が寿命が延びることを期待して、わざわざ飲み始める必要はないと付け加えている。

米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センターの栄養士であるSamantha Heller氏は「多くの植物性食品と同様に、コーヒー豆にはポリフェノールが豊富に含まれている。

ポリフェノールには抗酸化作用や抗炎症作用、抗がん作用があるほか、血圧や血糖値を下げることが知られている」と指摘している。

また、同氏によれば、野菜や果物、豆類などが豊富な食事を取る人は、がんや肥満、糖尿病、認知症、心疾患、うつ病などの慢性疾患になるリスクが低いことが分かっているという。

Heller氏は、コーヒーの摂取は健康に良い習慣の一つになり得るとしながらも、「コーヒーを飲めば、不健康な食習慣や喫煙などによる健康への悪影響を打ち消せるものではない。

人によっては、コーヒー中のカフェインは身体に良くないこともある」と話している。

(HealthDay News 2018年7月2日) https://consumer.healthday.com/…/can-coffee-extend-your-lif… Copyright コピーライトマーク 2018 HealthDay. All rights reserved.

ポックリ病から生き返った人間がいる

ポックリ病から生き返った人間がいる
m3から転記  2018年06月14日
ブルガダ心電図 心室細動が原因だった

 ポックリ病は、第二次世界大戦からの復興期、日本人がむしゃらに働いた時代に若い壮健な青年が夜間睡眠中、突然うめき声をあげて死ぬ必死の突然死の一群で、東京都監察医務院が気づいて名付けた。

東京都では年間約100例あり、原因はまったく不明であった。

しかし同様の青壮年急死は、フィリピンではbangungut(目覚めて唸る)、ラオスではnonlaitai(眠って死ぬ)と、それぞれの地では助かることのない恐ろしいこととして知られていた。

 このポックリ病に罹りながら、医師が処置をして運良く生き返った1例が日本にある。

1988年8月6日午前3時頃、壮年男性(42才)が大きな鼾をかき、尿失禁を起こしているのに妻が気づき、近医に往診を依頼した。

男性の妻は医師の到着まで男性に大声で呼びかけながら必死に体を揺すり、3時25分に到着した医師はヒドロコルチゾン200mg、塩酸エチレフリン5mgを投与するなどの処置をしてから3時50分に病院に収容した。

6時には患者の意識が完全に戻り、トイレまで歩行した。

 安静時心電図は奇妙な不完全右脚ブロックST上昇(V1,2)波形(後のBrugada波形)であった。
8カ月後、ST (V1,2)は上昇したままであったが、右室腔の軽度拡張と右室壁の動きの低下は著しく改善していた。

 同様の急変症状を東南アジア系米国移民の青年が起こし、米国救急隊が到着すると心室細動であった経験が3例あり、電気的除細動で救命している(1987年)。

1992年にBrugada等、1993年には宮沼等が、相前後して特発性心室細動がこの奇妙な波形と関連深いことに気づいた。

その後、この奇妙なBrugada波形を仲立ちにして、ポックリ病が特発性心室細動と気づかれた。

 元木賢三、辻村武文 "いわゆる"ポックリ病からの生還例と思われる1例 

 心臓 1990:22:1216-1220

 ※この患者さんは「その後は再び人一倍元気に、普通生活を送っている」とのことでしたけど、2004年2月に再び発作を起こし、国立循環器病センターで除細動器の埋め込み術を受けており、2004年4月18日現在もお元気だとか。器械は1回作動していることが記録されているそうです。

「早く,臨床応用されないかな〜」 「尿中糖鎖」が2型糖尿病患者の腎予後予測に有用か 岡山大など

「早く,臨床応用されないかな〜」
「尿中糖鎖」が2型糖尿病患者の腎予後予測に有用か
岡山大など


尿中の糖鎖排泄量が、2型糖尿病患者の腎機能低下を予測する指標として有用な可能性があることを、
岡山大学大学院腎・免疫・内分泌代謝内科学教授の和田淳氏と三瀬広記氏らの研究グループが突き止めた。

糖尿病患者の腎機能の悪化に、尿中の糖鎖が関係することを報告した研究は世界で初めて。

和田氏らは「たった1滴の尿を用いるだけで、従来よりも正確に2型糖尿病患者の腎機能悪化を予測できれば、腎不全への進展や透析を導入する患者を減らせる可能性がある」と話している。

詳細は「Diabetes Care」6月21日オンライン版に掲載された。

糖鎖とは細胞の表面にある糖が鎖状につながった生体高分子のことで、近年はアレルギー疾患やがん、関節リウマチ、認知症などのさまざまな疾患への関与が報告されつつある。

しかし、糖鎖の構造は複雑で測定が難しく、糖尿病や腎臓病における糖鎖の研究は進んでいなかった。

研究グループは今回、共同研究者の株式会社グライコテクニカが開発した「レクチンアレイ」と呼ばれる糖鎖解析技術を採用。

1滴の尿(20μL)を用いるだけで尿中の複数の糖鎖量を短期間で測定できるようになった。

レクチンアレイは、45種類のレクチンが固定されたチップの上にラベル処理した尿をかけると、尿中糖鎖がそれぞれに対応したレクチンに結合することで、尿中糖鎖を測定できる仕組みだという。

そこで、研究グループは、岡山県内8施設の2型糖尿病患者675人を対象に、レクチンアレイを用いて尿中の糖鎖排泄量を測定する前向きコホート研究を実施。

評価項目はベースライン時からの推算糸球体濾過量(eGFR)が30%以上低下、または末期腎不全による透析導入と定義した。

対象患者の平均年齢は63歳、男性61%、平均eGFR値は71.4±17.1mL/分/1.73m2、尿中アルブミン排泄量の中央値は17.3mg/gCr(四分位7.8〜71.1)であった。

中央値で4.0年の追跡期間中に63人の患者が評価項目を発症した。

単変量だけでなく、ベースライン時のアルブミン尿やeGFRで調整した多変量Cox回帰モデルにおいても、SNA、RCA120、DBA、ABA、Jacalin、ACAの6種類のレクチンが認識する糖鎖の尿中排泄量は評価項目の発症と有意に関連することが分かった。

SNA、RCA120、DBAに結合する特異的糖鎖はそれぞれSiaα2-6Gal/GalNAc、Galβ1-4GlcNAc、GalNAcα1-3GalNAcであり、ABA、Jacalin、ACAに共通する特異的結合糖鎖はGalβ1-3GalNAcであった。

また、これら6種類の尿中の糖鎖排泄量を、ベースライン時のアルブミン尿やeGFRなどで構成したモデルに加えると評価項目の予測能は有意に向上することも明らかになった。

以上の結果から、研究グループは「2型糖尿病患者の腎予後の予測には、尿中糖鎖の測定が有用な可能性が示された。

尿中の糖鎖排泄量は腎組織における糖鎖や糖鎖修飾の違いを反映している可能性があり、糖尿病腎症の進展における新しいメカニズムになり得る。

そのため、尿中糖鎖のさらなる研究が糖尿病腎症における新たな治療標的になると期待される」と結論づけている。

(HealthDay News 2018年7月9日) Abstract/Full Text http://care.diabetesjournals.org/…/2018/06/04/dc18-0030.long Press Release https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id547.html Copyright コピーライトマーク 2018 HealthDay. All rights reserved.

「プロラクチンは愛を育む ホルモン?」

精神薬理学からみた脳科学 プロラクチンと脳機能  三光舎
「プロラクチンは愛を育む ホルモン?」
――プロラクチンは制御されるべきホルモン!?

 プロラクチンは下垂体前葉から分泌される乳汁分泌ホルモンである。下垂体前葉から分泌されるホルモンは、視床下部の神経分泌細胞から分泌を促すホルモンで分泌が刺激される。

 たとえば成長ホルモンは、視床下部の成長ホルモン分泌刺激ホルモンで分泌が刺激される。

プロラクチン分泌刺激ホルモンは、プロラクチン分泌を刺激しているのだろうか。

 日沼らは、ヒトの下垂体で発現するオーファン受容体(Orphan Receptor:リガンドが特定されていない受容体) を単離し、視床下部に存在するリガンドを探求した結果、アミノ酸残基31個でC 末端がアミド化されているペプチドホルモンを発見した[1]。

今はやりの逆薬理学的手法(Reverse Pharmacology)での成果である。

このペプチドホルモンはマウス下垂体でプロラクチン分泌を促進したので、プロラクチン分泌刺激ホルモンと命名された。

 しかし残念ながら、免疫染色法でプロラクチン分泌刺激ホルモンの投射経路を追跡すると、下垂体まで投射していなかった。

プロラクチン分泌刺激ホルモンは、プロラクチン分泌に関与していなかった。

プロラクチンの分泌制御は、固有の分泌刺激ホルモンが存在せず、漏斗下垂体系のドパミン神経で抑制制御されている。

刺激ではなく抑制することがメインの制御システムということは、プロラクチンが個体の機能に有利に働かない可能性がある。

たしかに子供に乳を与える行為は、自身が合成したタンパク質を次世代に受け渡す行為であり、自らが身を削る作業にほかならない。

――プロラクチンはおバカにさせるホルモン!?

 プロラクチン分泌を抑制しているドパミンは、想起学習を媒介する神経伝達物質である。

ドパミンが想起学習を媒介するのなら、プロラクチンは学習を阻害する作用があるかもしれない。

 そこで、脳が作業を行っている時、プロラクチンが脳血流の賦活に影響するか検討した。

対象はドパミン遮断薬である抗精神病薬でプロラクチンが軽度上昇している患者さんで、言語流暢性課題を行っている時の前頭側頭葉の血流を近赤外光(NIRS:near-infrared spectroscopy)を用いて計測した。

 言語流暢性課題とは、「あ」「い」「う」「え」「お」を60秒間繰り返して言ってもらったあとに、たとえば「か」で始まる単語をできるだけ多く言ってもらう。

これを異なる文字でそれぞれ20秒間ずつ3回行い、また60秒間「あ」「い」「う」「え」「お」を繰り返して言ってもらう。

男性では、プロラクチン値と単語を想起しているときの前頭側頭葉の血流賦活が有意に逆相関した[2]。

高プロラクチン血症では、前頭側頭葉の神経細胞が働かなければならないときに血流増加を妨げ、神経細胞の活動を抑制すると考えられた。

 そもそも神経細胞の発火と脳血流の賦活は密接に連動している。これを神経血管カップリング(neurovascular coupling)という。

ものを考え神経細胞が活動するには、多大なエネルギーが必要である。
エネルギー供給のために血流が増加する。
神経血管カップリングの調整役をしているのがグリア細胞である。

グリア細胞は神経細胞の発火をモニタリングし、血管に伸ばした終足(endfeet)を介して一酸化窒素(NO)やイオンチャンネルで血管平滑筋の緊張を調節する。

――プロラクチンはのろくさせるホルモン!?

 グリア細胞にはプロラクチン受容体が多数発現している。

プロラクチンがグリア細胞上のプロラクチン受容体と結合するとセカンドメッセンジャーを発し、神経血管カップリングの反応性を変化させる。

プロラクチンと作業速度を検討した最近の報告でも、われわれの結果と同様に、男性ではプロラクチンが高いと作業速度が有意に低下した[3]。

女性でこの関係性を証明しにくいのは、プロラクチンが性周期により変動するためと思われる。

しかし女性でもプロラクチン値は作業速度の低下と関連する。

妊娠、出産の経過でのプロラクチン値の変化と作業速度を比較した研究では、プロラクチンが高い時期は作業速度が有意に低下していたからである[4]。

――プロラクチンは愛を育むホルモン

 子育て中の母親はプロラクチンが高いのは当たり前であるが、子育て中の父親もプロラクチンが軽度だが上昇している[5]。

プロラクチンが上昇している期間は、女性だけでなく男性も、外に向けた個体の活動性を少しだけ低下させ、子育てに集中するのが良いのかもしれない。

文献

[1]Hinuma S, Habata Y, Fujii R et al. A prolactin-releasing peptide in the brain. Nature. 1998;393(6682):272-6.

[2]Nakamura M, Nagamine T. Serum prolactin levels are associated with prefrontal hemodynamic responses using near-infrared spectroscopy in male psychotic patients treated with antipsychotics. Psychiatry Clin Neurosci. 2018; doi: 10.1111/pcn.12644.

[3]Montalvo I, Nadal R, Armario A et al. Sex differences in the relationship between prolactin levels and impaired processing speed in early psychosis. Aust N Z J Psychiatry. 2017:4867417744254. doi: 10.1177/0004867417744254.

[4]Henry JF, Sherwin BB. Hormones and cognitive functioning during late pregnancy and postpartum: a longitudinal study. Behav Neurosci. 2012 ;126(1):73-85.

[5]Gettler LT, McDade TW, Feranil AB et al. Prolactin, fatherhood, and reproductive behavior in human males. Am J Phys Anthropol. 2012;148(3):362-70.

執筆者:三光舎(医師・医学博士)
へき地医療に従事し,医療人類学的研究を行う.
その後、精神疾患患者の身体疾患の治療を通してPIM(Psychiatric Internal Medicine)という学際的な研究領域を立ち上げる.
現在は三光舎(Sunlight Brain Research Center)に所属.

2018年08月14日

座りすぎで死亡リスクが上昇する!14の疾患

座りすぎで死亡リスクが上昇する!14の疾患

普段の生活の中で、座って過ごす時間が1日当たり「6時間以上」の人では、3時間未満の人と比べて早期死亡リスクが19%高いことを示した研究結果が「American Journal of Epidemiology」6月26日オンライン版に発表された。

米国がん協会(ACS)のAlpa Patel氏らが実施した今回の研究では、このような死亡リスクの上昇をもたらす14の疾患も明らかになった。

近年、座って過ごす時間が長いと死亡リスクが高まるとする報告が相次いでいる。

しかし、死因別では、がんや心血管疾患以外の死因を幅広く検討した研究はほとんど行われていなかった。

そこで、Patel氏らは今回、がん予防研究-U(Cancer Prevention Study-II)栄養コホートのデータを用いて、余暇を座って過ごす時間の長さと全死亡リスク、さらにさまざまな死因別の死亡リスクとの関連について検討した。

対象は、同コホートの参加者のうち研究登録時に主要な慢性疾患がなかった男女12万7,554人。

このうち4万8,784人が21年間(中央値20.3年)の追跡期間中に死亡した。

年齢や性、学歴、喫煙の有無、食生活、運動習慣などを考慮して解析した結果、余暇を座って過ごす時間が1日に6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて全死亡リスクが19%高いことが分かった。

また、死因別では、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病、腎疾患、自殺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺疾患、肝疾患、消化性潰瘍などの消化器疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害の14の死因による死亡リスクが上昇することが明らかになった。

さらに、死亡リスクの上昇の程度は死因によってばらつきがみられ、がんでは約10%の上昇だったが、筋骨格系障害では約60%の上昇が認められた。

以上の結果を踏まえ、Patel氏は「この研究結果のメッセージは“もっと動くべき”といういたってシンプルなものだ。

座位時間は短いほど身体に良い。

1時間座って過ごしたら2分間立つだけでも脂質や血糖、血圧の値は改善する」と話している。

Patel氏によれば、座位時間が長いと健康に悪影響を与える原因は明らかではないが、ソファで長時間過ごす人は間食が多いといった他の不健康な習慣がある可能性が考えられるという。

また、以前の研究では座位時間が長いと中性脂肪や血糖、血圧、インスリンの値が上昇することが示されており、「これらによって座っている時間の長さと心疾患や肝疾患、腎疾患、がん、糖尿病、COPDなどによる死亡との関連を説明できるかもしれない」と同氏は付け加えている。

ただ、自殺やパーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害による死亡リスクが上昇した理由は明確には分からないとしている。

今回の報告を受け、専門家の一人で米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は「この研究から、長時間座り続けることによる早期死亡リスクの上昇には、心疾患から自殺までさまざまな要因が関与している可能性が示された。

これらの関連はさらに研究を進める必要があるが、その対処法は明確で、今すぐにでも取り組める簡単なことだ。

つまり、1日に何度も立ち上がって歩き回ることだ」とコメントしている。

(HealthDay News 2018年7月2日) https://consumer.healthday.com/…/sitting-tied-to-raised-ris… Copyright コピーライトマーク 2018 HealthDay. All rights reserved.

ビタミンDが十分だと大腸がんリスク低下

ビタミンDは可能性がいっぱいあるビタミンらしい 脂溶性なのでサプリで取りすぎないで
ビタミンDが十分だと大腸がんリスク低下
提供元:HealthDay News 公開日:2018/07/16

 骨の健康維持に欠かせない栄養素であるビタミンDは、食事から摂取できるだけでなく、紫外線を浴びると体内で生成される。

新たな研究で、ビタミンDの血中濃度が高いほど大腸がんになるリスクは低減する可能性のあることが示された。

研究によると、これらの関連は特に女性で強かったという。詳細は「Journal of the National Cancer Institute」6月14日オンライン版に掲載された。

 米国では、大腸がんはがんによる死亡原因の第3位を占めており、2018年には14万250人が新たに大腸がんと診断され、5万630人が大腸がんにより死亡すると推計されている。

また、生涯で大腸がんに罹患する確率は女性では24人に1人、男性では22人に1人といわれている。

 米国がん協会(ACS)疫学研究部門長のMarjorie McCullough氏らは今回、17件のコホート研究に参加した計5,706人のがん患者と計7,107人の健康な対照群のデータを用いて、血中25(OH)D濃度と大腸がん罹患との関連を調べた。

対象者の約3分の1では、血液サンプルを再分析して新たに血中25(OH)D濃度を測定した。

 解析の結果、血中25(OH)D濃度が正常範囲だが低い(50〜62.5nmol/L)場合に比べて、
ビタミンDが不足または欠乏(血中25(OH)D濃度が30nmol/L未満)していると大腸がんになるリスクが31%高いことが分かった。

一方で、血中25(OH)D濃度が十分であると(75〜87.5nmol/Lおよび87.5〜100nmol/L)、大腸がんになるリスクはそれぞれ19%、27%低下した。

 また、血中25(OH)D濃度が25nmol/L上昇するごとに、大腸がんになるリスクは女性では19%、男性では7%低下することも明らかになった。

ただし、血中25(OH)D濃度が100nmol/L以上になると、この効果は頭打ちになったという。

 しかし、大腸がんを予防するために、わざわざ日焼けをする必要はないようだ。

McCullough氏によれば、大腸がんリスクが上昇するほどビタミンDが欠乏している米国人はわずかに過ぎないという。

ほとんどの人は普段の生活でビタミンDを十分に取れており、過剰摂取は逆に身体に悪影響を及ぼすためサプリメントの摂取は勧められないとしている。

また、紫外線は皮膚がんの強いリスク因子になるため、「ビタミンDの血中濃度を上げるために日焼けすることは勧められない」と同氏は強調している。

 ビタミンDは骨の健康に重要なことが知られているが、がんやそれ以外の疾患に対する有効性は十分に検討されていない。

2011年の米国医学研究所(IOM、現・米国医学アカデミー;NAM)による食事摂取基準に関する報告書でも、ビタミンDによるがん予防効果については十分なエビデンスはないことが記されている。

 なお、ビタミンDががん予防に働く機序は明らかにされていないが、基礎研究で、ビタミンDには細胞の増殖を抑えたり、細胞死を促進する作用があることが示されている。

McCullough氏は「ビタミンDはこうした作用により異常ながん細胞の増殖を抑えるように働くのではないか」と話している。

[2018年6月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら
McCullough ML, et al. J Natl Cancer Inst. 2018 Jun 14. [Epub ahead of print]

2018年08月13日

ビタミンDは可能性がいっぱいあるビタミンらしい 脂溶性なのでサプリで取りすぎないで ビタミンDが十分だと大腸がんリスク低下

ビタミンDは可能性がいっぱいあるビタミンらしい 脂溶性なのでサプリで取りすぎないで
ビタミンDが十分だと大腸がんリスク低下

提供元:HealthDay News 公開日:2018/07/16

 骨の健康維持に欠かせない栄養素であるビタミンDは、食事から摂取できるだけでなく、紫外線を浴びると体内で生成される。

新たな研究で、ビタミンDの血中濃度が高いほど大腸がんになるリスクは低減する可能性のあることが示された。

研究によると、これらの関連は特に女性で強かったという。詳細は「Journal of the National Cancer Institute」6月14日オンライン版に掲載された。

 米国では、大腸がんはがんによる死亡原因の第3位を占めており、2018年には14万250人が新たに大腸がんと診断され、5万630人が大腸がんにより死亡すると推計されている。

また、生涯で大腸がんに罹患する確率は女性では24人に1人、男性では22人に1人といわれている。

 米国がん協会(ACS)疫学研究部門長のMarjorie McCullough氏らは今回、17件のコホート研究に参加した計5,706人のがん患者と計7,107人の健康な対照群のデータを用いて、血中25(OH)D濃度と大腸がん罹患との関連を調べた。

対象者の約3分の1では、血液サンプルを再分析して新たに血中25(OH)D濃度を測定した。

 解析の結果、血中25(OH)D濃度が正常範囲だが低い(50〜62.5nmol/L)場合に比べて、
ビタミンDが不足または欠乏(血中25(OH)D濃度が30nmol/L未満)していると大腸がんになるリスクが31%高いことが分かった。

一方で、血中25(OH)D濃度が十分であると(75〜87.5nmol/Lおよび87.5〜100nmol/L)、大腸がんになるリスクはそれぞれ19%、27%低下した。

 また、血中25(OH)D濃度が25nmol/L上昇するごとに、大腸がんになるリスクは女性では19%、男性では7%低下することも明らかになった。

ただし、血中25(OH)D濃度が100nmol/L以上になると、この効果は頭打ちになったという。

 しかし、大腸がんを予防するために、わざわざ日焼けをする必要はないようだ。

McCullough氏によれば、大腸がんリスクが上昇するほどビタミンDが欠乏している米国人はわずかに過ぎないという。

ほとんどの人は普段の生活でビタミンDを十分に取れており、過剰摂取は逆に身体に悪影響を及ぼすためサプリメントの摂取は勧められないとしている。

また、紫外線は皮膚がんの強いリスク因子になるため、「ビタミンDの血中濃度を上げるために日焼けすることは勧められない」と同氏は強調している。

 ビタミンDは骨の健康に重要なことが知られているが、がんやそれ以外の疾患に対する有効性は十分に検討されていない。

2011年の米国医学研究所(IOM、現・米国医学アカデミー;NAM)による食事摂取基準に関する報告書でも、ビタミンDによるがん予防効果については十分なエビデンスはないことが記されている。

 なお、ビタミンDががん予防に働く機序は明らかにされていないが、基礎研究で、ビタミンDには細胞の増殖を抑えたり、細胞死を促進する作用があることが示されている。

McCullough氏は「ビタミンDはこうした作用により異常ながん細胞の増殖を抑えるように働くのではないか」と話している。

[2018年6月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら McCullough ML, et al. J Natl Cancer Inst. 2018 Jun 14. [Epub ahead of print]
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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