2018年08月17日
小児にも使えるスギ花粉症の減感作療法薬「シダキュア舌下錠」
小児にも使えるスギ花粉症の減感作療法薬「シダキュア舌下錠」【下平博士のDIノート】
公開日:2018/07/17 企画・制作 ケアネット
今回は、「スギ花粉エキス舌下錠2,000JAU/5,000JAU(商品名:シダキュアスギ花粉舌下錠)」を紹介します。
本剤は、国内で初めて成人のみならず小児においても使用可能となったスギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法(減感作療法)薬です。
本剤を継続することで、スギ花粉症の諸症状軽減や抗アレルギー薬の減量によるQOL改善などが期待できます。
<効能・効果>
スギ花粉症(減感作療法)の適応で、2017年9月27日に承認され、2018年6月29日より販売されています。
減感作療法とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを少量から投与開始し、徐々に増量することで、アレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法です。
重症の気管支喘息患者では、本剤の投与により、喘息発作を誘発する恐れがあるため、投与することができません。
なお、国内臨床試験において、小児(5〜17歳)と成人(18〜64歳)の有効性および安全性は同等であることが確認されています。
<用法・用量>
通常、投与開始後1週間は、シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、5,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込みます。
その後5分間は、うがいや飲食を控えるようにします。投与期間は3年以上が推奨されています。
初回投与時は医師の監督のもと、投与後少なくとも30分間は安静な状態を保ち、ショックやアナフィラキシーなどが発現した際に救急処置ができるようにします(一般にI型のアレルギー反応は30分以内に発現するため)。
なお、スギ花粉飛散時期は、アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている可能性が高いため、新たに投与を開始することはできません。
<副作用>
国内第II/III相臨床試験において、783例中394例(50.3%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められています。
主な副作用は、
口腔浮腫113例(14.4%)、
咽頭刺激感112例(14.3%)、
耳そう痒症98例(12.5%)、
口腔そう痒症67例(8.6%)、
咽喉頭不快感57例(7.3%)、
口腔内不快感47例(6.0%)でした。
なお、ショック、アナフィラキシーなどの重篤な副作用は報告されていません。
<患者さんへの指導例>
1.スギ花粉症の原因であるアレルゲンを長期間投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげることができます。
治療は、「3年以上」続ける必要があります。
2.舌の下に置くと唾液で溶けてなくなりますが、薬の溶けた唾液はすぐに飲み込まず1分間舌の下に保持してください。
飲み込んだ後、5分間はうがいや飲食を控えてください。
3.錠剤は吸湿性があるため、服用直前までシートを開けないでください。
4.シートから取り出す際は、裏のシートを剥がした後、爪を立てずに指の腹で押し出してください。
取り出す際に割れてしまっても、全量を服用すれば問題ありません。
5.口の中の違和感や口内炎、唇の腫れ、咽頭や耳にかゆみなどがあらわれた場合は、相談してください。
6.お子さんが服用する場合は、飲み終わるまで目を離さないようにしてください。
7.飲み忘れた場合、同日中に気付いたときは服用して構いませんが、1日空いてしまった場合、前日の用量から再開してください。
<Shimo's eyes>
減感作療法は、対症療法とは異なり、治癒あるいは長期寛解が期待できる治療方法です。
原因アレルゲンを投与する治療法であるため、服用中はショックやアナフィラキシーの発現にとくに注意が必要です。
従来、アレルゲンを皮下注射により取り込む皮下免疫療法が主流でしたが、
2014年にはスギ花粉エキス舌下液(商品名:シダトレンスギ花粉舌下液)が発売され、
舌下免疫療法が開始されました。
皮下免疫療法と比べ、2日目からは自宅で服薬可能で、
長期に渡る定期通院が不要になること、
注射による痛みなく治療できることなどから、
患者さんの負担軽減につながりました。
本剤は、舌下液の問題点を改良したものと言えます。
錠剤になったことで扱いやすくなり、
かつ舌下の保持時間が2分間から1分間に短縮され、
煩雑だった増量期間も開始1週間後の1段階のみになるなど、
服用方法が簡便になりました。
また、保管方法も、冷所から室温になったので、出張や旅行がある患者さんにとってはとくに喜ばしいことでしょう。
本剤は、維持期の投与量が舌下液の2,000JAUよりも高力価の5,000JAUになったため、高い有効性が期待できます。
よって、舌下液から本剤への切り替えが想定されますが、
その場合も初回投与として扱われますので、注意が必要です。
なお、本剤は新有効成分含有医薬品として承認を受けているので、
2019年4月末までは、1回の処方につき14日分までの処方日数制限があります。
本剤は、講習会やeラーニングなどの受講を修了し、
鳥居薬品株式会社の製品適正使用eラーニング受講およびeテスト合格を経て登録された医療機関・医師のみが処方可能です。
薬剤師は、本剤の処方せんを受け取ったとき、必ず処方医が「受講修了医師」であることを、登録医師確認窓口で確認しなくてはなりません。また、患者に交付されている「患者携帯カード」の記載内容について、確認を行う必要があります。
下平 秀夫 ( しもだいら ひでお ) 氏 帝京大学薬学部教授
[略歴]
薬剤師、博⼠(薬学)。
1957年⻑野県出⾝、東京薬科⼤学卒業後、
株式会社⼋王⼦薬剤センター次⻑、
東京薬科⼤学客員助教授を経て2007年から現職。
帝京⼤学薬学部で薬局管理学、実務薬学について教鞭を執る傍ら、株式会社ファーミックでは現役薬剤師として活躍。
株式会社ファーミック専務取締役、医薬品情報専⾨薬剤師、国立市薬剤師会会長、東京都薬剤師会編集委員長 。
ファーミックでは新薬情報をわかりやすく紹介するwebサイト「薬局薬剤師のためのお薬情報」の運営も行っている。
公開日:2018/07/17 企画・制作 ケアネット
今回は、「スギ花粉エキス舌下錠2,000JAU/5,000JAU(商品名:シダキュアスギ花粉舌下錠)」を紹介します。
本剤は、国内で初めて成人のみならず小児においても使用可能となったスギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法(減感作療法)薬です。
本剤を継続することで、スギ花粉症の諸症状軽減や抗アレルギー薬の減量によるQOL改善などが期待できます。
<効能・効果>
スギ花粉症(減感作療法)の適応で、2017年9月27日に承認され、2018年6月29日より販売されています。
減感作療法とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲンを少量から投与開始し、徐々に増量することで、アレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法です。
重症の気管支喘息患者では、本剤の投与により、喘息発作を誘発する恐れがあるため、投与することができません。
なお、国内臨床試験において、小児(5〜17歳)と成人(18〜64歳)の有効性および安全性は同等であることが確認されています。
<用法・用量>
通常、投与開始後1週間は、シダキュアスギ花粉舌下錠2,000JAUを1日1回1錠、投与2週目以降は、5,000JAUを1日1回1錠、舌下にて1分間保持した後、飲み込みます。
その後5分間は、うがいや飲食を控えるようにします。投与期間は3年以上が推奨されています。
初回投与時は医師の監督のもと、投与後少なくとも30分間は安静な状態を保ち、ショックやアナフィラキシーなどが発現した際に救急処置ができるようにします(一般にI型のアレルギー反応は30分以内に発現するため)。
なお、スギ花粉飛散時期は、アレルゲンに対する患者の過敏性が高まっている可能性が高いため、新たに投与を開始することはできません。
<副作用>
国内第II/III相臨床試験において、783例中394例(50.3%)に、臨床検査値異常を含む副作用が認められています。
主な副作用は、
口腔浮腫113例(14.4%)、
咽頭刺激感112例(14.3%)、
耳そう痒症98例(12.5%)、
口腔そう痒症67例(8.6%)、
咽喉頭不快感57例(7.3%)、
口腔内不快感47例(6.0%)でした。
なお、ショック、アナフィラキシーなどの重篤な副作用は報告されていません。
<患者さんへの指導例>
1.スギ花粉症の原因であるアレルゲンを長期間投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげることができます。
治療は、「3年以上」続ける必要があります。
2.舌の下に置くと唾液で溶けてなくなりますが、薬の溶けた唾液はすぐに飲み込まず1分間舌の下に保持してください。
飲み込んだ後、5分間はうがいや飲食を控えてください。
3.錠剤は吸湿性があるため、服用直前までシートを開けないでください。
4.シートから取り出す際は、裏のシートを剥がした後、爪を立てずに指の腹で押し出してください。
取り出す際に割れてしまっても、全量を服用すれば問題ありません。
5.口の中の違和感や口内炎、唇の腫れ、咽頭や耳にかゆみなどがあらわれた場合は、相談してください。
6.お子さんが服用する場合は、飲み終わるまで目を離さないようにしてください。
7.飲み忘れた場合、同日中に気付いたときは服用して構いませんが、1日空いてしまった場合、前日の用量から再開してください。
<Shimo's eyes>
減感作療法は、対症療法とは異なり、治癒あるいは長期寛解が期待できる治療方法です。
原因アレルゲンを投与する治療法であるため、服用中はショックやアナフィラキシーの発現にとくに注意が必要です。
従来、アレルゲンを皮下注射により取り込む皮下免疫療法が主流でしたが、
2014年にはスギ花粉エキス舌下液(商品名:シダトレンスギ花粉舌下液)が発売され、
舌下免疫療法が開始されました。
皮下免疫療法と比べ、2日目からは自宅で服薬可能で、
長期に渡る定期通院が不要になること、
注射による痛みなく治療できることなどから、
患者さんの負担軽減につながりました。
本剤は、舌下液の問題点を改良したものと言えます。
錠剤になったことで扱いやすくなり、
かつ舌下の保持時間が2分間から1分間に短縮され、
煩雑だった増量期間も開始1週間後の1段階のみになるなど、
服用方法が簡便になりました。
また、保管方法も、冷所から室温になったので、出張や旅行がある患者さんにとってはとくに喜ばしいことでしょう。
本剤は、維持期の投与量が舌下液の2,000JAUよりも高力価の5,000JAUになったため、高い有効性が期待できます。
よって、舌下液から本剤への切り替えが想定されますが、
その場合も初回投与として扱われますので、注意が必要です。
なお、本剤は新有効成分含有医薬品として承認を受けているので、
2019年4月末までは、1回の処方につき14日分までの処方日数制限があります。
本剤は、講習会やeラーニングなどの受講を修了し、
鳥居薬品株式会社の製品適正使用eラーニング受講およびeテスト合格を経て登録された医療機関・医師のみが処方可能です。
薬剤師は、本剤の処方せんを受け取ったとき、必ず処方医が「受講修了医師」であることを、登録医師確認窓口で確認しなくてはなりません。また、患者に交付されている「患者携帯カード」の記載内容について、確認を行う必要があります。
下平 秀夫 ( しもだいら ひでお ) 氏 帝京大学薬学部教授
[略歴]
薬剤師、博⼠(薬学)。
1957年⻑野県出⾝、東京薬科⼤学卒業後、
株式会社⼋王⼦薬剤センター次⻑、
東京薬科⼤学客員助教授を経て2007年から現職。
帝京⼤学薬学部で薬局管理学、実務薬学について教鞭を執る傍ら、株式会社ファーミックでは現役薬剤師として活躍。
株式会社ファーミック専務取締役、医薬品情報専⾨薬剤師、国立市薬剤師会会長、東京都薬剤師会編集委員長 。
ファーミックでは新薬情報をわかりやすく紹介するwebサイト「薬局薬剤師のためのお薬情報」の運営も行っている。
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