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2019年05月06日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <55 妄想>
妄想
真梨が修学旅行でいない夜、僕たちは久しぶりに食事に出た。帰りにはバーによって少し飲んだ。
梨花は滅多に夜の街に出ることがない。
僕があまりそういう場所を好きではないので、結局は梨花もそういう場所へ出る機会を無くしていた。
「真ちゃん 私、年とるのが怖い。」
「なんで?」
「だって、私はいつまでも、真ちゃんとこうしていたいもん。」
「いつまでも、こうして暮らせばいいんじゃないの?」
「でも、年取ったらこんな風にはしてくれへんようになるでしょ?ひょっとしたら、若い女の人とこうなるかもしれんやんか。今日のバーの女の人も真ちゃんに興味深々やったよね。わかってるんでしょ?」
「うん、あの子は普段は僕の隣に座ってくるんだよ。色々世話を焼きたがるんだ。
時々、若さにあてられそうになる。」僕はやきもちを焼く梨花をからかった。
「やっぱり、無理もないよね。若いい人は私が見てもきれいでうらやましい。
真ちゃん、若い人となんかなるのやめて。お願い、私、生きてられへんかもしれん。」
「珍しいね。久しぶりに梨花の口説き文句を聞いたね。」
「なんか、久しぶりにああいう場所へ行ったら、自分が野暮ったいおばさんやって思い知らされて辛い。」
「僕の大事な奥様を裏切ったりしないよ。いつだったか、あの騒動でこりたよ。忘れた?
僕は寂しい孤独な育ちだよ。妾の子は寂しいし妾はかわいそうだよ。本妻だって苦しむ。その子供も苦しむ。全部じかに見てきたんだよ。
僕は、梨花や真梨のいる家でデレデレのしょうがないオヤジで暮らしたいんだよ。
ねえ、なんであの店に連れて行ったかわかる?」
「お酒飲みたかったから?」
「見せびらかしにつれて行ったんだよ。僕の好みの女はこういう女なんだってね。」
梨花は急に真顔で「真ちゃん、いつの間にそんな上手に女の人口説けるようになったん?」と聞いた。
「ねえ、年を取ったら、手をつないで映画を見に行こう。はぐれないように手をつないで雑踏の中を歩くんだよ。ねえ、年取ったら月に一度は二人で映画を見に行こう。」
僕は、若い時のことを思い出していた。駅の雑踏の中で手をつないで歩く老夫婦を見たとき、自分の両親はこんな風になることはなかったんだと寂しかった。年を取ったら梨花と手をつないで雑踏の中を歩こうとおもった。
もし、新幹線で聡に合わなかったら?僕は、あの温かい家族に出会わなかっただろう。
もし、僕にいやなスキャンダルがなければ?梨花は僕の部屋に来なかっただろう。
もし、聡に不快な相談を受けなかったら?梨花は、あんなにも情熱的に告白してくれることはなかっただろう。
一瞬 めんどうで鬱陶しい出来事が僕の運命を動かした。
多分、僕は梨花をみとってから、木が朽ちるように生涯を終えるのだろう。この妄想は なぜか、僕を妙に甘美な満足感へと導いた。
続く
いつまでもキレイでいたい!
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真梨が修学旅行でいない夜、僕たちは久しぶりに食事に出た。帰りにはバーによって少し飲んだ。
梨花は滅多に夜の街に出ることがない。
僕があまりそういう場所を好きではないので、結局は梨花もそういう場所へ出る機会を無くしていた。
「真ちゃん 私、年とるのが怖い。」
「なんで?」
「だって、私はいつまでも、真ちゃんとこうしていたいもん。」
「いつまでも、こうして暮らせばいいんじゃないの?」
「でも、年取ったらこんな風にはしてくれへんようになるでしょ?ひょっとしたら、若い女の人とこうなるかもしれんやんか。今日のバーの女の人も真ちゃんに興味深々やったよね。わかってるんでしょ?」
「うん、あの子は普段は僕の隣に座ってくるんだよ。色々世話を焼きたがるんだ。
時々、若さにあてられそうになる。」僕はやきもちを焼く梨花をからかった。
「やっぱり、無理もないよね。若いい人は私が見てもきれいでうらやましい。
真ちゃん、若い人となんかなるのやめて。お願い、私、生きてられへんかもしれん。」
「珍しいね。久しぶりに梨花の口説き文句を聞いたね。」
「なんか、久しぶりにああいう場所へ行ったら、自分が野暮ったいおばさんやって思い知らされて辛い。」
「僕の大事な奥様を裏切ったりしないよ。いつだったか、あの騒動でこりたよ。忘れた?
僕は寂しい孤独な育ちだよ。妾の子は寂しいし妾はかわいそうだよ。本妻だって苦しむ。その子供も苦しむ。全部じかに見てきたんだよ。
僕は、梨花や真梨のいる家でデレデレのしょうがないオヤジで暮らしたいんだよ。
ねえ、なんであの店に連れて行ったかわかる?」
「お酒飲みたかったから?」
「見せびらかしにつれて行ったんだよ。僕の好みの女はこういう女なんだってね。」
梨花は急に真顔で「真ちゃん、いつの間にそんな上手に女の人口説けるようになったん?」と聞いた。
「ねえ、年を取ったら、手をつないで映画を見に行こう。はぐれないように手をつないで雑踏の中を歩くんだよ。ねえ、年取ったら月に一度は二人で映画を見に行こう。」
僕は、若い時のことを思い出していた。駅の雑踏の中で手をつないで歩く老夫婦を見たとき、自分の両親はこんな風になることはなかったんだと寂しかった。年を取ったら梨花と手をつないで雑踏の中を歩こうとおもった。
もし、新幹線で聡に合わなかったら?僕は、あの温かい家族に出会わなかっただろう。
もし、僕にいやなスキャンダルがなければ?梨花は僕の部屋に来なかっただろう。
もし、聡に不快な相談を受けなかったら?梨花は、あんなにも情熱的に告白してくれることはなかっただろう。
一瞬 めんどうで鬱陶しい出来事が僕の運命を動かした。
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THE FIRST STORY 真一と梨花 <54 修復>
修復
夕飯を買いに行こうと真梨を誘った。一人で出ていけば帰ってくるのかと心配させてしまうからだ。
真梨は大きな声で「牛丼買いにいきた〜い。」といった。
そういえば真梨が生まれた直後も梨花を休ませるために牛丼を買って帰った。なつかしい食べ物だった。
梨花がコーヒーを飲もうとしたので「胃が荒れてるときにそんなもの飲んだら駄目じゃないか!」というと梨花が笑った。「何がいい?何が食べられる?」と聞くと牛丼がいいと答えた。
真梨のリクエストで牛丼とシュークリームを買って帰った。不思議な取り合わせだったが梨花は喜んだ。
近所の洋菓子店のシュークリームは梨花の好物だった。
真梨が眠ってから、また2人の間に緊張した空気が流れた。
梨花が「真ちゃんあの人のとこへ行ってたん?」と聞いたので「いや、彼女とはあれ以来会ってない。僕が合おうとしないから家に直接乗り込んだんだ。
話をつけるために店に行ったときには、もうクビになってた。妊娠は嘘だったんだ。」というと梨花はポカンとなった。
「考えて見ろよ。たった一度で妊娠するぐらいなら今頃この家はものすごい子だくさんだ。僕の精度はそんなに良くないよ。」といった。
「真ちゃんの赤ちゃん育てる自信はあったんよ。でも、もしかしたら真ちゃんがその人と暮らすって言ったらどうしようって不安で不安でご飯食べられへんかったのよ。」と言って泣いてしまった。
梨花は「たった一ぺんのことで大騒ぎするつもりはなかったんよ。でも、あの人、なんか言ったら年齢的にも、年齢的にもって凄い年の話ばっかりするのよ。そんなこと言われたら私勝てっこないやない。
もう絶対嫌なんよ。真ちゃんが他の女の人と抱き合うこと考えたら気が狂いそうになる。
お願い。絶対嫌なんよ。」とまた泣きじゃくってしまった。
僕は、二度とそういうことをしないと誓う以外のことはできなかった。
梨花は「大阪では真ちゃんのこと休火山やって言うてたんよ。噴火させたらもう止まらへんって。
私、何のことかわからへんかったけど、この間の夜わかった。始めて真ちゃんが本気で怒った顔見たの。
真ちゃんものすごく怖かった。怖かったら別れたらいいんやけど、それも、でけへんのよ。
だから、もうあんなに怖い目に合わせんといて。お願いやから。」 といった。
その話になると、僕は居ても立っても居られないほど辛かった。
「あの事が自己嫌悪で帰ってこられなかった。子供に心配をかけて最低の父親だ。もう許してほしい。」謝る以外のことはできなかった。
その日は何となく気まずい雰囲気で寝室に入った。僕はいつまでも寝付けなかった。
梨花も何度も寝返りを打った。夜も2時を過ぎたころに梨花が僕のベッドに潜りこんできた。
久しぶりに梨花の肩を抱いて思わず大きなため息をついて「キツかった。」と口走ってしまった。
梨花が「真ちゃん、お風呂やないんやから。もうちょっとロマンチックな声出してほしかった。」と言った。涙声だった。
梨花は少しやせていた。
僕が「精子って一匹、二匹って数えるの?」と聞くと「だって、一羽二羽もおかしいでしょ。鳥やないねんから。」と答えた
。僕が「体調とか気分とかいろいろあると思うけど断るときには優しく断ってほしいんだ。梨花に冷たくされたら心が折れる。」というと「心が折れるのはこっちやないの!」と僕の胸をぴしゃぴしゃとたたいて足をバタバタさせた。僕は梨花にたたかれて思わず涙ぐんでしまった。
「休火山のくせに泣き虫の真ちゃんが大好きよ。」と梨花が言った。僕は、だらしなくへらへらと笑った。
他の人には絶対に見せられない泣き虫真一の姿だった。やっと眠りについた時には3時を過ぎていた。
翌日は出勤の前に父の仏様に合掌した。真梨を無事に会社まで送り届けてくれたのは父に違いなかった。
夕方、梨花の好きな松寿司の折を買って帰った。梨花は大阪風の寄せ鍋を作って待っていた。
家族3人で飢えた子供のようにたらふく食べた。
その後も時々、真っ最中に「あの人にもこんなことしたの?」と不意打ちを食らうこともあった。
そういう時は途中撤退は許されない。ただひたすら「君が一番。君が最高。君しかいない」と唱え続けてコトを進めるだけだった。
そんな日々が半年ぐらい続いた。
「あの時濡れてたからいいと思ったんだ。」と半年も過ぎてから弁解をした。
梨花は「真ちゃんにされたら、どんな時でも、そうなってしまう。私は真ちゃんのために生まれたんやもん。」といった。久しぶりに梨花に口説き文句を言われて、へらへらと笑った。
僕は外では抜け目のない商売人になっていたが、それは生活の手段だった。
家ではデレデレの甘いおやじだった。
梨花におだてられて、いい気になってへらへらと笑う自分が好きだった。
続く
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真梨は大きな声で「牛丼買いにいきた〜い。」といった。
そういえば真梨が生まれた直後も梨花を休ませるために牛丼を買って帰った。なつかしい食べ物だった。
梨花がコーヒーを飲もうとしたので「胃が荒れてるときにそんなもの飲んだら駄目じゃないか!」というと梨花が笑った。「何がいい?何が食べられる?」と聞くと牛丼がいいと答えた。
真梨のリクエストで牛丼とシュークリームを買って帰った。不思議な取り合わせだったが梨花は喜んだ。
近所の洋菓子店のシュークリームは梨花の好物だった。
真梨が眠ってから、また2人の間に緊張した空気が流れた。
梨花が「真ちゃんあの人のとこへ行ってたん?」と聞いたので「いや、彼女とはあれ以来会ってない。僕が合おうとしないから家に直接乗り込んだんだ。
話をつけるために店に行ったときには、もうクビになってた。妊娠は嘘だったんだ。」というと梨花はポカンとなった。
「考えて見ろよ。たった一度で妊娠するぐらいなら今頃この家はものすごい子だくさんだ。僕の精度はそんなに良くないよ。」といった。
「真ちゃんの赤ちゃん育てる自信はあったんよ。でも、もしかしたら真ちゃんがその人と暮らすって言ったらどうしようって不安で不安でご飯食べられへんかったのよ。」と言って泣いてしまった。
梨花は「たった一ぺんのことで大騒ぎするつもりはなかったんよ。でも、あの人、なんか言ったら年齢的にも、年齢的にもって凄い年の話ばっかりするのよ。そんなこと言われたら私勝てっこないやない。
もう絶対嫌なんよ。真ちゃんが他の女の人と抱き合うこと考えたら気が狂いそうになる。
お願い。絶対嫌なんよ。」とまた泣きじゃくってしまった。
僕は、二度とそういうことをしないと誓う以外のことはできなかった。
梨花は「大阪では真ちゃんのこと休火山やって言うてたんよ。噴火させたらもう止まらへんって。
私、何のことかわからへんかったけど、この間の夜わかった。始めて真ちゃんが本気で怒った顔見たの。
真ちゃんものすごく怖かった。怖かったら別れたらいいんやけど、それも、でけへんのよ。
だから、もうあんなに怖い目に合わせんといて。お願いやから。」 といった。
その話になると、僕は居ても立っても居られないほど辛かった。
「あの事が自己嫌悪で帰ってこられなかった。子供に心配をかけて最低の父親だ。もう許してほしい。」謝る以外のことはできなかった。
その日は何となく気まずい雰囲気で寝室に入った。僕はいつまでも寝付けなかった。
梨花も何度も寝返りを打った。夜も2時を過ぎたころに梨花が僕のベッドに潜りこんできた。
久しぶりに梨花の肩を抱いて思わず大きなため息をついて「キツかった。」と口走ってしまった。
梨花が「真ちゃん、お風呂やないんやから。もうちょっとロマンチックな声出してほしかった。」と言った。涙声だった。
梨花は少しやせていた。
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「休火山のくせに泣き虫の真ちゃんが大好きよ。」と梨花が言った。僕は、だらしなくへらへらと笑った。
他の人には絶対に見せられない泣き虫真一の姿だった。やっと眠りについた時には3時を過ぎていた。
翌日は出勤の前に父の仏様に合掌した。真梨を無事に会社まで送り届けてくれたのは父に違いなかった。
夕方、梨花の好きな松寿司の折を買って帰った。梨花は大阪風の寄せ鍋を作って待っていた。
家族3人で飢えた子供のようにたらふく食べた。
その後も時々、真っ最中に「あの人にもこんなことしたの?」と不意打ちを食らうこともあった。
そういう時は途中撤退は許されない。ただひたすら「君が一番。君が最高。君しかいない」と唱え続けてコトを進めるだけだった。
そんな日々が半年ぐらい続いた。
「あの時濡れてたからいいと思ったんだ。」と半年も過ぎてから弁解をした。
梨花は「真ちゃんにされたら、どんな時でも、そうなってしまう。私は真ちゃんのために生まれたんやもん。」といった。久しぶりに梨花に口説き文句を言われて、へらへらと笑った。
僕は外では抜け目のない商売人になっていたが、それは生活の手段だった。
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2019年05月05日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <53 娘の来訪>
娘の来訪
家を出てから、ずっと会社の近くのビジネスホテルに泊まっていた。10日目に真梨が会社に来た。
まだ小学校の4年生だった。
受け付けた社員も突然の来訪に驚いて近所の喫茶店からジュースの出前を取ってくれた。
慌てて応接室に行くと真梨が物珍しそうにキョロキョロしながら座っていた。
「どうしたの?ママがどうかした?」と尋ねると「どうしてパパ帰ってこないの?ママ死んじゃうよ。」と言われた。
「ママ元気ないの?寝てるの?ご飯ちゃんと食べてる?」と立て続けに聴くと「ママはいつもニコニコしてる。ご飯はいつもごちそうだよ。でもママはご飯食べないの。いつもビタミン剤とか飲んでる。
ほっといたらママ死んじゃうよ。」と言った。
心臓がぎゅっと縮んだ。子供は母親の笑顔がごまかしだと気づいている。
心配して父親を連れ戻しに来たのだった。
10日間も一体何をしているのだろう?
「さっさと帰らなきゃ。こんなことしている場合じゃない。」と思った。10日もかけて子供の力を借りてやっと我に返った。
真梨を連れて家に帰った。真梨がインターフォンを押すと梨花の明るい声が返ってきた。
「お帰り〜。」と言ってドアを開けた。
明るい声で「遅かったね~。心配するやないの。」と賑やかな関西弁が玄関に響いた。
玄関ドアを開けて初めて僕が居るのに気づいた梨花はいつも通りの声で「お帰り」といった。
僕は「真梨が会社まで迎えに来てくれた。」と手短に言った。
梨花は目を丸くして真梨を見て「黙って行ったの?行き方、ようわかったねえ。」というのが精いっぱいだった。
僕のカバンを受取ったとたんに梨花は玄関先で座り込んでしまった。
「久しぶりに真ちゃんの顔見たら尻もちついてしもたわ。」と大笑いしようとしたが声がかすれて笑い声にならなかった。荒れた肌の上に刷いた濃い頬紅の下から紫色の隈が透けて見えた。
二階から「さっさと仲直りしてね〜。子供に世話掛けないでね〜。」と真梨の大声が聞こえた。
僕が36歳になってやっと手に入れた家族の喧騒だった。つまらない女のために手放すわけにはいかなかった。
とにかく梨花をソファーに座らせてひざ掛けをかけた。僕は梨花に「休んでくれ。」と頼んだ。
続く
いつまでもキレイでいたい!
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家を出てから、ずっと会社の近くのビジネスホテルに泊まっていた。10日目に真梨が会社に来た。
まだ小学校の4年生だった。
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慌てて応接室に行くと真梨が物珍しそうにキョロキョロしながら座っていた。
「どうしたの?ママがどうかした?」と尋ねると「どうしてパパ帰ってこないの?ママ死んじゃうよ。」と言われた。
「ママ元気ないの?寝てるの?ご飯ちゃんと食べてる?」と立て続けに聴くと「ママはいつもニコニコしてる。ご飯はいつもごちそうだよ。でもママはご飯食べないの。いつもビタミン剤とか飲んでる。
ほっといたらママ死んじゃうよ。」と言った。
心臓がぎゅっと縮んだ。子供は母親の笑顔がごまかしだと気づいている。
心配して父親を連れ戻しに来たのだった。
10日間も一体何をしているのだろう?
「さっさと帰らなきゃ。こんなことしている場合じゃない。」と思った。10日もかけて子供の力を借りてやっと我に返った。
真梨を連れて家に帰った。真梨がインターフォンを押すと梨花の明るい声が返ってきた。
「お帰り〜。」と言ってドアを開けた。
明るい声で「遅かったね~。心配するやないの。」と賑やかな関西弁が玄関に響いた。
玄関ドアを開けて初めて僕が居るのに気づいた梨花はいつも通りの声で「お帰り」といった。
僕は「真梨が会社まで迎えに来てくれた。」と手短に言った。
梨花は目を丸くして真梨を見て「黙って行ったの?行き方、ようわかったねえ。」というのが精いっぱいだった。
僕のカバンを受取ったとたんに梨花は玄関先で座り込んでしまった。
「久しぶりに真ちゃんの顔見たら尻もちついてしもたわ。」と大笑いしようとしたが声がかすれて笑い声にならなかった。荒れた肌の上に刷いた濃い頬紅の下から紫色の隈が透けて見えた。
二階から「さっさと仲直りしてね〜。子供に世話掛けないでね〜。」と真梨の大声が聞こえた。
僕が36歳になってやっと手に入れた家族の喧騒だった。つまらない女のために手放すわけにはいかなかった。
とにかく梨花をソファーに座らせてひざ掛けをかけた。僕は梨花に「休んでくれ。」と頼んだ。
続く
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2019年05月04日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <52 詐欺>
詐欺
梨花と喧嘩をした翌日、妊娠の話に決着をつけるために女が働くクラブへ出向いた。
もし本当だったら、やはり援助し続けるしかないだろう。また自己嫌悪につかまってしまった。
なぜ自分が一番嫌いなことを繰り返したんだ。
若いころ真由美という人妻と関係を持った捨て鉢な気分がよみがえっていた。
店へ行くと、ちょうど、その店のオーナーも来ていた。女に事情を聴いているようだった。
僕の顔を見て「申し訳ございません。奥さまに失礼なことをしたそうで。ずいぶんご気分を害されたでしょうね。」と頭をさげられた。
家で大きな揉め事になったことは僕の疲れ切った顔を見たら誰でもわかったと思う。
「美香さんはもう出勤しておられますか?」と、ことさら丁寧な口調で尋ねた。
オーナーは「はい、先ほどまでおりましたがクビにいたしました。」と答えた。
「いや、私としては事実を確認しないことには、どのように対処していいものか判断いたしかねます。
美香さんと話したいのですが。」と言うと「そんな必要ございませんですよ。
本当にお恥ずかしい話なんですが、嘘だったんですよ。
嘘をついて奥様からお金をせしめようとしたんですよ。
社長様ご本人では、ごまかしかねるので、わざと奥様に直接お話ししたようです。
良家の奥様なら騙しやすいと思ったそうです。本当に、私どもの教育不足です。
嘘をついてお金を取るなんて詐欺でございますからクビにいたしました。」という話だった。
僕は、余りのあほらしさに腰が砕けそうになった。
オーナーは平謝りに謝ってくれた。
その時に店のオーナーから「奥様大した方でございますね。本物の良家の奥様ですよ。
つまらない詐欺女なんか相手にもなりません。」と言って、その時の梨花の返事を教えてくれた。
梨花は「生まれてきた子供は私の子供だから私が引き取る。慰謝料も何もかもすべてきちんとするが、子供は私の子供だから養育費は払わない。引き取って育てる。田原真一の精子は一匹残らず全て自分のものだからその子供も自分の子供だ。誰にも渡さない。きちんと愛情をかけて育てるから心配するな。」と答えたそうだ。
僕は顔から火が出た。恥ずかしさにうなりながら店を出たのだった。
このことを早く聞いていれば昨夜のようなことにはならなかったかもしれない。
ひたすら土下座をすれば治まっていたかもしれない。
今更何を思ってもしょうがないことだった。
一度ふるった暴力が、なかったことにはならなかった。
続く
サプリメントにしかできないこともある!
加齢や過労などでハリや透明感を無くしたお肌は化粧品では元に戻りません。
お肌の内側から優れたケアをするしかないのです。
高濃度のプラセンタ液がお肌を内側から輝かせます。
梨花と喧嘩をした翌日、妊娠の話に決着をつけるために女が働くクラブへ出向いた。
もし本当だったら、やはり援助し続けるしかないだろう。また自己嫌悪につかまってしまった。
なぜ自分が一番嫌いなことを繰り返したんだ。
若いころ真由美という人妻と関係を持った捨て鉢な気分がよみがえっていた。
店へ行くと、ちょうど、その店のオーナーも来ていた。女に事情を聴いているようだった。
僕の顔を見て「申し訳ございません。奥さまに失礼なことをしたそうで。ずいぶんご気分を害されたでしょうね。」と頭をさげられた。
家で大きな揉め事になったことは僕の疲れ切った顔を見たら誰でもわかったと思う。
「美香さんはもう出勤しておられますか?」と、ことさら丁寧な口調で尋ねた。
オーナーは「はい、先ほどまでおりましたがクビにいたしました。」と答えた。
「いや、私としては事実を確認しないことには、どのように対処していいものか判断いたしかねます。
美香さんと話したいのですが。」と言うと「そんな必要ございませんですよ。
本当にお恥ずかしい話なんですが、嘘だったんですよ。
嘘をついて奥様からお金をせしめようとしたんですよ。
社長様ご本人では、ごまかしかねるので、わざと奥様に直接お話ししたようです。
良家の奥様なら騙しやすいと思ったそうです。本当に、私どもの教育不足です。
嘘をついてお金を取るなんて詐欺でございますからクビにいたしました。」という話だった。
僕は、余りのあほらしさに腰が砕けそうになった。
オーナーは平謝りに謝ってくれた。
その時に店のオーナーから「奥様大した方でございますね。本物の良家の奥様ですよ。
つまらない詐欺女なんか相手にもなりません。」と言って、その時の梨花の返事を教えてくれた。
梨花は「生まれてきた子供は私の子供だから私が引き取る。慰謝料も何もかもすべてきちんとするが、子供は私の子供だから養育費は払わない。引き取って育てる。田原真一の精子は一匹残らず全て自分のものだからその子供も自分の子供だ。誰にも渡さない。きちんと愛情をかけて育てるから心配するな。」と答えたそうだ。
僕は顔から火が出た。恥ずかしさにうなりながら店を出たのだった。
このことを早く聞いていれば昨夜のようなことにはならなかったかもしれない。
ひたすら土下座をすれば治まっていたかもしれない。
今更何を思ってもしょうがないことだった。
一度ふるった暴力が、なかったことにはならなかった。
続く
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加齢や過労などでハリや透明感を無くしたお肌は化粧品では元に戻りません。
お肌の内側から優れたケアをするしかないのです。
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2019年05月03日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <51 霹靂>
霹靂
「真ちゃん 自分が何したかわかってる?」と聞かれて梨花の顔を見た。
閉じた瞼の下から涙がにじみ出て見たこともないような悲しい顔をしていた。
腹立ちまぎれの高揚が一気に冷めた。梨花に丁寧に毛布をかけて、すごすごと服を着るしかなかった。
余りにもみじめで、その場にいるのが苦しかった。
「頭を冷やしてくる。」と言って家を出て、その夜は会社に泊まった。
その日の昼間、僕の留守中に会社で使っているクラブのホステスが家に押しかけていた。
僕の子供を妊娠したので、できることなら離婚してほしい、ダメなら養育費と慰謝料を出してほしいと梨花に直談判したのだ。
あんな世慣れた小娘にしてやられたという自己嫌悪でいらだっていた。
そんな小娘が僕の家庭に踏み込んできたのかと思うと歯がみをしたい気持ちになった。
何よりも僕をいらだたせたのは梨花があの小娘の言い分に動揺して僕との話し合いを拒絶したことだった。
梨花は喧嘩になっても絶対に僕を拒絶することは無かった。
結構言いたいことも言ってある程度納得すれば後はさっぱりした気性だった。
僕を丸め込んだことで満足して、僕も丸め込まれるのが嫌ではなかった。
僕たちは大きな喧嘩もしないし仲直りも早かった。
喧嘩さえも拒否するような態度をとられたのは初めてだった。
カッとなってマグマが一気に噴火してしまった。嫌がる梨花の膝を力づくでこじ開けた。
梨花は抵抗する気力もなくしていた。
絶対に家庭に向けてはいけない暴力を最も陰険で野蛮な方法で暴発させてしまった。
みじめな自己嫌悪から立ち直ることができなかった。その日から家へ帰れなくなった。
会社に近いビジネスホテルに泊まって悶々とする日々が続いた。
その女はいつも決まって僕達の相手をする女だった。この女がパトロンを物色しているのは分かっていた。
僕がそんなことには無縁だということは店の者も同行した社員もわかっていることだった。
僕は若い女の関心を引けるタイプではなかった。地味で面白みのない中年だったのだ。
その女と関係を持った日は前日からの疲れで風邪気味だった。
几帳面な僕は朝昼晩ときちんと風邪薬を飲んでいた。
接待ということもあって行くだけ行って早々に引き上げる予定だった。
ところが、なかなか席を立つタイミングがつかめなかった。
そんな僕を見かねた女が席を立つタイミングを作ってくれた。僕は女に礼を言ってタクシーに乗った。
その時女も一緒に乗り込んできた。付き合いでほんの少しだけ飲んだ酒が回っていた。
気が緩んでいた。そのまま女の部屋へ直行してしまった。軽い気持ちだった。
僕はもともと身持の硬い方だった。自分が妾の子だということもあって女遊びが嫌いだった。
しかし、その女は遊び慣れている感じがしていた。だからこその、この段取りの良さだと思った。
あとくされがなさそうな気がした。一度くらい女の段取りにのってもいいさとタカをくくっていた。
女を断る作業そのものが面倒だった。それが3カ月ぐらい前の出来事だった。
続く
化粧品では隠せないタルミやクスミに悩んでいるあなたへ
サプリメントならお肌の内側からタルミやクスミのケアができます。
いつまでも美しくありたいあなたに
高濃度プラセンタとアスタキサンチンやビタミンCがお肌を内側からケアします。
「真ちゃん 自分が何したかわかってる?」と聞かれて梨花の顔を見た。
閉じた瞼の下から涙がにじみ出て見たこともないような悲しい顔をしていた。
腹立ちまぎれの高揚が一気に冷めた。梨花に丁寧に毛布をかけて、すごすごと服を着るしかなかった。
余りにもみじめで、その場にいるのが苦しかった。
「頭を冷やしてくる。」と言って家を出て、その夜は会社に泊まった。
その日の昼間、僕の留守中に会社で使っているクラブのホステスが家に押しかけていた。
僕の子供を妊娠したので、できることなら離婚してほしい、ダメなら養育費と慰謝料を出してほしいと梨花に直談判したのだ。
あんな世慣れた小娘にしてやられたという自己嫌悪でいらだっていた。
そんな小娘が僕の家庭に踏み込んできたのかと思うと歯がみをしたい気持ちになった。
何よりも僕をいらだたせたのは梨花があの小娘の言い分に動揺して僕との話し合いを拒絶したことだった。
梨花は喧嘩になっても絶対に僕を拒絶することは無かった。
結構言いたいことも言ってある程度納得すれば後はさっぱりした気性だった。
僕を丸め込んだことで満足して、僕も丸め込まれるのが嫌ではなかった。
僕たちは大きな喧嘩もしないし仲直りも早かった。
喧嘩さえも拒否するような態度をとられたのは初めてだった。
カッとなってマグマが一気に噴火してしまった。嫌がる梨花の膝を力づくでこじ開けた。
梨花は抵抗する気力もなくしていた。
絶対に家庭に向けてはいけない暴力を最も陰険で野蛮な方法で暴発させてしまった。
みじめな自己嫌悪から立ち直ることができなかった。その日から家へ帰れなくなった。
会社に近いビジネスホテルに泊まって悶々とする日々が続いた。
その女はいつも決まって僕達の相手をする女だった。この女がパトロンを物色しているのは分かっていた。
僕がそんなことには無縁だということは店の者も同行した社員もわかっていることだった。
僕は若い女の関心を引けるタイプではなかった。地味で面白みのない中年だったのだ。
その女と関係を持った日は前日からの疲れで風邪気味だった。
几帳面な僕は朝昼晩ときちんと風邪薬を飲んでいた。
接待ということもあって行くだけ行って早々に引き上げる予定だった。
ところが、なかなか席を立つタイミングがつかめなかった。
そんな僕を見かねた女が席を立つタイミングを作ってくれた。僕は女に礼を言ってタクシーに乗った。
その時女も一緒に乗り込んできた。付き合いでほんの少しだけ飲んだ酒が回っていた。
気が緩んでいた。そのまま女の部屋へ直行してしまった。軽い気持ちだった。
僕はもともと身持の硬い方だった。自分が妾の子だということもあって女遊びが嫌いだった。
しかし、その女は遊び慣れている感じがしていた。だからこその、この段取りの良さだと思った。
あとくされがなさそうな気がした。一度くらい女の段取りにのってもいいさとタカをくくっていた。
女を断る作業そのものが面倒だった。それが3カ月ぐらい前の出来事だった。
続く
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いつまでも美しくありたいあなたに
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2019年05月02日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <50 フィットネスジム>
フィットネスジム
梨花は、最近少し太ってきた。以前の洋服で着られないものが増えていた。
僕は少し太った梨花もきれいだと思っていた。しかし本人は、どうしても痩せたいようだった。
梨花は若い時には自分のことをローソクみたいだと言っていた。
最近は自分のことを、お餅みたいだと言って嫌がった。僕は餅もそこそこいいと思っていた。
色が白いのは梨花のコンプレックスだ。日に当たると赤く火照って腕には湿疹ができた。
日光を避けるので余計に白くなった。白いから余計太く見えるといってきかなかった。
ある日フィットネスジムに行くと言い出した。僕は今まで梨花の希望を否定するようなことはなかった。フィットネスジムのことも、もう自分で決め込んでいた。それを否定する理由はなかった。
それでも僕はそれが嫌だった。
梨花が水着のようなものを着て若いトレーナーにいろいろ指導を受けるなどもってのほかだった。
梨花が公衆の面前でうっすらと汗をにじませて苦悶の表情を浮かべるのを想像するとカッとのぼせた。
あんな顔は人前でするもんじゃない。
僕はフィットネスジムの話になると食事に誘ったり、いい香水を買ったりして気をそらしていた。
ある日、梨花が「真ちゃん、私フィットネスジム自分でやるわ。」といった。
「真梨がいるから実務は真ちゃんやってね。
真ちゃんのコントロールの中に私が入るんやから、別にいいでしょ?」とサラッ言った。
僕の煮え切らない嫉妬心を逆手に取られた形だった。
このフィットネスジムは田原家の事業を大いに発展させることになった。
梨花は週に2回フィットネスジムに通った。
フィットネスジムは梨花の健康と田原家の経済には大きな助けになった。
が梨花を痩せさせる効果はなかったようだ。
昔のようにサングラスに革ジャンは体形的に似合わなくなった。そのかわり和服がよく似合うようになった。人に会うときには和服を選ぶようになっていた。眠っているときには軽く二十顎になった。
胸は以前よりもたっぷりと豊かに実っていた。
僕は最近は梨花の姿を見ても気が散るようなことは無くなった。
それどころか梨花がそばに来て何かをしていても気づかないことすらある。
僕はフィットネスジムの経営以外にも、聡と連絡を取りながら叔父さんのマンションの管理のこともするようになっていた。名目だけで給料をもらうのが嫌だったからだ。
最近は僕の考えで始めたことが利益を生むようになってきた。いつの間にか不動産屋のおやじになっていた。
続く
お肌のたるみやクスミ、化粧品だけじゃカバーできませんよね。
サプリメントならお肌の内側からケアできます。
高濃度プラセンタの豊かな栄養とアスタキサンチンやレスベラトロールなどの抗酸化成分がお肌を芯からケアします。
梨花は、最近少し太ってきた。以前の洋服で着られないものが増えていた。
僕は少し太った梨花もきれいだと思っていた。しかし本人は、どうしても痩せたいようだった。
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色が白いのは梨花のコンプレックスだ。日に当たると赤く火照って腕には湿疹ができた。
日光を避けるので余計に白くなった。白いから余計太く見えるといってきかなかった。
ある日フィットネスジムに行くと言い出した。僕は今まで梨花の希望を否定するようなことはなかった。フィットネスジムのことも、もう自分で決め込んでいた。それを否定する理由はなかった。
それでも僕はそれが嫌だった。
梨花が水着のようなものを着て若いトレーナーにいろいろ指導を受けるなどもってのほかだった。
梨花が公衆の面前でうっすらと汗をにじませて苦悶の表情を浮かべるのを想像するとカッとのぼせた。
あんな顔は人前でするもんじゃない。
僕はフィットネスジムの話になると食事に誘ったり、いい香水を買ったりして気をそらしていた。
ある日、梨花が「真ちゃん、私フィットネスジム自分でやるわ。」といった。
「真梨がいるから実務は真ちゃんやってね。
真ちゃんのコントロールの中に私が入るんやから、別にいいでしょ?」とサラッ言った。
僕の煮え切らない嫉妬心を逆手に取られた形だった。
このフィットネスジムは田原家の事業を大いに発展させることになった。
梨花は週に2回フィットネスジムに通った。
フィットネスジムは梨花の健康と田原家の経済には大きな助けになった。
が梨花を痩せさせる効果はなかったようだ。
昔のようにサングラスに革ジャンは体形的に似合わなくなった。そのかわり和服がよく似合うようになった。人に会うときには和服を選ぶようになっていた。眠っているときには軽く二十顎になった。
胸は以前よりもたっぷりと豊かに実っていた。
僕は最近は梨花の姿を見ても気が散るようなことは無くなった。
それどころか梨花がそばに来て何かをしていても気づかないことすらある。
僕はフィットネスジムの経営以外にも、聡と連絡を取りながら叔父さんのマンションの管理のこともするようになっていた。名目だけで給料をもらうのが嫌だったからだ。
最近は僕の考えで始めたことが利益を生むようになってきた。いつの間にか不動産屋のおやじになっていた。
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2019年05月01日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <49 病院の風景>
病院の風景
「梨花、ちょっと手の機能が回復しているか確かめたいんだけど。」
「えっ、手の調子も悪かったの?全然言わへんから気が付かへんかった。大丈夫なの?」
梨花が僕の手を見るために僕の顔の前まで腕を伸ばしてきた。
僕はそっと梨花の胸をつかんで感触を確かめた。
「こっちの方が回復度合いの確認がしやすい。どう?もう手のひらの機能回復してるかな?」
「ううん、まだちょっとわからへん。もうちょっと、強くしてみて。」
なんとなく梨花の声がトロンとしてきた。
梨花のしのび笑いが鼻にかかってきたときドアをノックする音が聞こえた。
僕は、いい年をして、つまらない遊びをしていた恥ずかしさで大いに狼狽した。
「田原さん、体温、計れましたか?」と言いながら、いつもの看護師が入ってきた。
「まだ計ってないんですか?バツとして点滴痛くします。」冷たい顔で点滴の用意を始めた。
僕は恐怖で顔を引きつらせた。梨花は呆然と看護師の顔をみつめた。
看護師は少し困った顔をして「ここは笑っていただくところなんですけど。
ホントにやったら私、免許はく奪ですよ。」といった。 いい人だった。
化粧っ気のない顔でハキハキものをいう、いかにも有能といった看護師で名札は「主任 山口」となっていた。
病室で、時々三崎と山口さんが鉢合わせする。三崎も山口さんも軽く目礼するだけで特に話はしない。
ただ、この日は僕も梨花もテレ隠しをして妙に饒舌になった。
なんとなく山口さんに冗談をいうと三崎も一緒に大笑いした。
僕は、なんで三崎は毎日僕の見舞いに来るのだろうと不思議に思っていた。確かに業務の報告や確認はある。それでも、毎日でなくてもいい。
ひょっとしたら山口さんが部屋に来る時間を見計らっているんじゃないかと感じた。
三崎が帰ってから梨花にその話をすると「今頃分かったの?」と言われてしまった。
こういうことは梨花の方が圧倒的によくわかっていた。
三崎は大手不動産会社で働いていたが上司とうまくいかず退職していた。
坂元の叔父の紹介で僕の会社に入った。僕が右も左もわからないとき実質的に教えてくれたのは彼だった。
僕の片腕どころか両腕だった。三崎は以前の退職がきっかけで離婚していた。子供はいない。
問題は山口さんだった。彼女が独身かどうか調べなければならなかった。
小学生ぐらいの子供がいても不思議ではない年頃だ。年齢はいいが独身かどうかは重要な問題だった。
看護師に惚れる患者は多いらしく、看護師の個人情報を安易に聴くと担当替えなどがあるようだ。
看護師へのプレゼントも受け取ってくれないらしい。ここでは梨花が頑張った。
もう退院の日が迫ってきたある日、梨花が山口さんに話しかけていた。「ねえ、山口さん。
このネクタイもらってくれない?お見舞い品なんやけど、うちはネクタイ締めへんのよ。
失礼なんやけど御主人にどうかな?」と言ってネクタイを渡そうとしていた。
僕は梨花の奇妙な設定にドギマギした。
山口さんは一瞬不思議そうな顔をしたが、笑いながら「奥様、残念ですけど私、独身なんですよ。」と答えてくれた。梨花は「まあ、山口さん独身?よかったあ。」といった。
そこへ三崎が入ってきた。梨花は「彼にこのネクタイ似合うと思う?」と山口さんに畳みかけた。
三崎は訳がわからないままネクタイをあてられていた。もう、ほとんど業務妨害だった。
山口さんは当惑しながらも「お似合いだと思います。」と答えた。
梨花の支離滅裂で強引な質問に律儀に返事をした山口さんを見て僕は確信した。
彼女は三崎に好意を持っているのだ。
彼女だって三崎が来そうな時間めがけて、この部屋へ来ているのかもしれない。
僕は三崎に「今日山口さん、早帰りらしいよ。」と大きな声でヤマをかけた。
山口さんは笑いながら部屋を出た。三崎が後を追いかけて行った。
病室に梨花と二人きりになった時に、僕が「梨花、見舞いにネクタイ持ってくる奴いる?」と聞くと、梨花は「たまに、いるような気もするけど。」と真顔で答えた。
その日、山口さんと三崎は一緒に食事をしたらしい。
大人のカップルが親しい関係になるのに時間はかからなかった。1年後には、ささやかな結婚式が挙げられた。
続く
お肌のハリを取り戻したいあなた!化粧品って効果ありました?
お肌のハリは表面の手入れだけでは戻ってきません。
お肌を内側からケアすれば、お肌の透明感やハリが戻りやすいんです。
プラセンタの栄養やアスタキサンチンの抗酸化作用がお肌ダメージを内側からケアします。
「梨花、ちょっと手の機能が回復しているか確かめたいんだけど。」
「えっ、手の調子も悪かったの?全然言わへんから気が付かへんかった。大丈夫なの?」
梨花が僕の手を見るために僕の顔の前まで腕を伸ばしてきた。
僕はそっと梨花の胸をつかんで感触を確かめた。
「こっちの方が回復度合いの確認がしやすい。どう?もう手のひらの機能回復してるかな?」
「ううん、まだちょっとわからへん。もうちょっと、強くしてみて。」
なんとなく梨花の声がトロンとしてきた。
梨花のしのび笑いが鼻にかかってきたときドアをノックする音が聞こえた。
僕は、いい年をして、つまらない遊びをしていた恥ずかしさで大いに狼狽した。
「田原さん、体温、計れましたか?」と言いながら、いつもの看護師が入ってきた。
「まだ計ってないんですか?バツとして点滴痛くします。」冷たい顔で点滴の用意を始めた。
僕は恐怖で顔を引きつらせた。梨花は呆然と看護師の顔をみつめた。
看護師は少し困った顔をして「ここは笑っていただくところなんですけど。
ホントにやったら私、免許はく奪ですよ。」といった。 いい人だった。
化粧っ気のない顔でハキハキものをいう、いかにも有能といった看護師で名札は「主任 山口」となっていた。
病室で、時々三崎と山口さんが鉢合わせする。三崎も山口さんも軽く目礼するだけで特に話はしない。
ただ、この日は僕も梨花もテレ隠しをして妙に饒舌になった。
なんとなく山口さんに冗談をいうと三崎も一緒に大笑いした。
僕は、なんで三崎は毎日僕の見舞いに来るのだろうと不思議に思っていた。確かに業務の報告や確認はある。それでも、毎日でなくてもいい。
ひょっとしたら山口さんが部屋に来る時間を見計らっているんじゃないかと感じた。
三崎が帰ってから梨花にその話をすると「今頃分かったの?」と言われてしまった。
こういうことは梨花の方が圧倒的によくわかっていた。
三崎は大手不動産会社で働いていたが上司とうまくいかず退職していた。
坂元の叔父の紹介で僕の会社に入った。僕が右も左もわからないとき実質的に教えてくれたのは彼だった。
僕の片腕どころか両腕だった。三崎は以前の退職がきっかけで離婚していた。子供はいない。
問題は山口さんだった。彼女が独身かどうか調べなければならなかった。
小学生ぐらいの子供がいても不思議ではない年頃だ。年齢はいいが独身かどうかは重要な問題だった。
看護師に惚れる患者は多いらしく、看護師の個人情報を安易に聴くと担当替えなどがあるようだ。
看護師へのプレゼントも受け取ってくれないらしい。ここでは梨花が頑張った。
もう退院の日が迫ってきたある日、梨花が山口さんに話しかけていた。「ねえ、山口さん。
このネクタイもらってくれない?お見舞い品なんやけど、うちはネクタイ締めへんのよ。
失礼なんやけど御主人にどうかな?」と言ってネクタイを渡そうとしていた。
僕は梨花の奇妙な設定にドギマギした。
山口さんは一瞬不思議そうな顔をしたが、笑いながら「奥様、残念ですけど私、独身なんですよ。」と答えてくれた。梨花は「まあ、山口さん独身?よかったあ。」といった。
そこへ三崎が入ってきた。梨花は「彼にこのネクタイ似合うと思う?」と山口さんに畳みかけた。
三崎は訳がわからないままネクタイをあてられていた。もう、ほとんど業務妨害だった。
山口さんは当惑しながらも「お似合いだと思います。」と答えた。
梨花の支離滅裂で強引な質問に律儀に返事をした山口さんを見て僕は確信した。
彼女は三崎に好意を持っているのだ。
彼女だって三崎が来そうな時間めがけて、この部屋へ来ているのかもしれない。
僕は三崎に「今日山口さん、早帰りらしいよ。」と大きな声でヤマをかけた。
山口さんは笑いながら部屋を出た。三崎が後を追いかけて行った。
病室に梨花と二人きりになった時に、僕が「梨花、見舞いにネクタイ持ってくる奴いる?」と聞くと、梨花は「たまに、いるような気もするけど。」と真顔で答えた。
その日、山口さんと三崎は一緒に食事をしたらしい。
大人のカップルが親しい関係になるのに時間はかからなかった。1年後には、ささやかな結婚式が挙げられた。
続く
お肌のハリを取り戻したいあなた!化粧品って効果ありました?
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お肌を内側からケアすれば、お肌の透明感やハリが戻りやすいんです。
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2019年04月30日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <48 複雑骨折>
複雑骨折
その日会社の前の道を部下と話しながら歩いていた。
部下といっても四つも年上で僕よりも仕事ができる親しい間柄だった。三崎雄二といった。
会社では唯一、僕にぞんざいな口をきいて笑わせるやつだった。
外出先から戻って会社があるビルへ入ろうとしたとき突然体が横へ吹っ飛んだ。
ふと気が付いたとき梨花がいつものように舌を絡めてきた。ねだるときのやり方だ。
僕もいつものように舌を絡めとって肩を抱こうとした。しかし、腕が全く動かなかった。
かろうじて舌と唇がかすかに動いただけだった。寝返りを打とうにも全く力が入らない。
足も動かない。膝を立てたかったが、びくともしない。
僕がほんの少し舌を動かした瞬間に梨花の声が聞こえた。僕の顎のあたりに温かい水が落ちてきた。
「真ちゃん、真ちゃん」2回呼ばれた後に部屋が急に騒がしくなったが、僕はまた寝てしまった。
なにしろ、やたらと眠いのだ。
何時間たっただろう。梨花が男の人と話しているのが聞こえる。
「ですから奥さん命には別条ありません。」
「でも意識がないやないですか!」梨花の必死の声が耳にキンキン響いた。
「そりゃ、麻酔が効いているからです。手術が早かったんで足も多分、影響は出ません。
頭は打っておられないので記憶喪失にもなりませんし半身不随とかにもなりませんから。
まあとにかく落ち着いてください。」
ゆっくりと目を開けると梨花の声と真梨の声が交互に聞こえた。
「真ちゃん!」「パパ!」梨花の声は泣き笑いだった。真梨の幼い声も聞こえた。
男は「大丈夫ですか?呼吸が苦しくありませんか?ゆっくりしましょう。眠かったら寝てください。
構いませんよ。」といった。白衣を着ていたので医者だろうと思った。
腰が重くて体が思うように動かない。下半身が完全にマヒしていた。
そうだ、何日か前、いや、昨日か?日付がよくわからないけれど、僕は部下と話しながら歩いているときに、突然強い衝撃を受けて気が付いたのが今だった。
病室にいた。足には全く力が入らない。つま先が少し動くが膝を立てることもできなかった。
なんだか、よくわからないが、梨花は泣いているが笑っていた。
「よかった。」と言っているのだから、よかったのだろう。何がよかったのかはわからなかった。
「真ちゃん、道でバイクに当たられたんよ。でも頭打ってへんから大丈夫やって。
左足、複雑骨折らしいけど、でもそれだけやから。今、麻酔効いてるから、どこも動かへんけど。
大丈夫やから。」
梨花が大丈夫というのだから大丈夫なのだろうけれど、こんなに不自由な思いをしたのは生まれて初めてだった。
翌日からは痛みに耐える日が続いた。
梨花は、ちょいちょい漫談もどきの芸?を披露してくれたが難しい顔をして困らせた。
続く
お肌のくすみが気になるあなたへ
体の中からお肌をととのえ輝きがよみがえる
高濃度プラセンタとアスタキサンチン配合のお肌のためのサプリメント
その日会社の前の道を部下と話しながら歩いていた。
部下といっても四つも年上で僕よりも仕事ができる親しい間柄だった。三崎雄二といった。
会社では唯一、僕にぞんざいな口をきいて笑わせるやつだった。
外出先から戻って会社があるビルへ入ろうとしたとき突然体が横へ吹っ飛んだ。
ふと気が付いたとき梨花がいつものように舌を絡めてきた。ねだるときのやり方だ。
僕もいつものように舌を絡めとって肩を抱こうとした。しかし、腕が全く動かなかった。
かろうじて舌と唇がかすかに動いただけだった。寝返りを打とうにも全く力が入らない。
足も動かない。膝を立てたかったが、びくともしない。
僕がほんの少し舌を動かした瞬間に梨花の声が聞こえた。僕の顎のあたりに温かい水が落ちてきた。
「真ちゃん、真ちゃん」2回呼ばれた後に部屋が急に騒がしくなったが、僕はまた寝てしまった。
なにしろ、やたらと眠いのだ。
何時間たっただろう。梨花が男の人と話しているのが聞こえる。
「ですから奥さん命には別条ありません。」
「でも意識がないやないですか!」梨花の必死の声が耳にキンキン響いた。
「そりゃ、麻酔が効いているからです。手術が早かったんで足も多分、影響は出ません。
頭は打っておられないので記憶喪失にもなりませんし半身不随とかにもなりませんから。
まあとにかく落ち着いてください。」
ゆっくりと目を開けると梨花の声と真梨の声が交互に聞こえた。
「真ちゃん!」「パパ!」梨花の声は泣き笑いだった。真梨の幼い声も聞こえた。
男は「大丈夫ですか?呼吸が苦しくありませんか?ゆっくりしましょう。眠かったら寝てください。
構いませんよ。」といった。白衣を着ていたので医者だろうと思った。
腰が重くて体が思うように動かない。下半身が完全にマヒしていた。
そうだ、何日か前、いや、昨日か?日付がよくわからないけれど、僕は部下と話しながら歩いているときに、突然強い衝撃を受けて気が付いたのが今だった。
病室にいた。足には全く力が入らない。つま先が少し動くが膝を立てることもできなかった。
なんだか、よくわからないが、梨花は泣いているが笑っていた。
「よかった。」と言っているのだから、よかったのだろう。何がよかったのかはわからなかった。
「真ちゃん、道でバイクに当たられたんよ。でも頭打ってへんから大丈夫やって。
左足、複雑骨折らしいけど、でもそれだけやから。今、麻酔効いてるから、どこも動かへんけど。
大丈夫やから。」
梨花が大丈夫というのだから大丈夫なのだろうけれど、こんなに不自由な思いをしたのは生まれて初めてだった。
翌日からは痛みに耐える日が続いた。
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続く
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2019年04月29日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <47 旅行>
旅行
梨花と真梨を連れて榊島へ行った。父の功績を梨花にも見てほしかった。真梨にも見せてやりたかった。
「梨花、初めての日のようにしてくれないかな?あの時みたいにしてほしいんだよ。」
始めて梨花と関係ができた日、梨花はまるで何かに命じられたように僕に近づいてきて、
唐突に僕を抱きしめた。
意地っ張りで人前で弱みを見せることができない僕をいきなり、あかんたれだと言った。
僕の母のことを聞いて一緒に泣いてくれた。初めて人に母の話をした。生まれて初めて女の胸で泣いた。
その日は梨花のなすがままに成って甘えていた。
「あの日のことは一生忘れへんよ。真ちゃん、ものすごく泣いてかわいそうやった。」
「僕、そんなに泣いた?」
「うんしゃくりあげて泣いてた。森の中で迷子になった子供みたいやった。この人守ろうって思ったんよ。
この人が一緒に死んでくれっていうたら付いて行ってあげよって決心した日やから。
今もその決心変わってないよ。でも真ちゃん、今は真梨がいるから絶対死んだらあかんのよ。
真ちゃん、絶対病気にならんといて、事故に合わんといて。何があっても長生きして。
真ちゃんがいなかったら私は生きてられへんから、だから絶対真ちゃん長生きして。」
久しぶりに梨花の殺し文句を聞いた。
梨花は二人きりになって熱い雰囲気になってくると気持ちが高揚するようだった。
普段は大阪のママに似て少しコメディタッチなのに、その時になると情熱的な言葉をたくさん口にした。
今でも何となく守ってあげるような言葉を口にした。
それでも、さすがに情熱的な殺し文句を言う回数は減っていた。今は育児に夢中だった。
そうだ長生きしよう。健康に気を配ろう。安全な行動をとろう。なんとなく梨花を看取ろうと思った。
多分、梨花を看取ったら僕もすぐに命が尽きるのだろうと感じていた。
初めての家族旅行で僕は長生きの誓いをした。
続く
最近「キレイだね」ってよく言われます!
いつも、「お疲れだね。」いわれていた私が
ピュアプラセンタを飲みだしてから「キレイだね。」といわれるようになりました
梨花と真梨を連れて榊島へ行った。父の功績を梨花にも見てほしかった。真梨にも見せてやりたかった。
「梨花、初めての日のようにしてくれないかな?あの時みたいにしてほしいんだよ。」
始めて梨花と関係ができた日、梨花はまるで何かに命じられたように僕に近づいてきて、
唐突に僕を抱きしめた。
意地っ張りで人前で弱みを見せることができない僕をいきなり、あかんたれだと言った。
僕の母のことを聞いて一緒に泣いてくれた。初めて人に母の話をした。生まれて初めて女の胸で泣いた。
その日は梨花のなすがままに成って甘えていた。
「あの日のことは一生忘れへんよ。真ちゃん、ものすごく泣いてかわいそうやった。」
「僕、そんなに泣いた?」
「うんしゃくりあげて泣いてた。森の中で迷子になった子供みたいやった。この人守ろうって思ったんよ。
この人が一緒に死んでくれっていうたら付いて行ってあげよって決心した日やから。
今もその決心変わってないよ。でも真ちゃん、今は真梨がいるから絶対死んだらあかんのよ。
真ちゃん、絶対病気にならんといて、事故に合わんといて。何があっても長生きして。
真ちゃんがいなかったら私は生きてられへんから、だから絶対真ちゃん長生きして。」
久しぶりに梨花の殺し文句を聞いた。
梨花は二人きりになって熱い雰囲気になってくると気持ちが高揚するようだった。
普段は大阪のママに似て少しコメディタッチなのに、その時になると情熱的な言葉をたくさん口にした。
今でも何となく守ってあげるような言葉を口にした。
それでも、さすがに情熱的な殺し文句を言う回数は減っていた。今は育児に夢中だった。
そうだ長生きしよう。健康に気を配ろう。安全な行動をとろう。なんとなく梨花を看取ろうと思った。
多分、梨花を看取ったら僕もすぐに命が尽きるのだろうと感じていた。
初めての家族旅行で僕は長生きの誓いをした。
続く
最近「キレイだね」ってよく言われます!
いつも、「お疲れだね。」いわれていた私が
ピュアプラセンタを飲みだしてから「キレイだね。」といわれるようになりました
2019年04月28日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <46 墓守>
墓守
田原家の墓は都心部の有名墓地の中にあった。意外に大きな墓だったので驚いた。
「真一悪いけど、このお墓守ってほしいのよ。私も、もう、あまり自信がないのよ。腰の具合が悪いの。ひょっとしたら手術かもしれない。運動不足のつけが今頃回ってきたのね。」
確かに姉はよく腰をさすっていた。トントンとたたいているときもあった。
姉が「この中にはお父さんとお母さんが眠ってる。母はあなたにとっては嫌な人かもしれない。
でもね、もう仏様よ。あなたも嫌じゃなかったら入ってほしいわ。梨花ちゃんも。
最もそんな先のこと、どうなるかわかんないけど。
貴方の代は守って欲しいわ。」と行ったので僕が「ええ、出来るだけのことはします。」というと、
「ありがとう。この広さだから結構管理費なんかもかかるけど、その面は協力させてもらうわよ。」
と言った。
「何水臭いこと言うてるの。私や聡が付いてます。それに真ちゃん凄いよ。とにかくおじいさんに似てる。
田原の事業を引き継いでもらいたいのよ。坂本さんも、ここ任せるって言わはったのよ。
坂本さんは仕事柄、人を見る目はしっかりしてると思うんよ。
その人が、任せるっていうことは要するに信用できるし、力もあるということやと思うのよ。
まあ、結論急ぐこともないけど、悪い話ではないと思うのよね。」
ママはどうしても僕を不動産屋にしたいらしかった。
姉も「坂本さんがいうならホントに大丈夫よ。うちの夫も、あの人のことは信用してる。
おとなしいけれど凄腕よ。真一、よく勉強させてもらいなさい。」と言った。
姉が帰る日は空港まで見送った。
「真一、一度は向こうへ来なさい。みんなで待ってるから。」
「ありがとうございます。どうか元気で。」といった僕に、梨花が「お姉ちゃんでしょ!」といった。
僕が小さな声で「お姉さん」というと「お姉ちゃんやんか。ほら、しっかり言って!」とはっぱをかけられた。
姉は大笑いをして「血は争えないわねえ。田原家はおじいさんの代から恐妻家なの。
梨花ちゃん、しっかり伝統を守ってるのよね。偉い!」とほめた。
僕は、もう一度、「お姉さん、元気で、腰、大事にしてください。」と言った。
続く
田原家の墓は都心部の有名墓地の中にあった。意外に大きな墓だったので驚いた。
「真一悪いけど、このお墓守ってほしいのよ。私も、もう、あまり自信がないのよ。腰の具合が悪いの。ひょっとしたら手術かもしれない。運動不足のつけが今頃回ってきたのね。」
確かに姉はよく腰をさすっていた。トントンとたたいているときもあった。
姉が「この中にはお父さんとお母さんが眠ってる。母はあなたにとっては嫌な人かもしれない。
でもね、もう仏様よ。あなたも嫌じゃなかったら入ってほしいわ。梨花ちゃんも。
最もそんな先のこと、どうなるかわかんないけど。
貴方の代は守って欲しいわ。」と行ったので僕が「ええ、出来るだけのことはします。」というと、
「ありがとう。この広さだから結構管理費なんかもかかるけど、その面は協力させてもらうわよ。」
と言った。
「何水臭いこと言うてるの。私や聡が付いてます。それに真ちゃん凄いよ。とにかくおじいさんに似てる。
田原の事業を引き継いでもらいたいのよ。坂本さんも、ここ任せるって言わはったのよ。
坂本さんは仕事柄、人を見る目はしっかりしてると思うんよ。
その人が、任せるっていうことは要するに信用できるし、力もあるということやと思うのよ。
まあ、結論急ぐこともないけど、悪い話ではないと思うのよね。」
ママはどうしても僕を不動産屋にしたいらしかった。
姉も「坂本さんがいうならホントに大丈夫よ。うちの夫も、あの人のことは信用してる。
おとなしいけれど凄腕よ。真一、よく勉強させてもらいなさい。」と言った。
姉が帰る日は空港まで見送った。
「真一、一度は向こうへ来なさい。みんなで待ってるから。」
「ありがとうございます。どうか元気で。」といった僕に、梨花が「お姉ちゃんでしょ!」といった。
僕が小さな声で「お姉さん」というと「お姉ちゃんやんか。ほら、しっかり言って!」とはっぱをかけられた。
姉は大笑いをして「血は争えないわねえ。田原家はおじいさんの代から恐妻家なの。
梨花ちゃん、しっかり伝統を守ってるのよね。偉い!」とほめた。
僕は、もう一度、「お姉さん、元気で、腰、大事にしてください。」と言った。
続く