2019年04月30日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <48 複雑骨折>
複雑骨折
その日会社の前の道を部下と話しながら歩いていた。
部下といっても四つも年上で僕よりも仕事ができる親しい間柄だった。三崎雄二といった。
会社では唯一、僕にぞんざいな口をきいて笑わせるやつだった。
外出先から戻って会社があるビルへ入ろうとしたとき突然体が横へ吹っ飛んだ。
ふと気が付いたとき梨花がいつものように舌を絡めてきた。ねだるときのやり方だ。
僕もいつものように舌を絡めとって肩を抱こうとした。しかし、腕が全く動かなかった。
かろうじて舌と唇がかすかに動いただけだった。寝返りを打とうにも全く力が入らない。
足も動かない。膝を立てたかったが、びくともしない。
僕がほんの少し舌を動かした瞬間に梨花の声が聞こえた。僕の顎のあたりに温かい水が落ちてきた。
「真ちゃん、真ちゃん」2回呼ばれた後に部屋が急に騒がしくなったが、僕はまた寝てしまった。
なにしろ、やたらと眠いのだ。
何時間たっただろう。梨花が男の人と話しているのが聞こえる。
「ですから奥さん命には別条ありません。」
「でも意識がないやないですか!」梨花の必死の声が耳にキンキン響いた。
「そりゃ、麻酔が効いているからです。手術が早かったんで足も多分、影響は出ません。
頭は打っておられないので記憶喪失にもなりませんし半身不随とかにもなりませんから。
まあとにかく落ち着いてください。」
ゆっくりと目を開けると梨花の声と真梨の声が交互に聞こえた。
「真ちゃん!」「パパ!」梨花の声は泣き笑いだった。真梨の幼い声も聞こえた。
男は「大丈夫ですか?呼吸が苦しくありませんか?ゆっくりしましょう。眠かったら寝てください。
構いませんよ。」といった。白衣を着ていたので医者だろうと思った。
腰が重くて体が思うように動かない。下半身が完全にマヒしていた。
そうだ、何日か前、いや、昨日か?日付がよくわからないけれど、僕は部下と話しながら歩いているときに、突然強い衝撃を受けて気が付いたのが今だった。
病室にいた。足には全く力が入らない。つま先が少し動くが膝を立てることもできなかった。
なんだか、よくわからないが、梨花は泣いているが笑っていた。
「よかった。」と言っているのだから、よかったのだろう。何がよかったのかはわからなかった。
「真ちゃん、道でバイクに当たられたんよ。でも頭打ってへんから大丈夫やって。
左足、複雑骨折らしいけど、でもそれだけやから。今、麻酔効いてるから、どこも動かへんけど。
大丈夫やから。」
梨花が大丈夫というのだから大丈夫なのだろうけれど、こんなに不自由な思いをしたのは生まれて初めてだった。
翌日からは痛みに耐える日が続いた。
梨花は、ちょいちょい漫談もどきの芸?を披露してくれたが難しい顔をして困らせた。
続く
お肌のくすみが気になるあなたへ
体の中からお肌をととのえ輝きがよみがえる
高濃度プラセンタとアスタキサンチン配合のお肌のためのサプリメント
その日会社の前の道を部下と話しながら歩いていた。
部下といっても四つも年上で僕よりも仕事ができる親しい間柄だった。三崎雄二といった。
会社では唯一、僕にぞんざいな口をきいて笑わせるやつだった。
外出先から戻って会社があるビルへ入ろうとしたとき突然体が横へ吹っ飛んだ。
ふと気が付いたとき梨花がいつものように舌を絡めてきた。ねだるときのやり方だ。
僕もいつものように舌を絡めとって肩を抱こうとした。しかし、腕が全く動かなかった。
かろうじて舌と唇がかすかに動いただけだった。寝返りを打とうにも全く力が入らない。
足も動かない。膝を立てたかったが、びくともしない。
僕がほんの少し舌を動かした瞬間に梨花の声が聞こえた。僕の顎のあたりに温かい水が落ちてきた。
「真ちゃん、真ちゃん」2回呼ばれた後に部屋が急に騒がしくなったが、僕はまた寝てしまった。
なにしろ、やたらと眠いのだ。
何時間たっただろう。梨花が男の人と話しているのが聞こえる。
「ですから奥さん命には別条ありません。」
「でも意識がないやないですか!」梨花の必死の声が耳にキンキン響いた。
「そりゃ、麻酔が効いているからです。手術が早かったんで足も多分、影響は出ません。
頭は打っておられないので記憶喪失にもなりませんし半身不随とかにもなりませんから。
まあとにかく落ち着いてください。」
ゆっくりと目を開けると梨花の声と真梨の声が交互に聞こえた。
「真ちゃん!」「パパ!」梨花の声は泣き笑いだった。真梨の幼い声も聞こえた。
男は「大丈夫ですか?呼吸が苦しくありませんか?ゆっくりしましょう。眠かったら寝てください。
構いませんよ。」といった。白衣を着ていたので医者だろうと思った。
腰が重くて体が思うように動かない。下半身が完全にマヒしていた。
そうだ、何日か前、いや、昨日か?日付がよくわからないけれど、僕は部下と話しながら歩いているときに、突然強い衝撃を受けて気が付いたのが今だった。
病室にいた。足には全く力が入らない。つま先が少し動くが膝を立てることもできなかった。
なんだか、よくわからないが、梨花は泣いているが笑っていた。
「よかった。」と言っているのだから、よかったのだろう。何がよかったのかはわからなかった。
「真ちゃん、道でバイクに当たられたんよ。でも頭打ってへんから大丈夫やって。
左足、複雑骨折らしいけど、でもそれだけやから。今、麻酔効いてるから、どこも動かへんけど。
大丈夫やから。」
梨花が大丈夫というのだから大丈夫なのだろうけれど、こんなに不自由な思いをしたのは生まれて初めてだった。
翌日からは痛みに耐える日が続いた。
梨花は、ちょいちょい漫談もどきの芸?を披露してくれたが難しい顔をして困らせた。
続く
お肌のくすみが気になるあなたへ
体の中からお肌をととのえ輝きがよみがえる
高濃度プラセンタとアスタキサンチン配合のお肌のためのサプリメント
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/8765286
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック