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2019年02月21日
家族の木 Extra edition 夜職の家
真由美の就職
真由美は、幸恵に「高校へ行きながらアルバイトしようかな?ママだってその方が助かるんじゃない?」と聞いた。幸恵は、「高校と短大は行きなさい。これからはある程度教育が大事なんだから。そのぐらいのお金、真由美のお父さんから預かってるんだよ。安心しなさい。商売は学校を卒業してからにした方がいい。このごろは、法律も厳しくなってあんまり若いとつかまるかもしれない。警察とかそういうところに縁ができるようなことは止めた方がいい。商売はいつでも始められるんだから。」
そんなことで真由美は短大を卒業すると、ごく普通にホステスとして働いた。親子三代まじめに働いているのだった。堅実に、分譲マンションを買い、医療保険や火災保険などにも入っていた。生命保険にも入った。身ぎれいにしていたが贅沢はしなかった。
幸恵は50を過ぎた今でもスナックを経営していた。金持ちのパトロンも持っていた。暮らしに困ることは何もなかった。相変わらず、自分でお惣菜を作り、家を清潔にして、自分も身ぎれいにしていた。
続く
真由美は、幸恵に「高校へ行きながらアルバイトしようかな?ママだってその方が助かるんじゃない?」と聞いた。幸恵は、「高校と短大は行きなさい。これからはある程度教育が大事なんだから。そのぐらいのお金、真由美のお父さんから預かってるんだよ。安心しなさい。商売は学校を卒業してからにした方がいい。このごろは、法律も厳しくなってあんまり若いとつかまるかもしれない。警察とかそういうところに縁ができるようなことは止めた方がいい。商売はいつでも始められるんだから。」
そんなことで真由美は短大を卒業すると、ごく普通にホステスとして働いた。親子三代まじめに働いているのだった。堅実に、分譲マンションを買い、医療保険や火災保険などにも入っていた。生命保険にも入った。身ぎれいにしていたが贅沢はしなかった。
幸恵は50を過ぎた今でもスナックを経営していた。金持ちのパトロンも持っていた。暮らしに困ることは何もなかった。相変わらず、自分でお惣菜を作り、家を清潔にして、自分も身ぎれいにしていた。
続く
2019年02月20日
家族の木 Extra edition 夜職の家
真由美
真由美の母の幸恵はスナックを経営していた。幸恵の仕事中は真由美は祖母の利子が世話をした。幸恵は夕方になると美容院へ行き、そのまま出勤する。真由美と幸恵親子が一緒に過ごすのは昼間だけだった。学校へ行くようになると、真由美は母と過ごす時間が少なくなって寂しかった。
そんな時には祖母の利子が、「ママ偉いんだよ〜。またお店大きくしたんだって。真由美のために頑張ってるんだよね〜。」といって抱っこしてくれた。
朝、目覚めると、いつも真由美の横で母の幸恵が熟睡していた。「ママ〜」と抱き着くと、寝ぼけ眼のまま抱きしめてくれた。毎朝20分ぐらいの真由美にとって一番幸福な時間だった。こういう習慣は真由美が小学校を卒業するころまで続いた。
学校の先生は真由美の家がどういう商売をしていたか知っていた。中には特別な眼で見る先生もいた。ただ、真由美が育った地域には、そういう家庭は少なくなかった。この地域は繁華街に近いので、水商売の家や飲食店へ食品やコーヒーなどを卸す家、美容院など水商売の恩恵を被っている家が多かった。水商売への偏見は比較的低かった。
その中では、真由美の家は経済的に安定していたし、いつも身ぎれいにしていた。成績も優秀だった。幸恵は懇談会や参観日は欠かさずやってきた。地味な服装で目立たないようにしていた。
真由美が中学を卒業して、母親のスナックに寄ったときに事件が起きた。幸恵が買い物に出ているときに銀行の支店長が来た。幸恵のお客だ。その男は、まだ少女だった真由美に手を出したのだった。
真由美はびっくりして泣いてしまった。その男が帰った後で、幸恵が戻って何があったか話すと幸恵は激怒した。翌日、その男の銀行へ乗り込んで、50万円をせしめてきたのだった。
幸恵は、その金を真由美に渡して貯金するように言った。「あんたの大切なお金なんだから、大切にしなさいよ。」幸恵はコツコツと貯金するタイプだったのだ、真由美はそういう母の習慣をしっかり身につけていった。
真由美の母の幸恵はスナックを経営していた。幸恵の仕事中は真由美は祖母の利子が世話をした。幸恵は夕方になると美容院へ行き、そのまま出勤する。真由美と幸恵親子が一緒に過ごすのは昼間だけだった。学校へ行くようになると、真由美は母と過ごす時間が少なくなって寂しかった。
そんな時には祖母の利子が、「ママ偉いんだよ〜。またお店大きくしたんだって。真由美のために頑張ってるんだよね〜。」といって抱っこしてくれた。
朝、目覚めると、いつも真由美の横で母の幸恵が熟睡していた。「ママ〜」と抱き着くと、寝ぼけ眼のまま抱きしめてくれた。毎朝20分ぐらいの真由美にとって一番幸福な時間だった。こういう習慣は真由美が小学校を卒業するころまで続いた。
学校の先生は真由美の家がどういう商売をしていたか知っていた。中には特別な眼で見る先生もいた。ただ、真由美が育った地域には、そういう家庭は少なくなかった。この地域は繁華街に近いので、水商売の家や飲食店へ食品やコーヒーなどを卸す家、美容院など水商売の恩恵を被っている家が多かった。水商売への偏見は比較的低かった。
その中では、真由美の家は経済的に安定していたし、いつも身ぎれいにしていた。成績も優秀だった。幸恵は懇談会や参観日は欠かさずやってきた。地味な服装で目立たないようにしていた。
真由美が中学を卒業して、母親のスナックに寄ったときに事件が起きた。幸恵が買い物に出ているときに銀行の支店長が来た。幸恵のお客だ。その男は、まだ少女だった真由美に手を出したのだった。
真由美はびっくりして泣いてしまった。その男が帰った後で、幸恵が戻って何があったか話すと幸恵は激怒した。翌日、その男の銀行へ乗り込んで、50万円をせしめてきたのだった。
幸恵は、その金を真由美に渡して貯金するように言った。「あんたの大切なお金なんだから、大切にしなさいよ。」幸恵はコツコツと貯金するタイプだったのだ、真由美はそういう母の習慣をしっかり身につけていった。
家族の木 Extra edition 夜職の家
女系家族で生真面目に地道に働いて夜の仕事で成功していった家族。利子、幸恵、真由美、咲、しかし、一人娘の事故死で家族の運命が変わります。
母と娘
母の利子は自力で居酒屋をやっていた。居酒屋をしながらその二階では客を取っていた。居酒屋の客はそれをよく知っていて時間が来ればさっさと帰った。だから、女房達も利子の居酒屋を嫌わなかったのだ。利子が賢かったのは、居酒屋の客と二階の客をはっきり分けていたことだった。
二階の客は、仕入れ先の社長とか家主の旦那などで、仕入れも家賃もずいぶん安くしてもらっていた。利子が、勘で作り上げたビジネスモデルだった。
そして、利子は近所の資産家の子供を産んだ。それが幸恵だった。その男と関係ができてからは利子は客を取るのはすっぱりやめた。男がそれを希望したからだ。そして、子供ができててからは商売もやめた。男の手当てで暮らした。
利子は、そんな生活の中でも貯蓄を忘れなかった。普段は質素な生活をして、男が来る日だけは、いい食事をだした。そういう、けなげなところが男に愛された。男が亡くなった時には、幸恵のために相応の金額が用意されていた。
その段取りをしたのは、その男の母だった。利子は、その男が来た日には「お母様へ」と言ってお土産を持たせることを忘れなかったのだ。利子は、その後はまた居酒屋を始めて地道に暮らした。
幸恵は18の時にはキャバレーで働いた。美人だし出勤もちゃんとするから店から大事にされていた。キャバレーのオーナーとはできていた。入店して半年でオーナーとできたんだから凄腕だった。オーナーの嫁さんとも仲良くした。抵抗なんて全然なかった。よく働くいいホステスだったのだ。おかげで若いうちにマンションを買った。
21のときに真由美を身ごもってキャバレーをやめた。子供が生まれたときには養育費をもらった。そして、それ以降幸恵とオーナーとの縁が切れた。子供の相続権を主張することもなかった。約束通りけじめはしっかりつけた。だから真由美は自分の父親が誰か知らない。1年間は真由美の父親がくれた金で暮らした。
それ以降は小さなスナックを開いた。その資金は自分がためた金を充てた。残った養育費は貯金した。母親と同じように、スナックの小さな部屋で客をとった。客は店の客とは別にした。つきあいのある銀行の支店長だった。
暮らしに困ることはなかった。店はいつも清潔で、インテリアのセンスもよかった。大企業のサラリーマンがよく来ていた。
母と娘
母の利子は自力で居酒屋をやっていた。居酒屋をしながらその二階では客を取っていた。居酒屋の客はそれをよく知っていて時間が来ればさっさと帰った。だから、女房達も利子の居酒屋を嫌わなかったのだ。利子が賢かったのは、居酒屋の客と二階の客をはっきり分けていたことだった。
二階の客は、仕入れ先の社長とか家主の旦那などで、仕入れも家賃もずいぶん安くしてもらっていた。利子が、勘で作り上げたビジネスモデルだった。
そして、利子は近所の資産家の子供を産んだ。それが幸恵だった。その男と関係ができてからは利子は客を取るのはすっぱりやめた。男がそれを希望したからだ。そして、子供ができててからは商売もやめた。男の手当てで暮らした。
利子は、そんな生活の中でも貯蓄を忘れなかった。普段は質素な生活をして、男が来る日だけは、いい食事をだした。そういう、けなげなところが男に愛された。男が亡くなった時には、幸恵のために相応の金額が用意されていた。
その段取りをしたのは、その男の母だった。利子は、その男が来た日には「お母様へ」と言ってお土産を持たせることを忘れなかったのだ。利子は、その後はまた居酒屋を始めて地道に暮らした。
幸恵は18の時にはキャバレーで働いた。美人だし出勤もちゃんとするから店から大事にされていた。キャバレーのオーナーとはできていた。入店して半年でオーナーとできたんだから凄腕だった。オーナーの嫁さんとも仲良くした。抵抗なんて全然なかった。よく働くいいホステスだったのだ。おかげで若いうちにマンションを買った。
21のときに真由美を身ごもってキャバレーをやめた。子供が生まれたときには養育費をもらった。そして、それ以降幸恵とオーナーとの縁が切れた。子供の相続権を主張することもなかった。約束通りけじめはしっかりつけた。だから真由美は自分の父親が誰か知らない。1年間は真由美の父親がくれた金で暮らした。
それ以降は小さなスナックを開いた。その資金は自分がためた金を充てた。残った養育費は貯金した。母親と同じように、スナックの小さな部屋で客をとった。客は店の客とは別にした。つきあいのある銀行の支店長だった。
暮らしに困ることはなかった。店はいつも清潔で、インテリアのセンスもよかった。大企業のサラリーマンがよく来ていた。