2019年05月06日
家族の木 THE FIRST STORY 真一と梨花 <55 妄想>
妄想
真梨が修学旅行でいない夜、僕たちは久しぶりに食事に出た。帰りにはバーによって少し飲んだ。
梨花は滅多に夜の街に出ることがない。
僕があまりそういう場所を好きではないので、結局は梨花もそういう場所へ出る機会を無くしていた。
「真ちゃん 私、年とるのが怖い。」
「なんで?」
「だって、私はいつまでも、真ちゃんとこうしていたいもん。」
「いつまでも、こうして暮らせばいいんじゃないの?」
「でも、年取ったらこんな風にはしてくれへんようになるでしょ?ひょっとしたら、若い女の人とこうなるかもしれんやんか。今日のバーの女の人も真ちゃんに興味深々やったよね。わかってるんでしょ?」
「うん、あの子は普段は僕の隣に座ってくるんだよ。色々世話を焼きたがるんだ。
時々、若さにあてられそうになる。」僕はやきもちを焼く梨花をからかった。
「やっぱり、無理もないよね。若いい人は私が見てもきれいでうらやましい。
真ちゃん、若い人となんかなるのやめて。お願い、私、生きてられへんかもしれん。」
「珍しいね。久しぶりに梨花の口説き文句を聞いたね。」
「なんか、久しぶりにああいう場所へ行ったら、自分が野暮ったいおばさんやって思い知らされて辛い。」
「僕の大事な奥様を裏切ったりしないよ。いつだったか、あの騒動でこりたよ。忘れた?
僕は寂しい孤独な育ちだよ。妾の子は寂しいし妾はかわいそうだよ。本妻だって苦しむ。その子供も苦しむ。全部じかに見てきたんだよ。
僕は、梨花や真梨のいる家でデレデレのしょうがないオヤジで暮らしたいんだよ。
ねえ、なんであの店に連れて行ったかわかる?」
「お酒飲みたかったから?」
「見せびらかしにつれて行ったんだよ。僕の好みの女はこういう女なんだってね。」
梨花は急に真顔で「真ちゃん、いつの間にそんな上手に女の人口説けるようになったん?」と聞いた。
「ねえ、年を取ったら、手をつないで映画を見に行こう。はぐれないように手をつないで雑踏の中を歩くんだよ。ねえ、年取ったら月に一度は二人で映画を見に行こう。」
僕は、若い時のことを思い出していた。駅の雑踏の中で手をつないで歩く老夫婦を見たとき、自分の両親はこんな風になることはなかったんだと寂しかった。年を取ったら梨花と手をつないで雑踏の中を歩こうとおもった。
もし、新幹線で聡に合わなかったら?僕は、あの温かい家族に出会わなかっただろう。
もし、僕にいやなスキャンダルがなければ?梨花は僕の部屋に来なかっただろう。
もし、聡に不快な相談を受けなかったら?梨花は、あんなにも情熱的に告白してくれることはなかっただろう。
一瞬 めんどうで鬱陶しい出来事が僕の運命を動かした。
多分、僕は梨花をみとってから、木が朽ちるように生涯を終えるのだろう。この妄想は なぜか、僕を妙に甘美な満足感へと導いた。
続く
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「うん、あの子は普段は僕の隣に座ってくるんだよ。色々世話を焼きたがるんだ。
時々、若さにあてられそうになる。」僕はやきもちを焼く梨花をからかった。
「やっぱり、無理もないよね。若いい人は私が見てもきれいでうらやましい。
真ちゃん、若い人となんかなるのやめて。お願い、私、生きてられへんかもしれん。」
「珍しいね。久しぶりに梨花の口説き文句を聞いたね。」
「なんか、久しぶりにああいう場所へ行ったら、自分が野暮ったいおばさんやって思い知らされて辛い。」
「僕の大事な奥様を裏切ったりしないよ。いつだったか、あの騒動でこりたよ。忘れた?
僕は寂しい孤独な育ちだよ。妾の子は寂しいし妾はかわいそうだよ。本妻だって苦しむ。その子供も苦しむ。全部じかに見てきたんだよ。
僕は、梨花や真梨のいる家でデレデレのしょうがないオヤジで暮らしたいんだよ。
ねえ、なんであの店に連れて行ったかわかる?」
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梨花は急に真顔で「真ちゃん、いつの間にそんな上手に女の人口説けるようになったん?」と聞いた。
「ねえ、年を取ったら、手をつないで映画を見に行こう。はぐれないように手をつないで雑踏の中を歩くんだよ。ねえ、年取ったら月に一度は二人で映画を見に行こう。」
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多分、僕は梨花をみとってから、木が朽ちるように生涯を終えるのだろう。この妄想は なぜか、僕を妙に甘美な満足感へと導いた。
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