新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2018年01月14日
「必殺仕事人」第6話「主水は葵の紋を斬れるか?」
1月12日の夜10時からBS朝日で「必殺仕事人」の第6話 「主水は葵の紋を斬れるか?」が放送されました。
「必殺仕事人」は必殺シリーズの第15弾で、1979年5月から1981年1月までの期間、全84回という長きにわたって放送された作品です。また、「仕事人」とタイトルにつくのはこの作品からで、「仕事人シリーズ」の中でも特別なものといえるでしょう。
中村主水を演じる藤田まことさんが主役であるのはいうまでもないですが、「かざり職人の秀」として三田村邦彦さんが登場したのもこの「必殺仕事人」で、畷左門役に伊吹五郎さん、仕事人の元締の鹿蔵役に中村鴈治郎さんが演じたり、仕事人の元締の配下として情報収集にあたる半吉役に「笑点」の座布団運びで有名な山田隆夫さんが演じていた李して、おもしろいキャスティングでした。
主人公人気シリーズなので、何度も見ています。
その中でも特に印象に残った回が第6話でした。
目黒祐樹さん演じる松平聖二郎 という男が冒頭から登場します。この男、徳川の血を引き、二人の家来を従えて江戸の町を我が物顔で歩き、「葵の御紋」を振りかざして商家に押し入り無理難題を要求するやら乱暴狼藉し弱い者を泣かすやら、傍若無人の振る舞いで、非道の限りを尽くします。
物語のはじめでも、唐津屋という店に入り傍若無人な行いの極みともいうべき行動をとり、店の者を恐れおののかせますが、そのとき、おそるおそる物陰で様子を見ていた唐津屋の娘に目を付けます。それはまるで血に飢えた獣のような目でした。
ほかの者は外に出よ、と言って家来を使って娘以外を無理やり外に出させ、屋敷内で娘に襲い掛かり「てごめ」にします。身を汚され辱められたことを悲しむ娘は首をくくり、その母も同じく首をくくります。
唐津屋は「仕事人」の元締・鹿蔵に松平聖二郎殺しを依頼します。
しかし、相手は徳川将軍家の家紋である葵の御紋をふりかざす者。将軍家から録を受けている小役人・中村主水にその仕事はできません。
主水も同僚もまた、聖二郎らによって屈辱を味わされますが、葵の御紋の前には、どんな屈辱にも甘んじて耐えなくてはならないのでした。
そんな時、秀や左門の近所に住む「お美代」という美しい娘の輿入れが決まり、花嫁衣裳を左門の妻が仕立てます 。
そのお美代の輿入れ当夜、輿の前にふと現れたのが松平聖二郎とその家来たち。夜更けに街中をゆく輿や行列に興味を持った聖二郎は輿の中をあらためます。白無垢の美しい花嫁を見た聖二郎はお美代をひきずり出して連れ去ろうとします。
当然、行列の者たちもお美代の父も、お美代自身も、おそれおののきながら「おゆるしください」と懇願します。
だが、そんな言葉を聞き入れて素通りさせる聖二郎ではありません。輿入れ当夜にわしに出会った不幸を嘆くのだな、とお美代を連れ去り、「男手一つで育てた一人娘の晴れの日です。どうぞおゆるしを!」と追いすがるお美代の父を斬り捨てます。
お美代は怖さとショックで力なく、男の強引な腕に引っ張られるまま、拉致され、或る小舟の上に倒されます。そして足元に刀を突き付けられ、「手籠め」に遭うのです。そして、関係者たちがようやくお美代を探し当てたときに人々がみたのは変わり果てた姿でした。
聖二郎には尼となった母がいました。はじめ、鹿蔵がその尼を訪れ、悪行をやめるよう諭してくれないかと言ったものの、尼は、私には関係ないとばかりに断りました。それがついにその尼も聖二郎のもとへ出向き、意見を言おうとしますが、聖二郎が聞く耳をもちません。聖二郎は葵の御紋の権威を使って悪行三昧で庶民を苦しめながら、なにやら、おのれの出生を恨んでいるかのようです。
その聖二郎の知らぬところで、幕閣の要人・稲葉が鹿蔵に聖二郎殺害を依頼します。因幡の甥は、稲葉が我が子同然に可愛がっていた若者で、主水の目の前で聖二郎に斬り殺されていたのです。
ついに聖二郎殺しに立ち上がる仕事人たち。そして主水。
徳川将軍家の血を引く者が傍若無人、乱暴狼藉の限りをつくして武士も町人も逆らえず、目にとまった女は犯され、自害して……。その悪行に耐えかねた者が悪玉殺害を決行せんとして、というのは「十三人の刺客」のストーリーのようです。
葵の御紋を振りかざす者が悪行の限りを尽くす、というのは「水戸黄門」や「松平長七郎」などの真逆をゆくものです。権力・権威をふりかざす者はけっして悪行を行ってはならない、というテーマがあるようです。
「婚礼」という人生の一大事の「はれのひ」を汚され父を斬り殺され、よりによって身を汚される、という不幸のどん底に突き落とされるようなことは、これ以上ないというほどの不幸で、視聴者の心をふかくえぐるものです。それだけに、聖二郎が殺されるシーンは留飲をさげるものですが、それまでの聖二郎の悪行の数々はかなりショッキングでした。