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2018年10月31日

N子の性癖【怖い話】





小学校のときの同級生にたまたま会って、

店で飲もうって話になったんだ。



結局出るのはあいつはどうなったとか、

あいつは結婚したとかの友人の近況ばかりだったんだが、

ひとつだけ気になることを同級生は話してくれたんだ。



小学校のころの話だ。


ある朝教室に行くと鳩が窓の下で死んでいた。


見ると、一枚窓が開いていてそこから入った鳩が

ガラス窓に気づかずに何度も体当たりしていくうちに

力尽きたのだろう、て話になった。


血がにじんでみひらいた眼をした鳩に

誰も近づきたくなくて気持ち悪い、とか

先生よぼう、とかいう話がちらほら出た。


いつもは空気のよめないバカガキも鳩の物まねしたりして

おちゃらけるのがやっとであまりのグロテスクさに

近寄りさえしなかった。


ところが、そのときクラスのN子がすっと

チリトリをもって近づくとすっとその鳩を拾った。


「かわいそうだから、うめてくるね」


と落ち着いた声で友だちに言うとすっと教室を出て行った。


普段はあんまりしゃべらない子で、

友だちからも無口な子と思われていた

かわいい子だったんだ。


みんな

「やさしい子だな」とか

「勇気があるな」とか、

声には出さないもののそんな感じの空気になった。


まるで道徳の教科書にのってるような光景だった。


しばらくして、また同じようなことがあった。


教室の水槽のヒーターが焼きついて壊れていて

魚が全滅して水カビが生えていた。


そのときもやっぱりその子がうめにいった。


そんなふうに小動物が死んだとき、N子はいつも


「かわいそう、うめてくるね」


と言って一人で教室を出て行った。


友だちの女子も何人か「私も」って、

ついていこうとしたけど、

追いかけるともう姿は見えなくなっていて

結局一人でいつもでかけてしまっていた。


そして不思議なことにどこにも墓とかそういうものも

みつけられなかった。


そんなとき、クラスでたぶんN子を好きだったんだろう

男子が


「あいつをつけてやろう」


って話になった。


そいつは

「どうせ先生かなんかに媚を売りに職員室にでも

 いってるんだろう」


とか理由をこねていた。


実際男子たちは、

その行為を偽善的に感じていたのかもしれない。


N子の裏をみてやる、ってそんなつもりだった。


しばらくしてその男子はくさむらにあった

モグラの死体を見つけ実行に移した。



N子はやっぱりそれを拾うと教室を出て行った。


あらかじめ教室の外にまちぶせていたその男子は

ふらりと気づかれないようにあとを追いかけた。


「職員室にむかうぞ。

 結局用務員かなんかに任せていい子ぶるんだぜ」


ところがN子は職員室を通り過ぎると

足早に学校の裏に走っていった。


途中何度も振り返りだれもいないことを

確認しているようだった。


男子はそのせいであまり近づけなかった。


とある家の庭に面したところでN子は立ち止まった。


「なんだ、ほんとうに埋めに行ったのか」


にしては、変だ。



N子は庭にその死体を放り投げた。

それも叩きつけるように。

するとそこに大きな犬が近寄ってきた。

するとばりぼり、とその死体をくらい始めた。


比較的とおくの物陰にみている男子にもその音がきこえ、

グロテスクに感じるほどだった。


N子はその様子をじっとしゃがんで見ていたのである。


やがて犬が食べ終わるとN子はこちらに引き返してきた。


その表情はいままで見たことが無いくらい

満足げな表情だった。



男子は背筋がぞっとするような感じがして

見つかるまえにそっと逃げ出した。


おそらくN子は、

今までもこんなふうに死体をずっとあそこに

もっていっていたんだろう。


男子はそのことは誰にも言わなかった。


その男子とはもちろんいま話している同級生自身のことだ。


そしてN子は今は俺の妻だ。


そんなこと、とてもいいだせる雰囲気じゃあなかった。





posted by kowaihanashi6515 at 19:52 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月30日

FG湖【怖い話】





家族で体験した話。

昨年の9月、

ようやくまとまった休みがとれたので実家へ帰省した。

実家へ帰ると珍しく弟も帰ってきていて、

数年ぶりに家族4人(父・母・私・弟)が顔を揃えた。


私がお盆や正月に休みがとれないから、

なかなか全員揃う事ってないんだよね…


それでこんな機会も珍しいからと、

父の提案で急遽みんなで旅行に出かける事になった。


旅行といっても弟は2日後には帰る予定だったし、

急だから宿もとれないだろうって事で日帰りだったんだけどね…


いくつか候補地をピックアップし、

車で行ける場所という事で行き先はY県のFG湖に決まった。

(場所はすぐにわかっちゃうと思うけど、一応ふせてます)


次の日の早朝、車で家を出発して高速に乗って数時間。

私達家族は目的地のFG湖の1つに到着した。

(FG湖は5つの湖が点々と存在している場所です)


その後も車で少しずつ移動しながら他の湖を見てまわって、

昼ごはんを食べて、周辺を散策してと私達は

久しぶりの家族団らんを楽しんだ。


けど3つ目の湖を見た頃には、

湖にお腹いっぱいになってきて…

もう湖はいいかな…って事で、道の駅に立ち寄った。


その道の駅は地元でとれる野菜の販売も充実してるし、

道の駅に併設する博物館(展示館?)があったりで、

なんだかんだで2時間ほどは滞在したと思う。


時計を見ると午後5:20過ぎ。

9月という事でまだ外は明るかったけど、

帰りの道中や夜ご飯の事も考えて、

下道で少しずつ都内方面へ向かおうかって話しになった。

(父も弟もビールを飲んでたので、私が帰り道の運転手だった)

私「◯◯(弟の名前)、帰り道ナビで設定して。」

弟「了解。(ナビを操作する弟)
  ん?行ってない残りの2つの湖すぐ近くっぽい」

母「お昼ご飯食べたの遅くてまだそんなにお腹空いてないし、
  せっかくなら見ていこうかー?」

父「◯◯(私の名前)は夜の運転大丈夫か?
  下道だと県境は山道だぞ?」

私「全然大丈夫だよ。一つは帰り道に通るみたいだし、
  もう一つはここから横道に数キロだし!
  せっかくなら全部の湖制覇して帰ろう。」


正直なところ山道の運転には少し不安があった。

けど久しぶりに家族でゆっくり過ごす時間だったし、

私はハンドルを横道にきり、4つ目のS湖に向かって車を走らせた。


湖へ続く道は鬱蒼とした森の間を少しずつ下っていく道で、
道が左右に蛇行を繰り返している。

ナビを見ると、この道を下りきったすぐ先にS湖はあるらしい。

私は不慣れな山道の運転に集中し、
助手席に座る弟は、
さっき道の駅で貰ったパンフレットを見ながら、
目的地の湖の説明を読み上げている。

後部座席の父と母は、
窓の外の景色を眺めながら弟の読みあげる説明に時おり相槌をうつ。

ゆるやかな右カーブがあり、
ハンドルを切ると数十メートル先に何かが見えた。

何も目標物のない山道だったので、私は自然とスピードを緩めた。

私「ねえ、右側に何かあるよー。」

弟「本当だ。バス停?」

母「本当!こんな所にもバス停があるのねー!
  歩いて湖に行く人でもいるのかしら?」

私「もう夕方なのにねー…
  こんなとこだと一日に何便もなさそうなのに」

父「…」

確かに前方に見えているのはバス停だ。

車はだんだんとバス停に近づき、そして弟が声をあげた。

弟「ちょ、バス停のとこに人!黒い服来た人がいる!座ってる!」

私「何?バス待ってる人?」

そこに居たのは、黒のウィンドブレーカーを着た人で、
三脚らしいものを抱えてうずくまっているように見えた。

母「座り込んでいるし、声掛けようか…?
  バスないのかもしれないし」

私と弟は結構びびってたんだけど、
母は後部座席からノー天気な声をあげる。

母の言葉に私はさらにスピードを落とし、
ナビの時計を見ると5:40…
確かにバスはもうないかもしれない。

それに座り込んでいるって事はどこか具合が悪いのかも?
まさか自殺目当てに来た人じゃないよね?
でも犯罪者とかかも…けど三脚持ってるしな…

頭の中でぐるぐると色々な考えがよぎる。

(みんなに見えていたから、幽霊だとかは考えなかった…)


すると、黙っていた父が大きな声で、

父「止まらないでいいから!早く先行こう」

と声をあげた。

父は日頃からすこぶるお調子者なので、
真剣な顔でそういう父に少し驚きつつ、
私は車のスピードをあげた。

私「ちょっとお父さん何?大きい声だしてさー…」

母「そうよ、お連れさんがいるのも楽しいかもよ」

弟「お連れさんってなんだよ…」

母は田舎に泊まろう!とか旅番組をよく見ているので、
旅の出会いに憧れているのだろう。

父「いや、この道入ってから何となしに嫌な感じがするんだよ…」

弟「嫌な感じって何だよ?
  親父霊感とかないと思ってたけど、そんなの?」

弟が茶化した声をあげるも、父は黙ったままだった。

そんな事がありながらも私達は目的地のS湖に到着した。


私「ちょっと、ここすごく綺麗じゃん!
  今までの中で一番いいよー!」

弟「他のとこは観光地観光地してたけど、静かでいい感じだなー。」

母「いいわねー!水も透き通ってて、絵画みたい!」

S湖は想像以上に綺麗で、私達はさっきまでの事も忘れて、
口々に大絶賛をはじめた。

私「駐車場に車とめて降りてみよー!他に観光客もいないしさ」

母&弟「いいねいいね!」

私「お父さんも行くよね?」

父「うーん…お父さんは駐車場から眺めるだけでいいよ…」

結局私達は、ぐだぐだ言う父を駐車場に残して
湖まで降りていく事にした。

(駐車場から湖まではすぐ近くだったし、
 父も車から降りて景色は眺めてたしね)

湖の近くまで行くと、近場に住んでいるであろうおじさんが、
1人でボートを岸に寄せているだけで、
辺りはシーンと静寂に包まれている。

湖畔に映り込む山が綺麗で、私達は感嘆の声をあげた。

水は青々と透きとおり、夕方にも関わらず本当にキラキラと綺麗だ。

それは今まで見たどんな景色よりも綺麗で幻想的で、

ずっとここにいたいというような気持ちが湧いてくる。

弟は「仕事辞めてここに移住したい」

と言いはじめるし、

母にいたっては、

「死んだらこういうところに骨を散骨してほしいわ」

なんて言っている。


今になってみれば、大げさだなと思うし、
そこまで突飛な考えに至ったのが不思議なんだけど…

(これは母も弟も同じ事を言っていました)

とにかくその時は、
世界にこんなに素晴らしいところがあるんだ!
というすごい高揚感があった。

そうして時間が過ぎていくと、
私達3人はさらに不思議な気持ちになった。

母「ねえ、この辺りって自殺が多いって聞くじゃない?」

弟「うん」

母「でも、こういうところで死ねたら本望かもしれないわよね」

弟「この湖の一部になれるなら、それって幸せだよなー」

母「私このあたりで亡くなる方の気持ちわかる気がするの」

弟「俺も」

私は母と弟の言動に、ぼんやりと違和感を覚えながらも、
頷いていたと思う。

母「帰りたくないわね…」

弟「うん…」

私も頷こうとしていると

「おい!もう帰ろう」

と声がして腕を掴まれた。

振り返ると父が湖まで降りてきていて、私達を揺さぶってる。

その時、

我にかえったような感じになって私達は

父に言われるがままS湖を後にした。


山を超え街に出てから、弟がS湖の事を話しはじめた。

弟「綺麗だったなS湖。不思議な感じだったけど」

私「そうだねー!本当綺麗なところだったよね。
  確かに不思議だったけど…」

弟「でも、あの近くに居た人、
  俺らの会話聞いてたら驚いただろうな」

私「近くに居たから、絶対聞こえてたよね!
  あれじゃ自殺志願者の会話みたいだよね…今思えばだけど」

母「本当よねー!散骨だなんて、
  うちにはお墓あるのに何考えてたのかしら」

父「お前らそんなことを話してたのか?縁起でもねーな。
  何かに取り憑かれてたんじゃないか?」

(もうこの時には父もいつも通りに戻っていたので、
 おどけた感じで話してました)

私「やだ、お父さんやめてよ。
  私、お父さんこそ何かに取り憑かれたと思ったよ」

弟「そうそう!バス停の時!いきなり黙るし、大きな声あげるし」

母「そうよねー!だから私、
  湖でおじさんが居た時ほっとしたわよー!」

弟「わかるわかる!なんか普通の人に会えてほっとしたっていうかさ」

私「うんうん!湖にはあの人しかいなかったしね。
  あれ地元の人かな?近くにペンションっぽいのあったし」

父「ん?おじさんってどこに居た?」

私「どこって、湖でボートを岸に寄せてたじゃん!おじさん!」

弟「親父が俺ら呼びにきた時もすぐそばにいたし、
  今その話ししてたじゃん」

母「うんうん。会話聞かれてたら自殺志願者だと勘違いされたかもって」

父「何言ってんだ?そんな人いなかったよ…」

私・母・弟「はあ?いたって。ずっと近くにいたって。」

父「そんな人いなかったよ。
  お前らのそばにいたのは、子供を肩車した人だけだろ…?」

もうその後は、家族で絶叫しながら家まで帰りました。

バス停のところに居た人も、
湖にいたおじさんも結局なんだったんだろう…

そしてそんな事がありながらも、
もう一度S湖に行きたいと密かに思っている自分が少し怖いです。​





posted by kowaihanashi6515 at 23:19 | TrackBack(0) | 洒落怖

カワサキ村で謎の儀式を見てしまった【土着信仰系】【怖い話】





今から4年程前に体験した話。

当時、俺は出張でG県に1ヶ月程滞在していた。


G県って言うと群馬か岐阜しかないから、

言っちゃうけど岐阜県だ。


しかも岐阜って言っても市内より

三重県に行った方が早い様な田舎だった。


近くにお住まいの方、ごめんなさい。



田舎って言っても駅周辺は

カラオケやキャバクラ等の娯楽施設があったし、

退屈はしなかった。


仕事は出張だから残業も無く定時に帰れた。



始めのうちは知り合いもいないから、

まっすぐビジネスホテルに帰ってたんだけど、

人恋しくて、あるバーに立ち寄った。



そのバーはマスターが1人で切り盛りしてて

カウンターが5席にテーブルが2席程の

小さい店だった。



マスターは坂口憲二を更に男臭くして、

年を重ねたって風貌の人だった。



話も上手くて、

知り合いもいない土地に来ていた俺は


いつしか仕事帰り毎日寄るようになった。



1週間も連続で通うと

常連のお客さんとも顔馴染みになり、

くだらない話で盛り上がった。



特に仲良くなったのはタカシさんと呼ばれる

40歳前の方と、

サーちゃんと呼ばれる

アジアン美人の女の子だった。



タカシさんとサーちゃんも仲が良かったので、

マスターを交えた4人で

いつも閉店まで盛り上がった。



そんなある日の事。


いつも通り仕事を終えた俺はバーに向かった。



地下へ続く短い階段を降り

バーの分厚い木製の扉を開けると、


いつもカウンターに座っているサーちゃんが

テーブル席に座っていた。



友達も一緒の様で、女の子3人で飲んでいた。


俺は1番奥のカウンターに座ると

マスターにビールとお任せでパスタを注文した。



しばらくするとタカシさんも来店し

俺の隣に座り2人で

海外サッカーの話をしていた。



するとサーちゃんが話しかけて来た。


「ゆうきさん(俺)って、幽霊とか信じます?」


俺は突拍子もない質問に面食ったが、

その手の話は大好きだったので信じると答えた。


何故かホロ酔いのタカシさんも、

幽霊は絶対にいると主張しだした。


マスターまで話に乗って来て、話題は怖い話になった。



それぞれ体験談を一通り話すと、

そのままの流れで肝試しに行こうと言う事になった。



一番乗り気だったのはマスターで、

店を早く閉めると言いだした。



その後、

皆でマスターの閉店作業を手伝って

日付が変わる前には店を出た。



ここでサーちゃんの友達

2人を紹介しておく。


1人目はジュンちゃん。

細身で身長も高く長い黒髪が印象的な子だ。


2人目はサヤちゃん。

小柄でボブが良く似合う女の子らしい子だ。



俺は女性3人には申し訳ないが、

心の中で品定めなんかをしていた。


結局、俺の心はアジアンビューティーな

サーちゃんを選んでいたんだけど(笑)



女性3人と俺とタカシさんとマスターの

6人で駅前の繁華街を歩き、

マスターのクルマが停めてある駐車場に向かった。



その時、シラフだったのはマスターだけだったので

当然ドライバーはマスターになったって訳だ。


マスターの車は有名なドイツのワゴン車だった。

案外、バーって儲かるんだなぁって

思ったのを覚えてる。



運転席にはマスター。

助手席にはジュンちゃんが座った。


2列目にはタカシさんとサヤちゃん。


俺は当然の様にサーちゃんと最後部に座った。



目的地は通称

「川崎村」

と呼ばれる廃村地。


何でも明治から昭和に掛けての

時期に廃村になった村らしく、

今でも当時の民家等が一応残ってるらしい。



もっぱら建物はボロボロらしいけど。



俺は地元じゃないので川崎村の事は全く

知らなかったけど、意外だったのは

地元民である他の5人も話を聞いた事あるレベルで

実際行った者はいなかった。



要するに地元でもそんなに有名なスポット

ではないって事だ。



辛うじて最年長のマスターが

川崎村までの行き方を知っていた。


どうもここから車で山に向かって

1時間位走らせるらしい。


さらには途中で車が行き来出来ない道になる為、

そこからは徒歩で行くしかないと聞かされた。



俺は歩きと聞いてテンション下がったけど、

他の5人はそうではない様子で

陽気に鼻歌なんか歌っていた。


途中、

タカシさんがもようしたのでコンビニに寄った。


ついでなので、

そこで飲み物やらライトやらを買った。



街を背に田園を抜けて、

両手に広がる景色は山ばかりになった。



ちょうど山と山を縫う様に通る県道をひた走る。


更に県道を進んで、

目印とされる潰れたドライブインで右折した。



そこからは本当の山道で、

辛うじて舗装はされているが、

アスファルトが所々めくれていてデコボコ道だった。



更に車を走らせるといよいよ舗装もされていない

砂利道に変わった。


砂利道を進むと不自然な広場に出た。


広場から先は黒と黄色のロープが張ってあり、

ロープには看板がぶら下げてあった。



土砂崩れ注意

立入禁止

◯△□市役所


ここから先は情報通り徒歩で行くしかない様だ。


ロープを跨ぎ、6人は細い砂利道を慎重に進む。


月明かりも木々に遮られて、視界は非常に悪い。



しかも膝上まで伸びきった草のせいで歩きにくい。


それだけで十分、心霊スポットとして合格だった。



ただ雰囲気はあるものの、

その時はまだ嫌な感じとかはしていなかった。



どんどん草をかき分けて進むと、

またちょっとした広場に出た。


その広場は捨てられた

家電製品やタイヤの残骸が

山の様に積まれていた。


恐らく不法投棄だろう。


そしてその広場を抜けると更に細い獣道になった。



道を間違ったんじゃないかと

女性陣は口々に言っていたが、

マスターが言うには間違いないらしい。


と言うか、

この道らしき道を進む以外は

鬱蒼とした木々が邪魔をして

歩けるスペースなんかなかった。



15分程、獣道を進んだだろうか。


ふと、先頭を歩いていたマスターが立ち止まった。


それにつられるように全員歩を止める。


マスターの目線の先には

大きな石碑が2つ並んでいた。


並ぶと言っても、

石碑と石碑の間には車2台がすれ違える程の

間隔があった。


ちょうど石碑と石碑の間が門の様に見えた。


東大寺の金剛力士像を

思い出すとイメージしやすいかな?



右側石碑は全体的に四角い感じで、

大きさで言えばお墓程度の物。


年月が経ち過ぎてて、

石に苔がビッシリついていた。



何か文字が彫ってある様だが、解読出来なかった。


今思えば、村の名前が彫られていたんだと思う。


そして左の石碑は全体的に丸みを帯びた石で、

非常に大きかった。


こちらも文字が彫ってあったが

四角い石碑同様読み取る事は難しかった。



ただ「慰」と「碑」の文字が辛うじて読み取れた。



石碑と石碑の間を抜け、

俺達はいよいよ村に侵入した。


地形だけから見れば、

山間の村。そんな印象だった。


遠くにいくつか、

建物らしき物が確認出来た。


取り合えず、俺達は建物に向けて進んだ。


村の中も雑草やら

倒れた木やらで足元は悪かった。



建物に近付くずくにつれ、

それが潰れた廃墟だとわかった。


ざっと見た感じ、廃墟は20戸くらいあった。



全部木造の平屋建てで、

時代劇に出て来る様な

「長屋」

をイメージしてもらうと解り易いだろう。


その殆どが倒壊しており、

柱や梁がむき出しになっていた。


俺達は比較的、傾いていない

建物内に入る事にした。


恐らく玄関の引き戸だったであろう

物をはずして中に侵入した。


玄関は土間になっていて、

そこから一段高くなって畳が敷いてあった。



ただ畳もボロボロに腐っていて、

床には所々穴が開いていた。


俺達は躓かない様に慎重に民家内を捜索した。


特に変わった物はなかったが、

明治時代に廃村になったとは本当の様で、

電化製品の残骸は愚か、

照明設備がない事がそれを証明するようだった。



あの時代はランプや蝋燭で

照らしていたんだなぁとしみじみ思った。



あれこれ探し終わり、俺達はその民家を出た。



そしてそこからなるべく入り易そうな民家を

3、4軒見てまわった。


以前にも肝試し客が訪れた痕跡

(ジュースの缶等)があったけど、

ここ数10年は誰も来ていないようだった。



なんせ見た事ないメーカーのジュースの缶だったし。


ペットボトルなんかはなかったしね。



一通り見終えて、俺達は一服する事にした。


思ったより怖くないなど口々に言いながら

煙草をふかしていると、

民家の裏の丘の方から嗚咽と言うか、

動物の鳴き声と言うか、

説明しにくい声が聞こえた。


それは全員聞こえていたようで、

皆、いっせいに丘の方を見た。

「ウオォォォォッ」

再び声が聞こえた。


今度は叫び声よりは獣の遠吠えの様に聞こえた。


皆、身構えている。


それから全神経を集中させ、

3度目の声を待ったが、

ついに声が聞こえることはなかった。


「今のは何だったんだろう?」

俺が皆に向けて問う。


すると、答えてくれたのはマスターだった。


「多分コヨーテとかじゃないか?」

「コヨーテって日本にいないでしょ?」

サーちゃんが突っ込む。


「そりゃそうだな。」

マスターが恥ずかしそうに、

はにかんだ笑顔を見せる。


一同が笑いの渦に包まれた。

「ねぇ?さっきの声が聞こえた方、

 見に行ってみない?」

サヤちゃんが提案する。


皆、動物だと思ってたんで、

この時点で反対する者はいなかった。


民家の裏庭を抜けて、

少し小高くなった丘を登った。


下からでは良く見えていなかったが、

丘を抜けるとそこはだだっ広い草原になっていた。


そして草原のちょうど中央部には小屋があった。


中からは明かりが漏れているようだ。


「誰かいるのかな?」

「近付いて確認してみるか?」

6人は恐怖心よりも好奇心が勝ったため

小屋まで進むことにした。


恐る恐る小窓から中を覗いてみる。


そこには異様な光景が広がっていた。


小屋の大きさは畳10帖程度。


部屋の四隅には蝋燭と盛り塩、

そして犬・豚・牛・鶏の頭が置かれていた。


更に部屋の中央には祭壇と思わしき棚があり、

酒や榊、米等が所狭しと並んでいた。


そして部屋の壁一面は墨で殴り書きした様な文字で

埋め尽くされていた。


一番驚いたのは祭壇の前で、

白髪の老婆が祈りを捧げていた事だ。


何やら唱えているが、それが日本語なのかさえ、

判断しかねる内容だった。



でもその呪文を唱えるリズムが妙に心地よく、

酒に酔っている時の感覚と似ていた。


俺はまわりの皆を見渡した。


皆が皆、目を細め気持ちよさそうに

呪文に耳を傾けている。


老婆は尚も、呪文を唱え続ける。


そして何やら麻の袋から取り出した。


それは、多分「人間」だった。

しかもペラペラの。

きっと人間の皮を剥がした物だったと思う。


あまりのグロテスクさにジュンちゃんとサヤちゃんが

悲鳴を上げてしまった。


その瞬間、老婆が俺達に気付いた。


「見たなぁぁぁぁぁ。」

俺にはそう聞こえた。


そして老婆は次の瞬間、

四つん這いになって俺達の方に駆けて来た。


そう、まるで犬の様に。


俺達は一目散で小屋から離れ、丘を下った。


周りの心配をしている余裕はなかった。

ただ叫び声や走る音で

全員ついて来ているとわかった。


倒壊した集落を背に、

石碑の広場まで一気に走りぬけた。


「ぜぇぜぇぜぇ」

息を切らして皆の安否を確かめる。


どうやら全員逃げ切ったみたいだ。


遠くの方ではまた遠吠えが聞こえた。

多分、この声はあの老婆の者だろう。


きっと動物の霊を体に降ろしているに違いない。


皆、無言でマスターのワゴン車まで戻った。


帰りの車内も皆、一様に無言だった。


気付くとバーの前にいた。


軽く挨拶を交わし、それぞれ帰路についた。


次の日から俺はバーに通う事はなくなった。


そのまま出張の1ヶ月を終えて、

地元に帰った。


地元に帰ってから半年が過ぎ、

ようやくあの老婆の事を思い出すこともなくなった。


それまでは時折、夢にまで出てきやがったんだ。


そんなある日、俺のケータイが鳴った。


サーちゃんからだった。


「もしもし?」

俺が恐る恐る出る。


「ゆうきさん、久しぶり。」

サーちゃんはあたり前だけど、

半年前と変わらない声をしていた。


「もしヒマがあったら少し話がしたいの。」


特に用事もなかったから、

次の日曜に再び岐阜まで行く約束をした。


日曜、サーちゃんは待ち合わせ2分前に

ファミレスに来た。


「久しぶり」

「ああ、久しぶり」

取り留めのない挨拶を交わす。


「今日、ゆうきさんを呼んだのはね……」

サーちゃんが切り出した。


「実はあの後、タカシさんやマスター達に

 連絡が取れなくなって……」

どうやらあの一件から、

タカシさんやマスターと

音信不通になってしまったらしい。


マスターはバーも閉店させていた。

風の噂では田舎に帰ったらしい。


タカシさんに至っては

まるで消息がつかめないというのだ。


サーちゃんは続ける。

「だから私、あの村の事を自分なりに調べたの。」

そう言って、

俺に一冊のファイルを手渡した。


ファイルには次の様な事が書いてあった。


川崎村(皮裂村)

昭和2年 廃村

江戸時代中期から明治初期にかけては、

皮製品を主な収入元とした人々が暮らしていた。


村の人口は総勢で約100人程。

所謂、被差別地域。


外界との交流は殆どなく、

農耕や狩猟でほぼ自給自足の生活をしていた。


明治後期には村の人口が20名を切り、

昭和2年、最後の村人数名が隣の村に移った為、

廃村。


ここまで来て、ピンと来た。


「もしかしてあの老婆は

 最後の川崎村の村人だったって事?」

サーちゃんは深く頷いた。


「もともとあの村は 皮裂村と呼ばれ、

 ひどい差別を受けてきたの。


 そうしていくうちに、

 外界との交流はなくなり、孤立化して行った。


 そしてあの村は狩猟や皮製品を

 生業として来た人の村だから、

 畜生を神として称え、祀った。


 あの左の石碑は殺した家畜達の

 慰霊碑だったみたいね」

更にサーちゃんは続けた。


「村のある家系には

 今で言うイタコのような事が

 出来る一族がいたらしいの。


 その一族は畜生の霊を降ろして、

 農作物の豊作を祈ったり、

 病気の者を治癒していたみたい。


 そして年1回、畜生の神様に生贄として

 人間の皮を捧げていた」

どうやら俺達があの場所で見た物は

その儀式の一部だったみたいだ。


その後、

あの老婆がどうなったのかは知らないし、

知る気もしない。


ただ川崎村近辺の町では今も尚、

年1人〜2人程が行方不明になっている。







2018年10月28日

幽霊に取り憑かれた二週間【怖い話】





ひどい目に遭った

発端は先々週の3.11のときに被災地へ行ったこと

2011年の頃にはもう離れてたが、

被災地のある所に住んでたことがある

それで二年経つってことで旧知をお見舞いに行ったんだ

2012年にも被災地に行ったんで、

今回はどっちかって言うと

お見舞いというより観光になってた

知り合いにお見舞いして近況を報告して、市場行って、

被災の跡を見て回った

今思えばはしゃぎすぎたかもしれないな

比較的人がいる被災地は結構復興が進んでたが、

山田町やら釜石鵜住居地区はほぼ壊滅状態のまま

手付かずだった


被災地から帰ってきて、

次の日俺は一人暮らししてるアパートに帰った

そこで最初の事態が起こった

3月12日、

寝てたらパッと目が覚めた。

時計見たら朝方5時頃。

まだ真っ暗だった

んでもうひと寝入りするかって

スマホの画面の電源を落とした

瞬間、

金縛りに合った 金縛りに遭った瞬間、

「あ、こりゃダメなヤツだ」

と思った。

寝入り端に金縛りなんてよくあることだったが、


この時は金縛りに遭った瞬間に

何とも言えない嫌な予感がした

俺のベッドはワンルームの壁際にあるんだが、

俺は部屋の中心に背中を向ける感じで金縛りに遭ってた

すると男のしゃがれ声で

「南無阿弥陀仏! 

 南無阿弥陀仏! 

 南無阿弥陀仏!」

と物凄い切羽詰まった声で唱え声が聞こえてきた

それと同時に、

ベニヤ板を剥がすかへし折るかのような

「ミシ……バキャ……」

という音が聞こえてくる

それがどんどん近づいてきた

その瞬間、

金縛り中なのにぞわーっと全身に悪寒が走った。

金縛り中でも鳥肌って立つんだなとか思ったが

とにかく後ろから近づいてくるものを見たら

とんでもないことになるという予感があった

たぶん金縛りに遭ってたのは一分もなかったが、

とにかく般若心経を唱えまくった

こういう時のために丸暗記してたんだけど

まさか実際に唱えることになるとは思わんかった

そのベニヤ板をへし折るような音がすぐ背中に来て

「もうダメだー」


と思った瞬間、

人差し指が動いた これで金縛りが解ける! 


と手と言わず足と言わず必死に動かしたら、

金縛りが解けて男の念仏とベニヤ板を折るような音が

バッと消えた

慌てて振り返ったが、もう部屋には何にもいなかった。

助かったという安堵感が凄くて気絶しそうになった

時計見たら朝5時過ぎぐらいで、

暗いとはいえ朝5時なのに幽霊って出るもんかいな……

と感心した

安心したらトイレ行きたくなって、

ベッドから降りてトイレに行った

トイレの前に洗面所あるんだが、

要足してベッドに戻ろうとした途端、

ふと鏡が目に入った

その瞬間背中がぞくっと反り返った。

「今後ろに何か立った……」

と直感した

これでもオカルト好きなんで、

この幽霊は見て欲しい幽霊なのだと思った

でも見たら洒落にならんことになるのがわかってたんで、

カニ歩きみたいに鏡を見ないようにベッドに慌てて戻った

ベッドに戻って頭から布団をかぶった。

もう五時だし、

もう二度寝どころじゃなかったんで、


とにかく寝ないようにスマホ見て時間潰そうと思った

で、枕元のスマホ取り上げた途端、

スマホの暗い画面に映った

腐ってふやけてぶよぶよの黄土色になった

白髪の婆さんの顔だった

「え!?」

と思った途端画面が点いて婆さんのかおが消えた

念のためもう一度画面消して確かめたが、

自分の顔しか映ってなかった

正直気絶しそうになった

もう五時半で外は白み始めてたが正直気が狂いそうだった

実家のオカンはいつも五時半ぐらいに起きてくるので、


情けない話だが怖くなってオカンに電話した

遅れたけどスペック

俺:24歳。社畜。

  岩手出身で今県外。

  霊感なし恐怖体験もなし

俺の住んでた所:岩手県宮古市。

        被災しまくった

電話したらしばらくのコールの後、オカンが出た。

オカンまだ寝てた 俺半泣き。

「今アパートに出た……」

と言ったらオカンが

「え!?」

と絶句してた

で俺が今あったことを話したら、オカンの第一声が

「連れてきたか……」

だった

それ聞いて、やっと俺も

「こりゃ連れてきたかも」

と思い当たった

そしてオカンが

「連れてきたか……」

と言った瞬間だった


怖くて点けてた電気スタンドが

「バチン!」

という音とともに消えた

心臓が口から飛び出るかと思った

「今電気消えた!」

と電話実況した途端、電気スタンドが

「バチッ! バチバチバチバチッ!」

と物凄い勢いで点滅した

正気保つのに必死でオカンに助けを求めたら

「念仏! 念仏!」

と言われた。

唱えたけど意味なかった

で最後

「バッチーン!」

という電気スタンドとは思えない音立てて

電気スタンドの電気が消えた

それがその日最後の霊現象だった

取り敢えず現象は収まったんで、

オカンとオトンに三十分ぐらい会話に付き合ってもらった

二人で一致したのは

「アパートに 憑いてたものではない」

ということだった。

下見にも来たけど嫌な空気はなかった

そこでますます

「被災地から連れてきた説」

が有力になったそこでオトンが電話を変わった。

「ナンマンダスと三度唱えれば大丈夫だ」

と民間療法的除霊方法を享受された

こちとら般若心経フルで唱えたが効果なかったぞと

若干逆上したが取り敢えず聞いておいた

その後七時頃、

姉が興味津々な声で電話かけてきたけど

正直思い出したくもなかったんで適当に言って切った

そのまま会社行ったが、

目覚めの悪さが祟ってふらふらしていた

様子がおかしかったらしく、上司に

「なんかあったのか?」

と心配されたんで、思わずあったこと全部話した

課長は大笑いして聞いてた。

正直張っ倒したかったが、

結局会社の人々で真剣に信じてくれたのは

課長だけだったと思う

課長の奥さんは元看護師らしいが

所謂「見える人」らしく、

それで信じてくれたのだと思う

課長は盛り塩を進めてきた。

盛り塩なら簡単に出来るんで

帰ったら実践してみようと思った

その後もいろんな人に話しまくったが、

ある女性社員は

「被災地にはウヨウヨいるらしいからねぇ」

と気の毒そうな顔をしてくれた

正直会社からアパートに帰るの強烈に嫌だったが

帰るしかなかった

帰ってアパートの部屋開けたら、なんか空気が違った。

じっとり重くなってて自分の部屋じゃないみたいだった

こりゃまだいるなぁ……

とか思いながら、

とにかくやることをやろうと思った

帰って速攻で肩口に塩を巻き、

皿に盛り塩して玄関に置いたら、

多少空気が軽くなった

その日は般若心経を唱え、

枕元にいつだったか中二病こじらせて買った

剣鉈を抜き身で置いて寝た

魔物は金気嫌うともろもろの書籍なんかに

書いてあったので、

幽霊来たら突き刺してやろうと思ってた

その日は寝入ろうとすると

「また金縛りにあうんじゃないか」

と思って目が覚めて参ったが、なんとか寝付けた

しかし次の日の3月14日だった。

また夜中に目が覚めた

時計見たら丁度午前三時だった。

「あ、これは……」

と思った瞬間

ブォーン! 

という音と共にパソコンの電源がひとりでについた

もうなんか怖いとかそういうのより、

睡眠を邪魔されてるのに非常に腹が立った

パソコンの電源を落とし、

トイレに行ってまた布団に潜り込んだけど、

だんだん幽霊に腹が立ってきた

深夜の三時なのに部屋中にいい加減にしろこの野郎などと

怒鳴り散らして虚空に剣鉈振り回したが、

これじゃ立派なキ○ガイだと冷静になって寝た

そのままフラフラになって会社に行ってしばらくしたら、

上司に呼び止められた

なんだろうと思ったら

「お前今日おかしいぞ? また出たのか?」

ってドンピシャなことを言われた

「出ました……」

って言ったら上司苦笑いしてた。

俺よく覚えてないんだけど、上司の話によると

俺は朝の会議中に配られた資料を

まとめて返そうとしたり

呼びかけても反応がなかったりと

明らかに虚ろだったらしい


正直霊障という程のことはないが

睡眠を邪魔されるので睡眠不足なんですと誤魔化したら

上司は逆に難しそうな顔になった。

そして

「もしお前が営業車で事故っても始末書に

 『原因:幽霊』

 って書けねーぞ」

と真剣な目で言われた

要するに

「何とかしろ」

と言われたわけだ。

正直あまり大事にしたくなかったが、

この時初めてお祓いしてもらうことを考えた

そんで、矢も盾もたまらずオトンに電話かけて

「実はコレコレこういうことがあって……」

と委細を話した

パパンは

「はぁ……」

となんとも言えないリアクションをした

俺は最初近所に神社があるんで、

そこの神主にお祓いしてもらう程度の事を想定していた

しばらくしてオトンから電話があった。

「明日除霊予約したから、お前今日の12時から

 肉やら酒やら口にするな」

と言われた

予約したところを聞いたら、

地元では有名な真言宗の寺だった
費用を聞いたらそれなりにかかると言われたんで

俺は正直


「金かかるなら 盛り塩して俺で祓うわ!」

と反論したが

「オメーそんな場合じゃね―だろうが」

とオトンに怒られて目が覚めた

お祓い当日、

姉が付き添いしてくれることになった。

話によると結構強力なお祓いをする予定なので

もしかしたら帰り車の運転が出来なくなるかもしれない

ということで、

正直ガクブルしていた

寺に着いたら、今まで何度も見てたけど、

実際に中には入ったことがなかったんで

若干ワクワクしてきた

最初に僧衣を着たおばさんが出てきて、

「さあさあこちらへ」

と丁寧に通してくれた

事のあらましをそのおばさんに話すと、

おばさんはなんか長さ四十センチぐらいの

木の棒をジャラジャラ取り出し、

何か占いのようなことを始めた

紙に書かれた俺の名前を見ながら

しばらくジャラジャラとやって、

机の上に置いた積み木みたいなものを


カタカタと弄ってた

占いが終わったら、そのおばさんがポツリと一言、

「祓えんのかな……」と

「フハハハハハ 貴様程度の霊力で

 我が祓えると思ったか!」

みたいな中二病的台詞が頭の中にこだまして

若干ワクッとするのと同時にガクブルした

正直「祓えんのかな……」

という台詞が現実に登場する台詞なのかよと思った

俺は気休め程度に経のひとつでも上げてもらえば

それで安心して熟睡できると思ってたのに

とんでもない事態になったなと内心怖かった

しばらくして住職がやってきた。

三十代ぐらいの、見るからに誠実そうな坊さんだった

地元では占いやらお祓いやらで有名なのは

この住職の人柄によるんかなと思った

ちなみに書いてなかったが、

俺が行った寺院の本尊は不動明王だ

それから住職は俺に取り憑いたものに関して

丁寧に説明してくれた。

言われたことが多かったんで箇条書きにする

・アンタに憑いたのはまず間違いなく被災して

 亡くなられた人々であろうこと

・「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」

  という念仏を唱える声と

  ベニヤ板を折るような音は、

  最期の瞬間の記憶であろうこと

・被災者の霊はあまりにも通常ありえない死に方なので、

 除霊というより慰霊になるということ

・3.11後、アンタみたいに被災地から連れてくる人が

 絶賛増加中であること

・特に被災地の幽霊は交通事故を引き起こす

 傾向があること

 (これは聞かれた話から俺が考えたこと)

住職の

「俺が聞いた一切は被災者の最期の瞬間であろう」

という言葉には俺もやっぱりなと思った

おそらく、

襲い来る津波に家が流されてく中で、

取り憑いた幽霊氏は念仏を唱えながら

死んでいったのだろう

そう考えると寝不足程度でイライラしてた自分が

なんつーか申し訳なく思えてきた

だが除霊してもらわんと仕事にならんわけで。

ちなみにおばさんの

「祓えんのかな……」

という一言は

慰霊→除霊になる、

つまり慰霊なしの除霊だけでは祓えない、

という意味らしかった

ちなみに話が脱線するが、住職から聞いた他の人の話ね

その人は被災地に務める学校の先生らしいんだが、

赴任してからというもの、

なんでか車関係のトラブルが絶えない

ありえない交通事故をしたり事故をもらったり、

ありえない故障の仕方をしたり。

で、特徴的なのが、

そのたびにお守りが壊れたらしい

「これ詰んだわ」

と思うような大事故をしたときも、

何故か無傷ですんだが、

やっぱり車の中のお守りはボロボロに壊れていた

それで怖くなってお祓いに来た人がいたそうだ

そんでいよいよお祓いが始まった。

数珠を持たされ、袈裟を着せられて、


付き添いの姉ともどもお祓いされることになった

ここからが大変だった

お祓いが始まり、最初祝詞のような感じで

俺の周りに起きたことが本尊の不動明王に報告された

それで読経が始まったんだが、

木魚でなく太鼓がドンドンドンドンと鳴らされて、

ここで緊張がMAXになった

大学で宗教関連の話を勉強してたのもあって、

正直真言密教に関しては興味津々だったんだが、

太鼓の音とともに読経が始まった瞬間

そんな下心は吹っ飛んだ

しばらく

東日本大震災の犠牲者の慰霊のための

読経があって、

次にいよいよ除霊が始まった

その瞬間、

こちらに背を向けて読経してる坊さんの目の前から

ボワっと火の手が上がったのを見て俺は仰天した

護摩行とは聞いてたがマジでこんな屋内で火焚くと

思ってなかったんでアレには本当に仰天した

住職はどんどん護摩木をくべて、

ホントごうごうという感じで火柱が上がった

俺はもう内心

「(こんなマジな感じでやんの!?)」


って怖いやら驚くやらで呆気にとられていた


すると住職が

「では俺さん、こちらに来てください」

と俺を火柱の側に座らせた

俺がそこに座ると、

住職は金色に光る金剛杵を手にしておられた。

金剛杵なんて資料でしか見たことない

中二アイテムだったんで

「(おおお…… やっぱ本物カッコイイな……)」

と思ってたら、

「ではこれを胸の前で持ってください」

とその金剛杵を押し付けられた

慌てて金剛杵を受け取って親指で挟んだら、

金の匙で頭に水を掛けられた

もう住職フルパワーで読経してたな

ホントにどこの漫画や映画かみたいな感じで、

燃え盛る火柱の前で全身で印を切りまくり、

手にした経文をバサバサと広げたりたたんだり、

鬼気迫る表情で読経してた

この辺りの凄まじさはもう俺の貧弱な文章力では

表現しきれないのが惜しい

経文で頭と言わず肩と言わずバシバシバシバシ叩かれ、

除霊はその後一時間ほどで終わった

終わったら住職汗だくだった。

俺と姉もメロメロになってた

住職は汗だくの顔で

「できる限りのことはしました」

と爽やかに、しかし確実な声で言った

正直そのできる限りのことが

本気すぎると姉も俺も思った

住職はその後

落ち着きを取り戻したようで、

俺に取り憑いていた幽霊氏の話を始めた

どうやら二人憑いてたそうで、

一人は髪の長い、耳だけ出した女の人。

もう一人は頬が痩け、

帽子を被って杖をついた爺さんだったそうだ

心当たりはあるかと聞かれたが、

そのような人物にはどちらにも心当たりはなかった

ちなみにこの幽霊氏の素性は、

最初におばさんがジャラジャラやってた占いで、

「見えた」

というより

「占ったらそう出た」

ということだった

住職は

「まぁ被災者の幽霊は今後もこちらで慰霊しますので、

 写真取らせてください」

と写真を撮ってくれた

その後住職は


「何かあったらいけないから」と、

数珠、不動明王真言、御守り、交通安全御守り、


拭き取り、御札、祈祷された水と菓子、

そして枕元に置いて寝る御守りまでくれた

正直はした金程度のゼニを惜しんだ自分が

強烈に申し訳なくなるぐらいのアフターサービスに

この寺がなんで地元で有名なのかわかった気がした

しかし帰り際に住職が一言、

「不動明王の護摩行って

 洒落にならんぐらい強烈なので、

 後で反動が来るかもしれないです。

 個人差はありますけれど、

 何かありましたらまたご連絡ください」

と言った

俺はこの一言をそれほど気にしてなかった。

俺と姉は丁寧にお礼を言って家に帰った

あんな下ヨシ子氏がやるような除霊だとは

想像だにしてなかったので疲れた

帰り際、姉と

「正直本気すぎた」とか

「あの価格であのサービスは破格の安さだ」

と好き勝手言いまくった

でもまぁ除霊できたので心は軽かった。


本当に

「憑き物が落ちたように」

意気揚々とアパートに帰った

アパートを掃除して、

住職に言われたとおりに御札を南向きの窓に向けて、

水を一杯お供えした

その日はかなり安心したので、

俺はアパートで焼酎を煽りまくった

寝不足が続いていたので酒が美味かった。


もう記憶飛ぶぐらいに煽ってその日は寝た

そしたら次の日、背中の痛さで目が覚めた

最初は「寝違えたかな」と思って気にしてなかったが、

会社に行くにつれてどんどん背中の痛みは増した

胃も痛くなり、

そのうちほぼ仕事にならんぐらいの激痛になった

先輩社員には

「お前それ急性膵炎じゃないか?」

と指摘されて怖くなって、

時間を貰って顔見知りの開業医に駆け込んだ

医者様のところに行くと首をひねられた。

医療系の仕事なんで

その先生とは顔見知りだったんだが、


採血されても触診されても結果が出ない。

なにかが体の何処かで起きていることは

明らかだったんだが、

膵炎にありがちな吐き気や下痢、

押したら痛いとか、

そういう確実な証拠が出なかった

結局胃腸炎の薬をもらってその日は早退した。

で、次の日も会社で具合が悪くなり早退させてもらった

早退してアパートの部屋で考えた。

これが護摩行の反動かなとよく考えたが

いくらなんでも祟りレベルの激痛だと思った

仏教には少し知識があったんで考えた結果、

どう考えてもたらふく酒飲んだこと以外の

原因が思い当たらなかった

そういえば不動明王は仏教五戒を守る仏なんだよなぁと

思った時、


不飲酒戒という単語がぼんやり頭の中に出てきたとき、


あぁこれかもしれんと本気でそう思った

いくらなんでもお不動様を部屋にお迎えしたその日に

飲んで飲んで飲み散らかしたのはまずかった

せめて一週間ぐらいは精進しろよと怒られたんだ

という結論に俺の中で達した



オカルト大好きな上に仏教に多少明るかったこと、

この一週間の霊現象でそちらの世界のことについて

謙虚になっていたせいもあり、


部屋にお迎えした御札と、

和紙に描かれた不動明王に

取り敢えず謝ってみようと思った


手を合わせて住職から教えられた

不動明王真言を唱えながら

「すみませんでした、酒は程々にします」

と寝る前に必死に謝ってみた

そして20日の日。

朝起きたら背中の激痛はウソのようになくなってた

いやホント。

快調すぎて今まで十円ハゲ出来そうな程だったのが

ウソのように平静を取り戻した

後で件の医者様のところに結果を聞きに行ったが、

結局原因不明の胃腸炎で片付けられた

やっぱり不動明王に怒られてたんだなと

俺は勝手に納得することにした

そして現在。

どうやら軽く風邪引いたみたいだけど、

何ごともなくなった

今も不動明王真言を唱えながら寝てるけど、

あれから変なことも起きなくなった

皆、遊び半分で被災地には行くなよ





posted by kowaihanashi6515 at 21:07 | TrackBack(0) | 洒落怖

渓流釣り【怖い話】





大学時代に友人から聞いた話。

釣りが大好きだった友人は

その日も朝から釣りに出かけていた。

場所は川の上流域で、かなりの山奥である。

ここから先は、

友人の語り口調で書かせていただきます。


「車で行ったんだけど、途中からは獣道すらなくてな。

 仕方なく歩いたんだよ。かなりの悪路だったな。

 崖も越えたし、途中クマが木をひっかいた痕もあったな。

 で、やっと釣れそうなポイントにたどり着いてな。

 早速、そこらへんの石をひっくり返して川虫を集めたのよ。」


俺「餌ぐらい買えばいいのに。」


「いや、現地でとった餌は食いつきが違うんだよ。

 何よりとるのも楽しいしな。」

俺も現地で餌を調達したことがあるが、

あの作業は虫が嫌いな人間にとって地獄である。


それ以来、俺はもっぱらイクラ派だ。


そんなわけで不本意ながら同意し、

話の続きを催促した。


「虫を確保して、早速釣り始めたんだ。

 そしたら面白いぐらい釣れてな。

 ものの3時間で十五、六匹は釣れたんだ。

 でも朝まずめが終われば

 流石に途絶えるだろうなって思ってたのよ。」

知ってる人も多いと思うが、

釣りは朝と夕方の「まずめ時」が最も釣れる。


「けど爆釣モードは昼を過ぎても全く終わる気配がない。

 生涯で最高の一時だったね。

 時がたつのも忘れて夢中になったよ。

 気付いたら辺りは薄暗くてな。

 もう夕方になってたんだ。
 
 身の危険を感じて、帰り支度を始めたんだよ。

 ふと背後に気配を感じて振り返ったら、

 小さい女の子が背を向けて立ってる。

 少し近づいて

 「こんなとこで何してんだい?」

 って聞いてみたんだよ。

 振り向いた顔を見てギョッとしたね。

 顔がお婆さんだったんだよ。

 しかも、顔がひきつるぐらい満面の笑顔だったんだ。」

俺もギョッとした。


「でも病気か何かだと思って、同じ質問を繰り返したんだ。

 今度は丁寧語でな。

 そしたら笑顔を崩さないまま、

 「いつまで」

 ってつぶやいたんだよ。何回も。

 キチ〇イだったんかなあと思って、

 軽く会釈して帰ろうとしたんだ。


 そしたら、急に婆さんの声が合成音声みたいになって、

 「いつまで生きる?」

 って言ったんだよ。

 背筋がゾクッとして、

 こいつはこの世の人間じゃないと思ってな。


 凄い勢いで下山したんだよ。

 途中、婆さんのつぶやく声が何度も聞こえた。

 薄暗い山奥でだせ?発狂寸前だったよ。

 あ〜あ、最高のポイントだったのにもう行けねえなぁ…。」


俺は自分の膝がガクガク震えているのを感じた。


話の途中から友人は気持ち悪いほど満面の笑顔だったのだ。

それからしばらくして友人は自殺した。







posted by kowaihanashi6515 at 21:04 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月26日

窓から見える高い煙突は何だ?【怖い話】





数年前のことですが、
私の職場にKさんという人が転勤してきました。


Kさんは、私と同じ社員寮に住むことになったのですが、

しばらくして、私と雑談している時に、


「寮の窓から見える高い煙突は何だ?」


と訊いてきました。

その時のKさんは心なしか青ざめていたようでした。


私には心当たりはなかったのですが、

同じ社員寮でも、私とKさんの部屋は離れていましたし、


Kさんの部屋の窓から見える風景と、
私の部屋から見える風景が同じとは限りません。


それに私もその土地では余所者でしたし、
詳しい地理を知っていたわけでもありませんので、


銭湯か何かの煙突でしょう、と適当に話を合わせ、
その話はそれきりになっていたのです。



ところが、それからひと月ほど経って、
Kさんが寮から程近い住宅街で死んでいるのが
発見されました。


死体の状態は無惨なものだったそうです。


奇妙なことに、Kさんはかなり高い所から、
墜落して死んだらしいのですが、


Kさんの遺体が発見された付近は、
住宅ばかりで墜死するほどの高所は見当たりません。


とはいえ、自動車事故でもなく、
他殺の疑いはまったくなく、
結局事故死として処理されたようです。



さて、私はKさんの本葬に参列するため、
Kさんの郷里を訪れました。


Kさんの郷里というのは、
九州のある海辺の町だったのですが、


遺族の方の車に乗せてもらって、
Kさんの実家に向かう途中、

海沿いの道路に差し掛かった時、
現れた風景に目を奪われました。


そこには、古びた工場に、
巨大な煙突が立っていたのです。


遺族の方によると、
それはお化け煙突と言われる煙突で、


かなり昔から町のシンボルとして
そこに建っているそうです。



私は何となく、
Kさんが寮の窓から見た煙突というのが、
この煙突ではないかと思えてなりませんでした。




ところで、
私は最近たいへん不安な日々を送っています。


私の寮の部屋の窓から、
高い煙突が見えるようになったのです。


心なしかKさんの郷里で見た、
あのお化け煙突に似ているような気がしました。


煙突はかなり遠くに見えますので、
以前からあったのに気づかなかった
可能性もないとは言えません。


また、最近になってできた
建造物かもしれませんが、


私にはその煙突が最近になって
忽然と現れたようにしか思えないのです。



職場の同僚に訊いてみても
あいまいな答しか返ってきません。



私には、あの煙突の近くまで行って
確かめてみる勇気はありません。


皆さん、お願いです。

今すぐあなたの家の窓から、
外を覗いてみてほしいのです。


それまで見たこともなかった煙突が
見えるということが、
あったら教えてほしいのです。




いったいそんなことが、
あり得ることなのでしょうか?



posted by kowaihanashi6515 at 18:23 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月25日

中つ森の山神様【集落・山・神様の怖い話】





これから話すことは、私が体験した出来事です。


もう30数年以上も前の、
私が小学生だった頃のこと。

祖父の家に遊びに行った時の出来事だった。


寒くて凍てつきそうなこの季節になると、

昨日の事の様に記憶が鮮明に蘇る。



学校が夏休みや冬休みになると、
私は父親の実家でもある祖父の家に、
毎年の様に長期で預けられた。


ひと夏・ひと冬を祖父と必ず過ごしていた。


あの年の冬も、
祖父は相変わらず太陽の様な愛情に満ち溢れた
優しい笑顔で私を迎えてくれた。


祖「よう来たなK(私の名前)。
少し大きくなったか?」


私はたまらず祖父に抱き着き、
いつもの様に風呂も寝る時も一緒に過ごした。


祖母は随分前に他界しており、
祖父は一人、小さな家で暮らしている。


祖父もきっと、私が訪れるのを
毎回とても楽しみにしていたに違いない。


祖父の家は、
東北地方の山間に位置する集落にある。


私は毎年祖父の家を訪れる度に、
冒険するようなワクワク感に駆られていた。


当時、私は都心の方に住んでいたので、
祖父の住む土地の全てが新鮮だった。


清らかに流れる川や、雄大な山々、
清々しい木々など、神々しく感じる程の
素晴らしい大自然が、私は大好きだった。


特に冬になると、雪が降り、
辺りは一面キラキラ光る銀世界で、
都心では滅多に見れない光景だ。


そんな中でも、
なにより私は祖父が大好きだった。


いつも穏やかで優しく、
決して怒るということはしない。


その穏やかな性格と屈託のない笑顔で、
祖父はたくさんの人たちから愛されており、


花がパッと咲いた様に、
祖父の周りはいつも笑顔が絶えなかった。


また、祖父は農業の他に
マタギ(猟師)の仕事をしており、
山の全てに精通していた。


大自然と共に生き、また、生き物の命を奪う、
マタギという仕事をしているが故に、


誰よりも命の尊さや、
自然の大切さと調和を何よりも重んじている人だった。




祖父の家に滞在してはや一週間経った
そんなある日の朝、私は集落の友人
AとB2人と秘密基地を作りに出かけた。


私「いってきまーす!おじい、
おにぎりありがとう!」


祖「おお、気をつけるんだぞ。
川に落ちないようにな。
あまり遠くに行くんでねぇぞ。
あ、ちょっと待てK」


私「なに?」


祖「ええか、K。何度も言うが
“中つ森”にだけは絶対に行ったらいかんぞ。
あそこはおじい達も近づけん場所だからな。

わかってるか?」


私「うん、わかってるよ」


祖「それと・・なんだか今朝から
山の様子がおかしくてな。


鳥がギャーギャーうるせぇし、
それでいて山の方は妙に静かなんだが、
変に落ちつかねぇ。


おめぇにあんまり小うるせぇ事は
言いたくねぇけど、こんな日はなるたけ
山の奥には行くんでねぇぞ」


私「はーい」


その日はこの時期には珍しく雪が降っておらず、
よく晴れた日だった。

それ以外は何も変わらない、いつもの朝だ。


だが、この時私はまだ、
祖父の言っていた言葉の意味が
よくわからなかった。


ところで“中つ森”というのは、
この山の中のある一部の森で、


『そこには絶対に行ってはいけない』

と、祖父から常々言われている場所だった。



近づいてはいけない理由は、
なんでも“中つ森”はこの山の神様である
“山神様”を奉ってある神聖な森であるから、

決して立ち入ってはならないのだとか。


もし山神様に会ってしまうと、
命を吸われたりだとか、

はたまた生命力を与え、
一生健康に暮らせるだとか、
色々な話があるようだ。


『命を奪いもすれば与えもする、
この山そのものの神様』

と祖父は言っていた。


もっとも、私はもともとここの人間ではないし、


“中つ森”の場所がどういう場所で
どこに存在するのかも、
いまいちわからなかったので、

祖父の言うことはよくわからなかった。



そして私は友人たちと合流し、
山に到着したあと、秘密基地を作る場所を探した。


A「さてどこで作るか?」


B「俺達の秘密の隠れ家なんだし、
もう少し奥にいこうよ」


私「大人に見つかったら隠れ家の意味ないもんね」


私達は更に山奥に進んだ。


30分ほど歩くと、
雑木林の中に丁度良い開けた場所があり、


そこに秘密基地
(秘密基地と言ってもかまくらだが)
を作ることにした。


そして昼も過ぎ、
昼食をとりながら基地作りに没頭していた。



日が暮れかけている夕方になった頃、
Aは落ち着かない様子で林の奥の方を見つめていた。


私「どうしたの?」


A「・・なんか、山が変な感じだ。いつもと違う」


私にはAの言ってる意味がよくわからなかった。


私の目に映るのは、別にいつもと変わらない、
ありふれた山の光景だ。


ただ、確かなことは、
Aの言っていることは祖父の言っていたことと
重なっていた。


私「どういうこと?」


A「俺もようわからんけど、なんかこう・・
山がゆらゆら揺らめいてる感じだ。


  吹いてくる風もなんか変なんだ。
寒くもないし暖かくもないし・・ほら、見れ!」


Aが指さした森林の奥を、
鹿が5,6頭群れをなして走り去った。


そして続くように、鳥の群れも、
何かから追われるように騒ぎ立てながら
私達の上を飛び去っていった。



B「今の時期、鹿はもっと上の奥の方に
いるはずなのにどうしてだ?

熊から逃げてるのかな?
それだったらまずいぞ」


A「いや、この辺りは村のおじい達(マタギ)が
仕切ってるから、熊は絶対近寄らんて。

  やっぱりなんか変だよ、もう今日は帰ろう」


B「そうだな、今日は帰った方がよさそうだ。
遅いし」



まだまだ遊べたが、私達は早々に帰ることにした。


この時なんとなく嫌な感じがしたのをまだ覚えている。



帰路について20分ほど歩いたが、
どうも周りの様子がおかしかった。


B「なぁ、こんな所通ったか?
来る時こんなでけぇ岩なかったろ」


A「うん、右行ってみるか。
あっちだったかもしれん」


しかし右へ行っても違かった。

私達は完全に迷っていたのだ。


私はともかく、AとBにとってここは地元の山だ。

しょっちゅうこの辺りで遊んでいる。


二人にとっては庭の様な所で、
決して迷う様な場所ではなかった。




もうどれほど歩いただろうか。

時間も距離も、
今どこにいるかということさえも、
私達にはわからなかった。


まるで同じ場所を
グルグル回っているかの様に思える程に。

途方に暮れてしまった。


私達はいつのまにか深い森に入ってしまっており、

冬という日照時間が短い季節のせいなのか、
森の木々が太陽を遮っているのかわからなかったが、

辺りは段々暗くなっていた。


いつのまにか雪も降りだし、
寒さも増し、子供心に不安が募る。


更にしばらく歩くと太陽は沈みかけ、
村役場の17時を知らせる鐘が鳴り響いた。


私「もう17時だよ。ここどこ?」


A「わからん。でもおかしいべ、
 あんな浅い場所で迷うなんて」


B「こんなに遅いと
 オド(父親の事)に怒られるぞ。早いとこ帰ろ」


しかし私達は疲れ果て、適当な場所に腰を下ろした。


祖父の村では、
子供に必ず懐中電灯を持たせる慣わしがあった為、
幸いにも私達は3人とも懐中電灯を持っていた。


B「疲れたなぁ。さみぃし。腹も減ったな」


私「ねぇ、なんかあそこにあるよ」


私が懐中電灯を照らした先に、
色の剥げた大きな鳥居があった。


私達は恐る恐る近づき、鳥居をくぐると、
荒れ放題の石畳を歩いた先に、
小さな祠(ほこら)の様な物があった。


祠の前には、米や瓶に入った水(恐らく酒)が
供え物がしてある。


その両脇に、卒塔婆の様な物に
漢字がたくさん記されてあった。

それをどう読むのか、私達にはわからなかい。


それを見た途端、
AとBはギョッとしたように顔を見合わせた。


A「まさか・・ここが
“中つ森”っちゅう事はねぇよな?」


B「いや・・俺も“中つ森”さ行った事ねぇし、
場所もよう知らんからわからんけど・・

  この山に神社みてぇのがあるなんて聞いた事ねぇぞ」


私「“中つ森”ってそんなにマズイ場所なの?」


B「そうか、おめぇはよそ者だからな。
でも、こんな話はオドから聞いた事ある」


私「なに?」


B「簡単に言うと、
“中つ森”は山神様っちゅう、
山の神様が住んでる場所で、

  村の人間でも絶対に入っちゃならねぇって
場所なんだ」


私「それは知ってるよ」


B「なんでもその山神様ってのが、
えれぇ短気な神様で、

  人が“中つ森”にいるのがわかると
山神様は怒って、手足を引きずって
どこかに連れてっちまうんだ。


  これを大人達は、
“神隠し”とか“祟り”って呼ぶ」


私「・・どこかって、どこに連れてかれるの?」


B「それはわからん。とにかく“神隠し”に遭うと、
大人でも見つけられねぇんだ。
大人にもわからないどこかに・・」


ゴォーッ


ゴゴゴゴ・・・・・・・・


Bがそう言いかけた時、
今まで聞いたことのないような耳をつんざく
轟音が鳴り響いた。


B「うわーっなんだ!?」


A「山が揺れてるっ!」


山が全体が揺れはじめたのだ。


私達は堪え切れずひっくり返り、
訳がわからないまま雪の上に転がったり、
必死で木にしがみついたりした。


山が揺れだしてから2〜3分経っただろうか。

揺れはようやく収まり、地鳴りも止み、
辺りは再び静寂さに包み込まれた。


私達は呆然としたまま、その場に座り込んでいた。


A「・・・今の・・何だったんだ」


私「わかんないよ・・地震かな・・」

と私が言ったその時、


・・デテイケ、デテイケ、デテイケ デテイケ


突然、耳元で誰かが囁いた。



男なのか女なのか判らない声。


いや、耳元というより、
直接頭の中にスッと入ってきた様な、
そんな感覚だった。


ただ、いやに冷たい声だった。


この瞬間を、今でも私ははっきり覚えている。


全身に鳥肌が立ち、
一瞬時が止まったかの様に思えた。


A「今、聞こえたか?」


聞こえていたのは私だけではなかった。


私達3人は互いの顔を見合わせ、
がむしゃらに走った。


B「いけん!ここ、やっぱり“中つ森”だ!
さっきの地鳴りも山神様の祟りだ!

  俺達が“中つ森”に入っちまったから、
怒ってんだよ!

  早く逃げんと山神様に命吸われちまう!」


A「早く!早くしないと!」


もう、本当にこの時は頭の中が
グチャグチャで訳がわからなかった。


とにかく暗闇の中、私達は走り続けた。

何度も転んだり、木々の枝等が顔にたくさん
ぶつかっても気にしなかった。


走っている方向も、帰り道かなんてどうでもいい。
とにかくあの場から逃げ出しかった。




そして私は足を止め、
ゼェゼェと息を切らせながら
思いきり空気を吸い込んだ。

体力の限界だった。もう走れない。


立ち止まると、AとBはいなかった。

先程の騒ぎではぐれてしまったのだ。


おまけに懐中電灯もどこかへ落としてしまい、
私は不安で顔が涙でグシャグシャだった。


私「ハァハァ・・・二人ともどこー?」


疲れ果て、いよいよ心細くなった私は、
立っていることさえもままならず、
木に寄り掛かるようにして座り込んでしまった。



いつの間にか降ってくる雪は激しさを増し、
吹雪に変わっていた。


吹き付ける雪が私の体にまとわり付き、
容赦なく体温を奪う。


手足の感覚はなく、
私の小さな体は完全に力尽きてしまっていた。


急激な眠気が襲ってきた。


もうダメかもしれない。


そう思った時、


ザっ・・ザっ・・


私の後ろの方から
雪を踏みしめる足音が聞こえて来る。


ゆっくり、ゆっくりと。


吹き荒れる風の音の中、
何故かハッキリと聞こえたのだ。


足音の主の姿はこの暗さで全くわからなかったが、
暗闇の奥から誰かが静かに歩み寄ってくる。


さっきまで体の感覚が全て鈍っていたのだが、
まるで研ぎ澄まされた様にわかる。


急に意識がハッキリとしてきた。
不思議な感覚だった。


こんな夜に、こんな場所で誰が?


山神様が跡を追ってきたに違いない・・・。


そんな事を考えると震えが止まらなかった。


逃げなきゃと思っても、
体が金縛りにあったみたいに
ピクリとも動かなかった。


私の心臓は爆発しそうなくらい
バクバクと高鳴っていた。


自分の心臓の音で居場所がばれるんじゃないかと思い、
必死に胸と口を抑えた。


ザっ・・ザっ・・ザっ・・


徐々に近づいてくる足音に、
私は怯えながら自分の服をギュッと握りしめていた。


もう足音は、私のる木の真後ろだった。


すると、ピタッと足音がやんだ。


私は息すらも止めていたんじゃないかと
思うくらいに、背筋を伸ばし硬直していた。



それから何分、何十分経っただろうか。


私の身に何も起きない安堵感から、
緊張の糸がプツッと切れたように、
息を大きく吸って吐いた。


もう大丈夫かな・・・


私は意を決して、後ろを振り向いた。


だが何もいなかった。

相変わらず轟々と吹雪が唸りをあげてるだけだった。


なんだったんだろう。よかった・・・


私は安心し、首を元の位置に戻した。


だが、――――――ッッ!!


私は目の前の光景に絶句した。


真っ白な着物を着た女が、
私を見下ろしていたのだ。

その距離は1メートルもなかっただろう。


記憶が曖昧だが、
身長は2メートル以上あったと思う。

手足が異様に長かった。


私は目の前の光景を理解できずに、
ただガタガタ震えていた。


月明かりに照らされたその無機質な表情と姿は、
まるで雪女を思わせる様な不気味さを醸し出していた。


女は私と目が合うと、
私の顔にまで大きく身を乗り出し、
顔をのぞきこんだ。


女は私の顔をのぞきこみながら、
ニンマリと笑いを浮べている。


とっさに目を閉じようとしたり、
顔を背けようとしても、何故か体が言う事を聞かず、
女は真っ直ぐ私を見つめていた。


まるで蛇に睨まれた蛙の様に、
私ただ震えそうになる全身を必死で押さえつけた。


ちらりと見えてしまったその顔の恐ろしい事。


前髪と肩から垂れる長い黒髪。

そして長髪から覗かせる血走った目と、
血の気のない唇がニヤッと不気味に歪む。


怒っているのか、喜んでいるのか、
はたまた悲しんでいるのかという事など、
その表情からは伺う事ができなかった。


そして女は唐突に、私の右手首をぐいっと掴んだ。


あまりの恐怖に、私は小さく「ヒッ」と漏らした。

物凄い力で、ぎりりと腕が痛むほどだ。


私「痛いっ、痛いっ」


私はたまらず叫び、
その手を振りほどこうともがいた。


だが寒さのせいか、恐怖のせいか、
身体は上手く動かず、力を入れることが出来ない。


喉に何かが張り付いているように、
あげたはずの叫びも声にはならなかった。


私はそのまま引きずられ、
女は無情にも私をどこかへ連れて行こうとする。


・・ズルっ・・ズルっ・・


引きずられながら私は女の方をちらっと見ると、
月明かりと雪の反射に照らされ、
恐ろしく不気味な顔だった。


相変わらずニヤニヤし、
私と目が合うとまたニンマリと嬉しそうに笑う。


ズルっ・・ズルっ・・


山神様に連れてかれるんだ。

薄れゆいて遠のく意識の中、私はそう思った。


しかし、どこからか
大好きな祖父の声が聞こえてくる気がした。




私が目を覚ましたのは、
それから2日後の事だった。


気がつくと、目に入ってきたのは
見慣れた天井だった。


私は祖父の家で布団の中にいた。


体にうまく力が入らない。


夢だったのかな?


そうボーッとしていると、

「目が覚めたぞ!」「無事だぞ!」

という声が聞こえ、

バタバタと廊下を走る騒がしい音した。



ちらっと横を見ると、
村の大人達数人が部屋にいる。


「K!」


私の名前を呼ばれる先に目をやると、
祖父がしわくちゃな顔をさらにくちゃくちゃにし、
私に抱き着いた。


祖「よかった!本当によかった・・・
生きていてくれて本当に・・よかった!」


祖父はそう言い、
目を真っ赤にしながら私の頬を撫でてくれた。


私には何が何だかわからなかったが、
ただ、この時祖父のぬくもりを感じて、
とても安心したのを覚えている。


ふと、私は妙な感覚に気づいた。

右手の感覚がないのだ。


恐る恐る右手を布団から出して見てみると、
何と右手首から上が無くなっていた。


包帯が巻いてあるが、私の“手”は姿形もない。


あの女に掴まれた部分が無くなっている。


再びあの夜の恐怖が私の中に蘇った。


私はパニックになり泣き出し、手に負えなかった。




祖父や他の大人達が私を落ち着かせ、
状況がよく理解できていない私に、
祖父は順を追ってゆっくりと説明してくれた。




あの日の2日前の夕刻、
祖父や村の人達はまだ帰らない私達が
山で遭難した事に気づき、


大人達が慌てて捜索に行こうとした時に突如、
不気味な地鳴りが響き渡り、間髪入れず地震が起きた。


村の電柱は倒れ、近くの道路では地割れも起き、
村では大変な騒ぎだったという。


更に追い討ちをかけるように、
地震の影響で私達がいるはずの山から
大規模な雪崩が発生し、


集落の村では山の側にあった
3棟の家が雪崩によって半壊し、
何人かの人が亡くなったり
怪我をしたりしたのだと。


しばらくして青年隊も駆け付け、
山狩り(私達の救助)を行おうとしたのだが、


しかし外は猛吹雪で大荒れだった為、
二次災害(二重遭難)を防ぐ為に、
捜索は次の日の明朝という事になったのだった。


当然の事ながら、あの大規模な地震と雪崩で、
もう私達の生存の可能性は薄いと見ており、

友人A、Bも2人同じ場所で凍死した状態で発見された。


私は瀕死の状態だったが、
“中つ森”の山神様の祠に寄り掛かるようにして
意識を失っていたという。


また不思議なことに、幸いにも
“中つ森”には雪崩の被害は及ばなかったらしい。


とにかく、あのような大惨事だったに関わらず、
子供が命を取り留めたのは奇跡なのだという。


しかし、発見時には
私の右手は重度の凍傷により壊死してしまっており、
手首を切断せざるを得なかったのだと。




道に迷い、知らぬ間に“中つ森”に入っていた事、
その突如地震が起きた事、不気味な声が聞こえた事、

女に右手を掴まれどこかへ引きずられた事・・・


私は祖父に、
自分の身に起きた全てのことを記憶の限り話した。


すると、祖父はぽつりぽつりと語った。


祖「ほうか・・・山神様はお前を守って下すったんだな。

  山神様ちゅうのは、この山の生と死を司る神様だ。


  山神様には気まぐれな所があってな、
わしらが生きる為の“命”を与えて下さるが、
時に激しく牙を剥く時もある。


  山神様はお前の命を助けようと、雪崩の来ない
“中つ森”に運んで下すったんだよ。


  本当は死んじまう所を、
手一本で済ましてくれたんだ。

  AとBは・・気の毒だが」



私「なんで僕だけ助けたの?
AとBはどうして助からなかったの?」


祖「それはおじいにもわからん。
  山神様は気まぐれだからな。お

  じいも、AとBの事は本当に辛いと思っとる。

  だがな、K。山神様は決してAとBを
  助けなかった等と思っとらん。


  ただ、時として人間も自然界の力には
  敵わん時もあるっちゅう事だ。わかるか?


  人間だって、自然界の一部の生き物だ。

  鹿や熊、虫と変わらん同じ命を持ってる。


  山神様は人間だからっちゅう理由で特別扱いはせん。


  ・・・だが、未来のある子供が
  亡くなったっちゅう事は・・本当に悲しいがな」



そう言って、
祖父は悲しげに私の右手を優しくさすった。


この時、私には祖父の言っている意味が
よく理解できなかった。




そして月日が経ち、あの時の事故があってから
両親と祖父の間で色々あった様で、
祖父とは何となく疎遠になってしまった。




私が大学に入学した年の初冬に、
祖父は亡くなった。享年96歳。


村に初雪が降った日の朝、
隣の住人が様子を伺いに行くと、
静かに息を引き取っていたという。


苦しんだ様子もなく、眠っているような、
穏やかな死に方だったらしい。


葬式に参列した時、
祖父の変わり果てた姿に私は言葉が出なかった。




祖父が亡くなってからしばらくして、
10数年振りに祖父の所を訪れた。


だが、村は市と合併してしまい、
アスファルトに舗装されコンビニ等もできており、

私の記憶にある祖父の村とはかなり違っていた。


山も開発で穴だらけになり、
あの綺麗な小川や沢山の森や木々は姿を
消してしまっている。


私はなんだかやるせない気持ちに襲われた。




歳をとった現在、
当時の事を時々振り返る事がある。


あの時は幼くて理解できなかった事々が、
今ではなんとなくわかってきた様な気がするのだ。


私が遭難したあの日、
祖父は山で何かが起こると
予感していたのではないのか。


長年あの山でマタギを生業としている
祖父の研ぎ澄まされた“五感”が、
何らかの異変を感じとっていたに違いない。


そして、“中つ森”の山神様。


今思うと、あの時聞こえた
“デテイケ”という言葉は、

『雪崩が起きるから早く逃げろ』

という警告ではなかったのだろうか。


また、後からわかった事だが、
山神様というのは山の化身であり、精霊であり、
山の命そのものなのだという。


滅多に人前に姿を現さないが、伝聞によると、
女性や白蛇、時には白狐の姿で現れると
言われているのだとか。


山神様を信じ、敬意を払っていた人間は、
死ぬと自然に還って山神様の一部となり、

そして山の命は育まれ、大自然の中を巡り巡って、
また生まれ変われるのだと。


祖父の地域では古来より崇められており、
今でも毎年時期になれば山神様を讃える祭りが
行われている。


昔の人々は大自然と共に生きるが故に、
時折起こる天災や不幸な事故に畏怖し、
山神様を奉る様になった。


また、川や山で採れる命の恵みに感謝し、
山神様(大自然)に敬意を抱いていたのだろう。


私はあの時、偶然にも山神様に救われた事を、
夢や勘違いだとは決して思わない。


今だって、あの山の命としてどこかで
何かを見つめているに違いない。


春の陽気の様に優しい時もあれば、
冬の極寒の様に厳しい時もある様に。


祖父もあの山のどこかにいるのかと思うと、
何だか不思議な気持ちになる。


“中つ森”は開発されてしまい、
山神様の祠はどこかの神社へ移送されてしまった
と聞いた。


山神様はあの変わり果てた山々を見て
何を想っているのだろうか。


ツルツルの右手を眺めながら、私はそう思った。






2018年10月22日

家族っぽい何かども【異世界・ 怖い話】






先週のことなんだけど、小三の俺の弟が体験した話。

弟はその日、
学校終わって一度うちに帰ってから仲のいい友達と一緒に
近くの公園で遊ぶことにした。


夕方になってかくれんぼしていたら、
珍しいことに父、母、俺の家族全員が揃って
その公園まで迎えに来た。


それが弟には結構嬉しかったらしく、
かくれんぼを途中で切り上げて、
友達に一声かけて俺らと一緒に帰った。


家に着いて宿題し始めると、
これまた珍しく俺が弟のそれを見てやった。

宿題やってる間も色々と
ゲームの話だかなんだかの話で盛り上がったりして、
機嫌のいい俺はずっと弟の傍にいた。


やがて夕食の時間が来て、
母が1階のダイニングから声を張り上げた。

俺達の部屋は2階だったので大声で返事して下へ降りた。

なんでもない日なのに夕食はご馳走で、
弟の大好きなハンバーグとかが並んでて、

寡黙な父も、
さっさと平らげてしまった弟に
俺の半分食うか?とかかなり気を配ってた。


そんな中、
いつも見てるアニメの時間になったので
テレビをつけると 何故か砂嵐で、

チャンネルを回してもテレビはザーザー言うばかりだった。

すると突然母がリモコンを取り上げ、テレビを消した。

その顔がニコニコしてたので、ちょっと不気味だった。


夕食も終わると、やっぱりニコニコしながら

母が「ケーキ買ってあるの」

父が「一緒に風呂入るか?」

俺は「新しいゲーム買ったんだけど」

と銘々に魅力的な提案をしたんだが、
そこで弟は悪戯を考えた。

優しくされると意地悪したくなるとかいう
天邪鬼的なもので、トイレ行ってくると言って
帰って来ないという、まぁガキらしい発想だった。


うちのトイレは鍵をかけるとノブが動かなくなる仕組みで、
ドアを開けたまま鍵をかけてそのまま閉めると、
トイレが開かずの間になってしまうのだ。

この家に越して来たばかりは弟が良く悪戯して、
頻繁に10円玉をカギ穴に突っ込んでこじ開けるということがあった。

で、弟はその方法でトイレの鍵を閉めて、
自分はトイレの向かい側の脱衣所の床にある
ちょっとした地下倉庫に隠れて、
呼びに来た家族を脅かそうとした………らしい。



らしいというのは、

実は弟は、公園で友達と別れた後、
行方が分からなくなっていたのだ。

弟はかくれんぼ中に、
突然帰ると声を張り上げてさっさと帰ってしまったので、
誰かが迎えに来たかどうかは誰も見ていないらしかった。

日が暮れても何の連絡もない弟を俺達は心配して、
警察にも捜索願を出して、町内のスピーカーで呼びかけもした。

父親は弟の友達の家に電話かけてたけど
あんな取り乱したのは初めて見たし、
母親なんか早々に泣き崩れてた。

俺はというと、
弟が遊んでたいう公園の周りで聞き込みして探しまわってた。

マジで終わったかと思った。


一方弟は、例の地下倉庫に隠れている時に、
自分を探しているという町内放送を聞いてしまった。

困惑していると、
突然ダイニングの勢いよく扉が開かれて、
3人がぞろぞろとトイレの前に歩いて来て、
またさっきみたいに

「ケーキ買ってあるの」

「一緒に風呂入るか?」

「新しいゲーム買ったんだけど」

と声をかけた。

そのトーンがまったく同じだったらしく、
弟もただならぬものを感じてその様子をこっそり見てた。


すると3人はまた、

「ケーキ買ってあるの」

「一緒に風呂入るか?」

「新しいゲーム買ったんだけど」

と言いながら、
トイレのノブをガチャガチャ言わせ始め、

そのうちドアを叩き始めて、
ついにはドアをブチ破りそうな勢いの、
すごい音が鳴り響いた。

弟はもうそこでガクブルで、
見つかったら絶対殺されると思ったらしい。



時をおかずドアが破られて、いやな静寂が流れた。

やがてその家族っぽい何かどもはさっきの、

「ケーキ買ってあるの」

「一緒に風呂入るか?」

「新しいゲーム買ったんだけど」

を繰り返しながら2階に上がって行った。

弟は弾けるようにで地下倉庫を飛び出し、
家の玄関から靴もはかずに全力疾走で逃げ出した。



無我夢中で走って、着いた先はかくれんぼをしてた公園だった。

公園にはまだパトカーが止まっており、
聞き込みをしてた警官に泣きついたらしい。

その連絡を受けて、近くにいた俺がかけつけて、
無事に弟は見つかった。


その時に弟が警官に話した内容を
こうしてまとめているわけだが、

当然警官は信じないし、別に弟は見つかったし、
プチ家出として片づけられてしまった。


だが、それから家に帰ってくるなり
真剣な顔でテレビのチャンネルを回し始める弟を見ると、
とても出まかせとは思えない。






posted by kowaihanashi6515 at 14:58 | TrackBack(0) | 洒落怖

御巣鷹山を登山中に方角を尋ねてきたスーツの男性【不思議な話】





体験談じゃないけど…
俺の部の先輩(かな?)の3年前の話。


サークルの一環でオスタカヤマに登ったときの事。

2人一組のチームで3チームに分かれて
山小屋を目指すものだったらしい。


先輩は友人と一緒にゆっくり時間を掛けて
登るルートを取ったため、

後一時間ほどで日没andゴールの所だった。


ふと顔を上げると場にふさわしくない
スーツ姿の30代の男性が立っていた。


おかしいな、

と友人と顔を見合わせ
その男とあいさつを交わそうとすると

男の方からさわやかにあいさつがきた。


「こんにちは、暑いですね。」

確かにあたりは日が落ちたとはいえ夏場、
確かに暑いがスーツ姿は大変暑そうに見えたらしい。


だが先輩は東京出身で標準語なので、
その男の姿はともかく
言葉遣いに好感を持ったそうだ。


先輩がその男に話し掛けようとしたら
先輩の言葉をさえぎる様に

「申し訳ないけど、東京ってどっちの方向?」

となぜか照れくさそうに質問してきたと言う。


先輩の相方が磁石を見て東京の方角を教えると

「ああ、ありがとう」

とていねいに礼を述べ、
そのていねいさと相反するように
すごい勢いで道もない所を降りていったと言う。


先輩は後で気がついてゾッとしたそうです、
飛行機事故の事を思い出して。





山の神様「もし、旅かな?」【ほんのり怖い話】





一度だけ洒落にならない体験をしたのだけど
誰も信じてくれないからここに書く。


学生だった頃毎週末一人キャンプに
興じてた時期があった。


金曜日から日曜日にかけてどこかの野山に寝泊りする、
というだけの面白みもくそもないキャンプ。


友達のいない俺は寂しさを広大な自然の中に
まぎれこませていたのだった。


それでまあその日は岐阜の方面に向かってたんだけど、

地図も持ってないもんだから
正確にはどこへ行ってたのかよく分からない。


とにかく野営によさげな山を見つけたので
そこで一泊することにした。


ご飯食べて、ヤングジャンプ読んでたらもう夜中だ。


暇だなあ、とか思ってたら急に
テントのチャックを開けられた。

え、なに。

管理人?それとも通報された?

とか、もうビックリして死ぬかと思ったけど
立ってたのは普通の爺さん。


中覗きこんで

「もし、旅かな?」

と聞かれた。

返事できるような状態じゃなかったので
頭だけコクコクって返事したらそのままどっか行った。


民家まで1kmはあるような山奥に
まさか人がいるとは思わなかったね。


最初は幽霊かと思ったけどどう見ても人間だった。

むしろ変質者かサイコ野郎か
泥棒で俺を狙ってるんじゃ・・

と 考えると寝るにも寝れない。

うわあぁどうしよう・・・って落ち込んでたら、

またチャックが開いて、今度は中年のおっさん。


そいつも

「もし、旅かな?」

って聞いてくる。

また頷いたらそのままどっかへ行った。


からわれてるのかなんなのか分からないけど、
もうダメだここは、離れよう。

そう思った。


けど、テントの外は
月明かりも無いような暗黒世界で、
おまけに変質者が二人もうろついてる。


でた矢先に包丁でグサーとか怖いこと想像して
30分くらい悩んだあげく、でることにした。


護身用にマグライトを装備して
恐る恐る外にでると誰もいない。

今のうちだと猛スピードで
テントの片付けを開始した。


そしたら終わる頃になって
二人がまた近づいて来たんだよ。

俺が心臓バクバクさせてテント片付けてる横から

「帰るのかい?まだ夜なのに」

って声かけてくる。

「ええ、まあ急用思い出しまして」

と答えつつも荷物をバイクにくくりつけて

それじゃあとオッサン達のほうに
ライトを向けたら、光が何か変。

途中で途切れてる。

なんじゃこらあと後ろの方を良く見たら
全長4mくらいありそうな黒衣が、
屈んでオッサンと爺さんを動かしてる。


あの顔の垂れみたいなのの奥に目を光らせながら
口モゴモゴさせて喋ってたんだ。

短い命だったな・・・

とか思ってる暇も無くバイクに跨って逃げた。


そのまま麓にある神社に転がり込んで
迷惑にならないだろうところにテントはって寝た。


翌朝、

なんか騒がしくて目が覚めたら
ちょうどチャックが開くところを見てしまって、

まさか追いかけてきたのかと
絶望的な気分になったが、

神主がここにテント張るなっと
怒鳴ってただけだった。


かくかくしかじかって訳なんですよ、

と話すと

「あーそれ あそこの山の神様だから
 どうにもできないよー。

 でも良かったね神様に会えて。
 
 僕は見たことないけど、
 たまに見たって言う人いるんだよねー」

と。

なんかイラッとする口調だった。

害は無いらしいからそのまま帰ってきた。


害が無いとかそういう問題じゃない。

あんなもの野放しにされたらたまったもんじゃない




2018年10月17日

捨てられた女【怖い話 】





一昨年の9月、

俺とシゲジとキイチは町に飲みに行きました。

最初は焼き肉屋。

その後スナックでカラオケやって、

最後のラーメン屋を出たのが、たぶん1時半過ぎでした。

俺はアルコール飲まないんで、車の運転です。

キイチはもうベロベロで、

後部座席に収まるとすぐに寝てしまいました。

国道から県道へ入ってすぐの交差点でした。

助手席のシゲジが



「おい…おいって」



と、俺の腕を叩くのです。

「さっきの交差点に女がおったやろ」

県道のこのあたりは、

周囲は山ばかりで何もないし、

深夜になると交通量も少ない。

だから、そんなはずはないって思ったのですが、

シゲジは



「ちょっと戻ろうぜ」



と執拗に誘うのです。



「若い娘でけっこう可愛かった」



とか言って。

「お前、酔っぱらってるのに顔とかなんてわかるんか?」

そう言いながらも車を方向転換させて、



さっきの交差点に向かいました。

すると居たんです。



シゲジの言うとおり、



交差点のところに若い女が。

女は、道端のちょっと草むらっぽいところにしゃがんで、

こっちに背中を向けていました。

ワケありかよー、とか考えながら、車を停めました。

ライトは点けっぱなしで。

「おーい、何やってんや?こんなトコで」

女はくるっと振り向きました。

色が白くて、美人タイプの女なのがわかりました。

けど、その時の表情がちょっと忘れられないんです。

口がワっと全開になっていて、



目も血走った感じのまん丸で、

ビックリした顔のまま固まったみたいな表情でした。

そんな顔でこっちをじっと見ています。

ちょっと毒気を抜かれた感じで立ち竦んでいると、

後ろからシゲジが話しかけてきました。

「あいつ、ゲロしてたんちゃうか?」

そう言われて見ると、口の端がよだれか何かで

濡れているのがわかりました。

町で酔っぱらって、

ここまで歩いてきて吐いたのかもしれません。

事情はともかく、
このまま見過ごすのも悪いような気がして、

こう言いました。

「家まで乗せてったるわ」

「*@?。&*#$%!」

女は口を開いたまま、

訳のわからないことを言いました。

女が座っていたあたりの草むらで、

ガサガサと何かが動く気配があるような気がします。

これはヤバイかも、そう思いました。


すると、女は口を閉じて今度は普通に喋りました。

「…乗せてって」

ちょっとおかしいとは思いましたが、

こんなところで置いていくのも気が引けます。

見た目は可愛い女だったので、シゲジは

「よっしゃ、それでオッケーなんや」

とか、意味のわからないことを言って、



一人で盛り上がっています。

後部座席のドアを開くと、
寝ているキイチの隣に女を座らせました。

「夜中やし、シートベルトはええやろ」

女を乗せると、俺は車をスタートさせました。

「…あんなトコで何してたんや?」



「誰かに捨てられたんかぁ?」

シゲジが、しきりに後部座席に向かって話しかけています。

俺は、バックミラーで女をチラチラと見ていました。

ちょっと短めの髪で整った顔立ちですが、

ちょっと顔色が白すぎるように感じました。

車の揺れに合わせて、



白い顔がゆらゆらと揺れています。

「私が捨てられたんとちゃうねん」

突然、女が口を開きました。

「私は捨てられた男を捜しにきたんや」

ちょっと言っていることが良くわかりません。

「…なんや、男って彼氏か?」

いつの間に目覚めたのか、キイチが話に加わりました。

「ちょっとガッカリしたわ。

 せやけど意味ワカランな、その話」

どうやら大分前から意識はあったようです。

「ドコに行ったらええねん?」

俺は女に聞きました。



車は県道を自分らの村に向かって走っています。

「真っ直ぐ行って、もうちょっとしたら左」

女は運転席と助手席の間に

身を乗り出して指示しました。

その時、バックミラー越しに女と目が合いました。

どこを見ているのかわからないような、

何か疲れ切ったような目。

女はそのまま、

ストンと後部座席の真ん中に座り直しました。

「そこ、そこ曲がって」

そんな感じで、何回か曲がり角を曲がりました。

俺はだんだんおかしいなと思い始めました。

この先は山の奥で人里など無いのです。

シゲジもいつの間にか無口になっていました。

寝てるのかと思って見ると、



目を開けたまま俯いています。

だんだん道が狭くなって、



とうとう舗装もなくなりました。

「ほんまにこの道でエエんか?」

「…ええねん。もっと先や…」

男に挟まれて後部座席の中央に座っているので、

悪路で揺れるたびに声が震えています。

「もうすぐやなぁ…」

女が独り言のようにそう言いました。

もうずいぶん奥まで来ています。



もちろんこの先に人家などありません。

もうすぐどこに着くのか、



俺はだんだん怖くなってきました。

女の顔を見ようかとミラーを見ましたが、



暗くて表情が見えません。

助手席でシゲジが何かブツブツ言っています。

「ここで停めて」

林道の車廻しのところに車を停めました。


女は車から降りると、

細い人が一人やっと通れるような

山道の入口に向かいました。

あたりは月明かりで少し明るいのですが、



木立の中は真っ暗です。

女の格好は、



ワンピースにパンプスだったかハイヒールだったか、

とにかく山歩きをする格好ではありませんでした。

「おい!どこ行くんや!そっちには何もないぞ!」

俺が叫ぶと、女は振り向きました。



うっすら笑っています。

「早くおいでやぁ、もうちょっとやから」

女の後を追いかけようとして、



誰かに肩を掴まれました。

一瞬心臓が止まるかと思いましたが、



シゲジでした。

「お前…行くんか?」

弱々しい声でそんなことを聞きます。

「しゃあないやんけ。



 このまま放り出していくワケにいかんやろ」

「…ほなら俺も行くわ」

最初の頃のハイテンションが嘘のような様子でした。

俺が先頭で女の後を追いました。



女はどんどん山道を先に進んでいきます。

途中で気が付きました。



この道は夏に通った覚えがあります。

若い男が山に迷い込んで、消防団で捜索した時でした。

確かこの先には大きな池があったはずです…

女は池に何の用事があるのか?

後を追いながらそのことばかり考えていました。

後ろからは二人の影が追いかけてきます。 やがて池に出ました。



9月だというのに少し肌寒い。

女は池のほとりで立ち止まりました。

「…来たで」

月明かりは木立に遮られて、



水面は真っ黒で何も見えません。

あたりは全くの無音でした。



俺たちの息の音しか聞こえてきません。

「アホー!!何してるんや!ボケェ!!」

女が池に向かって突然がなり始めました。

「いね!いんでまえ!あほんだらぁ!



 クソッタレ!!死ね!」

もの凄い勢いの悪口を全身を震わせて叫び続けています。

呆気にとられて見ていると、今度はこっちを向きました。

「お前らも帰れ!はよ帰れ!ボケー!!」

最初に見た時のように大きな口を開けて、

血走った目でこっちを睨み付けています。

「はよいね!殺すぞ!ごろ…ごぼゴボ!」

口から何かを吐き出しながら、



こっちへ手を伸ばしてきます。

俺は限界をでした。振り向くと、

さっき来た山道をダッシュで引き返しました。

後ろからは女の叫び声が、



前にはシゲジの走る姿が見えます。

車のところまで来ると、



ドアを開け車内に乗り込みました。

後ろを確認すると、



キイチがぐっすりと眠り込んでいます。

エンジンをかけて、そのまま待ちました。

「なにしてんねん!はよ出せや!」

シゲジが追いつめられたような顔で言いました。

「何を待ってるんや、まさか…」

その言葉で我に返りました。

一気に車をスタートさせて林道を下りました。

一番近いキイチの家まで帰り着くと、



体の力が一気に抜けました。

寒くなかったのに、体がガタガタと震えてきました。

もちろん、



女が怖かったというのもありましたが、

それよりも、



シゲジの最後の言葉が恐ろしかったのです。

俺たちは、



3人で町へ飲みに行った帰りに女を拾いました。

3人足す1人で4人。

ところが、女を拾った後、



車には5人乗っていたのです。



運転席に俺、助手席にシゲジ、



俺の後ろにキイチ、後部座席の真ん中に女。

もう一人、助手席側の後部座席に



男が一人座っていました。

俺もシゲジもそれを憶えています。

でも、男の顔も姿も全く記憶にないのです。

なのに、シゲジの言葉を聞くまで、

不思議とは思っていませんでした。

そのことを考えると、今でも背筋が寒くなります。







タグ: 幽霊
posted by kowaihanashi6515 at 02:30 | TrackBack(0) | 洒落怖

未来【怖い話】





友達から聞いた話です。

4年程前、

その子のお兄ちゃんの彼女が妊娠したのですが、
お互いいつかは結婚したいと
思いながら付き合っていたものの、
当時兄は就職活動中、彼女も短大入学したてで、

「今は無理やよな」

「まだ時期早いわな」

と今回は見送りのようなあっさりした感じで
中絶したらしいです。

その後、

2人はうまくいかなくなり別れてしまいました。

しばらくして、
彼女は他の人と結婚したそうです。

そして最近その兄がこんな夢を見たのです。

公園で3歳くらいの女の子が
一人でブランコを漕いでいる。

兄は普段子供に話しかけたりしないが、
ごく自然に

「お名前なんていうの?」

と話しかけた。

髪がサラサラして目の大きな可愛い子だった。

真正面から兄を見上げると、

「みくちゃん。産まれてたらこうなってたの。」

と言って突然大きくブランコを漕ぎ出した。

ブランコは垂直の高さまで上がり、
頂点で女の子はポーンと投げ出され、
逆さ吊のようになったまま、
空へ吸い込まれていった・・・。

その夢を見てからしばらくして、
兄は昔の彼女に電話してみたそうです。

すると

「実はおめでたで、今5ヶ月やねん」と。

とりあえずおめでとうを言い、男か女か聞くと、

「まだわからんねんけど、
女の子やったら未来と書いて、みくにしたいねん」

と彼女は言ったそうです。

自分が中学くらいの時から女の子には絶対

「みく」

と付けたかったのだと。

兄が自分の見た夢の話をすると
彼女は電話の向こうで黙りこんでしまいました。

結局、
彼女は女の子が生まれたのですが、
違う名前にしたそうです。

この話を聞いた時、
怖いというより可哀相と思ったのですが、

後でじわじわ怖くなってきました。



posted by kowaihanashi6515 at 02:08 | TrackBack(0) | 洒落怖

生贄になった止ん事無き血族の友人【怖い話】





話の出所はちょっとぼかしてしかかけない

信じる信じないは自由です



某県にすんでいるのだが、
自称やんごとなき血族の友人がいた。


すでに鬼籍にはいってしまったのだが、
実に信じがたい話なのだが聞いてほしい



自称やんごとき血族の友人Aとは 
幼稚園のころからの付き合いだった。


地元でも名士で、
かなりの土地とかなりの資産をもっている


友人Aは長男で、
ゆくゆくはその家を継ぐだろうと思っていた



高校2年の夏に 
進学のことや将来のことで色々と話す機会があった


友人Aはにこにこ笑いながら、

「俺の将来はきまってるから・・」



あまり裕福でない私はまぁ正直 
家が金持ちでいいなぁと思っていた


今から思えば、地元の名士であるはずの長男が、

普通の中学、高校に通って自由に遊んでいたのも、


友人Aの末路がわかっていたので
親や親族が自由にさせていたのだろうと思う。



高校3年の夏すぎから 
友人Aの様子があらか様におかしくなっていった


自暴自棄というか、
何もかもどうでもいいような発言と行動が
目に見えて多くなっていた


受験のノイローゼか
年齢的におこる不安定だと思っていたが、
実はそうではなかった



卒業して見事に私は浪人になり、
ぶらぶらろくでもない生活を送っていた


友人Aとは何ヶ月か連絡を取っていなかったが、
クリスマス前に突然友人Aから連絡があり、
ひさしぶりに会うことになった



何ヶ月ぶりあったの友人Aの姿は
異様というか異常というか髪は白髪まじりで、
頬骨がういて見えるくらいげっそりとやせていた


たった数ヶ月で人間の容姿が
ここまで変わるものかと
ひどく驚いたのをいまでも覚えている



近所の公園で寒い風の吹く中 
暖かいコーヒーをすすりながら


私「おー ひさしぶり 卒業式以来 なにかあったの?」


友人A「ちょっと話を聞いてほしくてな 
なにも聞かないで俺の話をきいてくれ」



私「・・・病気かなにかか?」


友人Aのあまりに変わり果てて
やせ細った姿を異様におもった私は自然ときいていた



友人A「・・・いや、ちがう・・が関係はある 
この話はお前にしかいわない」


そういうとAは左手でコートをちらっとめくった

友人Aの右肩から先にあるはずの右腕が見当たらなかった



あまりの衝撃と予想もしなかった状況に言葉を失っていたら

友人Aがぽつりぽつりと ある物語を話だした




とある公家の当主が、
大きく変わる世の中と自らの家系が耐えてしまうのを恐れ、
ある神社の神主に相談をした


その神社の神主は、
当主の相談に3つの条件を承諾すれば
未来永劫家系と田畑がまもれるといった



その条件とは、



1.神主の娘を娶り神主の血筋も絶やさない


2.代替わりごとに贄を差し出すこと


3.ある箱を守り続け その代の当主がその度作り直すこと



そういうとその神社の神主は、その当主に娘をわたし、
ある箱をわたすと自らの命を絶った


ほんとはもっと細かく長かったが、要約しました



そういう物語だった。

クリスマスの時期のくそ寒い公園で聞かされて

気持ちのいい話ではなかった



私「・・その話はなにか意味があるのか?」


友人A「・・・代わり事の贄は長男 つまり俺・・・・」



私「何だそれ・・お前の腕とか いきなり変な話とか・・」


友人A「・・まぁきいてくれ 俺は来年の夏までに死ぬ・・」


友人A「・・ただ誰かに話を聞いてもらいたかったんだ」


私「その腕とはどうした? そのやせ方は異常だぞ 病院にいけ」


友人A「腕は・・ 腐って落ちた 
食っても食ってもどんどんやせていくんだよ」



言葉につまっていると友人Aは 

死にたくない つらい 助けてくれ

と2時間以上泣き喚いた


そうこうしているうちに友人Aが

「ありがとう」

といって深く頭をさげて帰っていた



今月あのまま連絡がなく、
こちらから連絡がつかないまま、
友人Aの訃報を受けた



葬儀にあつまってきた学校の友人たちから事故死と聞いた


いまだに 心に整理がついてないのだが、

友人Aの父親と母親がよくやったと泣いていたが

いまだに耳からはなれない



posted by kowaihanashi6515 at 01:58 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月15日

田舎の村の求人【集落・田舎の怖い話】





この間就活で山間の村に行ってきたんだが
そこは基地〇村だったんだ。

まず、なぜわざわざそんな田舎に行ったかというと
条件の割に応募者が0で余裕そうだったから。

事務 高卒の条件なんだが 
給与25万 土日祝日休み 賞与6か月分 寮費光熱費無料 
かなり良い条件だと思った俺は電車に乗って面接に行った。


朝一で出発し半日後、その村についた。

電車で3時間、
そのあとバスを2時間待ってバスでさらに1時間の距離
携帯の電波が3Gすら途切れ途切れの受信だった

正直不便だなぁと思いつつ
面接の時間までまだ2時間あったので村を徘徊することにした。







歩いているだけで村人が声をかけてくるんだ。

最初は気さくな人が多いんだなぁと微笑ましかった。

しかしすぐにそれが間違いということに気が付く。

何人かの村人が後をつけてきているんだ。

振り向くと数人が白々しく立ち話や草むしりをしている。


しばらく村を歩いていると個人商店があったから、
そこにに入ってやり過ごそうとしていたら 
ババアが店に入ってきた。

店主が 来てるよ と囁いていたので怖くなって店から飛び出した。

そのあと高校生くらいの男数人が
チャリで捜索しているのを見かけ身震いした。

いたか?あっちで見たってよ! 
と大声で会話をしている。

高確率で自分を探しているんだろう。


なぜか今日自分がそこの村に行くことが
村中に知れ渡っているみたいだった。

俺は怖くなって、
少し時間は早いけど面接の場所に行くことにした。


施設についた俺は、
受付の人にあいさつを済ませ
少し早くついてしまったことを告げた。

すると、予定を早めて面接してくれることになった。

融通が利いていいなぁなどと
のんきに考えていたがこの後もひどかった。

村がおかしけりゃこの施設も相当おかしかった。

面接の内容はこんな感じ。

志望動機や同じ業種の中からどうしてうちを選んだのか?

この村のことは聞いたことがあるのか?

永住するのか?

最初はある程度まともな事を質問してきたから
用意しておいた回答を述べた。

すると、受けが良かったのか
採用を前提にした話に切り替わった。

ここからが本当にひどい。


まず、

村のジジババの介護を村人と協力してやること

両親も村に引っ越させること

財産はどれくらいあるのか?

彼女はいるのか?
いるなら別れろ(当然いませんがw)

都会の友達とは縁を切れ

村人で共有できるものは進んで差し出せ

親戚や知り合いに医者はいるか?

などなど


一番ドン引きしたのが 

○○さんって家の娘がいるからそいつと結婚しろ、
後で会せてやる子供はたくさん作れ。

みんなで面倒見るから安心しろ

っての

もう頭おかしいとしか言いようがない。


ちなみに娘さんの写真を見せられたんだが
イモトの眉毛を細くしたような女だった。

もちろんノーセンキュー

女のことは適当に保留して
とりあえず良い顔だけして面接を終えた。

帰りに襲撃されたら困るからな。

バスを待っているときに
ババアとかが話しかけてきたんだが、
もう面接の話を知っていて寒気がした。

村の話を色々してくれて根はいい人なんだろうが
その時は恐怖でしかなかった。


家に帰ったのが11時過ぎ。

疲れて昼過ぎまで寝てから辞退の電話を掛けたんだ。

やっぱりというか、断ったら発狂してね


こんないい村は他にない!

都会だからって馬鹿にしているのか!

結婚するって話の娘に失礼だ!

村に来てみんなに謝罪しろ!

安心して外を歩けると思うな!

など一方的にののしられた。

他に仕事決まったのでって断り方がまずかったのかな?




7人の神様【不思議な話】





結婚してすぐ夫の転勤で北海道へ引っ越した。

知り合いもなく、気持ちが沈んだ状態でいたある日、
なんとなく友達の言ってた話を思い出して反芻しながら
道を歩いてた。

その話とは、

「この世の中には神様が7人いて、
人間のふりして普通に生活してるんだって」

っていうヘンな話。

ホントにいるのかな〜、

いるわけないよな〜

などと思いつつ歩いていると、

前方から小学校低学年くらいの
女の子が歩いてきて、いきなり

「ただいま〜」

って大きな声で挨拶してきた。

もちろん
全然知らない子なのだけど、
あまりに元気に挨拶されたし、

誰かに明るく声をかけられるのも
久しぶりだったから、

「おかえりなさい」

って返事をした。

そしたら、その子がニコニコ笑いながら
じっと顔を見つめてきたので、

「何?」

って言ったら、

「私、そうだよ!」

って言ってきた。

「何が?」

って聞き返したら、

「私、そうなの。じゃあね〜!」

って走っていってしまった。

何のことだろうと思ってしばらく考えた後、

ハッとした。

もしかしてあの子神様だったのかな〜

今度会ったら聞いてみよう!

と本気で思った。

ホントに神様だったのか、
何だったのか分からないけど、

ここの生活も
まんざらでもないなって
思いはじめるきっかけになった。

4年後にまた転勤で東京に引っ越す頃には、
住んでた街のことが名残惜しく感じるほどに
なっていたけど、
あの子にはそれ以来一度も会えなかった。




ユキオ【怖い話】





小学校のころ、俺のクラスにユキオ
(どんな漢字かは忘れた)っていう奴が転校してきた。

小柄でハーフっぽい顔で、
どことなくオドオドした感じの奴だった。

ユキオには両親がいなくて、
爺ちゃん婆ちゃんと一緒に暮らしていた。

その辺の事情を、
先生は教えてくれなかったが、
ユキオ本人から聞いた。

俺たちは、最初のうち、ユキオをイジメた。

と言っても、金脅し取ったりとかじゃなくて、
すれ違いざま背中にエルボーしたり、


筆箱をカッターで切ったり、
集会の時にオナラをしたと騒ぎ立ててみたり、
まぁ他愛もないものだったと思う。


それでも、本人には辛かったかもしれんけど。
だけど、ユキオは普段オドオドしてるくせに、
そんな時は妙に根性を見せて、
泣いたりムキになったりすることが無かった。

先生に告げ口もしなかった。

だから、あまり面白くなくて、
そのうち俺らもイジメたりしなくなった。

ただ、ユキオは良く学校を休んだ。

月にどれくらい休んだのかは忘れたけど、
しょっちゅう休んでたっていう印象は残ってる。

その頃、うちの学校では、
給食のパンを休んだ奴のところへ、
同じクラスで近所の奴が
届けるっていうルールがあった。

ユキオの家にパンを届けるのは俺の役目だった。

家はけっこう離れていたけど、
同級では一番近かったし、
良く通る帰り道の途中だったし。

ユキオの家は木造の文化住宅で、
いかにも爺ちゃん婆ちゃんが
住んでそうな家だった。

中に入ったことは無かった。

何となく暗い感じで、
俺的に嫌な雰囲気の家だった。

パンを届ける時は、
いつも婆ちゃんにパンを渡して
そそくさと帰った。

ある日、

またユキオが休んだので、
俺はパンを届けに行った。

玄関で呼ぶと、珍しくユキオ本人が出てきた。

風邪でもひいているのか、顔色が悪い。

ユキオは俺に、家の中に入るように誘った。


「××××があるから、やろうよ。」

とか言って。

そのオモチャは俺の欲しかったヤツだったんで、
嫌な感じを振り払って、家の中に入った。

ユキオの部屋に入って、ちょっと驚いた。

そこら中にシールやステッカーが
ベタベタと貼ってあって、
その中には神社のお札
みたいなのも混ざっていた。

俺らが入ってきた襖にも
隙間がないくらい貼ってある。


「・・・なんだ、これ。」

「おじいちゃんとおばあちゃんが
お札を貼るんだけど、
それだけだと何となく怖いから
シールも貼るんだ。」

ユキオが自分で書いたような
お札もあった。

「お札破ったらいいじゃん。」

「そんなことしたら、
おじいちゃんに怒られるし・・・」

ユキオは口籠もってしまった。

その日は、ユキオの部屋で
1時間ぐらい遊んで帰った。


次の日も、ユキオは学校を休んだ。

先生が俺にユキオの様子を聞いてきた。

なんか調子悪そうだった、と言うと

「そうか・・・
休むっていう電話も
掛かってこないから、
どんな様子なのかと思ってな。」

「電話したら?」

「いや、したんだけど
誰も出ないんだ。
おじいさんかおばあさんは、
居たか?」

「昨日は見なかった。」

「うーん、休むんだったら
電話してくれって、
ユキオにでもいいから言っといてくれ。」

その日もユキオの部屋で遊んだ。

ユキオはオモチャを沢山持っていた。

少しうらやましくなって聞くと、
お父さんとお母さんが買ってくれた、
と答えた。

「お前のお父さんとお母さんって
 ドコにいるんだよ?」

「死んだ。」

ユキオはあっさりとそう言った。

「なんで?」

「交通事故。」

オモチャをいじりながら
俯いて答えるユキオを見て、
さすがに、これ以上は悪い気がして、
話を変えた。

「明日は学校行く?」

「わかんない。」

「お前、大丈夫かよ。」

「・・・・・」

「休む時は電話しろって先生言ってたぞ。」

「・・・ゴメン。」

「俺に言ってもしょーがないよ。
 おじいちゃんとおばあちゃんは?」

「奥の部屋にいるよ。」

「じゃあ、そう言っとけよな。」

「・・・眠れないんだ。」

「はぁ?」

「お父さんとお母さんが夢に出てきて、
 僕のことを呼ぶんだ。」

「・・・・」

「ユキオ、ユキオって
 僕のことを何度も呼ぶんだ。
 それが怖くて、だから眠れないんだ。」

「・・・・」

「昨日は、腕をつかまれた、
 僕を連れて行くつもりなんだ。」

俺はだんだん怖くなってきて、
もう帰る、と言うと、
ユキオはやけにしつこく引き留めた。

「お前が怖いのはわかるけど、
 俺がここに泊まるわけにいかねーだろ?」

「なんで?」

「俺ん家はお母さんが心配するから・・」

そこまで言って、

「ヤバ!」

って思った。

ユキオは俯いて
何も言わなくなってしまった。

俺は、居たたまれなくなって、
ユキオの家を半ば飛び出すように
出ていった。

次の日もユキオは学校を休んだ。

先生は、一緒に行くと言って、
帰りに俺を車に乗せてユキオの家に向かった。

先生が玄関で呼んでも、何の返事もなかった。

玄関を開けると先生が顔をしかめた。

靴を脱いで家に上がった。

台所やユキオの部屋には誰もいなかった。

ユキオの部屋を出ると右手に部屋があった。

ユキオが昨日言っていた
奥の部屋というのはそこなんだろう、
と俺は思った。

先生がそこの襖を開けた。

そのとたん、
先生は立ちすくんで、
すぐに襖を閉めた。


その一瞬の間に、
先生の体ごしに部屋の中が見えた。

ユキオの血塗れの顔が見えた。

それから、
先生が警察を呼んだんだと思う。

その日の、

そこから先のことは
ほとんど憶えていないけれど、
警察は来ていた。

次の日、

先生がユキオと爺ちゃんと婆ちゃんが
死んだことをクラスの皆に伝えた。

けれど血塗れだったとは言わなかった。

ただ、死んだと言った。

あとで、俺は先生にユキオの夢の話をした。

先生はしばらく黙って聞いていた。

そして、誰にも言うな、と言って、
俺にユキオの両親のことを教えてくれた。

ユキオの親の死因は自殺だった。

一家心中を図っていた。

ユキオはその時、運良く生き延びて、
爺ちゃん婆ちゃんのところへ引き取られた。

俺はそれを聞いても、そんなに驚かなかった。

なんとなく、そんな気がしていた。

何日かして、俺は警察に呼ばれて、
ユキオの家へ行った時のことを話した。

ユキオの夢のことも話した。

警官は、俺に、その話がウソでないかを
しつこく聞いた。


俺はウソじゃないと何度も言った。

「本当に、君はあの家で、
 ユキオ君からその話を聞いたのかい?」

「うん。」

一緒に来ていた先生が困った顔をしていた。

警官が先生に向かって、
ヒョイヒョイと手を振った。

それが合図だったのか、
先生はしばらく考えてから俺に言った。

「あのなぁ、俺とお前が
 ユキオの家に行っただろ。あの時・・・」

先生は言いにくそうだった。

俺は嫌な予感がした。

「・・・あの時、ユキオ達は、間違いなく、

 死んで3日は経っていたんだ。」







posted by kowaihanashi6515 at 20:53 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月14日

見知らぬ女【怖い話】




大学で実際にあった洒落にならない話。

俺の通っている大学は、山のてっぺんにある。

町から相当隔離された場所にあり、
最寄のコンビニですら、
ジグザグの山道を通って車で片道10分は掛かってしまう。

そんな環境であるため、
サークル活動や研究室などの特殊な用事でもない限り、
遅くまで大学に居残る学生はほとんどいない。

しかし、10棟程度に分かれている大学校舎の中の一つに、
『音楽棟』という建物があり、
そこでは夜遅くまで学生
(大半は音楽関係の学科生かサークルの人間)が、
ヴァイオリンやピアノ等の楽器を練習している。


音楽棟には、
50以上の個室の全てにピアノが一台ずつ入っているのだが、
学生はそれぞれ自分なりにお気に入りの個室があるようで、

例えば練習室の24番には○○専攻のA子がいるから、
23番の練習室をお気に入りに使っているアホな輩もいる、
といった具合だ。


その日の夜、俺は音楽棟で楽器の練習をしていた。

時刻は9時半頃だった。

終バスが10時なので、
そのくらいの時間になると学生の数はかなり減っている。

山中であるため、終バスに乗り遅れると下山は困難を極めるのだ。

俺もそろそろ帰るかと思ったその時。

やや離れた場所から

「ドカッ!!」と、

何かがぶつかるような音がした。

誰かが楽器でも落としたのだろうかと思ったが、
あまり気にせず個室を出ようとすると、

またもや

「ドカンッ!!」

という音がした。


さてはアレだなと思った。

音楽棟はだいぶ老朽化しているため、
壊れているドアがいくつかある。

ある程度ちゃんとした校舎をもつ学校に通う学生には、
信じ難いかもしれないが、この大学では運が悪いと、
自力で個室の中から出られなくなることもしばしば起こるのだ。

部屋の中からドアを開けようとしている音に違いない・・・。

前にも閉じ込められた友人を救出した経験があったからこそ、
確信があった。

すぐさま音のした個室の方へ行って、
個室にある窓から中を覗いてみると、
案の定、ドアを何とか開けようとしている、
学生らしき姿があった。

「今開けますよ」

と一声掛けてから、ドアノブをやや強引に捻って開けた。

「ありがとうございます、
 出ようとしたらドアが開かなくなっちゃって・・・」


初めて見る顔だった。

音楽棟に夜遅くまで残って練習している人間は、
大体把握できているつもりだったが、
目の前にいるのは全く知らない女の子だった。

他大生だろうか・・・?

原則として学外の人間は、
個室を使っていけない事になっているが、
まぁいいかと思い、

「練習お疲れ様です」

と言った。

その時。本当に、本当に一瞬の事だった。

その女の子の表情が歪み、恐ろしい顔つきになったのだ。

そして、嘘だったように一瞬で元の表情に戻った。

「ここ、私のお気に入りの部屋なんです」

「え、そうなんですか」

俺は喋りながら、変な違和感と緊張を感じていた。

何かこの女、おかしい。今の顔は何だったんだ?
いや、それ以前にもっとおかしな事がある。

「ずっと使っていたんですけど、
いきなり開かなくなったからびっくりして・・・」

んな事聞いてない。お気に入り?誰の・・・?

「ほんとうにありがとうございました」

そう言ってその女は、スタスタと歩いていってしまった。


俺は結局、何も聞けなかった。

この個室の番号は31。

俺のよく知る先輩がいつも練習している部屋だった。

いつも夜遅くまで練習している、努力家で熱心な先輩。

その先輩がいなくて、知らない女がいた。


俺はどうしても気になって、
すぐに携帯電話で先輩に聞いてみることにした。

意外にもすぐに繋がった。

どうやら、今までずっと学外で過ごしていたとの事だった。

授業は1コマから入っていたそうだが、
どうも気が進まなくて・・・と曖昧な返事だった。

そこで練習室の女のことを言ってみた。

先輩はしばらく絶句していたが、重い口調で話してくれた。

「誰にも言うなよ・・・昨日、脅迫を受けたんだ」

話によると、昨日の夜、
アパートで一人暮らしの先輩が家に帰宅すると、
郵便受けに大量の紙が詰まっていた。

何十枚もの紙の全てに、

『学校に来るな』

と一言、印刷されていた。

気味が悪くなって学校には行かず、
一日中、町に下りて過ごしていたそうだ。

警察に届けようと思ったが、思いとどまっていたらしい。

「その女って、誰なんですか?心当たりなどは・・・?」

「いや、あるわけない。
 ないけど、お前の話を聞いて余計に怖くなった。
 とりあえず、何とかしようと思う」

その会話を最後に、俺は今に至るまで先輩と会っていない。

アパートは空っぽ、
実家への連絡すら1年以上もない状態らしい。

完全に失踪してしまった。

勿論、あの女ともあれ以来、会っていない。







posted by kowaihanashi6515 at 00:24 | TrackBack(0) | 人怖

ある競輪選手の不思議な話 「たぶんこの世の人じゃないよね。彼がね、アンタに伝えて欲しいって。」 【不思議】【感動】【心霊系イイ話】





今はサラリーマンしてますが、
2年前まで競輪選手として勝負の世界で生きてました。
現役時代の話です。

静岡の伊東競輪の最終日に、
私は見事一着を取りました。

それは連携した前走の後輩選手(K.T君)が
勝とうと頑張った結果、
自分にもチャンスが来たからでした。

そのK選手が一着でゴールするところを、
私がゴール直前で後から抜いた形です。


レースが終わり、昼食を食べに食堂へ行くと、
ちょうどK君も食べに来ました。

一着を取って上機嫌だった私は

「K君一人なら一緒に食べようよ。」

と誘い同じテーブルで食事を始めました。


「4コーナーでは勝ったと思ったでしょ」

と私が言うと、

「はい、いただき!と思いました!」

とK君は二着になってしまったにもかかわらず、
屈託のない笑顔で言いました。

お互い力を出し切った満足感と、
レースの緊張から解放されたことですぐに打ち解けました。

彼とはその開催が初めての出会いでした。 


しかしその二ヶ月後、

K君は凍った路面で運転していた車がスリップし、
亡くなってしまいました。

かなりショックでしたが、
彼との思い出は伊東競輪のワンツーだけだった事もあり、
薄情なもので年月と共に忘れていきました。


何年か経った12月、
家で昼ご飯を食べながらテレビのニュースを見てると、
北海道の大雪の映像が流れてました。

「そういえばTが事故ったのもこんな日だったんかなぁ。
 あれ、Tって苗字何だったっけ。」

本当に私は薄情な奴です。

久々に甦った記憶でしたが、
Kという苗字がどうしても思い出せなかったんです。

その晩、突然妻が言いました。

「ねえ、K君って知ってる?。K君が私のとこに来たよ。」

あまりの驚きに声が出ませんでした。

「そうだ、Kだった…」

昼の記憶も、私の胸の中だけのものでした。

妻は恐ろしい程の霊感の持ち主でした。


妻は更に続けました。

「たぶんこの世の人じゃないよね。
 彼がね、アンタに伝えて欲しいって言った事をそのまま言うね。」

「思い出してくれてありがとうございます。
 僕はもっと走りたかったけど出来ませんでした。

 Mさん(私)には僕の分も走って欲しい。
 僕はもう生まれ変わっています。

 またスポーツを仕事に出きるように頑張ります。

 明日からの仕事、
 黄色かオレンジ色のユニフォームになったら怪我に気を付けて下さい。」

冷静に話す妻とは逆に私は声を上げて泣いてしまいました。

余りの驚きと嬉しさで泣きながら

「たった1回一緒に走っただけなのに」

と堪らず言いました。

短い時間でも絆に思っている。

事故の瞬間は、
頭の中で火花が散った感じがしただけで苦しまなかった。

ということも言ってたそうです。


その翌日から私は、千葉県の松戸競輪の出場でした。

松戸では夕べのことをK君の先輩に言うかかなり迷いました。

「うさん臭い。ふざけるな」

って言われるんじゃないかと。

迷ったあげく、夕べのことをその先輩に話しました。

何も足さず、何も変えず心を込めて。

「仲間が集まってコーヒーを飲む時にでも
 彼の思い出話をしてあげて下さい」

とだけ最後に加えました。


その夕方、

私の話を真剣に聞いてくれた
K君の先輩が興奮して私の所に来て言いました。

「M(私)!Kの命日、今日だった」

その日の宿舎での夕食は、
K君と同じ県の選手のテーブルに空席を設けて、
彼が好きだったビールのグラスを置いて彼の話で盛り上がったそうです。

「死んでも仲間の心の中で生き続ける」

なんて臭いセリフを耳にしますが、嘘じゃないと思いました。


水子の霊とか、人は死者を恐れますが、
彼らは自分の大切な人にいつまでも覚えていて欲しいと
願っているだけです。


死んでしまって肉体がなくなっただけで、必ず存在してます。

お墓に行っても亡くなった人は居ません。

想いを馳(は)せるだけで安らぎ、見守ってくれるのだと妻は言います。

松戸競輪では私は黄色(5番車)とオレンジ色(7番車)のユニフォームを
着る事もなく無事に3日間走り終えたのは、K君のお陰だと信じています。

私はそれから引退するまで、
K君に恥じないレースを心掛けて必死に走りました。

「うそくせぇ。読んで損した。」

と思われても仕方ないとわかります。

しかし本当の出来事だから仕方ないんです。

妻にはこういう話を他言をしないよう固く言われます。

しかし大切な人を亡くし、
立ち直れずにいる人への勇気や癒しになればと思い、
妻を裏切って投稿させていただきました。





「神様・・・お前もか・・・」幽霊のイタズラに悩んで神社へ参拝に行くと・・・【笑える怖い話】





俺は子供の頃から変わった体験をしている。


例えば、見えない何者かに触られたり、
誰もいない自分の部屋で腹にパンチを何度もされたり。

一番酷い時には、頭を掴まれて壁に叩き付けられたこともあった。

だが残念なことに、
その肝心の幽霊と思しき何者かを一度も見たことがない。

これらの体験を友人に話してみると、

「ベタだけど神社かどこかにお参りしに行ったら?」

と言われ、早速行ってきた。

俺自身はこういった参拝行為にご利益があるとか全く信じていなかったし、
その時はあいにく小銭が一枚も無かったので、
厚かましく“お願いだけ”してさっさと帰ろうと思った。

参拝を済ませて振り返り、来た道を歩き出すと、
後ろから

「カ・・・ネ・・・」

という声が聞こえた。

しかし、振り返っても誰もいない。

気のせいかと無視して歩き続けると、
その声が徐々に大きくなっていき、

「カ・・・ネ・・・、カネ、金!金!!」

とはっきり聞こえてきた。

これはマズイと思った俺は、
コンビニかどこかでお札を両替しようとやや早足で歩くと、

凍った焼き鳥でブッ叩かれるような痛みを頭に感じ、
直後に後ろから

「走れ!」

という怒号が聞こえた。

怖くなった俺はすぐさま走り出し、
急いで両替してお賽銭を済ました。


「神様・・・お前もか・・・」

と思いながら、その日は布団の中で泣いた。



霊感の強い友人【怖い話】





実際に自分が体験した話。

10年来の友人に、
Eちゃんというものすごく霊感の強い子がいる。


どのくらい強いかというと、
幼い頃から予言めいたことを口にしていて、

それが口コミで広がり、
わざわざ遠方からEちゃんを訪ねてくる人がいたくらい。


その人達の用件は主に、
行方不明になった我が子を探してくれてというもの。


Eちゃんは写真を見ただけで、
その人物がどこにいるのかがわかる。

そして実際に当たっている。

ただし、その人物が
亡くなっている場合のみだけど。


幼かったEちゃんは深く考えずに、

「コンクリートの下に埋まってるよ〜」

なんて答えていたらしい。


やがて成長すると、
自分がどれだけ残酷な回答をしていたか気付き、
人探しは断るようにした。

それから周りには能力が消えたフリをし続けてきたらしい。


本当はいつもうじゃうじゃ霊の存在を感じていたけれど。


そんなEちゃんと私は、中学で出会った。

最初はすげー美少女がいるなーという印象だった。

ちなみにEちゃんはイギリスとのクオーターで、

佐々木希と北川景子を足して2で割ったような顔をしている。


あんまりに美少女だったから高校の時、
芸能界入りを勧めたら、

某大手プロダクションのオーディションに
あっさり受かりやがった(笑)


だけど本人にやる気がなかったせいか、
半年くらいで辞めてしまった。


それからは普通の高校生として、
Eちゃんはよく私と遊んでくれた。

学校帰りにはいつも2人で買い食いしてた。


ある時、

どこかの施設の外階段に座って
2人でお菓子食べてたら、

上から降りてきたおばあさんに
話しかけられたことがあった。

おばあさんは足が悪そうだった。


「人がいっぱいおるけど、今日何かあるんですか?」

おばあさんが言った。

下の道路はたくさんの人で溢れている。

お祭があるのだ。

こういう時、
人見知りの私はいつもEちゃんに話を任せてしまう。

しかしその時のEちゃんは違った。


そっぽを向いて、
おばあさんと話す気などまるでなし。

仕方なく私が答えることにした。

祭があることを教えると、おばあさんは納得した。


「だからこんなに人がおるんだね〜」

おばあさんはにこにこしていて、
足を引きずりながらゆっくり階段を下りていった。

その間、Eちゃんはずっと黙っていた。

そしておばあさんの姿が視界から消えると、
ようやく口を開いたEちゃん。


「…今の人、とっくに亡くなってるよ」

驚いた。

だってしっかり姿見えていたし、
私は会話までしている。

「嘘でしょ?」

私は半笑いで訊いた。
しかしEちゃんは真顔だった。

「嘘だと思うなら階段下りていってみなよ。
 もう姿消えてるはずだから」

半信半疑で階段を下りるも、
すでにおばあさんの姿はなかった。


1階まで下りて探してみたけど、どこにもいない。

その階段というのが螺旋階段に近い作りになっていて、

確か階段を使うためには、
1階、5階、7階から入るしかないはずだった。


5階から1階までの間に
建物の中に入ることもできない作り。

そして私達が座っていたのが、5階辺り。

そこから1階まで、
足をひきずっていたおばあさんが
短時間で下りられるわけないのだった。


Eちゃんのもとへ戻ると、
彼女はやっぱりねという顔をして
ポッキーを食べていた。


「たぶん大丈夫だよ。
 人が多いから気になって
 出てきただけみたいだから。
 害のない霊だよ」

「じゃあなんでEちゃんは
 おばあさんと話さなかったの?」

「あたしに能力があると知ったら、
 害のない霊でも憑いて来ちゃうことあるから」

「私、普通におばあさんと会話しちゃってたんだけど…」

「平気平気」

これが私が初めて霊を見た瞬間だった。


霊ってもっと怖くて、
怨念深い感じで出てくるとものだと思っていたから、
なんだか拍子抜けした。

すごくナチュラルに出てくるものなんだ…。


「亡くなって霊の姿になっても足をひきずってるなんて、
 可哀想だね」

「いやいや実際あたしが普段見てる奴らは
 あんなもんじゃないから。もっとぐろいよ」

あんな優しそうな
おばあさんの霊を見ただけでも、

やっぱりちょっと怖いなと
思っていた自分が恥ずかしくなった。

そして改めて、
Eちゃんが置かれている環境の特殊性を知った。


その後の私は霊を見ることなく、
無事に高校を卒業した。


卒業後、Eちゃんは事務職に就き、
私は実家に住みながらフリーターをしていた。

お互い仕事とアルバイトに追われ、
Eちゃんとはあまり会えなくなった。


しかし、
たまにメールや電話でやりとりは続いていた。


Eちゃんが仕事を辞め、
夜の仕事を始めたと聞いたのは、
高校を卒業してから1年程経った頃だった。


夜の仕事を始めたきっかけは、
父親のリストラだったそうだ。

さらにEちゃんの家には
早くに結婚して出戻って来た妹さんと、

Eちゃん似でイケメンなのに、
なぜかひきこもりの弟さんがいた。


Eちゃんは家族を支えるため、必死に働いていた。

なんだか実家に寄生して
ふらふらアルバイトをしている
自分が恥ずかしくなった。


就職活動を始めた私は、
しかしなかなか面接に
受かることが出来ず、

最終的に販売系の仕事で、
準社員として働くことになった。


仕事場となった店舗は、
数年前に殺人事件があった現場。


この事件、
当時は結構ニュースとして話題になった。


仕事は販売系と書いたけれど、
実際はちょっと違う。

今でも検索すればすぐ事件を特定されてしまうので、
実は職種ははっきりとは書けない。


曰くつきの職場ということで、
いざ働き始めてみると色々な話を耳にした。

前の店長が失踪したとか、
社員がみんな病気になるとか。


しかし私は特に何の変化もなかったので、
気にせず働いていた。


そして働き始めて1年が経った頃のこと……。


その日は朝から雨が降り続いていた。


客は数人しか来ず、開店休業状態。

午後には完全に客足が途絶えた。

店長と社員さんは配達に出てしまったため、
店番は私1人。


雨のせいか辺りは薄暗く、
なんだか気味が悪かった。


レジで手仕事をしながら時間を潰していると、
足音が聞こえた。


気付かぬうちに客が入ってきたのかと思い、

とりあえずブックオフ風に店全体に響き渡るよう、

「いらっしゃいませー」

と声をかけた。


それから客の相手をしようと
店内を探したのだが、誰もいない。

気のせいだったのかと思ってレジに戻り、
仕事を始めるとまた足音。

だがやはり客の姿はない。


こんなことを何度か繰り返していると、
さすがに怖くなってきた。


そして何度目かの足音。

今度ははっきりと背後から聞こえた。

始めはヒタヒタヒタ…くらいだったのが、
次第に小走りになり、

すぐにダダダダダッという
足音が近づいてくるのがわかった。


やばいやばいやばい……

恐怖に硬直していると、
視界に見慣れたジャンパーの色が入った。

店長が配達から帰って来たのだ。

ほっとした瞬間、足音が消えた。

おそるおそる振り返ってみる。

誰もいなかった。

「どうかした?」

何も知らない店長が、
不思議そうな顔をして訊く。

私は平静を装って、

「なんでもありません」

と言った。

しかし声を震えていたと思う。


その後、

店長は何か問題を起こしたとかで左遷され、

社員さんも次々と辞めていき、
店のメンツは様変わりした。

わたしは店舗で一番の古株になった。


新しい店長は大学出たてで
まだ右も左もわからない状態。

その店長とほぼ同時に入って来たのが、
アルバイトのKくんだった。


Kくんは最近までニートで
ひきこもりに近い生活をしていたとかで、
なんだか挙動不審。


店に出して客の相手をさせることは
まず無理だろうということで、

Kくんの仕事は主に、
配達の助手や事務的なことが中心だった。


しかしいざ働いてみると、
Kくんは案外面白い人だった。

私の知らないアニメや漫画をよく教えてくれた。


やがてみんなと打ち解け明るくなったKくんは、
レジ操作なんかも覚えて接客も出来るようになった。


ある時、

配達でみんな出払ってしまい、
店には私とKくんの2人きりということがあった。


Kくんは事務所の中にこもって、何かやっている。

その日は客が多く、レジが混雑してきた。

私1人では回すのが難しくなってきたので、
Kくんに応援を頼もうと、

客が途絶えた瞬間を見計らって
事務所のドアの外から呼びかけた。


「Kくーん、ちょっと出てきてもらっていいー?」

事務所の中からは返事がない。

事務所のドアは上1/3くらいが曇りガラスになっていて、
外から中の様子がぼんやりと窺える。


スタッフジャンパーを着た人影が中で動いていたので、
Kくんが確実に中にいることはわかった。


聞こえてないのかと思い、
ドアを開けて直接話すことにした。

ガチャガチャ……。

Kくん、内側から鍵かけてやがる。

この忙しい時に何やってるんだか…

怒りに任せてしばらく
ドアノブをガチャガチャやりながら、
大声で中のKくんに呼びかけていた。


「Kくん?何やってるの?
 ちょっとレジ手伝ってほしいんだけど」

その時、背後から声がした。

「あのぉ〜Mさん?何やってんすか?」

Kくんだった。

あれ?事務所の中にいるはずじゃ……。

Kくんは店の裏で掃除をしていたのだという。

じゃあ今、事務所の中にいる人は誰?

そう思った時、
いくらやっても開かなかったドアが、
あっさりと開いた。

中には……誰もいなかった。


確かにスタッフジャンパーを
着た人影が動くのを私は見た。


だからKくんが中にいると思ったのだ。

しかしKくんはずっと店の裏にいた。


事務所には窓がなく、
出入りするにはこのドアを使うしかない。


じゃあ私が見た事務所の中の、
スタッフジャンパーを着た人は
どこへ行ってしまったのだろう。

背筋に冷たいものが走った。


その後は客の相手に忙しく、
真相を突き止める暇が無かったので、

このことはうやむやになってしまった。


Kくんが何か嘘をついているようには
見えなかったし、

深く考えると怖いので考えないようにした。


それから数日後、

出勤すると店の裏口に花が供えられていた。

数年前に起こった事件…
その日は被害者の命日だった。


毎年この日になると、
遺族が夜のうちにひっそりと
花を供えに来ている。


事務所の中には小さな仏壇がある。

毎年、花はその仏壇に挙げていた。


それからしばらくして花は枯れてしまうが、

スタッフの誰もその枯れた花を始末しない。


なんとなく、触れたくないと
みんな思っているようだ。

仕方なく私が手を伸ばした。

その時だった。

「捨てるな!!!」

Kくんが怒鳴った。

いつもボソボソと話すKくんの、
初めて聞いた怒鳴り声。


驚いた私は、咄嗟に花から手を引っ込めた。

何か気に入らないことでもしただろうか…

あの挙動不審なKくんが、
こんなにも怒りを露にするなんて。

「え…ごめんね。どうしたの?」

私はKくんに謝った。

しかし、

「ん?何のことっすか?」。

Kくんはきょとんとしている。

「今、怒鳴ったよね?」

「いえ、何も言ってないですけど」

Kくんは自分が怒鳴ったことを
忘れているようだった。

それとも私の聞き間違いだったのか…。


念のため花はもうしばらく
そのままにしておくことにした。


そんな出来事があってからも、
私は変わらずその店で働き続けた。

店長と付き合い始め、
職場恋愛に浮かれていたのだ。


いつもスタッフが帰った後、
店長と2人残ってレジ閉めしたり、
店のことを話したり、楽しかった。


ある日、

閉店時間になっても配達から
店長がなかなか帰ってこず、

閉店後も私は1人、
仕事をしながら彼の帰りを待っていた。


そういうことは今まで何度かあった。

彼が戻ってくるまで、1人は怖いので、
大抵は店の電話を使って
友達と話ながら待つことにしていた。


その日は久しぶりに
Eちゃんに電話を掛けて
みることにした。


「今、まだ職場にいて1人で暇なんだよー。
 話付き合ってよ」

Eちゃんは快くOKしてくれ、

しばらくは高校時代の話などして
盛りあがっていた。


しかし、次第にEちゃんの口数が少なくなり、
声のトーンも暗くなった。


心配になった私が訊いてみると、

『Mちゃん、今、職場にいるんだよね……?』

「うん、そうだよ」

『今すぐそこから離れて!早く!』

Eちゃんはもうすごい剣幕で、
私にすぐ帰るよう言ってきた。


幸い、店の鍵は任されていたので、
私はさっさと身支度をして店を後にした。


何が何だかわからぬまま家に帰りつき、
彼には用事があるので
先に帰ったことを伝えた。


そしてEちゃんに理由を聞こうと
電話に手を伸ばした時、
Eちゃんのほうから着信があった。

「さっきはどうしたの?」

私が何か言おうとするとのを遮り、
Eちゃんが言った。


『あんたの職場やばいよ。

 店で電話してた時、すごいノイズが入ってたし、

 Mちゃんの声も変な風に聞こえた。
 別人みたいな声になってた』

それからEちゃんは、
このままその職場で働いていると
良くないことが起こるから、

すぐに仕事を辞めたほうがいいと言ってきた。

私は迷った。

Eちゃんの言うことなら信じられる。

だけど、すぐに辞めたら周りに迷惑がかかるし、
次の仕事を探すのもこんな田舎では難しい。


迷った末、どうにも決めかねて、
次の日も仕事に行くことにした。


翌朝、家を出ると目の前にEちゃんがいた。

久しぶりの再会だった。

だけど、なぜこんな朝っぱらから訪ねて来る?

Eちゃんは会って早々、玄関の前で土下座をしてきた。


「お願いだからもうあそこへは行かないで」

Eちゃんは泣いていた。

思えば、Eちゃんが泣いたところを
見たのはその時が初めてだった。


私はまずそのことに驚き、かなりうろたえた。


結局、私はEちゃんの剣幕に負け、
その日は仕事を休むことにした。


そして結局一日中、Eちゃんに説得され、
そのまま仕事を辞めることになった。


Eちゃんの紹介で新しい職場もすんなり決まり、
仕事に慣れて来た頃、

私はあの店で一緒に働いていた人と
偶然再会した。

その人も、もうあの店は辞めたらしい。


話を聞くと、私が仕事を辞めてからも、
やはり色々とあったらしい。


みんな体を壊したり、ノイローゼになったり、
事故に遭っていたり……。

Eちゃんは私がこんな目に遭わないように、
仕事を辞めるよう説得してきたのだった。


そんなことがあってから数年が経ち、
現在、私は職場の先輩に紹介された人と結婚し、
新居に移った。


先日、その新居にEちゃんが遊びに来てくれた。

夫となった人に会わせると、
Eちゃんはとても喜んでくれた。


「もう大丈夫だね、Mちゃん。
 これからはこの人がMちゃんを守ってくれるよ」

私はこの時にはもう悟っていた。

なぜ可愛くて男子からも人気のあるEちゃんが、

私のような地味な子と一緒にいるのか。


なぜ頭の良いEちゃんが、
わざわざレベルを落としてまで
私と同じ高校に進学したのか。

なぜモデルになりたいと言っていたくせに、
せっかく入れた芸能事務所を辞めたのか。


昔から、私が1人で出かけようとすると、
Eちゃんはよくついて来たがった。


ビジュアル系なんて興味ないくせに、
ライブにまでついて来たし、

買い物だって美容院だって、
わざわざ私の趣味に合わせて
くっついて来ていた。


全部、私を守るためだったのだ。

中学で初めて会った時、
Eちゃんは私の背後に憑いている
者の存在を気にしていた。


そして、その者が引き寄せる
数々の悪い者から、Eちゃんは
ずっと私を守ってくれていたのだ。


Eちゃん曰く、今の旦那と一緒にいれば、
私はもう大丈夫らしい。

肩の荷が下りたように、
Eちゃんは晴れ晴れとした顔をしていた。


そして今、Eちゃんは変わらず
夜の仕事を続けながら、

きちんとした指導者について
除霊の勉強をしている。

1人でも多くの人を救うために。

その勉強はものすごく辛いものらしい。


今まで無意識だった能力を意識して使おうとすると、
よく分からないのだが、力が暴走するらしい。


そのせいで、
見たくないものが部屋に横たわっていたり、
色々な者が寄ってくる影響で、
体を壊して何度も病院に運ばれたりしている。

それでも彼女は頑張り続けている。

私はもう一生、
彼女には頭が上がらないだろう。

Eちゃんと出会わせてくれたことを、
神様に感謝したい。


以上、

嘘っぽいところもあると思いますが、
すべて実際に起こったことです。





タグ:友人 霊感 除霊
posted by kowaihanashi6515 at 00:14 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月12日

思春期だった俺、ついつい見てしまった結果・・・【怖い話】





高校2年生だった7月頃の話。

その日は定期テストで早く帰れたこともあり、
普段から人が少ない路線なのにさらに電車がガラガラだった。


音楽を聞きながら携帯を弄っていると、
向かいの座席にカップルが座ったのが視界の端で見えた。


最初こそ気にしていなかったのだが、
女の方が男の頬にキスをした。

それも何回も。


視界の端で見えただけだったが、
そこは思春期だった俺、ついつい見てしまった。

男は中肉中背のハゲたおっちゃん。

女は日本人ではなさそうなアジア系のお姉さん。

当時の俺は、外国人のパブのねーちゃんでも連れてるんだと思ったが、
どうも男は女のイチャつきに嫌そうな顔をしていた。

昼間の電車で堂々とキスって・・・、
国によっては普通なのかなと俺は考えていた。


しばらくチラチラ見ていると、
女がキスするのをやめて男に何か話しかけていた。

俺は音楽を聞いていたので内容は全く分からなかったが、
女が男の頬に顔を近づけたまま何やらブツブツと喋っている。

その時、

「あ、この女の人、変な人なんだ」、

そう思って目を逸らそうとした。

だが、ちょうど男と目が合った。

ちょっと気まずい感じがしたので、
また下を向いて携帯を弄ることにした。

周りの人は全く見ていなかった。

それでもやっぱり気になるので、
カップルを視界の端で見ていた。

それからしばらくすると、
女がキスをやめて俺の方をまじまじと見てきた。

向かいに座っていたからそう感じるだけだと思ったのだが、
顔を上げるとしっかりと目が合った。

それが不気味だったこともあり、
俺は地元の駅に着いた瞬間に急いで電車から降りた。

家に帰ってからは夜中まで翌日のテストの勉強をした後、
さっさと布団に入った。

すると、頬に何か当たった感触がした。

唇だ。

俺は怖くて目を開けられなかったが、
その唇の主が誰なのかはすぐに想像がついた。

数回キスが続いた後、頬のすぐ横でブツブツと囁き始めた。

日本語ではない言葉でひたすらブツブツと。


その時は、

「あぁ、電車で見たおっちゃんから移ったんだなぁ」とか、

「他の人は見てないんじゃなくて見えてなかったんだなぁ」とか、

「見えたのがバレたから付いて来たんだろうなぁ」などと、

もう怖すぎて逆に冷静に色々と考えていた。

気がつくと寝てしまっていたようで、朝になるとアイツは居なかった。

俺はそこから1ヵ月程、不定期に耳元で囁かれることになる。

気がおかしくなりそうだった。

3回のお祓いも意味がなかった。

でもある時からアイツは現れなくなった。

たぶん誰かが見たのだろう。


それでアイツは今も見た人を付け回しているのだと思う。

アイツが何を伝えようとしていたのかは、今となっては分からない。





posted by kowaihanashi6515 at 20:01 | TrackBack(0) | 洒落怖

ジンカン『人間をついばむ烏はすぐ殺せ』【名作・怖い話】






「人間をついばむカラスはすぐ殺せ」

「でも、そんなカラス見たことないよ。
 カラスは、人間が近づくと逃げて行くよ?」

「見たことがないなら、いい。だけど、見つけたらすぐ殺せ」

「…なんで?」

「…」

俺がまだ幼かった頃。
まだ祖父のする昔話がおもしろいと感じていたあの頃。

もう少しで夢の世界に入ろうかというときに、
祖父はこの話をするのだ。

人間をついばむカラスはすぐに殺すんだ、と。

なんで?と理由を聞くと祖父は押し黙り、
そのうち俺は眠りにつく。

翌朝になると、不思議と心に残ってないというか。
あらためて祖父に尋ねることはなかった。

バジリスクという海外の化け物がいる。

某魔法使いの物語でかなり有名になったと思うが
(俺もそれで知ったのだが)、
これとよく似た東北の化け物を知っているだろうか。

似ているというのは語弊が生じるかもしれないが、
とにかく、産まれ方は似ているはずだ。

それと、俺の故郷は東北のとある町だったから、
関西の部落差別というのはよくわからない。

○○部落という言葉は一般的に使われていて、
もちろん差別の対象になんてならなかったから、
単なる地区の名称として使われていた。

前置きが長くなってしまったが、
俺の住む部落にだけ伝えられる話がある。

『人間をついばむカラスはすぐ殺せ』というものだ。

話は遡って、俺が高校生の頃のことだ。


「人間をついばむカラスが見つかった。
 これから殺しにいくから、お前も手伝え」

「いやだよ、部活で疲れてるんだ。
 それにカラスなんて、ほおっておけばいいじゃないか」

「だめだ。部落の男が総出でカラスを探してるんだぞ。
 お前も探してくれないと困る」

まぁ、大年寄りの祖父が行くのに、
若い俺が行かないってのは無いかな。

そんなことを考えながら、俺は軍手をつけて、
大きめの草刈り鎌を渡される。

じいちゃんからは、汗と、畑仕事の後の独特な香ばしい臭いがした。

「じいちゃん、畑仕事した後はちゃんと風呂入れよ。
 くっさいよ?」

「今日は肥えだめ使ったからな。くっさいのは仕方ない。
 風呂入っても、肥えだめの匂いはとれないんだよ」

そんな話をしながら、祖父と俺は近くの林まで歩く。

この頃の田舎道といったら、
爽やかな青草の香りと強烈な肥料の香りが混ざり合って、
『くっさい』という表現がぴったりだった。


「おう、やっと来たかい。カラスはまだ見つからねぇから、
 お前ぇらもがんばってくれよ」

林に着いて最初に見つけたのは、部落長の五月女(そうとめ)さん。

みんなからは親しみを込めて

『とめきっつぁん』

と呼ばれていた。

「とめきっつぁん、おばんです。
 例のカラス、この林で見つかったの?」

「んだよ。じいちゃんから聞いてねぇのか?
 ここで、昼間に子供たちが襲われたんだよ」

どうやら、夏休みで林で鬼ごっこをしていた小学生が、
カラスに襲われたらしい。

この林は俺も幼いころよく遊んだ林だった。

かつては自分の背丈ほどもあった林の草は、
もう胸の高さにも届いてなかったのだが。

祖父もとめきっつぁんに軽く頭を下げ、今の状況を聞いた。

「とめきっつぁん、部落の男は、
 来れるヤツはみんないるんだろ? 
 獲物がいるのに、カラスは襲ってこないのか?
 人間を襲うのは馬鹿カラスのはずだろう」

「そうなんだよな。子供が襲われてから、
 すぐどっかに隠れてしまって。出て来ねぇんだ。

 まぁ、焦ることはねぇよ。
 本当に人間をついばむカラスなら、すぐ我慢できずに出てくんだ」

話を聞くと、件のカラスはそうとうな阿呆のようだ。

人間を見つけると、狂ったように襲ってくるらしい。

手で払っても逃げないから、草刈り鎌で簡単に殺せるそうだ。

「とめきっつぁん、なんでそのカラスは殺さないとダメなんだ?
 ほおっておいていいんでないの?
 じいちゃんに聞いても教えてくれないんだ」

「まぁ、な…教えてやってもいいんだけど、
 お前、まだ学生だべ?あんまり難しいこと気にすんな。
 口で伝えるのはダメなんだ。見せないと」

「見せる?そのカラスを?」

「ちげぇよ。んーとな…。とにかく、口で伝えるのはダメなんだ。
 二十歳になって、まだこの部落に住んでたら見せてやるから」

俺はとめきっつぁんと一緒にカラスを探しながら、
林の奥にある森へと進んでいた。

祖父は俺達とは別の方向を探している。

森の中まで入ると、もう畑の肥料の匂いはしなくて。

夕暮れ時に特有の涼しい草の香りでいっぱいだった。

部活で疲れた身体に心地よい、爽やかな青草の香り。

涼しい風と、まだ夜にならないからか、
遠慮がちに聞こえてくる虫の声。

だから、その時は危機感なんてまるで無かった。

言うなれば、部活で疲れてだるい身体の回復時間。

しかし、その気分を壊す怒号が聞こえるのだ。

「なんてことをしてくれたんだ!このクソアマが!!
 なんて大馬鹿なんだ!!」

聞こえてくるのは、自分たちのいる位置から東。

夕日が沈むのとだいたい逆の方向だった。

「じいちゃんの声だ」

「んだな。何事だ?声が聞こえるってことは、
 すぐ近くだ。こっちから…」

「おーい、じいちゃん、どうしたんだ?」

草をかき分け、東へと進む。

祖父の姿はすぐには見つけられなかったが、
だれかのことを『クソアマ』なんて言う祖父は、
後にも先にもそのときだけだったから、
すごい異常事態だってことは何となくわかっていたのだが。

「うああああああああ!!!死んでる!!
 じいちゃん、この人死んでるよ!!」

そう叫んだのはもちろん俺。

まさか、首つりの自殺死体を見るとは思っていなかったから。

死んだあとどのくらい時間が経っているのだろうか。

頭部は禿げ散らかり、
着ている服からでしか女性であることが分からないほど、
首つり死体は腐敗していた。

爽やかな青草の香り?

そんなものを感じていた自分は、いったいどこの馬鹿だろう。

初めて嗅ぐ人間の腐ったにおい。くっさい、腐ったにおい。

ゆらゆら揺れるその死体に、祖父は罵声を浴びせていたのだ。

この野郎!よそ者が!クソアマが!と。

「じいちゃん、何してんだよ!?死んでんじゃんか、
 この人!うああああ!!」

近寄れない俺を追い越して、とめきっつぁんが一歩踏み出す。

なかばパニックになって、とめきっつぁんの存在を忘れていた。

「・・・・」

とめきっつぁんは何も言わなかったが、
死体に向かって持っていた草刈り鎌を投げつける。

彼もまた、怒っていた。

「どうしたんだよ、二人とも!死んでるってこの人!!
 どうする… どうすればいいんだよ!?」

「この、クソ・・・もう遅い。カラスが見つからないのは、
 このクソアマのせいだ。こいつのせいだ」

何が正しくて何が間違いなのかは、
高校生の俺には判断できなかった。

祖父ととめきっつぁんの声を聞いて
次第に部落の男たちが集まってきたが、

同じように罵声を浴びせるジジイもいれば、
俺と同じで首つり死体を直視できない中年のおやっさんもいた。

「もう夜が来る。たぶん明日だ。
 みんな、できれば今日中に、蜘蛛を見つけるんだぞ。」

よほど興奮しているのだろうか、
とめきっつぁんは唾を撒き散らしながらみなにそう告げた。

俺たちはぞろぞろと森を抜け、林を抜け、家へと帰る。

玄関先では俺の父が帰りを待っていた。

父は仕事から帰ってきたばかりらしく、まだネクタイをしていた。

祖父から事の顛末を聞いた父は、

「明日すぐ、蜘蛛を探す」

と言っただけで、俺に声をかけることはなかった。

聞きたいことは山ほどあったが、尋ねることはできなかった。





翌朝のことだ。

いくら田舎の高校生とはいえ、
朝5時に起きるほど健康的ではないのだが、
父から叩き起こされた。

「これからドスコイ神社に行く」

ふざけた名前の神社だが、通称ドスコイ神社。

部落の子供が必ず一度はその敷地で相撲をとって遊ぶことから、
その神社はドスコイ神社と呼ばれていた。

「昨日のことで?」

「そうだ。人間をついばむカラスのことだ。
 ドスコイ神社にあるんだ。

 お前はまだ若いし怖がらせたくはなかったんだけど。
 まぁ、でも、二十歳になったらなんて目安でしかないからな。

 お前は妙に落ち着いてるから、見せても大丈夫だろう」

「父ちゃん、今日は仕事休むの?」

「ああ。お前も今日は部活は休め」

父からボン、と濡らしたタオルを顔に向かって投げられる。

洗面所にも行かせてくれないらしい。

すぐに身支度をして、ドスコイ神社へと向かう。

朝5時に起こされたとか、大会が近い俺に部活を休めとか、
普通なら俺が怒っても不思議じゃないことはたくさんあったけど。

皆が過剰に反応する

『人間をついばむカラス』

の正体がとうとう分かるんだという期待に、
些細なことは気にならなかった。


「父ちゃん、人間をついばむカラスって、妖怪かなんかなの?」

「カラスはカラスだ。ただの鳥だよ。
 それにな、もうカラスじゃないんだ。
 俺たちが殺さないといけないのは」

「殺すって・・・」

「ほら、もうドスコイ神社だ。
 あの本殿の中にあるから。

 俺に聞かれてもうまく説明できないし、
 俺だって…いや、なんでもない」

「?」

いつのまに預かっていたのか、
父はごつい鍵を取り出して本殿
(といってもかなり小さいが)の錠を開ける。

扉を開けるとほんのりと墨の香りがした。

本殿の中には御神体なんてなかった。

いや、御神体どころか何もない。ただの部屋。

「何もないけど?」

「何もないか」

「…何もないよ」

「……」

「いや、何もないから…え?」

その時、懐中電灯の照らすその先にかすかな、しかし確かな違和感。

茶色のはずの本殿の壁が、ところどころ黒いのだ。

経年による染みか…。いや、そうではなかった。

明らかに人為的な曲線。

壁一面どころか、天井にまで描かれている大きな絵。これは絵だ。

壁をなぞるように光を這わせ、その絵が何なのかを見る。


その物語は、右の壁から奥の壁へ、
左の壁を経由して天井で終末が描かれていた。

墨で描かれた真っ黒な鳥。その鳥がつくる漆黒の巣。

その巣から産まれる真っ黒な卵。

その卵が割れると、そこから血しぶきをあげる真っ黒な・・・・

人間?

周りに描かれた『普通の』人間を、
その黒い人間が蹂躙している。俗な言い方をすると、
ぶっ殺している。

そして最後は、その黒い人間は小さな無数の蜘蛛に囲まれ、
大きく両腕を広げていた。

信じる信じないとかではなくて、それ以前の問題だった。

ただ、その絵が正常な人間が描いたものではないことぐらい、
美術2の俺にもわかっただけだ。

「何この絵、気持ちわり」

「神社の入り口の石碑な。
 あれ、流暢な文体で読めたもんじゃないが、
 もう高校生だからなんとなくわかるだろ。
 『口伝は駄目だという口伝』。そう書いてある」

「だから絵で伝えようって?」

「そう。お前はがっかりするかもしれないが、じいちゃんも、
 とめきっつぁんも、本当のことは知らないんだよ。
 だけど、昔の人は厳しかったからな。

 お前よりも父ちゃんが、父ちゃんよりもじいちゃんが、
 カラスを怖がるのはしょうがないんだ」

つまるところこの絵は、先人たちが描いた化け物への防衛策。

「父ちゃん…この絵。伝えたいことは大体分かるけど、
 でも分かんないよ」

「そうだろうな。俺もそうだった」

「教えてよ」

「お前がこの絵を見て思うことが全てなんだよ。
 口伝は駄目なんだ。

 お前なりに解釈して、
 部落の飲み会で自分の考えを語り合って、 
 怖がって、それを繰り返すうちに、

 『人間をついばむカラス』は殺さないといけないと、
 みんな思うようになるんだ。
 だけどな…これだけは、口で伝えることになってるんだ」

そう言って、父は人差し指を下に向ける。

つられて下に懐中電灯を向けると、大きな太い字で

『人間』

と書いてあった。

「ニンゲン?」

「ちがう。これは『ジンカン』と読む。これから殺すんだ」

正確には『人間をついばむ』ではない。

カラスは、髪の毛を狙っているのだ。
人間の髪の毛だけで黒の巣をつくるために。そう思った。


その日の夕方には、
部落の家という家の玄関先に
蜘蛛の巣が張られていた。

ミニトマトを育てるときなんかに立てる支柱を2本地面に刺して、
その間に巣食わせていた。

「変な宗教団体みたいだ」

理由を知らなければ誰だってそう思うだろう。

しかしまぁ、よくみんなうまい具合に蜘蛛の巣を張ったものだった。

「必死になればな。
 こうしないと死ぬかもしれないって思ったら、
 意外と出来るもんだ」

「あの絵の通りなら、ジンカンを殺すのは蜘蛛ってこと?」

「…そうだな。みんなそう思ってる」

「あの絵描いた人、頭悪いね。文章で残せばよかったじゃないか」

「その通りだな。だけどきっと、
 頭悪いから文章では残せなかったんだよ」

父と俺はひときわ大きな女郎蜘蛛を捕まえて、巣食わせた。

祖父はというと、他の家の蜘蛛の巣つくりを手伝っていた。

「うちの蜘蛛より大きいのは、とめきっつぁんのとこぐらいだね」

父は小さく「そうだな」と言うと、さっさと風呂に入ってしまった。

いつもより無口なのは仕方ないだろう。こんな日なんだから。


その日の夕飯は夜9時近くになってしまったが、
その時間になっても祖父は帰ってこなかった。

正直俺は『ジンカン』なんて信じきれてなかったから、
「じいさんまだ頑張ってるのかね」となかば呆れていたのだが。

「大変だ!やられた!
 とめきっつぁんがやられた!ジンカンだ!」

真っ青な顔をして、
白いシャツに鮮血を付けた祖父が
勢いよく茶の間に駆け込んできた。

固まる母と俺を尻目に、
父はゆっくりと箸を置き頭をポリポリと掻いて、
祖父にまず落ち着くように促した。

「親父、どういうことだ。とめきっつぁんはどうなってる?」

「死んだ!完全に死んだ!これを見ろ、とめきっつぁんの血だ!
 まずいぞ、蜘蛛じゃない!ジンカンは蜘蛛じゃ殺せないんだ!」

「落ち着けって!とめきっつぁんの家族はどうした?
 あそこは小さな孫もいたはずだろう」

父は努めて冷静だった。

パニックに陥っている祖父の断片的な話を紡ぎながら、
事実確認を急いだ。

「家族はみんな、公民館に逃げてきて無事だった…
 だから公民館で、見回りから帰ってきた俺に、
 とめきっつぁんの様子を見てきてくれって!
 とめっきっつぁんはやられてた!」

「やられてたって…どんな状態だったんだ?」

「穴だらけだった!血が噴き出していた!」

祖父がその時思い出していた光景はどんなものだったろう。

祖父はその場で吐いた。

カン、カン、カン。消防の鐘が聞こえた。

部落の住民全員に知らせる、緊急事態の鐘の音。

「公民館に行くんだ。今日はみんなで集まるんだ。守るんだ」

そう言ったのは祖父だったか、
父だったか、母だったか、それとも俺だったか。

それを憶えていないのは、
その直後の衝撃が大きすぎたからだ。

「父ちゃん、なんか臭わない?」

「…ああ。なんか、臭いな」

「これ、最近嗅いだことのある臭い…これって…」

最近どころじゃない。昨日嗅いだ。
死んだ人間の腐ったくっさいあの臭いだ。

「じいちゃん、死んだ人の臭いがする!」

「俺じゃない…この臭い、外からするぞ」

父は勢いよく立ちあがり、物置へと走った。

母は相変わらず茫然自失で、
身支度をするでもなく座ったままだった。

ドン!と玄関の戸を叩く音が響く。

何事かと思い、祖父も俺も戸のほうを見て固まる。

一瞬の静寂。

「…ジンカン?」

今まで黙っていた母がそう言った瞬間だった。

ドンドンドンドン!!

正常な人間ならこんな戸の叩き方はしないだろう。

ドン、ドン、バリン!!

そうだ。戸が壊れたのだ。

俺たちが今いる茶の間は、
玄関から廊下とふすまをはさんですぐだったから。

それが目の前に現れるのもすぐだった。

ジンカンは存在した。

「うわぁぁあああああああ!!化け物だ!ジンカンだ!」

人間の形をした、人外の化け物。

その身体は絵のとおりに真っ黒だった。

その腐ってただれた身体には人間で言う左腕が無かったが、
そのかわり右腕の動きが異常だった。

その動きをどう言い表せばいいか分からない。

多分、どんな単語を組み合わせても表現できない。

こんな化け物を蜘蛛で殺せると本当に思っていたのか。

ジンカンを見て本当のパニックに陥ったのは母だった。

「はわぁあああああ」

と叫びながら両手を胸の前で震わせ、
もはや立つことすらできなかった。

ジンカンはその顔を人間では考えられない角度に
ぐるりと回転させ、明らかに祖父に狙いを定めた。

祖父は動けないでいた。

「どけ!離れろ!」

その時だ。

父がバケツ一杯にガソリンを汲んできて、
ジンカンに浴びせたのだ。

ジンカンは微動だにせずその触手を祖父に伸ばしたが、
父が火をつけると、まるで人間のように悶えながら
廊下に転がった。

「これが幽霊とかじゃないなら、これで死なないとおかしい、
 殺せるなら、死なないとおかしい」

息を切らしながら、父は呪文のようにつぶやいていた。

転がるジンカンは叫ぶこともなく、
空気の抜けていく風船のようにしぼんでいき、炎とともに消えた。

「なんだったんだ…」

祖父は、やっぱり年寄りだから。腰が抜けて動けなかった。


俺は公民館に行くよう、
事の顛末のメッセンジャーの役目を頼まれた。

父と祖父は多少なり残った火の完全消火をし、
そのときの母はというと、まるで使い物にならなかった。

はじめは信じられないでいた部落の住民も、俺の家の有り様と、
とめきっつぁんの遺体を見たら何も言えなくなった。





翌朝のことだ。

繰り返しになるが、いくら田舎の高校生とはいえ、
朝5時に起きるほど健康的ではないのだが、
父から叩き起こされた。

「疲れているだろうが、悪いな。これからドスコイ神社に行く」

「…昨日のことで?」

昨日の朝とまったく同じやりとり。

しかし神社への道すがら、父は教えてくれた。

「あの絵な…俺は、前から思っていたんだ。

 『蜘蛛がジンカンを殺す』

 んじゃなくて、

 『蜘蛛を目印にジンカンが襲う』

 んだと。

 もちろん他の人にも言ったさ。
 じいちゃんにも、とめきっつぁにもな。
 でも誰も同意してくれない。

 なんで俺以外そう思わないのか不思議だった。
 あの絵の描かれ方だと、まるで蜘蛛は
 ジンカンの手下って感じだろう」

「そう言われるとそうとしか見えないかもしれないけどさ。」

そうして父と俺は、あらためて神社に描かれた絵をみる。

「父ちゃん、俺、今思ったんだけどさ…」

「なんだ?」

「この話、天井から始まるんでないの?」

この絵は右の壁から読むと、
カラスが産んだ卵から血しぶきをあげるジンカンが孵り、
人間を殺しまくって、最後に蜘蛛にやっつけられる話になる。

だが天井から読むとどうだ。

蜘蛛を従えるジンカンは人間を殺して、
最後にはカラスの産む黒い卵で血しぶきをあげて死ぬ。

そんな話になる。

「本当は、逆だったんだ」

父はポツリと言った。

「『人間をついばむカラス』がジンカンを産むんじゃない。
 そのカラスの卵が、ジンカンを殺す卵だったんだ」

本当にそうなのか、本当は違うのか、それは今でもわからない。

あれ以来、ジンカンどころか、
人間をついばむカラスも見つかってないから。

だけど、たぶん本当だ。

だって、あのときのジンカンはもう現れないから。
死んだのだから。


最後に、部落の子供に

『人間をついばむカラスはすぐ殺せ』

と教えることはなくなった。

むしろカラスはほうっておくように教える大人が増えている。

部落で毎年行われていた

『カラス追い祭り』

なる祭りも無くなった。

今の部落の長は、ジンカンに殺されたとめきっつぁんの息子。

彼もまた、みなから親しみをこめて

『とめきっつぁん』

とよばれている。


「とめきっつぁんの葬式は?」

「今日、明日は無理だろうな」

ドスコイ神社からの帰り、
父と俺はとめきっつぁんの葬儀の心配をしていた。

俺は見ることはかなわなかったが、
昨日の夜のうちに父はその凄惨な遺体を見てきたらしい。

「葬式にはとめきっつぁんの親戚も来る。
 お前はもうわかってると思うが、絶対に言うなよ。
 この部落に住んでいない人間に教える必要はないし、
 口で伝えるのは駄目なんだ」

「…何で?」

「言わせるな。言わなくてもわかるだろう」

また『口伝は駄目だという口伝』か。くだらない。

それでとめきっつぁんは死んだというのに。

なんで口伝は駄目なんだよ。

「きっと理由があるんだ」

俺の心の中を見透かしたかのように、父は優しい口調で言った。

「家を直さないとな。ガソリンじゃなくて灯油にすればよかった」

「最初、父ちゃんだけ逃げたのかと思ったよ。
 何も言わないで物置行くんだもの」

「馬鹿言うな。お前だけならともかく、
 母ちゃんもじいちゃんもいたんだぞ。俺だけ逃げられるか」

もちろん冗談。

もしあの場に父と俺だけしかいなかったとしても、
父は逃げたりしなかったろう。

家に帰ると、駐在さんが玄関口で待っていた。

よほどイラついているのか、足元には煙草の吸殻が散乱していた。

父は駐在さんのことを『赤坊主』と呼んでいた。

いつも赤のインナーシャツを着て坊主だからではなく、
いや、実際そうだったのだが。

何と言うか。控えめに言って、父と駐在さんの仲は最悪だった。

「おいこら赤坊主。そこは家の敷地だ。煙草を拾え」

父と駐在さんは同級生だと聞いていたが、
その日は父の方が優勢だった。

前の日の夜、恐怖に駆られ一番早く公民館に逃げ込んでいたのが、
あろうことか駐在さんだったからだ。

「朝っぱらから何の用だ。仕事しろ」

「うるさいよ。俺だってお前のところなんか来たくなかった」

駐在さんは煙草を取り出して火をつけると、
大きく一回吸って俺に向かって煙を吐いた。

俺も駐在さんが嫌いになった。

「赤坊主、今すぐ帰るなら許すから、すぐ駐在所に戻れ。
 昨日俺の家の中は見せただろう。
 今さら警察じみた真似するつもりか」

「お前はいつだって俺を馬鹿扱いするんだな。
 俺だってこの部落の人間だ。
 俺だってとめきっつぁんの死様は見た。

 何がとめきっつぁんを殺したかくらいわかってる。
 お前の親父さんにどうしても聞きたいことがあってな。
 でも部屋から出てきてくれないからお前を待っていた。

 それにしてもお前の嫁さんは何なんだ?昨日のこと、
 さっぱり憶えていないじゃないか」

「帰れ」

駐在さんを言い負かす父は爽快だったが、
次第に二人は俺に聞こえないようにコソコソ話をし始めた。

父の表情が変わり、俺をちらちらと見て、
駐在さんは相変わらず煙を吐いていた。

「赤坊主、とりあえず帰れ。俺は見てないから意見は控える。
 親父には俺から確認する」

「そうしてくれ」

駐在さんはいかにも不機嫌そうな顔をしていたが、
今日の父には勝てないらしく、
足元の煙草を足で適当にまとめて手のひらにつつんで、
帰って行った。

昼食時になっても祖父は部屋から出てこなかった。

母はというと、情けない話だが
本当に昨日の晩のことを憶えていなかった。

そうでなければ母も部屋にこもっていただろう。

「本当なのよね?そうでなきゃ、
 家、焼けているのはおかしいものね」

昼食の後、父と俺は林に向かっていた。

「林のとこ行くぞ」

と言われたから、
てっきり大工の林さんの所へ行くものかと思っていたのだが。

「父ちゃん、『林』って林さんのことじゃなかったの?
 紛らわしい言い方しないでよ」

「カラスが出た林のほうだ」

「探すの?」

「確かめるんだ」

林の前ではたと足が止まってしまった。

いろんな事が重なりすぎて思い出すまで忘れていたが、
林の先の森の中には首つり死体がある。

正直、あのにおいはもう体験したくなかった。

「めずらしく赤坊主が仕事したらしくてな。
 おとといのうちに首つり死体は片づけたそうだ」

本当にあの駐在さんが腐乱死体を
片づけられたのかは不安だったが、
父を信じて林を越えて森に入った。

「いいか、真上を探そうとするな。斜め先を見上げるんだ」

「わかってるよ。俺だって鳥の巣を見つけるのは得意だった」

強がりを言ったものの、
大きくはない森とはいえ鳥の巣ひとつ見つけるのが
どれだけ大変か想像してほしい。

その上、昨日の今日でこの森の中だ。ものすごく怖いのだ。

「カラス、飛んでないね」

「あんまり背の高い木はないな。カラスは高い木に巣をつくるんだ」

「それ、見つけるのって無理じゃないの?」

「探して見つけられなかったら仕方ない。探すだけ探してみよう」

父に言われたとおり斜め上を注意して探しながら、
とうとう黒い巣を見つけた。

驚くことに、俺でも背を伸ばせば手の届く高さの枝に
髪の毛の塊があったのだ。

「もしかして…これ?」

もしかしなくてもそれだった。

本当に髪の毛だけでつくられたその巣の中には、
まるで人間が造ったような艶のある漆黒の卵があった。

しかも鶏の卵ぐらいに大きいのだ。

「よく見つけられたね」

「必死になればな。
 こうしないと死ぬかもしれないと思えば、
 意外とできるもんだ」

いつぞや聞いたその台詞は、その時は何のことかわからなかった。

卵は持ち帰った。

さすがに家に帰った頃には祖父が部屋から出てきていたが、
黒い卵を見るなり「ギャー」と叫び声をあげて、
また部屋にこもってしまったが。

「割るぞ」

「割るの!?」

「割る。神社の絵に従うなら、この卵を割ってジンカンの最後だ。
 ガソリンかけて焼け死んだのなら、それに越したことはないが」

「…さすがに割るのは怖いね。ジンカンが出てくるかも」

父はクスリと笑った。

俺が冗談で「ジンカンが出てくるかも」と言ったのが分かっていたから。

「この卵が割れていないのが何よりの証拠だな。
 ジンカンは、カラスの卵からは産まれない」

「でも中身は気になるね。何がはいっているんだろう」

父はまさかのグーパンチで真上から卵を叩き割った。

勢いよく割ったのは、きっと父も多少なり怖かったからだろう。

「…何も入ってないな」

「何か入っていても、グーパンで叩き割ったら潰れるでしょ」

「いやいや、本当になんも入ってない。
 ほら、こぶしもきれいなままだ」

「ちょっとあなた、廊下に何塗ったの?」

その時だ。母がつま先立ちで茶の間に入ってきた。

「廊下にペンキでもこぼしたの?真っ黒なんだけど」

父と俺は顔を見合わせて、そういうことかと頷いて。

母を安心させるためにこう言った。

「うん。ペンキをこぼしてしまったんだ」

何も臭いはしなかったから。くっさい臭いはしなかったから。


その日の晩だ。父はこっそりと教えてくれた。

「朝な、赤坊主のやろうが来てただろ。あいつ、
『首つり死体には、最初から左腕は無かったのか』って。
 もう終わったことだから、じいちゃんには言うなよ」

俺は強くうなずいて。その夜はよく眠れた。


とめきっつぁんの葬儀は部落をあげて行われた。

とめきっつぁんの親戚も来ていたが、
遺体を見せることは決してなかった。

彼は『不運な事故』で死んでしまい、
今もそういうことになっている。


その後、紆余曲折あって、
ドスコイ神社のあの絵は描きかえられた。

描いたのは大工の林さんと、駐在さん。
彼はがさつに見えて、繊細な絵を描くものだと父と感心した。

ただ、大きく変わったことがひとつだけ。

絵以外は何もなかったドスコイ神社の本殿には、
立派な御神体が置かれた。

まるで人間が造ったように美しい、漆黒の卵だ。

父と俺が見つけた卵は二つあったから。

『口伝は駄目だという口伝』

もうジンカンが現れないなら、
ドスコイ神社はただの神社になるのだろう。

誰も伝えないのだから、きっとそうなる。<
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2018年10月10日

福島の保育所「だってうぢのばーちゃが!食べろって言っでだ〜」【怖い話】





福島から5月頃、関東に避難してきた。

それまでの地元は、

避難制定地域よりもわずか数キロ離れているってだけ。


数キロ先は『もと人里』で誰もいない。


でも自分達の場所は衣食住していいよ、の地域。


目に見えない恐ろしいものと戦い続けるくらいなら、

と転居を決意。



転居に伴い、子どもは4月末まで保育所に預けていたんだけれど、

その保育所の登所最終日に起こったことを今から書こうと思う。


その最後の日も、変わらず朝から預けにいった。


「寂しくなります、お世話になりました」


と先生方へ挨拶し、園児達へのささやかなものを渡し、

いつものように子どものクラスでおむつなどを準備していた。


そこへおじいちゃん(見た目判断だが)と一緒にAくんが登所してきた。

4才クラスに4月から入所した子で、何度か


「おはよー」


と声かけしたことがある。


その時もいつものように


「Aくんおはよう」


と声をかけた。


するとAくんは私のところにまっすぐ歩いてきて、

両手でおにぎりのようにしている手を差し出してくる。


なんだろう、泥だんご?折り紙のなにか?

など色々考えていると、

Aくんは無表情のまま、三角にしているおにぎり型の手、

指と指の間からその中身を見せてきた。


知っているだろうか、カマドウマという虫を。

うさぎ虫とか、ぴょんぴょん虫とか、そんな呼び名もある。



鳴きもせず、音も出さず、

個人的に生命力の強い虫だと思っている。


ティッシュ箱で思い切り


「べし!!」

と上から潰し、

死骸が気持ち悪いので旦那にとってもらおうと呼んできて、

ティッシュをそっとどけると既にいない。



え!?どこ行った!?と見回すと、

天井に張りついていたり。


前に飛ぶかと思いきや、真横ジャンプもしてくるというキモさ。


私はこの、はちきれんばかりの腹をした

グロテスクで跳躍力の高いカマドウマが大嫌いだった。


Aくんの手の中には、

カマドウマの中でも特大クラスに入るようなものが入っていた。



多分私の顔が物凄いことになっていたんだろうと思う、

先生が


「どうしました?」


と駆け寄ってきた。 まさに、その時。


はがしょっ


というような音がしたと思う。




言葉に書くとうまく伝わらないけれど。


Aくんは物凄い速さで、私の目の前でカマドウマを食べた。


「ぎゃあああああああ!!!!」


と先生の声。


Aくんの口から4本くらいはみ出ているカマドウマの足。


私、頭真っ白。


でも次の瞬間、私はAくんの口に左手を突っ込んでいた。



焦点はAくんに定まっておらず、

ずっと床のシミみたいなものを見つめていた記憶がある。


だけど、どこかで冷静な思考の自分がいて


『なんとかしなくては』


とも思っていた。



直視しないように視界のはじっこに見えるAくんを捉えながら、


右手でAくんの頭を押さえ、

左手の指でAくんの口の中身をかき出していた。



そのうちAくんが


「うえっ、ぐぇっ」


と言ったと思うと、大量に嘔吐。



私の左手から肘にかけて、ゲロまみれ。


「おめぇAさ何してんだ!!」


と、Aくんのおじいちゃんが私を引き離し、突き飛ばされた。


そこでようやく先生方数人が間に入ってくれた。


はーっ、はーっ、と半ば放心しながら必死に呼吸して、

手を洗いに行ったのだが、


「だってうぢのばーちゃが!食べろって言っでだ〜うあ〜」


と泣いているAくんの声が聞こえた。


その後は当時の状況など話すべきことを話し、

先生達にお礼?を言われ保育所をあとにした。



足が地に着かず、

脳内ヒューズ飛んだみたいなまま車に乗って・・色々考えた。


こんなことがあってもその場の処置は3分とかからず、

次見た瞬間には、主任先生の呼びかけで

みんなが楽しそうに歌を歌っていたので、


さすが長年の保育士はすごいなあとか、

おじいちゃんに突き飛ばされてひっくり返った私の

格好ダサッとか。


でも、それでも忘れられない。


Aくんが無表情でカマドウマを食べた、

あの瞬間の音。はみ出た足。


その一件を含む最近の園児について、

所長先生からお話されたことも。


「震災から1ヶ月・・・Aくんだけじゃない、


たくさんの子が不安定になっている。



切り刻んだ人形を持ってきた子もいた。


友達の首を絞めて「苦しい?」と聞いている子も。


 子ども達もギリギリのところなんだと思う」


そのお話が頭から離れず、

自分の子達の顔を思い出しては切なくなるばかりだった。



一変した環境、生活、ピリピリした街の雰囲気、

屋内遊びしか出来ないもどかしさ。



コントロールできる範囲では笑えている子ども達でも、

その奥には深い傷を負っている。


そんなストレスをどうにかできる術や思考を、

子ども達は持っていない。



だからAくんのようにいきなり虫を食べてしまったり・・・ん?


と、ここでようやく所長先生の最後のお話が気にかかった。



お話のあと、



「余計なお世話かとは思うんですが」



と私が切り出した話。



私「Aくんのおばあちゃんには、


ちょっとお話したほうがいいかと思いますが・・・」



先生「うん、Aくんちね、おばあちゃんは居ないんですよ」


なんだろね、と苦笑いされていた。




posted by kowaihanashi6515 at 00:50 | TrackBack(0) | 人怖

2018年10月09日

祓えない呪い「あなたに憑いているのは 祓えるようなものでは無い。よく今まで生きてきたね」【怖い話】




私の家って
幽霊とかみえたりするっぽくて、
私がはじめてみたのは小学生の頃。


じっちゃんの家(山奥の村的なところ)に
夏休み帰ってたの。


じっちゃんの家は結構でかくて、
柿の木を植えていたのね。

そこに全身真っ青な服を着て
帽子を深くかぶってる人がたってたの。


郵便の人かなって思って、
郵便の人に近寄ろうとしたら じっちゃんが

「見るな」

って言って私の目を手で塞いだのね。

訳がわからないままじっちゃんの家に入って
一日外に出してくれなかったの。


後から聞いた話で、悪い霊らしく
私を連れていこうとしてたんだって。


それから何度も見えるようになって、
修学旅行先とか学校の通学途中とか塾帰りとか
よく霊と遭遇してたの。


地元にいるうちは私の友達とかが
よく助けてくれたの。


前あったのが、友達に

「○○!(名前)」

って呼ばれて腕をひかれたの。

そしたら私の目の前スレスレで
トラックが突っ込んできたの。

「なんでいきなり歩き出したの!」

って怒られたんだけど、

私は確かに立ち止まってたし動いてなかったの。

友達とも学校の話だってしてたのに、
それを言ったら 私は一人でいたみたいで
いきなり赤信号を歩き出したって言われたの。


私の周りで良くないことが起きてる!

ってその時感じたのね。

↑までが中学の時。


高校にあがると同時に、
私トラックにはねられたのね。

両足ぐちゃぐちゃになって入院。

事故をした時に見たのはさ、黒髪の女性なの。

ぼんやりとした意識の中鮮明に覚えてる。


退院してからもその女の人に
つけられているみたいで

事故にあったり、
目の前に物が落ちてきたり
怖かったのは実家に一人で留守番してたとき
いきなりキッチンから炎があがったかこと。

火を付けっぱなしにしてたわけでもないし、

火のつくようなものも周りにおいてなかったの。

でも勢いよく炎が燃え上がって
火傷をおったことがあるな。


親も霊感があった人だから、
私の異常事態に気づいたみたいで お寺に行ったの。

でも、祓ってはくれなかった。


「○○さん。酷な事を言うようですが、
 あなたについているのは
 あなたの家を恨んでいる女の呪いだ。

 祓えるようなものでは無い。
 よく今まで生きてきたね。」

ってどこのお寺の人にも言われたの。


呪いが私になぜ来たのかはわからないけど、
私が死んだら家族の誰かにいくらしい。

数珠やお守りを持っても割れたり、
壊れたりして効果なし。


今19だけど長生きしそうにないらしい。


最近体のあちこちが
悪くなってきてるみたいで、
今この文を親に書いてもらってる。

もう、しゃべることも体を動かすこともきつい。

死を待つだけになってしまったの。

霊感強いって得じゃない。

多分その女の人は私が見えるって分かって
とり憑いたんだろうな。


唯一の愛娘なのに、娘の命を奪われそうなのです。

人生で一番恐ろしい話ですよ。





posted by kowaihanashi6515 at 23:45 | TrackBack(0) | 洒落怖

2018年10月07日

硫黄島が未だに立ち入ることが出来ない開かずの島になっている理由【怖い話】




硫黄島が未だに、
民間開放されてないのはなぜか。

社会常識としては、
硫黄島が軍事上の重要拠点になってるから。

真相は単純。その原理は、
旅館の開かずの間と同じだ。出るんだよ。

夥しい数の英霊が。それも、日米混合で。

硫黄島がベトナム戦争並みの激戦区だったのは、
戦後に左翼とかが頑張ったせいかあまり知られていない。

新しくて『密度』がハンパじゃない古戦場。

しかも、出るのが英霊。

オカルトだけでなく、
政治や軍人遺家族等が織り成す人間的要素が加味される。

それも、日米はもちろん東アジアからも詣でられる。


こういう離島は、硫黄島ほどじゃないけど
アラスカ州のアリューシャン列島にもある。

こちらの方は、島の面積も広いし
要所要所を米国側がきちんとしてて民間人も住んでる。

硫黄島の海みたいに、
大きな戦艦の幽霊船みたいなのが出現したりしないしな。

もし、ゴム筏か何かであの艦船に近づいていったら
今頃どうしてるところだったのかな。


だから、硫黄島から基地が移転することは無い。

何十年経っても、
たとえ防衛省が民営化される日が来ようと、
海運系の華僑や日本の漁師ですら移住できるかは微妙。




俺の姉の旦那が海自で、
2年間硫黄島に出張だったがかなりでるらしいな。

なんか自衛隊でも幽霊対策のルールがあるんだってさ。
寝る前は窓の外に水をいれたコップを置いておく。

朝になるとコップは空っぽになるらしい。

幽霊信じない若い奴がこれやらなかったら、初日深夜に

「熱い〜熱い〜」

と気が狂った様に部屋の壁叩いてたって。

あと土掘るとすぐに人骨がでてくるらしい、
これの回収も仕事。

昼間誰もいないのに軍隊の行進の足音が
迫ってくる事があるらしい。

その時は上官が

「撤収!」

って叫んでみんな逃げるらしい。

ちなみに戦艦の幽霊は見たことないって。



posted by kowaihanashi6515 at 20:36 | TrackBack(0) | 実話系

なまたり「ヤバいよ、あれはだめだよ」【怖い話】




これは俺が中学一年の時の話。

こういうことを言うのも何だがあの頃は楽しかった。

毎週日曜になると友人のAとK、Dと
一緒にいろいろなところへ探検にいっていた。


俺の住んでいた街は、
山間の田舎で過疎化が進み町のいたるところに
空き家や雑木林がありそういうところを探検するのが
俺達は楽しかった。


そしてこれは中学一年の夏休みこと。

俺たちはいつもの様に探検にいっていた。

今回行ったところは町外れの空き家。
外観は塀で囲まれボロボロだが
昔はいい家だったんだろうなと思えるような家だ。


となりには同じくボロボロの神社があり、
かなり雑木林に侵食されいた。

昔はその家に神主が住んでいたというが、
結構前に家系が途絶えたらしい。

それからというもの神社も家も
手入れする人がおらず荒れ果てていた。

俺たちは玄関からその家に入った。

家の中は結構荒らされてて中には落書きや
誰がもってきたかわからないゴミで埋め尽くされていた。


一階を散策しながら

「うわっ、これは歩く場所もねえな」

と俺がぼやいているといち早く二階に登ったAが叫んだ。


「おい!へんな道があるぞ!」

その声に反応しボロボロで底の抜けそうな階段を
みんな二階へ登った。

「道なんてどこにあんの?」

と怪しむKにAは自慢げに窓の外を指差した。

「あれ!塀の向こうの、」

その指差した方にはその家の裏から
神社の方へ伸びる道があった。

その道は雑木林をかき分けたような獣道のようで
神社の裏の山へ伸びていた。

「行ってみようぜ?」

と言うAにもう夕方だよ、という意見もあった。

しかし、新しい探検場所を見つけたワクワク感
かまわずに行くことになった。

塀を乗り越えてその道に行ってみると
二階から見たよりもしっかりしていて石で舗装もされていた。

しかも、蛇のようにくねくねと曲がりくねっているようだった。

どうせすぐに行き止まりになるだろうと思っていたが、
道を進むにつれ徐々にしっかりとした道になっていった。


一回目の道の曲がったとこには
ちっさな石でできた祠があり
俺たちはその祠に目印として木の棒を立てかけた。

だいたい3回くねくねをまがっかところだろうか、
一つの鳥居が見えてきた。

その鳥居は古く赤い塗装もほとんど剥がれ
ほぼ鳥居の形に木が組まれているだけのものだった。

「どうする?」

Dがつぶやいた。

確かにその鳥居以降は異様な空気が流れていて
進むなと第六感が言っていた。

だけど、非日常が与えてくれた高揚感には勝てなかった。

そのつぶやきには誰も答えず俺たちは足を進めた。

今思うとそこで引き返すべきだったのかもしれない。

鳥居を越えるとさっきのよりも
もう少し新しい鳥居が見えてきた。

その鳥居からは階段になっていてまた奥に
前のよりも少し新しい鳥居があるようだった。

「進もうぜ」

それからは異様な雰囲気に飲まれたのか、
俺たちは誰も喋らず黙々と階段を登り続けた。


ただ風の音だろうか、
ザワザワという音だけが聞こえていた。


鳥居は等間隔に、
いや徐々に次の鳥居までの距離は近くなってきている。

また、奥の鳥居に行くほどしっかりとしたものになっていった。

それから15分は登っただろうか、
俺らは、はっとした。

気づくと周りは真っ赤な鳥居が
数え切れないくらい並べられていた。

例えるなら伏見稲荷大社。

だけどあれはそれ以上に赤く綺麗に並んでいた。

「おい、」

Kはそう言った。

その一言で全員言いたいことはわかった。

おかしい、あの廃屋の裏からはこんなところ見えなかったし
こんな場所があるなんで大人も言っていなかった。


「とりあえず、あの白い鳥居が1番上みたいだから、
 その向こうに行ってみよう」

その声に勧められて俺たちは
階段をのぼった先を見ると一つの白い鳥居があった。

それを目指して綺麗な階段を進んだ。

好奇心とはまた違う不思議な気持ちで動いていた。

白い鳥居を抜けると開けた空間があった。

だいたいテニスコート一面分で
その向こうは切り立った崖があった。

その崖にくっつくようにポツンと一つの真っ赤な神社があった。


真上から降り注ぐ強い日の光が
その神社を照らしていてとても綺麗だった。

神社の扉は開かれていてその神社の御神体であるだろう
しめ縄のされた石が見えていた。

神社の中には何か暗い重い空気が流れているように感じた。

そして神社の扉の横には黒い字で

「なまたり」

と書かれていた。


「あの石、もっと近くで見てみようぜ」

その声に勧められて僕とAは足を進めようとしたその時。


Kが俺とAの腕を掴んだ。


「ヤバいよ、あれはだめだよ」

Kは震えながらそう言った。


さっきから気になっていたんだけど
誰が僕らに進めといってるの?

という趣旨の事をまとまらない言葉で伝えた。

その事態を理解したDは叫んだ

「逃げよう!!」

その言葉を皮切りに全員来た道に走り始めた。

白い鳥居を越えてもと来た道を全力で戻る。

風の音だと思っていたザワザワという音が
今では人の話声に聞こえる。

いや、本当に何かの話し声だったのだろう。

よく考えればいろいろとおかしかったんだ。

来る時は夕方だったのに
あの空間は昼間のように日がさしていた。

大体こんなとこに神社があるなんて聞いたことなかった。

そんなことを考えながら
階段を下っているとまたあの声が聞こえた。

「上に戻ろうよ」

全力で走ってるはずなのにしっかりとその声が耳に届く。

誰の声ともとれる誰の声でもない声だった。

俺らは無視してぐねぐねとした道を駆け下りる。

息はあがり恐怖で涙や鼻水が出まくった。

雑木林から飛び出た草や枝が身体に当たり
身体からの赤い液体だらけになった。

だけど怖くて立ち止まる事はできなかった。

何十分走っただろうか。

気づくと俺らは目印を立てた祠の前に戻っていた。


日はすっかり沈み周囲は暗くなっていた。

それから俺らは何も言わず
その日はなにもなかったように帰った。


後日、

そこをまた訪れたが俺らが来た道は
最初からそこが雑木林だったように雑木林になっていた。


あれから何年も経ったが、
俺らの中で誰も亡くなった人はいないし
あの声を聞いたやつもいなかった。

でも、あれ以上進んでいたらどうなっていたかわからなかっただろう。



30年近くも部屋に閉じこもっていた弟【怖い話】



10年程前のことです。

富山県のとある介護タクシー事務所へ所属しており、
今は都内で別の仕事をしている知人Aの話です。

当時勤めていた介護タクシーの事務所では、
家族からの依頼により、
精神障害などで手に負えなくなった方を
自宅から数人がかりで連れ出して、
力ずくで病院へ運送する仕事をしていました。

メインとなる大部分の仕事は、
通常の介護患者の運送をしているので
普段はそんな事まではやらないのですが、
身内を世間に大っぴらにしたくないという

地域性のためか、
そのような強制的な運送の依頼が
ぽつぽつと来ていたそうです。

そんなある日、
市内で何店舗も手広く経営しているような有力者から、

「私の弟を連れ出して欲しい」

との依頼があり、
早速、指定された家に向かいました。

依頼者からの説明によれば、
弟さんはイジメか何かで高校を中退して以降、
30年近くも仕事へ就いておらず、

40代後半の今に至るまで、
ずっと部屋に閉じこもっているそうです。

両親はもう30年以上前に離婚しており、
依頼者も奨学制度で大学に入って以降は独立。

弟さんは70歳前後の母親と二人で暮らしており、
母親は年齢を誤魔化しながらパートなどをして
生計を立てていたそうです。

依頼者は独立して家を出て以降も、時々実家に出向いては、
弟さんを働くよう諭すことに挑戦してきましたが、
会うことすら難しく、母親は母親で、

「本人が辛いと思っているなら無理をさせない方がいい」

と、逆に依頼者へ言う始末。

埒が明かないまま今に至っておりました。

年老いた母親一人だけでは、
二人の生活を養っていくのには
難しいのが目に見えているため、

依頼者は数ヶ月に一度の仕送りをして、
生活の足しにしてもらっていました。

しかし・・・

半年ほど前から母親がパートを
休みがちになっていると耳にしました。

心配になって実家に行くと、
家へ入れてすらもらえず、
何度行っても門前払いばかり。

やむなく最終手段として、
介護タクシー事務所へ依頼してきたそうです。

連絡を受けた知人Aは、
同僚二人と依頼者の計4人で実家へ向かいました。

説明にあった通り、

「おーい!開けろよ!」

「何かあったのか?心配してるんだぞ!」

と、玄関で依頼者が声を張り上げてドアをバンバン叩いても、
ほとんど聞き取れない位のか細い声で、

「入って来ないで・・・

 うちらは心配しなくても大丈夫だから・・・」

と、母親らしき年老いた女性が玄関越しに返答するばかり。

それが最後通告だったようで、

「こりゃ、もうダメだ。

 裏から入って力ずくで連れ出して欲しい」

と、依頼者は知人Aらへ決心を伝えてきました。

依頼者の案内で庭に回り、
腐りかけて弱くなった雨戸を外して中に踏み込みました。

入ってみると、一階はしばらく掃除していなかったようで、
あちこちにゴミが散乱し、異臭すら放っていました。

台所には汚い食器がそのままシンクの流しに放置されており、
ハエが何匹も飛んでいました。

一階の各部屋を回りましたが、
さっきまで呼び掛けに返答していた母親の姿も見えず。

どうやら二階へ行ったのだろうということで、
4人は階段から二階へ上りました。

依頼者によれば、

「二階の手前は倉庫代わりに使っているので、
 恐らくそこには居ない。
 弟が昔から閉じこもっているのは奥の部屋」

ということだったので、
奥の部屋の襖に手を掛けました。

中から何か引っ掛けられているようで、
なかなか開きませんでした。

やむを得ないので依頼者の承諾の元、
襖を持ち上げて外してみました。

その時・・・

中からカビ臭いような生臭いような異臭が漂ってきて、
知人Aは吐き気すらしたそうです。

部屋の中には布団が敷かれており、
母親と一緒に40代の弟が、
まるで子供のように添い寝をしていました。

無理矢理に二人を引き離した時、
弟は子供のように泣きじゃくって抵抗し、
取り押さえるのに難儀したそうです。

母親が、「やめて!乱暴はやめて!!」

と泣きながら必死で止めようとしてきましたが、
それを依頼者が制止しました。

知人Aは弟を介護タクシーへ乗せるのを同僚達に任せ、
取り乱す母親と依頼者のやり取りを見つつ、
部屋の中を見回しました。

まるで昭和50年代あたりから
時が止まっているような部屋で、
子供の読むような漫画やプラモデルなどが大量に置かれ、
テレビも無く、ましてゲーム機や電話も無く、
現代を象徴するような物や、外界との接点を持つ物が、
何一つない異質な部屋でした。

それより異様だったのは、
シミだらけで黄色を通り越して
黒ずみでペラペラになった布団と、
半裸になっている母親の姿。

依頼者には黙っていましたが、複数の状況を見るに、
長年に渡って母親と弟は近親相姦をしていたのでは・・・
と感じたそうです。

30年近くも部屋に閉じこもっていた弟と、
無責任に溺愛していた母親。

地方の片隅にはまだこのような異空間がひっそりとあったのです。
posted by kowaihanashi6515 at 19:29 | TrackBack(0) | 人怖

2018年10月06日

戸締りはしっかりして下さい【怖い話】




これは俺がまだ、学生だった頃だから
もう、5年も前の話になる。古い話で悪いんだが・・・


当時、俺は八王子にある学校の
近くのアパートで独り暮らしをしていた。
その日は、俺の部屋で友人と酒を飲んでいた。


いつもならクダラナイ話で何時間も盛り上がって
いたのだが、その時は少し酒を飲み過ぎた為、
俺も友人も11時過ぎには寝入ってしまっていた。


何時間位経ったのだろ う?

突然、玄関で呼び鈴の音が聞こえた。
時計を見ると0時30分 をまわっていたが、
俺は寝ぼけていたこともあり、

飛び上がる ように起きると、
すぐに玄関の扉を開けてしまった・・・。


すると、そこには25〜6歳位の
グレーのトレーナーを着た男が立っていた。

「なんですか?」

俺は訝しげに男に尋ねた。


「○○さんですね?(俺の苗字)」

男が尋ね返す。


「えぇ、そうですが?」

なおも怪訝そうに答える俺にその男は、
ユックリと落ち着いた口調で話はじめた。

「僕はこの地域の町内会長をしているものです。
 実は、今しがたこの地区で殺人事件が起きました。
 犯人は逃走中でまだ捕まっていません。

 危ないですから 戸締りをキチンとして、
 今日は出歩くのを控えて下さい。 」

俺は、寝ぼけたままで

「はぁ、解りました・・・。」

と言うと玄関を閉めた。


そして、酒の酔いもまだ残っていたのでまた眠ってしまった 。


翌朝、新聞でもニュースでも確認したが
近所で殺人事件など起きた話は載っていなかった。


友達は、「あんなに若い町内会長なんているかよ。」

と不審げに言っていたが、そう言われてみれば、
夜中に警察でもない男が、
近所にその様な注意をして廻る事、
自体 が妙な話だった。

「なんだったんだよ、あいつは?」

その時は少し気味が悪かったが、
しばらくして、そのこと事態を忘れ てしまっていた。


ところが・・・

その2ケ月後に俺は、
その時の男を再度、目撃することになった。

ヤハリ、夜中の0時30分を過ぎたころだった

呼び鈴がなったのだ。

しかし、それは俺の部屋ではない隣りの部屋だった。
1回、そして、2回、どうやら隣は留守 らしい。

だが、呼び鈴は再度、立て続けに鳴った。

「うるせぇなぁ。」

こんな夜中にそれだけならして出てこなければ留守だろ!


俺は少し不機嫌になって、玄関の扉を半分開けた

そこには、先日の男がヤハリ、
グレーのトレーナーを着てたっていた。


俺の扉を開けた音に気が付くいて男が振り向き、
俺と眼があった。


俺は、少し気味が悪かったが、
それ以上に腹も立っていたの で

「隣、留守なんじゃないですか?なんすか?」

と不機嫌に言 った。 


「あぁ、○○さん。

いえこの間の犯人なんですが、
まだ、捕まって居ないんですよ。

だから、捕まるまでは近所の皆さんに、
夜中は出歩かないように注意して廻って るんです。」

俺はムッとして

「この間の朝、新聞もニュースも確認したけど
 そんな事件起こってないじゃないっすか!あんた誰だよ? 」

俺は語尾を荒げながら、その男に言ったのだが、
男はひるぐ 様子もなく

「いえ、そんなことはありません。

 それに、犯人はまだ捕まっていないのです。

 とても危険です。いいですか、
夜中は出歩いてはいけませ んよ。」

と逆に強く諭すように俺に言った。


男の眼が据わっていたこともあり
俺は少し背筋も寒くなり、

「そうっすか。」

と愛想なく言って、
玄関の扉をオモイッキリ閉めて鍵をカケ タ。

腹立たしい思いと、気持ち悪い気分が入り混じった

なんとも奇妙な心持でその夜、俺は寝床についた。


そして、翌日に俺は背筋が凍る思いをしたのだ・・・

その日の朝のワイドショーでは
独身OLの殺人事件が取り上げられていた。
場所は、俺の住むすぐ傍のマンションだった。

寝込んでいたOLの家に空き巣に入った犯人が
物音に気づいたOLを殺してしまったのだと言う。

走り去る犯人の姿を
目撃者した人が語った犯人の特徴は

20代後半の若い男で
グレーのトレーナーを着ていたと・・・・・・

前の晩に俺の見た男の特徴。
そして話の内容に妙に重なって いたのだ。

俺が背筋が凍る思いをしたのは、
その夜になってからだった。


ヤハリ、夜中の0時過ぎに玄関のベルが鳴ったのだ。

俺は、怖くて扉を開ける気にはなれなかった。
が、ベルは、1回、2回、3回となっている 。

扉を開けずに俺が、玄関先で

「誰ですか?」

とたずねると
先日の男の声がした。


「○○さんですか? ホラ、言ったでしょ。
 犯人はまだ逃走中ですよ。戸締りはシッカリして下さいね 。」

その声で、俺は

「ハッとした。窓、鍵を閉めてない・・・。」

急いで、部屋の窓の
鍵を閉めようとカーテンを開けると
玄関に居た筈の男が、窓の前に立っていたんだ。

グレーのトレーナーを着て・・・。

息を呑むという表現が、どんなものなのか、
俺はその時はじ めてしった・・・。

鍵を閉めようと、腕を伸ばした瞬間、男が窓を開けた。

「だめじゃないですか、窓の鍵もしっかり閉めてください。
でないと、僕みたいのが、入って来てしまいますよ。」

そう言って、男は不気味な笑みを浮かべた。

次の瞬間には、俺は悲鳴をあげて、玄関へとダッシュした。

玄関のカギを開け、アパートの廊下に飛び出し、
ドアも閉め ずに一心不乱に走ったんだ。

だけど、背後から、男の声が聞こえて来たんだ。

「○○さん、玄関を開けっ放しにするなんて、とても不用心 ですよ。
それに夜中に出歩くのはとても危険です。
今すぐに引き返してください。」

俺は半泣きの状態だったが逃げ続けた。


だが、男は俺の背後をぴったりとマークして、
全くふりきる 事ができなかった。

それどころか、だんだん男との距離が、縮まりつつあった。

男は相変わらず、

「危険です。」や、「早く戻ってください 」などを、

大声で言い続けていた。


マジでもうだめかと思いはじめた時、
希望の光が俺を照らしたよ。

そう、交番を見つけたんだ。

俺は最後の力を振り絞って、交番に飛び込んだ。

中には、驚いた表情の中年警察官がいて、
それを見て安心した俺は、その場に倒れ、
そのまま気を失った・・・。

目を覚ますと、
メガネをかけた若い警察官が俺を覗きこんで いたよ。

俺が目を覚ました事に気がついた若い警察官は、
さっきの中年警察官を連れて来た。

俺の体調が大丈夫だと分かると、
なぜ急に飛び込んで来て、急に気絶したのかと、
聞いて来たから、俺は事の経緯を話すと、
一緒にアパートに来てくれる事になったんだ。

それから、俺は警察官と言う、
たのもしい護衛を二人連れて アパートに戻った。

警察官達のおかげで、恐怖心はあまり無かったんだと思う。


ようやく、アパートに到着し、
二階の自分の部屋に向かった 。

部屋に向かう時の並びは…

先頭は、若警官 次に俺 最後に中警官だ。
(これが一番、 安全だと思ったんだ。)

部屋の玄関のドアも、若警官に開けてもらった。
(来た時は 、ドアは閉まっていたから。)

若警官が中を覗いたが、部屋には誰もいなかった。

中警官「どこか様子がおかしいところはあるかね?」

部屋を見回したが、いつも通りの俺の部屋で、
特におかしい ところはなかった。

窓も確認したが、カーテンは閉められ、鍵も閉まっていた・ ・・。

中警官「まあ、もうここは大丈夫だと思うから、心配するな 。
後はこいつに任せる事にして、
悪いが俺は先に帰らせてもら うわ。

何かあると困るから、いつでも来てかまわないからな。
それじゃあ、気いつけてな。」

そう言ったかと思うと、
中警官は、若警官を置いて、さっさ と帰ってしまったよ。


それから、若警官と少し業務的な話をしてから、
若警官も帰 る事になったんだ。

若警官「それでは、私もそろそろ帰らせていただきますね。

何かありましたら、先ほどお渡しした名紙の番号まで、
ご連 絡下さい。」

わかりましたと言い、若警官を送り出そうとした時、
急に若 警官の笑顔が無表情に変わった・・・。

若警官「殺人犯はまだ捕まっていませんので、
くれぐれも夜 道を歩く際は気をつけて下さい。

それと、戸締りもしっかりして下さいね・・・。

鍵が無かったので、やむなく
ドアを閉めただけだったんです から・・・。

それでは、お気をつけて、○○さん・・・。」

そして、若警官は今までの笑顔では無く、
気味の悪い笑顔を 見せ、帰って行った・・・。

俺はそれから部屋の全ての鍵を閉め、
玄関にはチェーンをし 、テレビと電気をつけっぱにして、
布団をかぶって、朝までガ クブルしていた。

その後・・・。

夜にグレーのトレーナーを着た男はもう来なくなったが、
俺 は二週間後ににはこのアパートを引っ越した。

学校も転校した。

そうして、今になるが、
グレーのトレーナーを着た男が捕まったと言う話は聞かない・・・。
posted by kowaihanashi6515 at 00:50 | TrackBack(0) | 人怖

2018年10月02日

呪われた中古車【怖い話】




車の免許を取れたのは良いけれど、車を買うお金が無い。

休みの度に、安い車を探して彷徨っていたら、
10回目ほど訪問していた中古屋さんに良い車があると言われました。

D社のM○Xという軽自動車で、
オーナーが10人くらい代わっているけれど、
凄く綺麗な状態。

走行距離も1万`以下で、求めていたMT車。

無事故との説明ではあったけれど、
お値段は車検1年+保険で7万円とのこと。

なんでこんなに安いのか聞くと、社長さん曰く

「オークションで数台車を買って、
 展示スペースが無いから処分したい」

そんな事もあるのかと思い、自分の幸運を喜びながら即契約。

1週間後に取りに来るように、何度も何度も念を押されて、
2つ返事で了承しながら帰宅しました。

ところが、車を取りに行く直前、
先輩達の唐突な誘いで2泊3日の合宿が決定してしまい、
取りに行けないので納車して欲しいと伝えると、即答で拒否。

少しムッとしたけれど、忙しいのだろうと納得して、
3万円出すので納車して頂けないかと頼み込み、
何とか了承してもらった。

なぜかイヤイヤなのが、受話器越しにも良くわかりました。

合宿も終わり、

「帰ったら、ドライブしよう」

と約束して友人と駅で別れ、
弾む足取りで我が家へ、愛車の元へ。

家の前の駐車スペースに車が無い。

何処にも赤いM○Xが見当たらない。

(さては、弟が勝手に乗り回しているのでは?)

と無性に腹が立ってきて、
家に入るなり母親に車の所在を聞くと、凄く複雑な顔。

「警察も来たけれど、社長さん、
 あんたの買った車の中で死んでいたそうだよ」

「帰ったら、警察に連絡するように言われてるから、連絡しな」

警察に連絡すると、出頭要請。で、出頭。

購入の詳しい経緯と、
社長さん死亡時のアリバイ等を何度も何度もしつこく聞いてくる。

さすがに不安になって来て『殺人』なのかと聞くと、
少し言いよどんでから『変死』との答。

結局、それ以上は聞きだせずに追い返されました。

人が死んだ車に乗る気は、さすがにしなかったので、
中古屋さんに連絡。解約手続きにいく。

事務所に着くと、喪服姿の女性が先にいて、
私の名前を聞くと、

「あんたが…」

と呟き、凄い目で私をジッとにらんでから、出て行った。

社長の奥さんだそうで…。

解約手続き中も、事務の人達がチラチラと私を見ている。

すごく嫌な感じ。

「では、外で新しい車を選びましょう。
 いえ、同程度の車を、同じ値段で良いですよ」

と、事務の男性が唐突に言い、展示場に連れ出されました。

80万円以上の新古車が並ぶスペースまで来ると、
好きなのを選んで欲しいと言う。

戸惑っていると、男性は悲痛な顔で、

「ごめんなさい…本当にごめんなさい。
 止め様としたのですが出来なかった」

先ほどから訳が解らずイライラしていたので、
車の陰に引き込んで、問い詰めるとトンデモない事を言い出した。

「あの車の所有者は、全員不幸になっているんです。
 死んだのは今回で3人目と聞いています。

 社長がどこから買ってきたのか解りませんが、
 あの車がこの店に来て貴方を含め4人に売りました。

 以前の3人は、病気と入院と自殺で、
 車だけがココ戻ってきているんです」

「あの車、整備の為移動させようと乗り込むと、
 私も凄く不安で気分が悪くなりました。

 最初は、排気やクーラーガス、車内にやエンジン内に
 薬物でも付いているのかと疑いましたが、全て正常でした。

 社員達が何度も社長に『潰す』様に言ったのですが、
 社長は聞き入れませんでした。

 この不景気に首にされるわけにもいかず、
 我々も強い事が言えなかったのです」

「あの車は、廃車手続きが終わりました。
 警察の許可が出次第、我々の立会いの下、スクラップにします。
 社長がいなくなって、やっと潰す事が出来るようになりました」

「さあ、社員一同からのお詫びの意味もありますので、
 遠慮無しに好きな車を選んでください。

 これなんかどうです?フル装備、新車同然。
 ナビとカーステもサービスしますよ」

あまりに勝手な言い草に腹が立ちましたが、
展示車のM○Xにオプション装備でなんとか機嫌が直りました。





posted by kowaihanashi6515 at 22:29 | TrackBack(0) | 洒落怖

白い傘を差し白い服を着た人【怖い話】




友人と遊んだ後、
雨降ってるし時間も遅いからって友人を家に送った帰り、
今週のマンガ読んでないなと思いだして、コンビニへ行った。

店内に客は自分だけ。

一冊目を手にとってふと顔をあげると、
コンビニの前の道を白い傘を差し白い服を着た人が歩いてた。


こんな時間に何してんだ(自分も出歩いてるけど)、
と思いつつ本に目を落とした。

一冊目を読み終え、
次に読もうと思っていた本を手に取り顔をあげると、
さっきの人が前の道を歩いてた。

歩道とコンビニの間には駐車スペースがあるから、
至近距離で見たわけじゃないけど、
見た目も歩き方も同じだったから一目でわかった。

変だなとは思ったけど、
いろんな人がいると思ってそんなに気にしなかった。

二冊目も読み終え、
次に先ほど店員さんが並べてくれた今日発売の雑誌を手に取り、
読む前に同じ姿勢で疲れた肩を回す。

すると、また前の道を歩いてる人が。

さっきと同じ白い傘をさした人。

さすがに薄気味悪かったので、
そのあとは窓の外へ眼を向けず漫画に集中した。

さらに二冊ほど読み終え、
顔なじみの店員さんと少し会話し、ご飯を買って外へ。

雨は小雨になっていたけれど、
また強く降ってくると嫌だし早く帰ろうと歩道へ出た瞬間、

ドキッとした。

20メートルほど先を歩く、白い傘を差した人の姿。

田舎だから、そんな時間に走ってる車はほとんどなく、
街灯も少ないので、コンビニから離れると辺りはものすごく暗い。

そのせいで余計不気味に思えた。

なんか嫌だな…とわざとゆっくり歩いているのに、
それでもどんどん距離が縮まっていく。

どんだけ歩くの遅いんだよって思った。

前を歩く白い傘の人との距離が3mくらいになって、
なんとなくこれ以上近づきたくなかったし、
追い抜く気にもなれなかったので、
だいぶ早いけどあの路地曲がるかーと思っていると、
その人がその路地を曲がっていった。

よかった!って気持ちもあったが、
何もされてないのに勝手に想像して
ごめんなさいって気持ちもあったので、
その人の後ろ姿に向かって軽くお辞儀をした。

その瞬間、その人がなにか言ってるのが聞こえた。

えって思ったけど、
こっち向いてないし独り言だと思うことにした。

そのまま歩いて、次の路地を横切ろうとして、
なんとなく右を見た。

見慣れた住宅街が見えた。白い傘をさして歩く人も見えた。

ありきたりに背筋がぞっとしたとしか言えないけれど、
嫌な感じがした。

だってさっきまでは、
こっちがゆっくり歩いていても距離が近づくくらい、
あの人はものすごくゆっくり歩いていたはず。

でも今は、どちらかと言えば早足。
いつもよりほんの少し大股で歩いてる。

なのに相手も、一本奥の道を平行して歩いてる。

なにか嫌な感じがして、それを振り払おうと、
偶然か、それともこっちを意識して
歩く速度を変えて遊んでいる障害者かなにかだろう、
と思うことにした。

でも、何度路地を横切っても、
白い傘を差した人が一本奥の道を歩いてる。

見えないところで歩く速度を早くしたり遅くしたりしても、
自分が横切るときに向こうの人も横切っていく。

すごく怖くなって、脇目もふらず大通りまで走った。

頭の中では自分に向かって、
これはただ雨が少し強くなってきたから、
濡れたくないから走ってるだけって言い聞かせた。

大通りまで出ると、
さすがに数台の車が走っていて、すこしホッとした。

大通りを渡るときに右を見たけど人影はなく、
それ以前に、向こうの路地から大通りへ出ても、
横断歩道がないのだから渡れるはずもない。

それでももしかしてと、
大通りを渡ってひとつめの路地を横切るときに、
勇気を振り絞って右を見てみた。

誰も居なかった。

その後の路地を横切るときも、誰も見えなかった。

当たり前だよなーと落ち着きを取り戻して歩き続け、
この路地を曲がればさぁもうすぐ家だと、
いつものところで右へ曲がった。

奥の路地から、白い傘を差した人が出てきた。

え?って思ったときには、
白い傘を差した人は路地を曲がってこちらへ歩いてきた。

鳥肌がたった。

やばって思ったときには、もう元きた道を走ってた。

見られないように全力で走って、ひとつ前の路地を曲がった。

なのに、曲がった路地の奥の道から
白い傘をさした人が歩いてきた。

道の真ん中まで出てきて、
その体勢のまま不自然な感じでグルンッとこちらに向き直って、
歩を進めてきた。

寝静まって真っ暗な住宅街のど真ん中で、
道が交差する付近には街灯があるものだから、
白い傘と白い服はものすごくはっきり目に映った。

深夜だっていうのに大声が出た。うわぁああ!って感じの。

持ってた傘もコンビニの袋も放り投げて、
一目散にその場から走った。

走りながら友人に電話をかけて、寝てるところ起こして、

「今から行くから家に入れてくれ」

とお願いした。

数時間前に送ったばかりだっていうのに友人はOKしてくれて、
助かったと急いで走って向かったのだけれど、

大通りを越えて、コンビニを過ぎ、
道路を横断して曲がろうとした先で、
白い傘を差した人が立っているのが見えた。

もうこの時には、何で?としか考えられなくて、
曲がるのをやめてそのまま次の路地を目指したんだけど、
そこでも白い傘を差した人が奥の路地から出てきた。

もう嫌だと思いながら道を先に進んでいると、
携帯が鳴った。

けれどおかしなことに、
着信ではなく不在着信の表示。しかも3件。

時間を確認するともう4時を回っていて、
自分の中での時間はまだ10分程度だと思っていたのに、
既に1時間近く経っていた

町から出ていないし、それ以前に、
曲がれないからこの通りを抜けていないのに。

住んでるはずの町が知らない町のようで、
すごく怖くなった。

友人に電話をすると、

『まだ?今どこ?こないの?』

と、眠そうな声が電話から聞こえてきた。

「行きたいけど無理。曲がれない。
 曲がった先に白い傘を差した何かが先回りしてる」

って、きちんと言えたかわからないけど伝えると、友人は、

『何言ってるかわかんないけど、
 先回りされるなら追わせればいいんじゃない?』

って返してきた。

でも、言われても何も考えられなくて、

「え?え?なにいってんの?意味わかんねー!!」

って返すのが精一杯。

語気を強めて意味不明なこという自分に、
友人は怒ることなくゆっくり丁寧に、

『一度曲がりたい方向と逆に曲がるでしょ?
 そしたら前に先回りされてるんだよね?

 それから後ろ向いて、追われる形でまっすぐ道を進めば、
 行きたい方向にいけない?』

もう何でもいいから縋りたい一心で

「わかった」

って言って、友人の言うとおりにしてみた。

もう何も考えられなかった。

すると、本当に曲がった先に
白い傘をさした人は現れるけれど、
後ろを向いて逃げても追いかけてはこない。

正確には、こちらにむかって歩いては来るけれど、
ソレは自分が曲がった角のところまで来たら戻っていく。

でも、また別の角を曲がったり、
路地へ入ろうとしたりすると、その先の道から出てくる。

行ける!と思ったとたん、周囲に誰もいないのに

「ボオオ、オ、ア、」

と、声なんだけど言葉じゃないとわかる音が、
後ろから聞こえてきた。

感覚的に、あぁアレが喋ってると思い、
より一層足に力を入れて走った。

ようやく友人の家の近くまで来ることができ、
電話で伝えると、家の前まで出て待ってると言ってくれた。

ホントに家の前で待っててくれた友人のもとへ行くと、

「びしょびしょww傘どうしたのwww」

なんて言って笑ってて、ちょっと安心したけれど、
見たこと説明して、走ってきた道の先を一緒に見てもらった。

暗いし遠いのに、でもはっきりと向こうの十字路に、
白い傘と白い服を着た人の姿があった。

驚いた顔の友人と慌てて家に入ったあと、
少し遠くから低音の人の声のような音がずっと聞こえていて、
友人が飼ってる猫が、窓やら玄関やらを行ったり来たりしてた。

明るくなって車の音がうるさくなってきたころには、
いつのまにか声のような音や嫌な感じはなくなっていた。

その日のうちに県内のお祓いで有名な神社に二人で行き、
お祓いをしてもらったのだけれど、よぼよぼの神主さんは、

「忘れたほうがいい。理解出来ない者は数多くいて、
 それがなにかは私にもわからない」

とだけ説明してくれた。


今思い出しても寒気が止まらない経験で、
冷静に書けないんだ。

コレを読んだ誰かが同じようなことに遭遇したときは、
友人の言葉を思い出して欲しい。




posted by kowaihanashi6515 at 22:12 | TrackBack(0) | 洒落怖

老婆【怖い話】




あれは僕が小学5年生のころ。

当時、悪がきで悪戯ばかりだった僕と、
友人のKは、しょっちゅう怒られてばかりでした。

夏休みのある日、
こっぴどく叱られたKは、僕に家出を持ちかけてきました。

そんな楽しそうなこと、 僕に異論があるはずもありません。


僕たちは、遠足用の大きなリュックに
お菓子やジュース、マンガ本など
ガキの考えうる大切なものを詰め込み、
夕食が終わってから、近所の公園で落ち合いました。


確か、午後8時ごろだったと思います。
とはいっても、そこは浅はかなガキんちょ。

行く当てもあろうはずがありません。


「どうする?」

話し合いの結果、畑の中の小屋に決まりました。

僕の住んでいるとこは、長野の片田舎なので、
集落から出ると、周りは田畑、野原が広がっています。

畑の中には、農作業の器具や、
藁束などが置かれた小屋が点在していました。

その中の、人の来なさそうなぼろ小屋に潜り込みました。

中には、使わなくなったような手押しの耕運機?があり、
後は、ベッドに良さそうな藁の山があるだけでした。

僕たちは、持ってきた電池式のランタンをつけ、
お菓子を食べたり、ジュースを飲んだり、
お互いの持ってきたマンガを読んだりと、 自由を満喫していました。

どのくらい時間がたったでしょうか。

外で物音がしました。

僕とKは飛び上がり、 慌ててランタンの明かりを消しました。

探しに来た親か、小屋の持ち主かと思ったのです。

二人で藁の中にもぐりこむと、 息を潜めていました。

「ザリザリ・・・・ザリザリ・・・」

何か、妙な音がしました。 砂利の上を、何かを引きずるような音です。

「ザリザリ・・・ザリザリ・・・」

音は、小屋の周りをまわっているようでした。

「・・・なんだろ?」

「・・・様子、見てみるか?」

僕とKは、そおっと藁から出ると、
ガラス窓の近くに寄ってみました。

「・・・・・!!」

そこには、一人の老婆がいました。

腰が曲がって、骨と皮だけのように痩せています。
髪の毛は、白髪の長い髪をぼさぼさに伸ばしていました。

「・・・なんだよ、あれ!・・・」

Kが小声で僕に聞きましたが、僕だってわかりません。

老婆は何か袋のようなものを引きずっていました。

大きな麻袋のような感じで、口がしばってあり、
長い紐の先を老婆が持っていました。

さっきからの音は、これを引きずる音のようでした。

「・・・やばいよ、あれ。山姥ってやつじゃねえの?」

僕らは恐ろしくなり、ゆっくり窓から離れようとしました。

ガシャーーーン!!

その時、Kの馬鹿が立てかけてあった鍬だか鋤を倒しました。
僕は慌てて窓から外を覗くと、
老婆がすごい勢いで こちらに向かって来ます!

僕はKを引っ張って藁の山に飛び込みました。

バタン!!

僕らが藁に飛び込むのと、 老婆が入り口のドアを開けるのと、
ほとんど同時でした。

僕らは、口に手を当てて、 悲鳴を上げるのをこらえました。

「だあれえぞ・・・いるのかええ・・・」

老婆はしゃがれた声でいいました。 妙に光る目を細くし、
小屋の中を見回しています。

「・・・何もせんからあ、出ておいでえ・・・」

僕は、藁の隙間から、老婆の行動を凝視していました。

僕は、老婆の引きずる麻袋に目を止めました。

何か、もぞもぞ動いています。と、

中からズボっと何かが飛び出ました。

(・・・・・!)

僕は目を疑いました。

それは、どうみても人間の手でした。 それも、子どものようです。

「おとなしくはいっとれ!」

老婆はそれに気付くと、 足で袋を蹴り上げ、
手を掴んで袋の中に突っ込みました。

それを見た僕たちは、もう生きた心地がしませんでした。

「ここかあ・・・」

老婆は立てかけてあった、フォークの大きいような農具を手に、
僕たちの隠れている藁山に寄ってきました。

そして、それをザクッザクッ!と山に突き立て始めたのです。

僕らは、半泣きになりながら、 フォークから身を避けていました。

大きな藁の山でなければ、今ごろ串刺しです。

藁が崩れる動きに合わせ、
僕とKは一番奥の壁際まで潜っていきました。

さすがにここまではフォークは届きません。

どのくらい、耐えたでしょうか・・・。

「ん〜、気のせいかあ・・・」

老婆は、フォークを投げ捨てると、 また麻袋を担ぎ、
小屋から出て行きました。

「ザリザリ・・・・ザリザリ・・・・」

音が遠ざかっていきました。

僕とKは、音がしなくなってからも、
しばらく藁の中で動けませんでした。

「・・・行った・・・かな?」

Kが、ようやく話し掛けてきました。

「多分・・・」

しかし、まだ藁から出る気にはなれずに、
そこでボーっとしていました。

ふと気が付くと、背中の壁から空気が入ってきます。

(だから息苦しくなかったのか・・・)

僕は壁に5センチほどの穴が開いてるのを発見しました。
外の様子を伺おうと、顔を近づけた瞬間。

「うまそうな・・・子だああ・・・・!!」

老婆の声とともに、 しわくちゃの手が突っ込まれました!!

僕は顔をがっしりと掴まれ、穴の方に引っ張られました。

「うわああ!!!」

あまりの血生臭さと恐怖に、 僕は気を失ってしまいました。

気が付くと、そこは近所の消防団の詰め所でした。

僕とKは、例の小屋で気を失っているのを
親からの要請で出動した地元の消防団によって
発見されたそうです。

こっぴどく怒られながらも、
僕とKは安心して泣いてしまいました。

昨晩の出来事を両方の親に話すと、
夢だといってまた叱られましたが、
そんなわけがありません。

だって、僕の顔にはいまだに、
老婆の指の跡が痣のようにくっきり残っているのですから。








posted by kowaihanashi6515 at 22:08 | TrackBack(0) | 人怖

巨頭オ【地図にない村の怖い話】




数年前、ふとある村の事を思い出した。

一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。

心のこもったもてなしが印象的だったが、
なぜか急に行きたくなった。

連休に一人で車を走らせた。

記憶力には自信があるほうなので、道は覚えている。

村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、
その看板を見つけたときあれっと思った。

「この先○○km」となっていた(と思う)のが、
「巨頭オ」になっていた。

変な予感と行ってみたい気持ちが交錯したが、行ってみる事にした。

車で入ってみると村は廃村になっており、
建物にも草が巻きついていた。

車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、
頭がやたら大きい人間?が出てきた。

え?え?とか思っていると、周りにもいっぱいいる!

しかもキモい動きで追いかけてきた・・・。

両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながら。

車から降りないでよかった。

恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。

帰って地図を見ても、数年前に言った村と、
その日行った場所は間違っていなかった。

だが、もう一度行こうとは思わない。



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