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2018年10月30日

FG湖【怖い話】





家族で体験した話。

昨年の9月、

ようやくまとまった休みがとれたので実家へ帰省した。

実家へ帰ると珍しく弟も帰ってきていて、

数年ぶりに家族4人(父・母・私・弟)が顔を揃えた。


私がお盆や正月に休みがとれないから、

なかなか全員揃う事ってないんだよね…


それでこんな機会も珍しいからと、

父の提案で急遽みんなで旅行に出かける事になった。


旅行といっても弟は2日後には帰る予定だったし、

急だから宿もとれないだろうって事で日帰りだったんだけどね…


いくつか候補地をピックアップし、

車で行ける場所という事で行き先はY県のFG湖に決まった。

(場所はすぐにわかっちゃうと思うけど、一応ふせてます)


次の日の早朝、車で家を出発して高速に乗って数時間。

私達家族は目的地のFG湖の1つに到着した。

(FG湖は5つの湖が点々と存在している場所です)


その後も車で少しずつ移動しながら他の湖を見てまわって、

昼ごはんを食べて、周辺を散策してと私達は

久しぶりの家族団らんを楽しんだ。


けど3つ目の湖を見た頃には、

湖にお腹いっぱいになってきて…

もう湖はいいかな…って事で、道の駅に立ち寄った。


その道の駅は地元でとれる野菜の販売も充実してるし、

道の駅に併設する博物館(展示館?)があったりで、

なんだかんだで2時間ほどは滞在したと思う。


時計を見ると午後5:20過ぎ。

9月という事でまだ外は明るかったけど、

帰りの道中や夜ご飯の事も考えて、

下道で少しずつ都内方面へ向かおうかって話しになった。

(父も弟もビールを飲んでたので、私が帰り道の運転手だった)

私「◯◯(弟の名前)、帰り道ナビで設定して。」

弟「了解。(ナビを操作する弟)
  ん?行ってない残りの2つの湖すぐ近くっぽい」

母「お昼ご飯食べたの遅くてまだそんなにお腹空いてないし、
  せっかくなら見ていこうかー?」

父「◯◯(私の名前)は夜の運転大丈夫か?
  下道だと県境は山道だぞ?」

私「全然大丈夫だよ。一つは帰り道に通るみたいだし、
  もう一つはここから横道に数キロだし!
  せっかくなら全部の湖制覇して帰ろう。」


正直なところ山道の運転には少し不安があった。

けど久しぶりに家族でゆっくり過ごす時間だったし、

私はハンドルを横道にきり、4つ目のS湖に向かって車を走らせた。


湖へ続く道は鬱蒼とした森の間を少しずつ下っていく道で、
道が左右に蛇行を繰り返している。

ナビを見ると、この道を下りきったすぐ先にS湖はあるらしい。

私は不慣れな山道の運転に集中し、
助手席に座る弟は、
さっき道の駅で貰ったパンフレットを見ながら、
目的地の湖の説明を読み上げている。

後部座席の父と母は、
窓の外の景色を眺めながら弟の読みあげる説明に時おり相槌をうつ。

ゆるやかな右カーブがあり、
ハンドルを切ると数十メートル先に何かが見えた。

何も目標物のない山道だったので、私は自然とスピードを緩めた。

私「ねえ、右側に何かあるよー。」

弟「本当だ。バス停?」

母「本当!こんな所にもバス停があるのねー!
  歩いて湖に行く人でもいるのかしら?」

私「もう夕方なのにねー…
  こんなとこだと一日に何便もなさそうなのに」

父「…」

確かに前方に見えているのはバス停だ。

車はだんだんとバス停に近づき、そして弟が声をあげた。

弟「ちょ、バス停のとこに人!黒い服来た人がいる!座ってる!」

私「何?バス待ってる人?」

そこに居たのは、黒のウィンドブレーカーを着た人で、
三脚らしいものを抱えてうずくまっているように見えた。

母「座り込んでいるし、声掛けようか…?
  バスないのかもしれないし」

私と弟は結構びびってたんだけど、
母は後部座席からノー天気な声をあげる。

母の言葉に私はさらにスピードを落とし、
ナビの時計を見ると5:40…
確かにバスはもうないかもしれない。

それに座り込んでいるって事はどこか具合が悪いのかも?
まさか自殺目当てに来た人じゃないよね?
でも犯罪者とかかも…けど三脚持ってるしな…

頭の中でぐるぐると色々な考えがよぎる。

(みんなに見えていたから、幽霊だとかは考えなかった…)


すると、黙っていた父が大きな声で、

父「止まらないでいいから!早く先行こう」

と声をあげた。

父は日頃からすこぶるお調子者なので、
真剣な顔でそういう父に少し驚きつつ、
私は車のスピードをあげた。

私「ちょっとお父さん何?大きい声だしてさー…」

母「そうよ、お連れさんがいるのも楽しいかもよ」

弟「お連れさんってなんだよ…」

母は田舎に泊まろう!とか旅番組をよく見ているので、
旅の出会いに憧れているのだろう。

父「いや、この道入ってから何となしに嫌な感じがするんだよ…」

弟「嫌な感じって何だよ?
  親父霊感とかないと思ってたけど、そんなの?」

弟が茶化した声をあげるも、父は黙ったままだった。

そんな事がありながらも私達は目的地のS湖に到着した。


私「ちょっと、ここすごく綺麗じゃん!
  今までの中で一番いいよー!」

弟「他のとこは観光地観光地してたけど、静かでいい感じだなー。」

母「いいわねー!水も透き通ってて、絵画みたい!」

S湖は想像以上に綺麗で、私達はさっきまでの事も忘れて、
口々に大絶賛をはじめた。

私「駐車場に車とめて降りてみよー!他に観光客もいないしさ」

母&弟「いいねいいね!」

私「お父さんも行くよね?」

父「うーん…お父さんは駐車場から眺めるだけでいいよ…」

結局私達は、ぐだぐだ言う父を駐車場に残して
湖まで降りていく事にした。

(駐車場から湖まではすぐ近くだったし、
 父も車から降りて景色は眺めてたしね)

湖の近くまで行くと、近場に住んでいるであろうおじさんが、
1人でボートを岸に寄せているだけで、
辺りはシーンと静寂に包まれている。

湖畔に映り込む山が綺麗で、私達は感嘆の声をあげた。

水は青々と透きとおり、夕方にも関わらず本当にキラキラと綺麗だ。

それは今まで見たどんな景色よりも綺麗で幻想的で、

ずっとここにいたいというような気持ちが湧いてくる。

弟は「仕事辞めてここに移住したい」

と言いはじめるし、

母にいたっては、

「死んだらこういうところに骨を散骨してほしいわ」

なんて言っている。


今になってみれば、大げさだなと思うし、
そこまで突飛な考えに至ったのが不思議なんだけど…

(これは母も弟も同じ事を言っていました)

とにかくその時は、
世界にこんなに素晴らしいところがあるんだ!
というすごい高揚感があった。

そうして時間が過ぎていくと、
私達3人はさらに不思議な気持ちになった。

母「ねえ、この辺りって自殺が多いって聞くじゃない?」

弟「うん」

母「でも、こういうところで死ねたら本望かもしれないわよね」

弟「この湖の一部になれるなら、それって幸せだよなー」

母「私このあたりで亡くなる方の気持ちわかる気がするの」

弟「俺も」

私は母と弟の言動に、ぼんやりと違和感を覚えながらも、
頷いていたと思う。

母「帰りたくないわね…」

弟「うん…」

私も頷こうとしていると

「おい!もう帰ろう」

と声がして腕を掴まれた。

振り返ると父が湖まで降りてきていて、私達を揺さぶってる。

その時、

我にかえったような感じになって私達は

父に言われるがままS湖を後にした。


山を超え街に出てから、弟がS湖の事を話しはじめた。

弟「綺麗だったなS湖。不思議な感じだったけど」

私「そうだねー!本当綺麗なところだったよね。
  確かに不思議だったけど…」

弟「でも、あの近くに居た人、
  俺らの会話聞いてたら驚いただろうな」

私「近くに居たから、絶対聞こえてたよね!
  あれじゃ自殺志願者の会話みたいだよね…今思えばだけど」

母「本当よねー!散骨だなんて、
  うちにはお墓あるのに何考えてたのかしら」

父「お前らそんなことを話してたのか?縁起でもねーな。
  何かに取り憑かれてたんじゃないか?」

(もうこの時には父もいつも通りに戻っていたので、
 おどけた感じで話してました)

私「やだ、お父さんやめてよ。
  私、お父さんこそ何かに取り憑かれたと思ったよ」

弟「そうそう!バス停の時!いきなり黙るし、大きな声あげるし」

母「そうよねー!だから私、
  湖でおじさんが居た時ほっとしたわよー!」

弟「わかるわかる!なんか普通の人に会えてほっとしたっていうかさ」

私「うんうん!湖にはあの人しかいなかったしね。
  あれ地元の人かな?近くにペンションっぽいのあったし」

父「ん?おじさんってどこに居た?」

私「どこって、湖でボートを岸に寄せてたじゃん!おじさん!」

弟「親父が俺ら呼びにきた時もすぐそばにいたし、
  今その話ししてたじゃん」

母「うんうん。会話聞かれてたら自殺志願者だと勘違いされたかもって」

父「何言ってんだ?そんな人いなかったよ…」

私・母・弟「はあ?いたって。ずっと近くにいたって。」

父「そんな人いなかったよ。
  お前らのそばにいたのは、子供を肩車した人だけだろ…?」

もうその後は、家族で絶叫しながら家まで帰りました。

バス停のところに居た人も、
湖にいたおじさんも結局なんだったんだろう…

そしてそんな事がありながらも、
もう一度S湖に行きたいと密かに思っている自分が少し怖いです。​





posted by kowaihanashi6515 at 23:19 | TrackBack(0) | 洒落怖

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