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2018年10月30日

カワサキ村で謎の儀式を見てしまった【土着信仰系】【怖い話】





今から4年程前に体験した話。

当時、俺は出張でG県に1ヶ月程滞在していた。


G県って言うと群馬か岐阜しかないから、

言っちゃうけど岐阜県だ。


しかも岐阜って言っても市内より

三重県に行った方が早い様な田舎だった。


近くにお住まいの方、ごめんなさい。



田舎って言っても駅周辺は

カラオケやキャバクラ等の娯楽施設があったし、

退屈はしなかった。


仕事は出張だから残業も無く定時に帰れた。



始めのうちは知り合いもいないから、

まっすぐビジネスホテルに帰ってたんだけど、

人恋しくて、あるバーに立ち寄った。



そのバーはマスターが1人で切り盛りしてて

カウンターが5席にテーブルが2席程の

小さい店だった。



マスターは坂口憲二を更に男臭くして、

年を重ねたって風貌の人だった。



話も上手くて、

知り合いもいない土地に来ていた俺は


いつしか仕事帰り毎日寄るようになった。



1週間も連続で通うと

常連のお客さんとも顔馴染みになり、

くだらない話で盛り上がった。



特に仲良くなったのはタカシさんと呼ばれる

40歳前の方と、

サーちゃんと呼ばれる

アジアン美人の女の子だった。



タカシさんとサーちゃんも仲が良かったので、

マスターを交えた4人で

いつも閉店まで盛り上がった。



そんなある日の事。


いつも通り仕事を終えた俺はバーに向かった。



地下へ続く短い階段を降り

バーの分厚い木製の扉を開けると、


いつもカウンターに座っているサーちゃんが

テーブル席に座っていた。



友達も一緒の様で、女の子3人で飲んでいた。


俺は1番奥のカウンターに座ると

マスターにビールとお任せでパスタを注文した。



しばらくするとタカシさんも来店し

俺の隣に座り2人で

海外サッカーの話をしていた。



するとサーちゃんが話しかけて来た。


「ゆうきさん(俺)って、幽霊とか信じます?」


俺は突拍子もない質問に面食ったが、

その手の話は大好きだったので信じると答えた。


何故かホロ酔いのタカシさんも、

幽霊は絶対にいると主張しだした。


マスターまで話に乗って来て、話題は怖い話になった。



それぞれ体験談を一通り話すと、

そのままの流れで肝試しに行こうと言う事になった。



一番乗り気だったのはマスターで、

店を早く閉めると言いだした。



その後、

皆でマスターの閉店作業を手伝って

日付が変わる前には店を出た。



ここでサーちゃんの友達

2人を紹介しておく。


1人目はジュンちゃん。

細身で身長も高く長い黒髪が印象的な子だ。


2人目はサヤちゃん。

小柄でボブが良く似合う女の子らしい子だ。



俺は女性3人には申し訳ないが、

心の中で品定めなんかをしていた。


結局、俺の心はアジアンビューティーな

サーちゃんを選んでいたんだけど(笑)



女性3人と俺とタカシさんとマスターの

6人で駅前の繁華街を歩き、

マスターのクルマが停めてある駐車場に向かった。



その時、シラフだったのはマスターだけだったので

当然ドライバーはマスターになったって訳だ。


マスターの車は有名なドイツのワゴン車だった。

案外、バーって儲かるんだなぁって

思ったのを覚えてる。



運転席にはマスター。

助手席にはジュンちゃんが座った。


2列目にはタカシさんとサヤちゃん。


俺は当然の様にサーちゃんと最後部に座った。



目的地は通称

「川崎村」

と呼ばれる廃村地。


何でも明治から昭和に掛けての

時期に廃村になった村らしく、

今でも当時の民家等が一応残ってるらしい。



もっぱら建物はボロボロらしいけど。



俺は地元じゃないので川崎村の事は全く

知らなかったけど、意外だったのは

地元民である他の5人も話を聞いた事あるレベルで

実際行った者はいなかった。



要するに地元でもそんなに有名なスポット

ではないって事だ。



辛うじて最年長のマスターが

川崎村までの行き方を知っていた。


どうもここから車で山に向かって

1時間位走らせるらしい。


さらには途中で車が行き来出来ない道になる為、

そこからは徒歩で行くしかないと聞かされた。



俺は歩きと聞いてテンション下がったけど、

他の5人はそうではない様子で

陽気に鼻歌なんか歌っていた。


途中、

タカシさんがもようしたのでコンビニに寄った。


ついでなので、

そこで飲み物やらライトやらを買った。



街を背に田園を抜けて、

両手に広がる景色は山ばかりになった。



ちょうど山と山を縫う様に通る県道をひた走る。


更に県道を進んで、

目印とされる潰れたドライブインで右折した。



そこからは本当の山道で、

辛うじて舗装はされているが、

アスファルトが所々めくれていてデコボコ道だった。



更に車を走らせるといよいよ舗装もされていない

砂利道に変わった。


砂利道を進むと不自然な広場に出た。


広場から先は黒と黄色のロープが張ってあり、

ロープには看板がぶら下げてあった。



土砂崩れ注意

立入禁止

◯△□市役所


ここから先は情報通り徒歩で行くしかない様だ。


ロープを跨ぎ、6人は細い砂利道を慎重に進む。


月明かりも木々に遮られて、視界は非常に悪い。



しかも膝上まで伸びきった草のせいで歩きにくい。


それだけで十分、心霊スポットとして合格だった。



ただ雰囲気はあるものの、

その時はまだ嫌な感じとかはしていなかった。



どんどん草をかき分けて進むと、

またちょっとした広場に出た。


その広場は捨てられた

家電製品やタイヤの残骸が

山の様に積まれていた。


恐らく不法投棄だろう。


そしてその広場を抜けると更に細い獣道になった。



道を間違ったんじゃないかと

女性陣は口々に言っていたが、

マスターが言うには間違いないらしい。


と言うか、

この道らしき道を進む以外は

鬱蒼とした木々が邪魔をして

歩けるスペースなんかなかった。



15分程、獣道を進んだだろうか。


ふと、先頭を歩いていたマスターが立ち止まった。


それにつられるように全員歩を止める。


マスターの目線の先には

大きな石碑が2つ並んでいた。


並ぶと言っても、

石碑と石碑の間には車2台がすれ違える程の

間隔があった。


ちょうど石碑と石碑の間が門の様に見えた。


東大寺の金剛力士像を

思い出すとイメージしやすいかな?



右側石碑は全体的に四角い感じで、

大きさで言えばお墓程度の物。


年月が経ち過ぎてて、

石に苔がビッシリついていた。



何か文字が彫ってある様だが、解読出来なかった。


今思えば、村の名前が彫られていたんだと思う。


そして左の石碑は全体的に丸みを帯びた石で、

非常に大きかった。


こちらも文字が彫ってあったが

四角い石碑同様読み取る事は難しかった。



ただ「慰」と「碑」の文字が辛うじて読み取れた。



石碑と石碑の間を抜け、

俺達はいよいよ村に侵入した。


地形だけから見れば、

山間の村。そんな印象だった。


遠くにいくつか、

建物らしき物が確認出来た。


取り合えず、俺達は建物に向けて進んだ。


村の中も雑草やら

倒れた木やらで足元は悪かった。



建物に近付くずくにつれ、

それが潰れた廃墟だとわかった。


ざっと見た感じ、廃墟は20戸くらいあった。



全部木造の平屋建てで、

時代劇に出て来る様な

「長屋」

をイメージしてもらうと解り易いだろう。


その殆どが倒壊しており、

柱や梁がむき出しになっていた。


俺達は比較的、傾いていない

建物内に入る事にした。


恐らく玄関の引き戸だったであろう

物をはずして中に侵入した。


玄関は土間になっていて、

そこから一段高くなって畳が敷いてあった。



ただ畳もボロボロに腐っていて、

床には所々穴が開いていた。


俺達は躓かない様に慎重に民家内を捜索した。


特に変わった物はなかったが、

明治時代に廃村になったとは本当の様で、

電化製品の残骸は愚か、

照明設備がない事がそれを証明するようだった。



あの時代はランプや蝋燭で

照らしていたんだなぁとしみじみ思った。



あれこれ探し終わり、俺達はその民家を出た。



そしてそこからなるべく入り易そうな民家を

3、4軒見てまわった。


以前にも肝試し客が訪れた痕跡

(ジュースの缶等)があったけど、

ここ数10年は誰も来ていないようだった。



なんせ見た事ないメーカーのジュースの缶だったし。


ペットボトルなんかはなかったしね。



一通り見終えて、俺達は一服する事にした。


思ったより怖くないなど口々に言いながら

煙草をふかしていると、

民家の裏の丘の方から嗚咽と言うか、

動物の鳴き声と言うか、

説明しにくい声が聞こえた。


それは全員聞こえていたようで、

皆、いっせいに丘の方を見た。

「ウオォォォォッ」

再び声が聞こえた。


今度は叫び声よりは獣の遠吠えの様に聞こえた。


皆、身構えている。


それから全神経を集中させ、

3度目の声を待ったが、

ついに声が聞こえることはなかった。


「今のは何だったんだろう?」

俺が皆に向けて問う。


すると、答えてくれたのはマスターだった。


「多分コヨーテとかじゃないか?」

「コヨーテって日本にいないでしょ?」

サーちゃんが突っ込む。


「そりゃそうだな。」

マスターが恥ずかしそうに、

はにかんだ笑顔を見せる。


一同が笑いの渦に包まれた。

「ねぇ?さっきの声が聞こえた方、

 見に行ってみない?」

サヤちゃんが提案する。


皆、動物だと思ってたんで、

この時点で反対する者はいなかった。


民家の裏庭を抜けて、

少し小高くなった丘を登った。


下からでは良く見えていなかったが、

丘を抜けるとそこはだだっ広い草原になっていた。


そして草原のちょうど中央部には小屋があった。


中からは明かりが漏れているようだ。


「誰かいるのかな?」

「近付いて確認してみるか?」

6人は恐怖心よりも好奇心が勝ったため

小屋まで進むことにした。


恐る恐る小窓から中を覗いてみる。


そこには異様な光景が広がっていた。


小屋の大きさは畳10帖程度。


部屋の四隅には蝋燭と盛り塩、

そして犬・豚・牛・鶏の頭が置かれていた。


更に部屋の中央には祭壇と思わしき棚があり、

酒や榊、米等が所狭しと並んでいた。


そして部屋の壁一面は墨で殴り書きした様な文字で

埋め尽くされていた。


一番驚いたのは祭壇の前で、

白髪の老婆が祈りを捧げていた事だ。


何やら唱えているが、それが日本語なのかさえ、

判断しかねる内容だった。



でもその呪文を唱えるリズムが妙に心地よく、

酒に酔っている時の感覚と似ていた。


俺はまわりの皆を見渡した。


皆が皆、目を細め気持ちよさそうに

呪文に耳を傾けている。


老婆は尚も、呪文を唱え続ける。


そして何やら麻の袋から取り出した。


それは、多分「人間」だった。

しかもペラペラの。

きっと人間の皮を剥がした物だったと思う。


あまりのグロテスクさにジュンちゃんとサヤちゃんが

悲鳴を上げてしまった。


その瞬間、老婆が俺達に気付いた。


「見たなぁぁぁぁぁ。」

俺にはそう聞こえた。


そして老婆は次の瞬間、

四つん這いになって俺達の方に駆けて来た。


そう、まるで犬の様に。


俺達は一目散で小屋から離れ、丘を下った。


周りの心配をしている余裕はなかった。

ただ叫び声や走る音で

全員ついて来ているとわかった。


倒壊した集落を背に、

石碑の広場まで一気に走りぬけた。


「ぜぇぜぇぜぇ」

息を切らして皆の安否を確かめる。


どうやら全員逃げ切ったみたいだ。


遠くの方ではまた遠吠えが聞こえた。

多分、この声はあの老婆の者だろう。


きっと動物の霊を体に降ろしているに違いない。


皆、無言でマスターのワゴン車まで戻った。


帰りの車内も皆、一様に無言だった。


気付くとバーの前にいた。


軽く挨拶を交わし、それぞれ帰路についた。


次の日から俺はバーに通う事はなくなった。


そのまま出張の1ヶ月を終えて、

地元に帰った。


地元に帰ってから半年が過ぎ、

ようやくあの老婆の事を思い出すこともなくなった。


それまでは時折、夢にまで出てきやがったんだ。


そんなある日、俺のケータイが鳴った。


サーちゃんからだった。


「もしもし?」

俺が恐る恐る出る。


「ゆうきさん、久しぶり。」

サーちゃんはあたり前だけど、

半年前と変わらない声をしていた。


「もしヒマがあったら少し話がしたいの。」


特に用事もなかったから、

次の日曜に再び岐阜まで行く約束をした。


日曜、サーちゃんは待ち合わせ2分前に

ファミレスに来た。


「久しぶり」

「ああ、久しぶり」

取り留めのない挨拶を交わす。


「今日、ゆうきさんを呼んだのはね……」

サーちゃんが切り出した。


「実はあの後、タカシさんやマスター達に

 連絡が取れなくなって……」

どうやらあの一件から、

タカシさんやマスターと

音信不通になってしまったらしい。


マスターはバーも閉店させていた。

風の噂では田舎に帰ったらしい。


タカシさんに至っては

まるで消息がつかめないというのだ。


サーちゃんは続ける。

「だから私、あの村の事を自分なりに調べたの。」

そう言って、

俺に一冊のファイルを手渡した。


ファイルには次の様な事が書いてあった。


川崎村(皮裂村)

昭和2年 廃村

江戸時代中期から明治初期にかけては、

皮製品を主な収入元とした人々が暮らしていた。


村の人口は総勢で約100人程。

所謂、被差別地域。


外界との交流は殆どなく、

農耕や狩猟でほぼ自給自足の生活をしていた。


明治後期には村の人口が20名を切り、

昭和2年、最後の村人数名が隣の村に移った為、

廃村。


ここまで来て、ピンと来た。


「もしかしてあの老婆は

 最後の川崎村の村人だったって事?」

サーちゃんは深く頷いた。


「もともとあの村は 皮裂村と呼ばれ、

 ひどい差別を受けてきたの。


 そうしていくうちに、

 外界との交流はなくなり、孤立化して行った。


 そしてあの村は狩猟や皮製品を

 生業として来た人の村だから、

 畜生を神として称え、祀った。


 あの左の石碑は殺した家畜達の

 慰霊碑だったみたいね」

更にサーちゃんは続けた。


「村のある家系には

 今で言うイタコのような事が

 出来る一族がいたらしいの。


 その一族は畜生の霊を降ろして、

 農作物の豊作を祈ったり、

 病気の者を治癒していたみたい。


 そして年1回、畜生の神様に生贄として

 人間の皮を捧げていた」

どうやら俺達があの場所で見た物は

その儀式の一部だったみたいだ。


その後、

あの老婆がどうなったのかは知らないし、

知る気もしない。


ただ川崎村近辺の町では今も尚、

年1人〜2人程が行方不明になっている。







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