2018年10月06日
戸締りはしっかりして下さい【怖い話】
これは俺がまだ、学生だった頃だから
もう、5年も前の話になる。古い話で悪いんだが・・・
当時、俺は八王子にある学校の
近くのアパートで独り暮らしをしていた。
その日は、俺の部屋で友人と酒を飲んでいた。
いつもならクダラナイ話で何時間も盛り上がって
いたのだが、その時は少し酒を飲み過ぎた為、
俺も友人も11時過ぎには寝入ってしまっていた。
何時間位経ったのだろ う?
突然、玄関で呼び鈴の音が聞こえた。
時計を見ると0時30分 をまわっていたが、
俺は寝ぼけていたこともあり、
飛び上がる ように起きると、
すぐに玄関の扉を開けてしまった・・・。
すると、そこには25〜6歳位の
グレーのトレーナーを着た男が立っていた。
「なんですか?」
俺は訝しげに男に尋ねた。
「○○さんですね?(俺の苗字)」
男が尋ね返す。
「えぇ、そうですが?」
なおも怪訝そうに答える俺にその男は、
ユックリと落ち着いた口調で話はじめた。
「僕はこの地域の町内会長をしているものです。
実は、今しがたこの地区で殺人事件が起きました。
犯人は逃走中でまだ捕まっていません。
危ないですから 戸締りをキチンとして、
今日は出歩くのを控えて下さい。 」
俺は、寝ぼけたままで
「はぁ、解りました・・・。」
と言うと玄関を閉めた。
そして、酒の酔いもまだ残っていたのでまた眠ってしまった 。
翌朝、新聞でもニュースでも確認したが
近所で殺人事件など起きた話は載っていなかった。
友達は、「あんなに若い町内会長なんているかよ。」
と不審げに言っていたが、そう言われてみれば、
夜中に警察でもない男が、
近所にその様な注意をして廻る事、
自体 が妙な話だった。
「なんだったんだよ、あいつは?」
その時は少し気味が悪かったが、
しばらくして、そのこと事態を忘れ てしまっていた。
ところが・・・
その2ケ月後に俺は、
その時の男を再度、目撃することになった。
ヤハリ、夜中の0時30分を過ぎたころだった
呼び鈴がなったのだ。
しかし、それは俺の部屋ではない隣りの部屋だった。
1回、そして、2回、どうやら隣は留守 らしい。
だが、呼び鈴は再度、立て続けに鳴った。
「うるせぇなぁ。」
こんな夜中にそれだけならして出てこなければ留守だろ!
俺は少し不機嫌になって、玄関の扉を半分開けた
そこには、先日の男がヤハリ、
グレーのトレーナーを着てたっていた。
俺の扉を開けた音に気が付くいて男が振り向き、
俺と眼があった。
俺は、少し気味が悪かったが、
それ以上に腹も立っていたの で
「隣、留守なんじゃないですか?なんすか?」
と不機嫌に言 った。
「あぁ、○○さん。
いえこの間の犯人なんですが、
まだ、捕まって居ないんですよ。
だから、捕まるまでは近所の皆さんに、
夜中は出歩かないように注意して廻って るんです。」
俺はムッとして
「この間の朝、新聞もニュースも確認したけど
そんな事件起こってないじゃないっすか!あんた誰だよ? 」
俺は語尾を荒げながら、その男に言ったのだが、
男はひるぐ 様子もなく
「いえ、そんなことはありません。
それに、犯人はまだ捕まっていないのです。
とても危険です。いいですか、
夜中は出歩いてはいけませ んよ。」
と逆に強く諭すように俺に言った。
男の眼が据わっていたこともあり
俺は少し背筋も寒くなり、
「そうっすか。」
と愛想なく言って、
玄関の扉をオモイッキリ閉めて鍵をカケ タ。
腹立たしい思いと、気持ち悪い気分が入り混じった
なんとも奇妙な心持でその夜、俺は寝床についた。
そして、翌日に俺は背筋が凍る思いをしたのだ・・・
その日の朝のワイドショーでは
独身OLの殺人事件が取り上げられていた。
場所は、俺の住むすぐ傍のマンションだった。
寝込んでいたOLの家に空き巣に入った犯人が
物音に気づいたOLを殺してしまったのだと言う。
走り去る犯人の姿を
目撃者した人が語った犯人の特徴は
20代後半の若い男で
グレーのトレーナーを着ていたと・・・・・・
前の晩に俺の見た男の特徴。
そして話の内容に妙に重なって いたのだ。
俺が背筋が凍る思いをしたのは、
その夜になってからだった。
ヤハリ、夜中の0時過ぎに玄関のベルが鳴ったのだ。
俺は、怖くて扉を開ける気にはなれなかった。
が、ベルは、1回、2回、3回となっている 。
扉を開けずに俺が、玄関先で
「誰ですか?」
とたずねると
先日の男の声がした。
「○○さんですか? ホラ、言ったでしょ。
犯人はまだ逃走中ですよ。戸締りはシッカリして下さいね 。」
その声で、俺は
「ハッとした。窓、鍵を閉めてない・・・。」
急いで、部屋の窓の
鍵を閉めようとカーテンを開けると
玄関に居た筈の男が、窓の前に立っていたんだ。
グレーのトレーナーを着て・・・。
息を呑むという表現が、どんなものなのか、
俺はその時はじ めてしった・・・。
鍵を閉めようと、腕を伸ばした瞬間、男が窓を開けた。
「だめじゃないですか、窓の鍵もしっかり閉めてください。
でないと、僕みたいのが、入って来てしまいますよ。」
そう言って、男は不気味な笑みを浮かべた。
次の瞬間には、俺は悲鳴をあげて、玄関へとダッシュした。
玄関のカギを開け、アパートの廊下に飛び出し、
ドアも閉め ずに一心不乱に走ったんだ。
だけど、背後から、男の声が聞こえて来たんだ。
「○○さん、玄関を開けっ放しにするなんて、とても不用心 ですよ。
それに夜中に出歩くのはとても危険です。
今すぐに引き返してください。」
俺は半泣きの状態だったが逃げ続けた。
だが、男は俺の背後をぴったりとマークして、
全くふりきる 事ができなかった。
それどころか、だんだん男との距離が、縮まりつつあった。
男は相変わらず、
「危険です。」や、「早く戻ってください 」などを、
大声で言い続けていた。
マジでもうだめかと思いはじめた時、
希望の光が俺を照らしたよ。
そう、交番を見つけたんだ。
俺は最後の力を振り絞って、交番に飛び込んだ。
中には、驚いた表情の中年警察官がいて、
それを見て安心した俺は、その場に倒れ、
そのまま気を失った・・・。
目を覚ますと、
メガネをかけた若い警察官が俺を覗きこんで いたよ。
俺が目を覚ました事に気がついた若い警察官は、
さっきの中年警察官を連れて来た。
俺の体調が大丈夫だと分かると、
なぜ急に飛び込んで来て、急に気絶したのかと、
聞いて来たから、俺は事の経緯を話すと、
一緒にアパートに来てくれる事になったんだ。
それから、俺は警察官と言う、
たのもしい護衛を二人連れて アパートに戻った。
警察官達のおかげで、恐怖心はあまり無かったんだと思う。
ようやく、アパートに到着し、
二階の自分の部屋に向かった 。
部屋に向かう時の並びは…
先頭は、若警官 次に俺 最後に中警官だ。
(これが一番、 安全だと思ったんだ。)
部屋の玄関のドアも、若警官に開けてもらった。
(来た時は 、ドアは閉まっていたから。)
若警官が中を覗いたが、部屋には誰もいなかった。
中警官「どこか様子がおかしいところはあるかね?」
部屋を見回したが、いつも通りの俺の部屋で、
特におかしい ところはなかった。
窓も確認したが、カーテンは閉められ、鍵も閉まっていた・ ・・。
中警官「まあ、もうここは大丈夫だと思うから、心配するな 。
後はこいつに任せる事にして、
悪いが俺は先に帰らせてもら うわ。
何かあると困るから、いつでも来てかまわないからな。
それじゃあ、気いつけてな。」
そう言ったかと思うと、
中警官は、若警官を置いて、さっさ と帰ってしまったよ。
それから、若警官と少し業務的な話をしてから、
若警官も帰 る事になったんだ。
若警官「それでは、私もそろそろ帰らせていただきますね。
何かありましたら、先ほどお渡しした名紙の番号まで、
ご連 絡下さい。」
わかりましたと言い、若警官を送り出そうとした時、
急に若 警官の笑顔が無表情に変わった・・・。
若警官「殺人犯はまだ捕まっていませんので、
くれぐれも夜 道を歩く際は気をつけて下さい。
それと、戸締りもしっかりして下さいね・・・。
鍵が無かったので、やむなく
ドアを閉めただけだったんです から・・・。
それでは、お気をつけて、○○さん・・・。」
そして、若警官は今までの笑顔では無く、
気味の悪い笑顔を 見せ、帰って行った・・・。
俺はそれから部屋の全ての鍵を閉め、
玄関にはチェーンをし 、テレビと電気をつけっぱにして、
布団をかぶって、朝までガ クブルしていた。
その後・・・。
夜にグレーのトレーナーを着た男はもう来なくなったが、
俺 は二週間後ににはこのアパートを引っ越した。
学校も転校した。
そうして、今になるが、
グレーのトレーナーを着た男が捕まったと言う話は聞かない・・・。
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