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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月18日

「本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ」 コウケンテツ

これはいい本だったなぁ。
料理研究家の著者が講演会で
「料理を作るのが限界。毎日本当につらい」
と、ある女性から言われ、
今まで「手作りの料理を広める」活動を
してたコウさんは衝撃を受け、この本を
書いた。
印象に残る文章やアイデアがいっぱい
詰まってる。たとえば、

毎日の料理は「質素ごはん」でいい。

フランスに取材に行ったとき、子育てしている
40代の女性は「平日は自宅で料理しない」と
言う。
わけを聞くと、
「家で料理ばっかり作ってたら、私の
サンシャインが輝かないじゃない」

面白かったアイデアは、
洗い物を減らすためにお茶碗をやめる。
ごはん、サラダ、おかずをワンプレートに
する。
フライパンのまま出す。

ときに味付けは「セルフサービス」にする。
鶏の塩焼きをテーブルに出したらw
食卓にしょうゆ、ソース、ケチャップ、
ごま、海苔、粉チーズなど調味料を
並べ各自が好きな味付けをする。

毎日の料理がストレスという人は
多いようで、この本は
四刷を超えヒット中だそうです。
著者は最後にこう結ぶ。

そしていつの日か。
誰もがご飯作りを楽しめる環境に
なりますように。
そして誰に対しても優しい世の中に
なりますように。




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ああ、徹夜本! 「欺す衆生」 月村 了衛

おもしろ本は数々あれど、

夜通し読ませるものは少なし。

豊田商事の詐欺商法を

モデルに作り、詐欺師の話。

原野、投資、海外ファンド、

時代にあわせて金むしり取る

その手口のめまぐるしさよ。

騙した奴が悪いのか、騙されるものが

バカなのか。



この世に悪の栄えた試しなし、

欲と欲がぶつかり合えば

己も相手も泥沼地獄。

次から次に起こるトラブルに

肝はヒエヒエ、胸はドキドキ。

あーーーーーーーーー、

まさか、こんな



ページめくる手とまらない

山田風太郎賞の犯罪巨編。

ぜひ一度お目通しあれ。





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何度読んでも泣き笑い 「赤めだか」 立川談春

高校を2年で中退し

落語家を目指して、立川談志に

入門した少年が、新聞配達をしながら

修行を重ね、真打になるまでを

綴った名著。



お弟子さんが書いた数ある談志本の

中で、秀逸な一冊。

何度読み直しても、ぐっとくるのは

思春期ど真ん中でもだえ苦しむ

少年から青年の心の軌跡が、明解で

無駄のない文章で綴られているから。

ご存じの方も多いと思うが、この本には

師匠談志の名言も散りばめられている。



17歳の著者が談志に弟子のお願いをすると、

師は、

「君の今の持っている情熱は尊いものなんだ。

大人はよく考えろと云うだろうが自分の人生を

決断する、それも十七才でだ。これは立派だ。

断ることは簡単だが、おれもその想いを持って

小さんに入門した。小さんは引き受けてくれた。

感謝している。

経験者だからよくわかるが、君に落語家をあきら

めなさいと俺には云えんのだ。

加えて俺には後進を育てる義務がある。

自分が育ててもらった以上、僕も弟子を育てにゃ

ならんのですよ。

つまり、俺は君に落語家になれとも、なるなとも

云えん立場なんだな。わかるね」



弟子入りが許されて、談志は

「坊や、カレーの作り方を教えてやろう」

といい、冷蔵庫の残り物を手当たり次第に入れ

作る。なんでもだ。しまいにはチーズケーキ、

らっきょに柴漬けも入れる。

やがて完成したカレー、談春少年はおののきながら

目をつぶって一口食べる。

意外にもうまい。

少年は、夢中で食べ、お代わりしてもいいですか。

すると師、

「許す。カレーってのはそういうもんだ。

こんなものに千五百円も出して喰うことは

ねぇんだ。下らねェ海老だの肉だの入れる

こたァねェんだ。

坊や、よく覚えとけ、世の中のもの全て

人間が作ったもんだ。

人間が作った世の中、人間にこわせないものは

ないんだ」



最後にもうひとつ。

弟弟子の志らくの才能に嫉妬をした談春、

あえて友達になり、彼の才を研究しようと

決める。

そんな談春にある日、談志が突然、

「お前に嫉妬とは何かを教えてやる」と云った。



「己が努力、行動を起こさず対象となる人間の

弱みを口であげつらって、自分のレベルまで

下げる行為、これを嫉妬というんです。

(中略)よく覚えとけ。現実は事実だ。そして

現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと

何故そうなったかという原因があるんだ。

現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。

その行動を起こさない奴を俺の基準で馬鹿と云う」



まだ未読な方は、ぜひ。

この本、読まないと損です。



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一気読み 「藻屑蟹」 赤松利市

「ボタ子」で衝撃を受けてから

赤松さんの本はすべて揃えて

いる最中だが、少しバタバタ

していたので、やっと2冊目。



物事には表があれば裏がある。

光があれば影もある。

小説は裏や影の部分を炙り出せば

出すほど面白い。

この作品はまさしく。

テーマが「震災」「原発」となれば

さらに影が濃くなる。



除染作業員がどんな日々を送っているのか、

原発避難民たちの愚かな暮しぶりとは。

彼らを食い物にする詐欺師たちの手口とは。

一番裏に潜む悪い奴は。

フィクションなはずなのに、まるで事実の

ように感じさせる筆力にため息。



金に翻弄され己の欲の深さに呆れ、哀しみ、

揺れ惑う主人公の姿がリアルで痛い。

人間なんて一皮むけばこんなもん、

でもだからこそ、愛おしい。

作家の修羅場を潜り抜けてきたであろう、

人間描写が深い。




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再読 「私という運命について」 白石一文

著者には珍しく主人公が

女性ということもあり、いつもの

人生哲学のような表記が減り

(大体は鼻もちならないエリート男性が

主人公で、社会や世間に対して持論を展開していく

こと多々あり。でもそれが僕は好きなのですが。

まぁ、言ってみればドストエフスキーに代表される

ロシア小説の匂いあり)、

読みやすく、馴染みやすい物語になっている。



主人公、冬木亜紀は大手メーカーの総合職勤務、

29歳の女性。

物語は、元恋人からの結婚式の招待状を受け取った

ところから始まる。

以降40歳になるまでの揺れる10年間を

描いたもの。



亜紀は自分が違和感を覚えたら、黙ってはいられない

性格で、恋人とも結婚は違うと感じたら、自ら別れを

切り出すような女性。

このキャラがまずいい。

そんな彼女が元恋人と10年ぶりに再会する。

これは物語の後半部分なのだが、ここからが

さらにいい。



彼が肺がんになっていることを知り、亜紀は

改めて彼に寄り添おうとする。

あなたを守りたいと伝える。

彼女のそんな言葉に彼はこう答える。



「たとえきみのような強い人でもそれだけは無理だと

僕は思う。

人間は、愛する人の人生に寄り添うことができても、

その人のいのちに介入することはできないのです。

それはアイデンティティーやエゴといった見え透いた

観念の問題ではなく、本質的にそうなのだと僕は

思う。

僕が病気になって唯一知ったのはそのことでした。

いのちの終わりを予感して、僕はたしかに恐れ、

哀しみました。でも決してそれだけではなかった。

僕は自分の死が自分にとっていかに重大な事件で

あるかを思い知ると同時に自分の生が自分にとって

いかに重大なものであるかを痛感しました」



自分がガンと宣告されたときに、僕が思ったのも

全く同じことでした。

人は病気になり死を意識すると、自分の身体のこと

だけで頭がいっぱいになるんだ、自分の存在が消える

ことにここまでエゴになるんだと、痛感しました。

だからこそ、自分で戦うしかない、人を巻き込んでは

いけない、と強く思いました。



他にも、子供を産んだ亜紀の友人のセリフもぐっときました。

「子供を産んでみて、人生観がここまで変わるとは

思わなかった。

私みたいなエゴの固まりがさ、自分のことはどうでも

いいから、とにかく娘が元気に育ってくれればいいと

心底思ってるんだから。

所詮、人間なんて、自分の夢や希望を実現するのが

一番の望みなんかじゃなくて、その夢や希望を誰かに

託すほうがずっと満足できるのかもしれないって近頃は

思うわ。

(中略)

そういう意味じゃ、男の人がずっと哀れなのかもしれな

いわね。

男は結局、今っていう時間しか見てないのよ。

それに比べたら、私たち女は、長い時間の流れの中で

自然に

生かされているような気がする。

現実に生むかどうかは別にして、子供を生むことが

できるっていう感覚だけで、自分という人間が最初から

一人きりじゃないことを知ってるし、

この自分のいのちが遠い未来まで繋がっていくことを

実感として理解してるでしょ。

これって男には

絶対に得られない感覚なんだと私は思うよ」



これを男性作家が書いたことに、唸りました。

やはり優れた小説家というのは、他人の靴を履く

想像力が備わっているんですね。

少しでも近づきたいものです。



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2023年05月17日

何度読んでも、気持ちいい! 「江戸前の男 春風亭柳朝一代記」 吉川潮

芸人を描かせたら天下一の著者が
綴る、柳朝伝。
読むのは5度目くらいですが、
いやー、楽しい。

志ん朝、談志、円楽と並ぶ四天王と
うたわれた柳朝師。
粋でいなせで威勢の良い口調は
まさしく江戸っ子そのもの。
映画にテレビに大活躍で
ハリウッドでフランク・シナトラで共演も
果たし、シナトラにオイチョカブを教えた
のが自慢。

落語好きが高じて、いつのまにか
僕は寄席のプロデューサーや
落語のDVDや本を作るようになった。
たくさんの噺家さんたちも
会ってきたが、芸人さんの洒落で生きる
姿勢、自分の不幸を笑い飛ばす強さ、
時折見せる情けなさ、弱さに惚れ、
人生の手本としてきた。
もちろん落語は生きるバイブルだ。

この小説には、そんな噺家の持つおかしみと
哀しみがいっぱい詰まってる。
とくに好きなのは、こんな場面。

柳朝の師匠、彦六師が談志、円楽とともに
「素晴らしき世界」に出たとき。
談志がいきなり彦六に、
「師匠近ごろだいぶ耄碌したそうで」とかました。
柳朝が、「耄碌じゃなくて彦六だよ」とやり返す。
談志と円楽が「うまいね」と言って喜ぶ。

若い頃、鈴本の楽屋で柳朝、談志、円楽ら前座が
浴衣姿でゴロゴロしていた。
そこへ彦六が入ってきて、
「てめえたち、鈴本に湯治に来てるんじゃねえぞ!」

談志が黒のトックリのセーターに黒の背広の
上下で楽屋入りしたら、彦六すかさず
「マドロスの喪服だね」

収録中、柳朝が彦六に酌をして着物の上に
酒をこぼした。
あわてて自分の手拭いで着物を拭いた。
談志がそれを見て、
「おい、馬鹿に優しいじゃねぇか」
そこで柳朝、
「うん、死んだらこの着物もらうことに
なってるんでね」
すかさず彦六、
「馬鹿野郎、誰がてめえなんぞにやるもんか」

いいねー、この間合い、このやりとり。
「難しいものを簡単に見せるのがプロ」
柳朝師匠の口癖、肝に銘じて
いつも湯上りでのほほんと生きていきたいねー。




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これは、……酷い。 「冷酷 座間9人殺害事件」  小野一光

著者の犯罪ノンフィクションは
丹念な取材と筆力で
人間のどうしようもない闇を
描き、惹きつけられるが、
今回の殺人犯、白石隆治は
言葉を失う。



彼は女性8人と男性1人を殺害、
解体した,史上まれな凶悪殺人犯だ。
著者は彼と330分に及ぶ獄中対話を
している。
ここで犯人が放つ言葉が……、酷いのだ。
少しひく。



「自分の中にフローチャートが
あって、出会ってまず、おカネがありそうか
どうか判断するんですね。おカネになりそう
だったら、付き合っておカネを引っ張って、
おカネにならなそうなフローチャートの人は
レイプする。ほんと、殺人の理由はおカネと
性欲ですよ。まぁ、三人目の男性以外はそうです」



どんな相手を狙うかのについて、
「ツイッターを使ってキーワード検索を
して、主に弱った女性を……。
疲れた、寂しい、死にたい、とつぶやいて
いる人をフォローしたり、DMを送って繋がろうと
しました。
何か悩みや問題を抱えた女性のほうが
口説きやすいということが、経験でわかっていました。
自分の言いなりに操作しやすいからですね」



そして白石は死体の解体方法について
こと細かく話す。
ここにはとても書けないので、本書を
読んでほしい。



解体を語った同じ口で、今度は
獄中結婚をしたいという。
理由は、
「死刑が確定すると、家族以外の誰にも
会えなくなるじゃないですか。
それなら、誰かと結婚したほうがいいかなって……」

著者が帰るときには、橋本環奈と深田恭子の
写真集を頼む。
……ったく、わけがわからない。



読み終えて、解説の森達也さんが書いてることに
何度もうなずく。


「生まれながら残酷で冷血な人はいない(中略)
でも白石隆治がなぜ9人を殺したのか、
その理由と動機がわからない。
沈黙しているからではない。白石は饒舌だ。
面会した小野に、殺した理由について、
淀みなくしゃべる。
金銭と性欲を満たすため。要はこれに尽きる。
これ見よがしではない。
虚勢を張っているわけでもない」



人間ってなんだろう。
アウシュビッツなどの強制収容所の
体験記「夜と霧」を読んで以来、
ずっと心の奥をざわざわさせながら
考えて生きてきた。
……わからない。



ただひとつだけ最後に記したい。
著者の小野一光さんが巻末の対談で
語った言葉だ。


「世の中にはいろんなところに
落とし穴があるということを
知らしめた事件でした。
軽い気持ちでSNSから連絡したとか、
もしくは苦しくてすがってしまったとか、
そういう人たちに罠を仕掛けた犯罪
だったわけです。
これは裁判の中で明らかになった
ことだけれど、被害者の人たちは本当に
自殺したかったのかというと、
そうではなかったわけです。
だけど苦しいからすがる相手を求めて、
白石みたいな人間に近づいてしまった
ということがどんどん明らかになっていった。
こういう事実があるということは、
世間に知らせておく必要がある。
それで僕は、本書を出すべきだと思いました」



小野さんの本が他の犯罪本と一線を画して
いるのは、この真摯な姿勢にあるのだろう。
これからも僕は著者の作品を読み続ける。
人間とは何か、を考えるために。



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時代ものもいいねぇ 「鈴河岸物語」 半村良

鈴河岸に住む飾り職人剣次郎は、
無口だが実直で気の良い
腕の立つ若き名人。
出自は少し謎だが、人柄文句なし。
物語は捕り物あり、色恋あり、
市井の人情ありと娯楽満載。

古今亭志ん朝師の口跡さながらの
語り口もいい。
さらに半村良らしく、人生のもろもろを
粋な短い文句で教えてくれる。
たとえば……

「なんの新しい工夫もないまま、手なれた
細工を今まで通りにはじめるのが、嫌で
嫌でたまらなくなる。
剣次郎はそれを、自分と仲違いする、と
いう風に心の中で呼んでいる。
新しいことを思いつけない自分に腹を立て
その陳腐さになさけなくなてしまうのだ」

おふくろ代わりのおつねから、そろそろ
所帯を持てといわれた剣次郎、
「またはじまりやがった。所帯を持ったばっかりに
しなくてもいい苦労している奴のそこら中にいる」
「だからっていつまでも独り身でのうのうと
していよってのかい。
でも人間、親にならなきゃ一人前じゃないんだよ。
楽していると世の中を見る目が甘くなっちゃう
んだからね」

世話になってる親方がぽつり。
「俺に頭をさげるには及ばねぇ。だがこれだけは
覚えとけ。渡る世間は力ずくだ。真面目にやって
力を示せば、世間は優しく道をあけてくださる。
だが生意気な奴には、世間はそう甘くない。
そっぽを向いて通せんぼしてくるからな」

納品先の大店の旦那の台詞
「商売は気を長く持たないとな。
せっかちな商売は、雨雲を見た道商いのように
なっちまう。投げ売りだよ。
売る者のほうに格がなければ、買う人も
銭を払う楽しみがなくなるよ」

いい小説は人生も教えてくれる。


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勉強になるねー。 「平安ガールフレンズ」 酒井順子

著者の本はいつも視点と切り口に

才があり楽しませてもらって

きたが、この平安時代の作家たちを

とりあげたエッセイも面白い。

1000年以上も前の女性たちを

まるで友達のように生き生きと描き出す。

少しひくと、



自分が美人でなかったからこそ、

不細工を嫌い、自分が一流のお嬢様でなかった

からこそ、下衆女を嫌う清少納言。

そんな彼女は、今の世の中の基準からすれば、

善人ではないのかもしれません。

しかし私は、だからこそ彼女が好きなのです。



「枕草紙」は、清少納言のリア充アピールの

舞台。自身の知性やウィット、そして

モテっぷりを披露し、「いいね!」と言って

もらえることに彼女は無上の快感を見出している。



そしてそんなリア充アピールが激しい清少納言を

イライラしながら見ている女性が平安貴族の中に

一人いて、それが紫式部です。



……ですって。さらに著者は「紫式部日記」をひいて

教えてくれます。

「清少納言こそ、したり顔にいみじう待べりける人。

さばかりさかしだち、真名書き散らして侍るほども、

よく見れば、まだいと足らぬこと多かり」



「さかしだつ」とは「賢しだつ」だから、

清少納言こそ、賢そうに物知りぶる女よね。

真名(漢字)を書き散らしているようだけど、

よく見れば全然なってないじゃないの、と怒り、

さらに「こういう人のなれの果ては、ろくなことに

ならない」とまで書いている。



酒井さん曰く、紫式部がここまでむかついている

のは、清少納言の”含羞の無さ”。

紫式部は清少納言より少し年下、だから「枕草紙」も

読んでいた。

清少納言のモテ自慢などは、どちらかという

内にこもるタイプの紫式部は我慢ならなかった

んだろう。



けれど紫式部も、自分の文才をアピールするために

父から「お前が男だったら」と言われたと

日記に書く。

でも人前では、私は漢字の「一」さえ書けない

不調法で謙虚にふるまう。’

二人を比べ著者の見事な視点が光る極めつけの

文章がこちら。



溜めがきかないタイプの清少納言は、自らが体験した

こと、感じたことをそのまま、紙の上にあらわし

ました。

それが後年、「随筆」と言われるジャンルと

なったのです。

対して紫式部は、様々な思いをいったん胸の中に

溜め、熟成・発酵させ、それを物語として

紡いでいった。



このエッセイでは他、藤原道綱母、菅原孝漂女、

和泉式部も取り上げている。

どれも面白いのでよかった読んでみてください。



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くせになる短編集 「駐車場のねこ」 嶋津輝

昔読んだ遠藤周作のエッセイに、

いつも少しだけうんこを便器に

つけていく男の話があった。

遠藤はそれを実に面白い奴だと

感心していた。

小さな変人、を認めるかどうか、

それは受け止める側の問題だ。

小説好きは、基本、世間への違和感と

多少の変態性を持っているはずだから、

受け止める側だと僕は思う。



この話に頷いてくれた方におすすめなのが、

本作だ。

とにかく出てくる人たちが少し変態でけなげで

可愛い。

たとえば、

幸田文の「流れる」に憧れる家政婦の妹と

赤ちゃんの頃に指を失くしてラブホテルに

勤める妹が織りなす日々を描いた「姉といもうと」



クリーニング店に自分の全ての服、下着まで

出そうとする女と、店主たちの淡い交流話、

「カシさん」



安いが量も信じられないくらいに少ない

弁当を売る、愛想のない店の親娘。

そんな女のそっけない態度に快感を覚える男。

「米屋の母娘」



などなど、ちょっと変てこりんでなぜか

読後あったかくなる短編が7編詰まった話。

何度も読み返したくなる作品だ。


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