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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年05月17日

これは、……酷い。 「冷酷 座間9人殺害事件」  小野一光

著者の犯罪ノンフィクションは
丹念な取材と筆力で
人間のどうしようもない闇を
描き、惹きつけられるが、
今回の殺人犯、白石隆治は
言葉を失う。



彼は女性8人と男性1人を殺害、
解体した,史上まれな凶悪殺人犯だ。
著者は彼と330分に及ぶ獄中対話を
している。
ここで犯人が放つ言葉が……、酷いのだ。
少しひく。



「自分の中にフローチャートが
あって、出会ってまず、おカネがありそうか
どうか判断するんですね。おカネになりそう
だったら、付き合っておカネを引っ張って、
おカネにならなそうなフローチャートの人は
レイプする。ほんと、殺人の理由はおカネと
性欲ですよ。まぁ、三人目の男性以外はそうです」



どんな相手を狙うかのについて、
「ツイッターを使ってキーワード検索を
して、主に弱った女性を……。
疲れた、寂しい、死にたい、とつぶやいて
いる人をフォローしたり、DMを送って繋がろうと
しました。
何か悩みや問題を抱えた女性のほうが
口説きやすいということが、経験でわかっていました。
自分の言いなりに操作しやすいからですね」



そして白石は死体の解体方法について
こと細かく話す。
ここにはとても書けないので、本書を
読んでほしい。



解体を語った同じ口で、今度は
獄中結婚をしたいという。
理由は、
「死刑が確定すると、家族以外の誰にも
会えなくなるじゃないですか。
それなら、誰かと結婚したほうがいいかなって……」

著者が帰るときには、橋本環奈と深田恭子の
写真集を頼む。
……ったく、わけがわからない。



読み終えて、解説の森達也さんが書いてることに
何度もうなずく。


「生まれながら残酷で冷血な人はいない(中略)
でも白石隆治がなぜ9人を殺したのか、
その理由と動機がわからない。
沈黙しているからではない。白石は饒舌だ。
面会した小野に、殺した理由について、
淀みなくしゃべる。
金銭と性欲を満たすため。要はこれに尽きる。
これ見よがしではない。
虚勢を張っているわけでもない」



人間ってなんだろう。
アウシュビッツなどの強制収容所の
体験記「夜と霧」を読んで以来、
ずっと心の奥をざわざわさせながら
考えて生きてきた。
……わからない。



ただひとつだけ最後に記したい。
著者の小野一光さんが巻末の対談で
語った言葉だ。


「世の中にはいろんなところに
落とし穴があるということを
知らしめた事件でした。
軽い気持ちでSNSから連絡したとか、
もしくは苦しくてすがってしまったとか、
そういう人たちに罠を仕掛けた犯罪
だったわけです。
これは裁判の中で明らかになった
ことだけれど、被害者の人たちは本当に
自殺したかったのかというと、
そうではなかったわけです。
だけど苦しいからすがる相手を求めて、
白石みたいな人間に近づいてしまった
ということがどんどん明らかになっていった。
こういう事実があるということは、
世間に知らせておく必要がある。
それで僕は、本書を出すべきだと思いました」



小野さんの本が他の犯罪本と一線を画して
いるのは、この真摯な姿勢にあるのだろう。
これからも僕は著者の作品を読み続ける。
人間とは何か、を考えるために。



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感想(1件)



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