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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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posted by fanblog

2023年05月18日

605P一気読み。 「絶叫」 葉真中顕



ページをめくる手が止まらず、

かなり厚い本だが、二日で読了。



一言でいうと、女がさまざま試練にあい、

闇に転落していく話だが、

そのさまは、犯罪ノンフィクション

に比べれば、なんてことはない。

よくあるといえば、ある。

ただこの本が一線を画しているのは、

登場人物たちのキャラクターの深さと、

男社会の中で翻弄され、心の彷徨を

続ける女たちの慟哭を描いてる点だ。



きちんとした親でないといけないと己を縛り、

がんじがらめになるあまり、子どもを愛せない

女性刑事。

母親から一度も愛されたことのないゆえ、

甘い言葉にすぐによろめくOL、

生活保護者を食い物にするNPO

……などなど、少し周囲を見回せば

どこにでもいそうな人間たちだ。

だからこそこの物語は他人ごとではないと

思わせる。



作者は現代の社会もきちんと見据える。

未だに「困ったときは身内頼み」を要求する行政。

女性の平均給与初度は男性の1/2、

勤労者世帯(20〜64歳)の一人暮らしの女性の

2/3が貧困、シングルマザーの8割は就労してい

いるが半数以上が貧困。

そんなリアルな背景の中で、女性の転落を

見事な構成と筆力で読ませる。



ラスト主人公がとった行動はあまりに

哀しすぎるが、呪縛のような「女の幸せ」から

の逃避のようにも見える。



根が深いね。



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第163回直木賞受賞作 「少年と犬」 馳星周



子どもの頃からよく犬に吠えられた。

噛まれたことなどないのだが、

怖いのだ。

それが犬にも通じるのだろう。

不安な空気が伝わり、相手も怖くなり吠える

のだと思う。



だから犬が出てくる映画や小説も

あまり得意ではない。

物語的に見ても動物を出すのはズルいし、

通俗が過ぎる。



なのに、この小説にはやられた。

主人公は、東日本大震災で野犬になってしまった

多聞(たもん)。

彼は、

「リードを持つ人間を信頼し、しかし、

頼りきりになるのではなく、堂々と歩く」



「賢いだけではない。胆も据わっている。

野犬であったのなら、群れをまとめる

リーダーになっていただろう」



という素晴らしい犬だ。

物語はそんな多聞と偶然の出会いをする

男、泥棒、夫婦、少女、娼婦、老人、少年

たちとの絆を描いた、連作短編になっている。



臆面もないタイトルも含めて、ひとつ間違えれば

恥ずかしいほどのファンタジーになってしまう

話なのに、それが胸に迫るのは、出てくる人間たち

がみんなギリギリの崖っぷちで生きているからだ。

多聞はまるで天使のように、そんな彼らを救っていく。



「こんな犬いるわけない」と言ってしまえば

終わりだが、著者は多聞を単なる犬として

描いていない。

人生には必ず多聞のような存在が現れる、

苦しみ必死に生きている人には必ず。



ノワール小説を書いてきた著者らしい

激しさと、通奏低音のように響く優しさが

クロスするいい小説です。



犬、好きになれるかも。





少年と犬 (文春文庫) [ 馳 星周 ]

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感想(0件)









70,80は、鼻たれ小僧。 「よその島」 井上荒野



60を過ぎて、驚いたことが

ある。

まさかここまで、自分が未熟で

幼いままだとは思わなかったのだ。



この小説の主な人物は70代だが、

彼らも成熟とはいえず、愛や恋、

過去のもろもろに翻弄され悩み、

おののく。

著者はその人間模様をミステリー仕立てに

して、魅せてくれる。

冒頭から惹きつけられる。



 蕗子(ふきこ)の手はまだじゅうぶんにみずみずしかった。

 手の甲はふわりと白く、指はすんなり伸びていて、爪にオパ

ールのようなマニュキュアが施されている。美しい手。

 だかこれは殺人者の手だ、と碇谷芳郎(いかりやよしろう)

は思った。



……見事ですよね。僕は著者のファンですが、どんどん

素敵な作家さんになっていくので、嬉しい限りです。

70代の男女の愛をここまで精神性高く、そして

切なく描いた小説は、今までないんじゃないかな。



まさに、今の時代の物語です。



心に残った一節を最後に。



でも私は身動きできない、と蕗子は思う。もう若く

ないからではなくー芳郎を愛しているから、誰かを愛

するということは不自由になることだ。その不自由さ

を幸福に思うときがあり、不幸に思うこともあるだろ

う。それでも、誰も愛さないよりましだし、誰かをも

う愛してないと思うよりましだ。



よその島 (中公文庫 い115-3) [ 井上荒野 ]

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一気に読了。 「文身」 岩井圭也



こんな物語読んだことがない。

驚きながら、「そんなアホな」と

思いながらページをめくる手が

止まらない。



弟は兄の名前で、無頼な私小説を書く。

兄は書いてある通りの人生を生き、

作家としての体裁を保つ。

やがて兄は、一行も書くことなく、

文壇の重鎮になっていく。

弟はさらにとんでもないことを小説を通して

兄に強いる。

兄は苦悩のすえ、けれど事件を起こす。



そしてラスト。

物語はさらに反転する。

なに、なに。え、何がどうなってるの。

なんとも座りの悪い椅子に腰かけたような

終わり方が、後を引く。

この作家、ただもんじゃない。




文身 (祥伝社文庫) [ 岩井圭也 ]

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感想(0件)




真摯に紡ぐ言葉の強さ、美しさ 。 「くもをさがす」 西加奈子



カナダでがんになり、両乳房を

切除し、再発リスクを抱えながらも

前を向いて生きていくまでの

治療記だ。



僕はがんをテーマにした映画の脚本を書き、

3年間には自分も罹患したので、

これまで100冊以上のがんの本を読んできた。



なかでも彼女の著作は別格だ。

作家がなりふりかまわず、自分の内なる声に

耳を傾け、言葉を紡ぐすごみ、美しさを

感じさせてくれ、西さんならでのユーモアが

散りばめられているのもさすがだ。

少しひいてみる。



「抗がん剤の治療の妨げになるんで、漢方はやめて

ほしいねん」(関西弁なのは、彼女たちの話す英語が

西さんにはそう聞こえたらしい)

というインターンのサラに、

「今私は本当に漢方に助けられている。だから

止めたくないんです」とためらいがちにいうと、

「そうなんや、オッケー」とあっさり。

え、本当にいいの?と著者が返すと、

「もちろん。決めるのはカナコやで」

サラは私の目をまっすぐ見つめていた。

「あなたの体のボスは、あなたやねんから」



両乳房の切除が決まった後、同じように乳がん体験の

ある看護士、イズメラダとの会話もいい。



「カナコは再建すんの?」

「ううん、再建はせんとく。でも乳首を残すかは

迷ってんねん」

「なんで?」

「うーん、今はせんでも再建しなくなった時の

ために、乳首だけ残す方法もあるって……」

イズメラルダは、目を大きく見開いた。

「乳首って、いる?」



彼女はこれには大笑いして、気が楽になり、

乳首も切除し、しばらくたってこう記す。



私は変異遺伝子があるので、がんの予防のため

将来に卵巣の切除(中略)、子宮を取ったほうが

いいかもしれないと、医師が言っていた。



乳房、卵巣、子宮、という、生物学的医は女性の

特徴である臓器を失ったとしても、それでも

私は女性だ。それはどうしてか、私が、そう思う

からだ。



身体的な特徴で、自分のジェンダーや、自分が何者で

あるかを他者に決められる謂れはない。(中略)

自分が、自分自身がどうするかが、大切なのだ。



この本には要所要所に、著者がおそらく治療期間中に

読んだのであろう、文章の抜粋が出てくる。

これらが、著者の言の葉とあいまって

より効いている。



ヴァージニア・ウルフは本を読むことについて、

こんな風に言っている。

「それはまるで、暗い部屋に入って、ランプを

手に掲げるようなことだ。光はそこに既に

あったものを照らす」



似たようなことを、ウィリアム・フォークーも

言っている。

「文学は、真夜中、荒野のまっただ中で擦る

マッチと同じだ。マッチ1本では到底明るく

ならないが、1本のマッチは、周りにどれだけの

闇があるのかを、私たちに気づかせてくれる」



西加奈子は、この本で私たちに、しばらくは消えないで

あろう1本のマッチを擦ってくれている。



くもをさがす [ 西 加奈子 ]

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いやー、惚れた。 「酒場學校の日々」 金井真紀

文は人なり、というが、この方の

文章はまさしく人柄が見えてくる。

まっすぐで可愛くて、優しくて

人を面白がる能力に長けている。

日色ともえさんのエッセイを読んだ

ときと同じように、心がときめき、

著者に会いたい、と胸がキュンとなった。



このエッセイは、詩人の草野心平さんが

やっていた酒場「學校」にひょんなことから

店を手伝うことになった著者が、

カウンターの内側から見た酔客それぞれの

ありようを描いたものだ。

このひとりひとりの描写が素敵なんだ。

あったかいんだなぁ。

愛に満ちてるんだ。

とくに第一章、「一年生の見聞録」というページは

酒場を住処にしている僕としては、愛すべき酔客の

姿に、「わかるなぁ」と何度もうなずき、

ニヤニヤしながら読ませてもらった。

見出しだけ少し紹介します。



酔うほどに禮子(れいこ)さんの声はやわらかい



純子さんの剛気、栄子さんの自在



酒は景気よくたっぷりと注げ、という教え



清水さんの太い指がゆで卵をむく



もじゃもじゃは今夜ももじゃもじゃ語で歌う



阿部さんは陰気な風を連れてくる



黒縁眼鏡の奥にいつも、及川さんの安寧



……どうですか、いいでしょ。

とにかくみんなに彼女の文章、読んで欲しいです。

飲める人は、なじみの酒場でいっぱい

やりたくなりますよ。



酒場學校の日々 フムフム・グビグビ・たまに文學 (ちくま文庫 かー83-2) [ 金井 真紀 ]

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ほんわか、ほろり、ほろ苦い 「ふたたびの虹」 柴田よしき


最近大流行りの、食べ物屋+

ミステリー+人情噺ものですが、

ひと味違います。



京都生まれのはんなりした女将さんが、

店に集まるお客さんたちの抱える秘密と

謎を、見事な手際で解決していく物語。



え、よくある話じゃん、と思うでしょ。

でも女将さん自身も、大きな秘密を抱えて

いるんです。

小説の早い段階で出てくるので、これは

ネタバレじゃないですから、ご安心を。



最近料理に興味を持っている僕としては、

彼女の作る「おばんさい」も垂涎もの。

こんな店あれば、絶対に行くけどなぁ。

美味しいものと心があったかくなる話が

好きなら、超おすすめの一冊です。



ふたたびの虹 恋愛ミステリー (祥伝社文庫) [ 柴田よしき ]

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真っ当な人 。「音楽は自由にする」 坂本龍一


教授が綴る自伝的エッセイ。

クラシカルな音楽教育を受けた

少年が、現代音楽、小演劇、

ポップスの表現者と出合い

交じり合いながら、自分の音楽を確立

していく様子が語られている。



客観的で淡々と記されているが

興味深いエピソードが満載だ。

長くなるから興味のある方だけ、

読んでください。

たとえば、武満徹氏。



大学時代坂本は、「武満って邦楽器なんか

使って右っぽい。批判しよう」と演奏会の

会場まで行き、文句を綴ったビラを配る。

すると本人が来たので、坂本は武満に

「あなたは和を作品に使ったりしてどういうこと

ですか」と詰め寄ったという。

武満はちゃんと話を聞いて30分ほど立ち話を

したが、それに感動し以来、縁が出来会うようになり

親しくなる。



ロンドンで会ったときは、「戦場のメリークリスマス」

などですでに映画の仕事を手がけていた坂本は、映画

音楽の話をした。



「武満さんも僕も小津が大好きなんですが、一点だけ

気に食わないことがある。音楽がひどいと。それで

いつか2人で小津の映画の音楽を全部書き換えちゃおう、

と気炎をあげました」



大学の頃は自由劇場、赤テントなどと仕事をする

ようになり、その流れで友部正人に出会い、

ツアーに参加し、音楽人脈が広がり、

山下達郎→大瀧詠→細野晴臣とYMOに

つながっていく。

坂本は細野との出会いをこう記している。



「細野さんの音楽を聴いて、僕が昔から

影響を受けてきたドビュッシーやラヴェルや

ストラヴィンスキーのような音楽を全部

わかったうえで、こういう音楽をやっている

だろうと思ってた。ところがほとんど知らない

という。



矢野顕子さんも同じだった。高度な理論を

知ったうえでああいう音楽をやっているんだろうと。

でも訊いてみると、やっぱり理論なんて

全然知らない。



つまり、ぼくが系統立ててつかんだ言語と

彼らが独学で得た言語は、ほとんど同じ言葉だった。

それで確信を持ったのは、ポップ・ミュージックと

いうのは相当に面白い音楽なんだということです」



インテリジェンスと素直に感動する力を

併せ持った坂本さんが、いかに真っ当な人か

よくわかる記述です。



それにしても、

「YMOをやる前まではニヒルな日雇い労働者という

感じで音楽をやっていた」ことには驚いた。

当時から相当な売れっ子だったのに。



YMOが売れたことに戸惑いを覚えていたのも

びっくりした。



「海外でウケたということで、それまでYMO

のことを知らなかったような人たちにも、。

一気に知られるようになった。

社会現象とまで言われました。

僕はそれまで”無名でいたい。前に出たくない”と

思って生きてきたから、それはまったく予想外の

ことで、本当に困りました(中略)

そういう状況を、僕は憎悪するようになりました」



ねぇ、含羞ある真っ当な人でしょ。



ここまでが本の半分。次からは世界のサカモトに

なっていく過程をこれまた客観的に記しています。

大島渚、ベルトリッチ、アカデミー賞、政治、

環境活動などさらに面白い話がいっぱいですが、

それはぜひ読んでみてくださーい。



いやー、坂本龍一、すごい人です。


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打ちのめされた。 「こどもホスピスの奇跡」 石井光太


ー日本には小児がんなど難病の

子どもが十五万人おり、そのうち

二万人が命を脅かされているー



冒頭近くのこの文章を読んで衝撃を受けたのが

始まりで、以降ずっと僕は本作から目が離せなく

なった。



文章は続く。

難病の子供たちが一日、いや半日でもいいから、

社会に戻ってごく普通の園児や小学生としての

日常を過ごしたいと切望するのは当然だろう。



大阪のTSRUMIこどもホスピスは、そんな子供の

願いをかなえるためにつくられた施設だ。

ホスピスという名称がつくものの、成人用の

それのように死にゆく人間を看取るための

施設ではない。



難病の子供たちが短い期間であっても

治療の場から離れ、家族や友人と笑い合って、

生涯忘れえぬ思い出をつくるための「家」としての

空間なのだ。



……こどもホスピス。そんな施設があるなんて、

知らなかった。

この本は、余命いくばくもない子どもに、苦しい

治療を強いる小児医療に疑問を覚えたある医師が、

多くの人々と一緒に、こどもホスピスを設立する

奮闘を描いたノンフィクションだ。



何より本に登場する幾人もの子どもたちに、

胸が震える。

小さな体でつらい治療を受けながらも懸命に

生きるさまは、神様を見ているようだ。



僕は本を読み終えて、涙が止まらず、

こんな子どもたちの

ために、何かできないかと考えた。

調べると、福岡にも子どもホスピス設立を

めざすNPOがあった。

すぐに年会費を払い、会員になった。



心に深く残った言葉がある。

少し長いが紹介したい。

ホスピスの事務局長の言葉だ。



「ホスピスとしては、家族がたくさん利用したいと

思っていれば、できるだけそれに応じたいと

考えています。

でも容態が重くて体調の波が激しい場合は、

家族が望んでいても、なかなか十分な利用が

できない子もいます。

だからこそ、私たちは一回一回を大事に

したいのです。(中略)



私たちが目指すのは、”LIVE DEEP(深く生きる)の

実現です。

一回一回の出会いにきちんと向き合って、できるだけ

深くかかわったり、その部分で何かを提供したいのです」



短くとも、深く生きる。

僕はこの言葉をたぶん一生忘れないと思う。

そして、深く生きる子どもたちのために、

自分が出来ることはないか、

じっくりと考えていきたい。




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言語化してもらってスッキリ! 「FAKEな日本」 森達也

最も信頼しているクリエイターの
ひとり、森達也さんが、忖度社会の
日本の正体を探る本。

各界の強者にインタビューしながら
自分の作ってきたドキュメント映像作品を
巡る考察を続ける。
我らがコメディアン、松元ヒロさんも
登場!



この国に対して僕がモヤモヤしているものを
的確に言語化してくれる箇所がたくさんあり
さすが、森さんと膝を打つ。
ではスッキリした箇所をひいていく。


長くなるので、読みたい方だけ。

ピーター・バラカン、日本のテレビについて
「日本ではアメリカやイギリスのような
政治風刺の番組が放送できない。
理由は中立公正というルールが必要以上に
徹底されているから。
もちろん中立公正は、一般的なルールとしては
大切。でもひとつの記事や特別の番組がすべて
中立公正である必要はない。
それはそもそも不可能。
左のほうに偏った記事があれば、右のほうに
偏った番組がある。
それぞれが主張する。それによって中立公正が
担保される。
これが多くの民主国家のスタンダード。
でも日本はだいぶ違う」



オウムの一般信者の人権があまりにも
踏みにじられていることに違和感を覚え
「A」、「A2」のドキュメントを撮ってきた
森さんが有田芳生さんに聞く。


この問答は僕がつねに考えいてる
問題でもある。

「組織の負のメカニズムに対して、個は
どう立ち向かえるか」
「個の人間は、組織に帰属して、翻弄され
ながら生きている。でもその過程で、歴史に
名前が残らない多くの人が犠牲になった。
そこに今の日本が向かってないだろうか。
同じ歴史は繰り返さないというけれど、
過去は未来になるんです」



この有田の答えのあと、著者はこう記す。



確かにこの国は同じことを繰り返す傾向が
大きい。
言い換えれば学習が下手だ。
教訓にできない。
その理由の一つは責任構造の不在。
必ず追及できない。
なぜならば個ではなく組織共同体が社会の
基盤だから。
ここに働くメカニズムは忖度や同調圧力。
つまり自分の意志ではない。
疑似的思想。
こうして組織は動く。
一人ひとりには自分たちが加担している
ことの自覚がない。
その構造を直視しない。



僕は勤務していた国鉄がJRに変わるとき、
さまざまな人間模様を見てきた。
以来、組織には属さず個で生きることを
決めた。
そんな僕に、この本は、
いろんなものを示唆してくれる。



本当のインテリジェンス。
読み終わって、僕はそんな言葉を思い浮かべた。


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感想(0件)






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