2015年08月15日
東京・根津美術館「絵の音を聴く―雨と風、鳥のさえずり、 人の声―」
「コレクション展絵の音を聴く雨と風、鳥のさえずり、人の声」が根津美術館で開催中です。
絵を見て、そこにあるべき音を想像するのは楽しいものです。くちばしを大きく開けてさえずる小鳥たちの声、龍虎が巻き起こす風や雲の轟音、また、山水画に表された雨風や瀧の音、そして、名所絵の群衆の賑わいなど、音を感じとることができる絵画作品は少なくありません。かつて、中国の文人たちは、部屋に横たわりながら胸中の山水に遊ぶことを「臥遊」と呼んで楽しみました。心を澄まして絵の中に入り込むことができれば、現代の私たちにも、きっとさまざまな音が聞こえてくるはずです。絵の音を聴くことによって、その作品の新しい魅力を発見してみてはいかがでしょうか。(根津美術館HPより)
「絵の音を聴く」のテーマ展示は、「鳥たちの楽園」「鳴く虫と吠える獣」「妙なる調べ」「名所の賑わい」「音を聴く人々」と名付けられて、それぞれ作品が展示されています。
同展は、絵を見て、何が描かれているのかを確認するだけでなく、そこにあるべき音を想像することに焦点をあてた展覧会。これは、中国の文人たちが行っていた高尚な遊び、「臥遊(がゆう)」という、部屋の中にいながら壁に掛けた山水画の世界に思いを馳せ、そこに心を自由に遊ばせるという鑑賞法に基づいています。
南宋時代・ 13世紀の重要文化財「風雨山水図」(伝夏珪筆)から、江戸時代・ 19世紀の「夏秋渓流図屏風」(鈴木其一筆)まで、同美術館の所蔵品を中心に構成され、くちばしを大きく開けてさえずる小鳥たちの声、龍虎が巻き起こす風や雲の轟音、また山水画に表された雨風や瀧の音、そして名所絵の群衆の賑わいなど、音を感じとることができる絵画作品約25件が展示されています。
最初は室町時代の楊月、式部輝忠らの「花鳥図」が展示。式部の作品は親鳥が虫をくわえて、口をあけてえさをねだる小鳥に向かう様子が美しい。
式部はもう一つ「観瀑図」も展示。
伝狩野元信の「四季花鳥図屏風」(室町・16世紀)は、実際は彼の子松栄の初期作との説もあるらしいのですが、四季の花々の中に遊ぶ鷺や雁が描かれたこの作品は、とりわけ素晴らしいものでした。
雪舟や能阿弥の「四季花鳥図」、永徳の聚光院襖絵の「花鳥図」と表現と共通している点もあり、比較しながら見るとより楽しめました。特に中央に舞う白鷺、これは何かアイコンのようですね。
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」は、檜の林の中の渓流を描いたもので、右幅が夏で、左幅が秋の風景が描かれてありますが、夏の檜には蝉が一匹止まっており、秋のほうには紅葉がひらひらと舞い落ちています。木々に谷川を描き、金に着色する、これは琳派的ですが、其一の場合、モダンでシュールな絵画を想起させます。意識的に音を消しているような作品と解説にありました。
「龍虎図屏風」(室町・16世紀)を描いた雪村周継は関東で活躍したも室町時代の絵師ですが、ユーモアと大胆な感性で龍と虎を描いていて、みごとでした。宗達の雲龍図にも似ているように思いました。
久隅守景の「舞楽図屏風」(6曲一双 江戸・17世紀)、右隻は4人舞の太平楽、左隻は2人舞の納曽利、1人舞の蘭陵王が描かれ、一見すると宗達の舞楽図とよく構図が似ています。久隅守景は今週サントリー美術館で特別展が開催されるので、今から楽しみです。
「酒呑童子絵巻」住吉広尚も迫力の作品。岩佐又兵衛の「傘張虚無僧図」(一幅 江戸・17世紀)、狩野山雪の絵もあり、さらに野々村仁清の香合もいくつかありました。曾我紹仙「山水図」(室町時代)は、ドラッカーさん好みですね。
圧巻なのは、池大雅の「洞庭赤壁図巻」。中国の版本の略図をもとに雄大な景色ともに旅人や漁民を描き、文人画を極めた大雅ならではの作品です。元末四大家にも匹敵(?)するのではないかと。自賛の見事な書も解説付きで展示されています。
ほかにも修復が完了し、今回が初お披露目となる「近江伊勢名所図屏風」(6曲一双 江戸17-18世紀)も洛中洛外図屏風のように当時の街の様子が細かく描かれており名所絵の群衆の賑わいが楽しめました。
さらに南宋時代の重要文化財「風雨山水図」(伝夏珪筆。雑華室印あり)など、コレクションを中心に約25件の展示ですが、どれも見ごたえのあるものばかり。
2階の展示室では「しつらえを楽しむ-福島静子のコレクション-」が印象的でした。特に数々の蒔絵の手箱や硯箱。
美しい装飾蒔絵で飾られた作品を見ていると、時間を忘れていまいます。細かい細工も凝っているので、時間をとってご覧くださいね。
また、根津美術館はに美しい庭園があります。夏には散策するにはちょっと暑いですが、茶室があり、四季折々の花々が咲いていて、散策が楽しめます。お時間がある方はこちらもぜひ。
2015年7月30日(木)〜9月6日(日)
根津美術館
・東京都港区南青山6-5-1
・TEL:03-3400-2536
http://www.nezu-muse.or.jp/
絵を見て、そこにあるべき音を想像するのは楽しいものです。くちばしを大きく開けてさえずる小鳥たちの声、龍虎が巻き起こす風や雲の轟音、また、山水画に表された雨風や瀧の音、そして、名所絵の群衆の賑わいなど、音を感じとることができる絵画作品は少なくありません。かつて、中国の文人たちは、部屋に横たわりながら胸中の山水に遊ぶことを「臥遊」と呼んで楽しみました。心を澄まして絵の中に入り込むことができれば、現代の私たちにも、きっとさまざまな音が聞こえてくるはずです。絵の音を聴くことによって、その作品の新しい魅力を発見してみてはいかがでしょうか。(根津美術館HPより)
「絵の音を聴く」のテーマ展示は、「鳥たちの楽園」「鳴く虫と吠える獣」「妙なる調べ」「名所の賑わい」「音を聴く人々」と名付けられて、それぞれ作品が展示されています。
同展は、絵を見て、何が描かれているのかを確認するだけでなく、そこにあるべき音を想像することに焦点をあてた展覧会。これは、中国の文人たちが行っていた高尚な遊び、「臥遊(がゆう)」という、部屋の中にいながら壁に掛けた山水画の世界に思いを馳せ、そこに心を自由に遊ばせるという鑑賞法に基づいています。
南宋時代・ 13世紀の重要文化財「風雨山水図」(伝夏珪筆)から、江戸時代・ 19世紀の「夏秋渓流図屏風」(鈴木其一筆)まで、同美術館の所蔵品を中心に構成され、くちばしを大きく開けてさえずる小鳥たちの声、龍虎が巻き起こす風や雲の轟音、また山水画に表された雨風や瀧の音、そして名所絵の群衆の賑わいなど、音を感じとることができる絵画作品約25件が展示されています。
最初は室町時代の楊月、式部輝忠らの「花鳥図」が展示。式部の作品は親鳥が虫をくわえて、口をあけてえさをねだる小鳥に向かう様子が美しい。
式部はもう一つ「観瀑図」も展示。
伝狩野元信の「四季花鳥図屏風」(室町・16世紀)は、実際は彼の子松栄の初期作との説もあるらしいのですが、四季の花々の中に遊ぶ鷺や雁が描かれたこの作品は、とりわけ素晴らしいものでした。
雪舟や能阿弥の「四季花鳥図」、永徳の聚光院襖絵の「花鳥図」と表現と共通している点もあり、比較しながら見るとより楽しめました。特に中央に舞う白鷺、これは何かアイコンのようですね。
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」は、檜の林の中の渓流を描いたもので、右幅が夏で、左幅が秋の風景が描かれてありますが、夏の檜には蝉が一匹止まっており、秋のほうには紅葉がひらひらと舞い落ちています。木々に谷川を描き、金に着色する、これは琳派的ですが、其一の場合、モダンでシュールな絵画を想起させます。意識的に音を消しているような作品と解説にありました。
「龍虎図屏風」(室町・16世紀)を描いた雪村周継は関東で活躍したも室町時代の絵師ですが、ユーモアと大胆な感性で龍と虎を描いていて、みごとでした。宗達の雲龍図にも似ているように思いました。
久隅守景の「舞楽図屏風」(6曲一双 江戸・17世紀)、右隻は4人舞の太平楽、左隻は2人舞の納曽利、1人舞の蘭陵王が描かれ、一見すると宗達の舞楽図とよく構図が似ています。久隅守景は今週サントリー美術館で特別展が開催されるので、今から楽しみです。
「酒呑童子絵巻」住吉広尚も迫力の作品。岩佐又兵衛の「傘張虚無僧図」(一幅 江戸・17世紀)、狩野山雪の絵もあり、さらに野々村仁清の香合もいくつかありました。曾我紹仙「山水図」(室町時代)は、ドラッカーさん好みですね。
圧巻なのは、池大雅の「洞庭赤壁図巻」。中国の版本の略図をもとに雄大な景色ともに旅人や漁民を描き、文人画を極めた大雅ならではの作品です。元末四大家にも匹敵(?)するのではないかと。自賛の見事な書も解説付きで展示されています。
ほかにも修復が完了し、今回が初お披露目となる「近江伊勢名所図屏風」(6曲一双 江戸17-18世紀)も洛中洛外図屏風のように当時の街の様子が細かく描かれており名所絵の群衆の賑わいが楽しめました。
さらに南宋時代の重要文化財「風雨山水図」(伝夏珪筆。雑華室印あり)など、コレクションを中心に約25件の展示ですが、どれも見ごたえのあるものばかり。
2階の展示室では「しつらえを楽しむ-福島静子のコレクション-」が印象的でした。特に数々の蒔絵の手箱や硯箱。
美しい装飾蒔絵で飾られた作品を見ていると、時間を忘れていまいます。細かい細工も凝っているので、時間をとってご覧くださいね。
また、根津美術館はに美しい庭園があります。夏には散策するにはちょっと暑いですが、茶室があり、四季折々の花々が咲いていて、散策が楽しめます。お時間がある方はこちらもぜひ。
2015年7月30日(木)〜9月6日(日)
根津美術館
・東京都港区南青山6-5-1
・TEL:03-3400-2536
http://www.nezu-muse.or.jp/