2016年05月29日
「原安三郎コレクション 広重ビビッド」展
東京六本木のサントリー美術館で開催中の「原安三郎コレクション 広重ビビッド」展に行ってきました。今回の展覧会は、すべてひとりの蒐集家によって集められたコレクションだけで構成されています。その浮世絵を蒐集したのは、明治大正昭和を生きた実業家で財界の重鎮としても知られた原安三郎氏。原氏は旅好きで、そのため風景画浮世絵の蒐集にも熱心であったとということです。「原安三郎コレクション」の特徴は、風景画浮世絵が多いこと。そして何より、摺(すり)の状態が際だって良く、美しい発色を維持した作品ばかりであるということです。
浮世絵は版画ですから、同じ作品が複数存在します。当然ながら、作品ごとに摺の状態が違い、そのことによってみための印象が大きく異なります。また、保存状態によっても、劣化(紫外線や虫食い等によって)の具合が違い、そのことでも大きく印象を異にすることになるのです。
その点、原安三郎コレクションは、「初摺」が多く、また、これまであまり公開されてこなかったこともあり保存状態も良好です。
「初摺」というのは、浮世絵師が描いた作品を版木におこし、絵師自らが摺の現場に立ち会い、様々な指示を出しながら仕上げて摺ったもの。つまり、今回出展されている「初摺」の浮世絵は、広重本人が現場で、「こうしたい」という思いを伝えて完成したものということになります。
一方、「初摺」に対する言葉が「後摺(のちずり、もしくはあとずり)」といいます。この「後摺」になると、絵師の思いよりは、より版元の“営業的観点”が盛り込まれるようになるため、より効率的で、時には簡便な摺が求められるようになったのだそうです。
今回の展示では、同じ作品で「初摺」と「後摺」を並べて展示しているものもあり、ふたつの違いを明快に理解することができます。
広重の最晩年の傑作と言われる「六十余州名所図会」。五畿七道(ごきしちどう)の68カ国に江戸と目録を合わせた計70図で構成された揃物の絵すべてと江戸の1枚、目録1枚を合わせた全70点がすべて一挙展示。これは、これまでにはなかったことだそうです。しかも、前後期通期で全点を展示!
広重は、実際には全国各地に足を運んで描いたわけではないといわれていますが、描く対象が全国各地に及ぶため、広重は先行する名所図会などに着想を得て、独自の世界を生み出しました。このシリーズでは彫りと摺りの高い技術が見どころの一つ。例えば、美しいグラデーションを生む「拭きぼかし」の一種の「あてなしぼかし」は摺師の腕が試される技法の一つで、広重作品の中でも本シリーズから本格的に使われるようになったそうです。
北斎と国芳の名作も展示されます。『神奈川沖浪裏』『凱風快晴』(北斎)、『近江国の勇婦お兼』(国芳)などの有名作も登場します。北斎幻の作品といわれる『千絵の海』全10点。この10点すべてを所蔵しているところは他にないということですので、今回の展示はとても貴重です。
いずれも人気のある画家なので、会場は外国の方も多く、非常に混雑していました。じっくり前で見たい場合は、時間に余裕を持っていくことをおすすめします。
会場にて、その鮮やかな色=ビビッド感を堪能してくださいね。
【原安三郎コレクション 広重ビビッド】
開催場所・会場
サントリー美術館
入館料一般 1300円大学生、高校生 1000円※中学生以下無料。
開催日・期間
2016年4月29日(金)〜2016年6月12日(日)※期間中の開催日:火曜休館(ただし、5月3日、6月7日は開館)
開催時間
10:00〜18:00 最終入館17:30
金・土、5月 2日(月)〜4日(祝) 10:00〜20:00 最終入館19:30
浮世絵は版画ですから、同じ作品が複数存在します。当然ながら、作品ごとに摺の状態が違い、そのことによってみための印象が大きく異なります。また、保存状態によっても、劣化(紫外線や虫食い等によって)の具合が違い、そのことでも大きく印象を異にすることになるのです。
その点、原安三郎コレクションは、「初摺」が多く、また、これまであまり公開されてこなかったこともあり保存状態も良好です。
「初摺」というのは、浮世絵師が描いた作品を版木におこし、絵師自らが摺の現場に立ち会い、様々な指示を出しながら仕上げて摺ったもの。つまり、今回出展されている「初摺」の浮世絵は、広重本人が現場で、「こうしたい」という思いを伝えて完成したものということになります。
一方、「初摺」に対する言葉が「後摺(のちずり、もしくはあとずり)」といいます。この「後摺」になると、絵師の思いよりは、より版元の“営業的観点”が盛り込まれるようになるため、より効率的で、時には簡便な摺が求められるようになったのだそうです。
今回の展示では、同じ作品で「初摺」と「後摺」を並べて展示しているものもあり、ふたつの違いを明快に理解することができます。
広重の最晩年の傑作と言われる「六十余州名所図会」。五畿七道(ごきしちどう)の68カ国に江戸と目録を合わせた計70図で構成された揃物の絵すべてと江戸の1枚、目録1枚を合わせた全70点がすべて一挙展示。これは、これまでにはなかったことだそうです。しかも、前後期通期で全点を展示!
広重は、実際には全国各地に足を運んで描いたわけではないといわれていますが、描く対象が全国各地に及ぶため、広重は先行する名所図会などに着想を得て、独自の世界を生み出しました。このシリーズでは彫りと摺りの高い技術が見どころの一つ。例えば、美しいグラデーションを生む「拭きぼかし」の一種の「あてなしぼかし」は摺師の腕が試される技法の一つで、広重作品の中でも本シリーズから本格的に使われるようになったそうです。
北斎と国芳の名作も展示されます。『神奈川沖浪裏』『凱風快晴』(北斎)、『近江国の勇婦お兼』(国芳)などの有名作も登場します。北斎幻の作品といわれる『千絵の海』全10点。この10点すべてを所蔵しているところは他にないということですので、今回の展示はとても貴重です。
いずれも人気のある画家なので、会場は外国の方も多く、非常に混雑していました。じっくり前で見たい場合は、時間に余裕を持っていくことをおすすめします。
会場にて、その鮮やかな色=ビビッド感を堪能してくださいね。
【原安三郎コレクション 広重ビビッド】
開催場所・会場
サントリー美術館
入館料一般 1300円大学生、高校生 1000円※中学生以下無料。
開催日・期間
2016年4月29日(金)〜2016年6月12日(日)※期間中の開催日:火曜休館(ただし、5月3日、6月7日は開館)
開催時間
10:00〜18:00 最終入館17:30
金・土、5月 2日(月)〜4日(祝) 10:00〜20:00 最終入館19:30