2015年11月29日
サントリー美術館「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」2回目
サントリー美術館で開催中の「逆境の絵師 久隅守景」2回目に行ってきました。
江戸時代初期の狩野派の絵師、久隅守景。農民の姿を描いた耕作図で知られています。探幽の弟子で探幽の姪と結婚。早い段階から狩野派内部で重用されました。知恩院や聖衆来迎寺に尚信と描いた襖絵は今でも残っています。
守景は農民風俗を詩情豊かに描き出し、独自の世界を確立します。とくに、穏やかな自然の風景をはじめ、子供や動物など、身近なものに注がれる温かいまなざしは、守景作品の大きな魅力の一つとなっています。生前より画名が高く、作品も少なからず現存している守景ですが、意外なことに、彼の生涯については詳しいことはわかっていません。今回出品は約90点。一部、周辺の絵師の作品も含みます。
展示構成は、「第一章 狩野派からの出発」「第二章 四季耕作図の世界」「第三章 晩年期の佐作品 ―加賀から京都へ」「第四章 守景の機知 ―人物・動物・植物」「第五章 守景の子供たち ―雪信・彦十郎」となっています。
個人的には前半の水墨画作品が秀逸だったと思います。また四季耕作図や鷹狩図屏風は今回詳細な解説が展示されていたので、併せて見るとより楽しめました。
いくつか作品を紹介します。
瀟湘八景図屏風(しょうしょうはっけいずびょうぶ) 久隅守景筆 六曲一双 サントリー美術館
瀟湘八景図 久隅守景筆 一幅 江戸時代 17世紀 兵庫・頴川美術館
近江八景図屏風 滋賀県立近代美術館
農作業を描く耕作図は、中国では為政者の鑑戒画(かんかいが)とされていたもので、15世紀末頃にその画題が日本へ伝わると、多くの流派によって描かれました。狩野派も例外ではなく、探幽やその甥・常信(つねのぶ)などもこの主題を手掛けています。将軍や大名たちは、耕作図に描かれた農作物を生産する人々の姿に領民たちを重ね合わせ、自らの戒めとしました。
元々が中国由来の画題であったため、通常は中国風俗で表現されましたが、守景は中国の風景だけでなく、日本の風景や風俗に取材した耕作図も残しています。また、多くの場合、耕作図は四季の推移にそって表されますが、守景画ではほぼすべての作例で、四季の配置が通常の方向とは逆転しています。古典的な画題に取材しつつも独自の変容を加えることで、守景にしか描けない耕作図を創り上げました。
重要美術品 四季耕作図屏風 旧小坂家本 久隅守景筆 六曲一双
喜鵲図(きじゃくず) 久隅守景筆 一幅 江戸時代 17世紀 大阪市立美術館
舞楽図屏風 久隅守景筆 六曲一双 江戸時代 17世紀 東京・根津美術館 右隻は唐 の太宗の武勲をたたえた曲、秦王破陣楽、左隻「納曾利」と「蘭陵王」の番舞(つがいまい)の関係にある舞曲が描かれています。
守景の娘・清原雪信は、父の師でもある探幽に学んだ狩野派随一の女性絵師です。雪信は、探幽様式を忠実に受け継ぎつつ、女性らしい繊細な筆線と丁寧な彩色を駆使した優美な作風で人気となりました。井原西鶴著『好色一代男』に名前が登場するなど、当時その評判が広く知れ渡っていたようです。
女性画家という枠を超えて、その力量を改めて認識させられました。
花鳥図屏風 清原雪信筆 六曲一双 江戸時代 17世紀 板橋区立美術館
久隅守景というあまり知られていないが実力のある画家を取り上げた好企画でした。
「逆境の絵師 久隅守景」
【会場】
サントリー美術館(ガレリア3F)
【開催日時】
2015年10月10日(土)〜11月29日(日)
10:00〜18:00
※金・土、10月11日(日)、11月2日(月)、11月22日(日)は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
【休館日】
火曜日、11月4日(水)
※11月3日(火・祝)は開館
【入場料】
(当日)一般¥1,300、大学・高校生¥1,000、中学生以下無料
江戸時代初期の狩野派の絵師、久隅守景。農民の姿を描いた耕作図で知られています。探幽の弟子で探幽の姪と結婚。早い段階から狩野派内部で重用されました。知恩院や聖衆来迎寺に尚信と描いた襖絵は今でも残っています。
守景は農民風俗を詩情豊かに描き出し、独自の世界を確立します。とくに、穏やかな自然の風景をはじめ、子供や動物など、身近なものに注がれる温かいまなざしは、守景作品の大きな魅力の一つとなっています。生前より画名が高く、作品も少なからず現存している守景ですが、意外なことに、彼の生涯については詳しいことはわかっていません。今回出品は約90点。一部、周辺の絵師の作品も含みます。
展示構成は、「第一章 狩野派からの出発」「第二章 四季耕作図の世界」「第三章 晩年期の佐作品 ―加賀から京都へ」「第四章 守景の機知 ―人物・動物・植物」「第五章 守景の子供たち ―雪信・彦十郎」となっています。
個人的には前半の水墨画作品が秀逸だったと思います。また四季耕作図や鷹狩図屏風は今回詳細な解説が展示されていたので、併せて見るとより楽しめました。
いくつか作品を紹介します。
瀟湘八景図屏風(しょうしょうはっけいずびょうぶ) 久隅守景筆 六曲一双 サントリー美術館
瀟湘八景図 久隅守景筆 一幅 江戸時代 17世紀 兵庫・頴川美術館
近江八景図屏風 滋賀県立近代美術館
農作業を描く耕作図は、中国では為政者の鑑戒画(かんかいが)とされていたもので、15世紀末頃にその画題が日本へ伝わると、多くの流派によって描かれました。狩野派も例外ではなく、探幽やその甥・常信(つねのぶ)などもこの主題を手掛けています。将軍や大名たちは、耕作図に描かれた農作物を生産する人々の姿に領民たちを重ね合わせ、自らの戒めとしました。
元々が中国由来の画題であったため、通常は中国風俗で表現されましたが、守景は中国の風景だけでなく、日本の風景や風俗に取材した耕作図も残しています。また、多くの場合、耕作図は四季の推移にそって表されますが、守景画ではほぼすべての作例で、四季の配置が通常の方向とは逆転しています。古典的な画題に取材しつつも独自の変容を加えることで、守景にしか描けない耕作図を創り上げました。
重要美術品 四季耕作図屏風 旧小坂家本 久隅守景筆 六曲一双
喜鵲図(きじゃくず) 久隅守景筆 一幅 江戸時代 17世紀 大阪市立美術館
舞楽図屏風 久隅守景筆 六曲一双 江戸時代 17世紀 東京・根津美術館 右隻は唐 の太宗の武勲をたたえた曲、秦王破陣楽、左隻「納曾利」と「蘭陵王」の番舞(つがいまい)の関係にある舞曲が描かれています。
守景の娘・清原雪信は、父の師でもある探幽に学んだ狩野派随一の女性絵師です。雪信は、探幽様式を忠実に受け継ぎつつ、女性らしい繊細な筆線と丁寧な彩色を駆使した優美な作風で人気となりました。井原西鶴著『好色一代男』に名前が登場するなど、当時その評判が広く知れ渡っていたようです。
女性画家という枠を超えて、その力量を改めて認識させられました。
花鳥図屏風 清原雪信筆 六曲一双 江戸時代 17世紀 板橋区立美術館
久隅守景というあまり知られていないが実力のある画家を取り上げた好企画でした。
「逆境の絵師 久隅守景」
【会場】
サントリー美術館(ガレリア3F)
【開催日時】
2015年10月10日(土)〜11月29日(日)
10:00〜18:00
※金・土、10月11日(日)、11月2日(月)、11月22日(日)は20:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
【休館日】
火曜日、11月4日(水)
※11月3日(火・祝)は開館
【入場料】
(当日)一般¥1,300、大学・高校生¥1,000、中学生以下無料