2016年04月24日
認知症の方の世界
介護士のあなたは、認知症の方が毎日体験している「認知症の方の世界」というものを想像したことがあるでしょうか?
認知症の方がどのような世界で生き、どのような不安を抱えながら生活しているのか、今回はそれを想像しながら読んでいただきたいと思います。
ふと目を開けると、知らない場所で目が覚めた。
ここは、どこなんだろう。
私はなぜここにいるんだろう。
周りを見渡すけど、誰もいない。
なんだかとてもこわい。
ここは病院なんだろうか。
それともどこかのホテルなんだろうか。
だとしたら、いつここへ来たんだろう。
まったく覚えていない。
なぜ覚えていないんだろう。
誰かに連れてこられたのか?
それとも、自分で来たのかな?
わからない。思い出せない。
部屋もなんとなく見覚えのあるような気もするけど、やはり思い出せない。
とりあえず、ベッドから起きて外に出てみよう。何かわかるかもしれない。
ふとトイレが見えた。
そういえばトイレに行きたい。ずっと行っていないから先にすませておこう。
下着が濡れているようだけど、下着の替えがない。このままでは気持ち悪いし、どうしよう。
そうだ、とりあえずこのトイレットペーパーを重ねて当てておこう。少しはマシなはず。
トイレは終わったけど、どうやって流すんだろう。何かボタンがあるけど、よくわからない。
とりあえずこのままフタをしておいて、あとで誰かに聞いてみよう。
洗面台が見えた。
コップやハブラシ、髪をとくブラシもある。
よく見ると、私の名前が書いてある。
このコップにも、このブラシにも。これは、私の物なんだろうか。
そういえば、口の中が気持ち悪い。このコップで口をゆすごう。水は、これかな。
ふと鏡を見ると、ひどい寝癖で髪がボサボサだ。
顔も洗いたい。ちょうどタオルもあるし、これを借りて、顔を洗おう。
ついでに髪もブラシを借りて整えておこう。
よし。
まだパジャマのままだけど、着替えがあるのかもわからないな。
とりあえず、外に出て誰かいれば聞いてみよう。
ドアがある。これかな?
ドアを開けて周りを見渡すと、廊下なのがわかる。
ここは、どこなんだろうか。病院かな?
廊下に出ると、テレビの音が聞こえる。
あっちに誰かいるのかも知れない。行ってみよう。
ふと向こうにいた男の人が私に気づいた。こっちに向かって歩いてくる。
誰だろう。見覚えがない。私を知っているのかな?
職員:「〇〇さん、おはようございます」
私の名前だ。やはりこの男の人は私を知っているらしい。
一体誰なんだろう。
わからないから、いろいろと聞いてみよう。
私:「あの、ここはどこですか?」
職員:「ここは老人ホームですよ」
老人ホーム。私は老人なのか。
私:「私はなぜここにいるんですか?」
職員:「ここで生活されているんですよ」
この人は何を言っているんだろう。私にはちゃんと家があるのに。どういうことなんだ。
私:「あなたは誰ですか?」
職員:「私はここの職員ですよ」
どうやら職員さんらしい。この建物の職員ということなんだろう。するとその職員さんが続けて、
職員:「食事の用意ができていますから、こっちへどうぞ」
食事?頼んだ覚えもないのに。でも、お腹は空いている。その食事をいただけるということなんだろうか。
あ、でもお金を持っていない。いくらするんだろう。
私:「あの、お金を持っていないんですが」
職員:「お金はいりませんよ」
お金はいらない?どうして?
そんなことを考えていると、不意にその職員さんが私のお尻をさわってきた。
私:「何をするんですか!」
職員:「〇〇さん、トイレにいきましょう」
トイレはさっき行ったばかりだ。行きたくない。
私:「トイレは今はいいです!」
職員:「でも、濡れていますから着替えましょう。気持ち悪いでしょう?」
ふとお尻をさわると、確かに濡れている。なぜ濡れているんだろう。
職員:「着替えがありますから、一緒に行きましょう」
このままでは確かに冷たいし、気持ち悪い。
でもなぜこの職員は私の着替えを持っているんだろう。
私:「着替えはどこにあるんですか」
職員:「こっちです。どうぞ」
そう言って、職員さんはどこかの部屋に入って行った。ついていけばいいのかな?
職員:「これに着替えましょう」
着替えを渡された。これに着替えろということなんだろう。
そう言うと、職員さんは部屋を出て行った。
着替えをしながら考えているが、この部屋はどこなんだろう。見覚えのある気もするけど、わからない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
着替えをしていると、ドアがノックされて男の人が入ってきた。
職員:「〇〇さん終わりましたか」
私:「あなたは誰ですか?」
職員:「私はここの職員ですよ」
私:「何しに来たんですか」
そういえば、ここはどこなんだろう。いつからここにいるんだろう。
職員:「食事の用意ができていますから、行きましょう」
食事?頼んだ覚えもないのに。でも、お腹は空いている。その食事をいただけるということなんだろうか。
あ、でもお金を持っていない。いくらするんだろう。
私:「あの、お金を持って・・・」
職員:「お金はいりません!」
お金はいらない?どうして?そしてどうしてそんなに強い口調で言うんだろう。こわい。
そもそもここはどこなんだろう。
私はなぜここにいるんだろう。
わからない。思い出せない。
こわい。
いかがだったでしょうか。
この例は、とある認知症の方の世界の一部分でしかありません。
これは認知症の症状では記憶障害と見当識障害が起こっているものなのですが、自分が認知症であることすら忘れてしまっている方にとっては、そんなことはわかるはずもありません。
何も思い出せない中で、ただただ、不安な朝を迎えている場合があるということです。
毎日、知らない場所で目が覚める恐怖。よく知らない人に食事を勧められるものの、お金を持っていないことに気づいてからの不安。
そして、不意に身体に触れられたりすることや、大きな声で言葉を被せるように言われる声かけ。
私たちが何気なく毎日行っている繰り返しのように思える介護でも、認知症の方にとっては毎回初めての体験ばかりということもあるのです。
高齢者は認知症が進むにつれて、毎日が不安と焦りとの日々に変わっていきます。
そのことを理解した上で、私たちは認知症の方と関わっていかなければならないと思います。
認知症の世界観を知った上で介護をすることは、その方に寄り添う介護を行う上でとても大切なことだということを心得ましょう。
こちらも合わせてお読みいただくと、より認知症についての理解が深まります。
認知症の種類と主な症状
認知症の中核症状とは
認知症の周辺症状とは
声掛けのコツなどまとめ
まだ持っていない資格に興味のある方は、こちらからすべて無料で資料請求ができます。
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認知症の方がどのような世界で生き、どのような不安を抱えながら生活しているのか、今回はそれを想像しながら読んでいただきたいと思います。
とある認知症の方の世界
ふと目を開けると、知らない場所で目が覚めた。
ここは、どこなんだろう。
私はなぜここにいるんだろう。
周りを見渡すけど、誰もいない。
なんだかとてもこわい。
ここは病院なんだろうか。
それともどこかのホテルなんだろうか。
だとしたら、いつここへ来たんだろう。
まったく覚えていない。
なぜ覚えていないんだろう。
誰かに連れてこられたのか?
それとも、自分で来たのかな?
わからない。思い出せない。
部屋もなんとなく見覚えのあるような気もするけど、やはり思い出せない。
とりあえず、ベッドから起きて外に出てみよう。何かわかるかもしれない。
ふとトイレが見えた。
そういえばトイレに行きたい。ずっと行っていないから先にすませておこう。
下着が濡れているようだけど、下着の替えがない。このままでは気持ち悪いし、どうしよう。
そうだ、とりあえずこのトイレットペーパーを重ねて当てておこう。少しはマシなはず。
トイレは終わったけど、どうやって流すんだろう。何かボタンがあるけど、よくわからない。
とりあえずこのままフタをしておいて、あとで誰かに聞いてみよう。
洗面台が見えた。
コップやハブラシ、髪をとくブラシもある。
よく見ると、私の名前が書いてある。
このコップにも、このブラシにも。これは、私の物なんだろうか。
そういえば、口の中が気持ち悪い。このコップで口をゆすごう。水は、これかな。
ふと鏡を見ると、ひどい寝癖で髪がボサボサだ。
顔も洗いたい。ちょうどタオルもあるし、これを借りて、顔を洗おう。
ついでに髪もブラシを借りて整えておこう。
よし。
まだパジャマのままだけど、着替えがあるのかもわからないな。
とりあえず、外に出て誰かいれば聞いてみよう。
ドアがある。これかな?
ドアを開けて周りを見渡すと、廊下なのがわかる。
ここは、どこなんだろうか。病院かな?
廊下に出ると、テレビの音が聞こえる。
あっちに誰かいるのかも知れない。行ってみよう。
ふと向こうにいた男の人が私に気づいた。こっちに向かって歩いてくる。
誰だろう。見覚えがない。私を知っているのかな?
職員:「〇〇さん、おはようございます」
私の名前だ。やはりこの男の人は私を知っているらしい。
一体誰なんだろう。
わからないから、いろいろと聞いてみよう。
私:「あの、ここはどこですか?」
職員:「ここは老人ホームですよ」
老人ホーム。私は老人なのか。
私:「私はなぜここにいるんですか?」
職員:「ここで生活されているんですよ」
この人は何を言っているんだろう。私にはちゃんと家があるのに。どういうことなんだ。
私:「あなたは誰ですか?」
職員:「私はここの職員ですよ」
どうやら職員さんらしい。この建物の職員ということなんだろう。するとその職員さんが続けて、
職員:「食事の用意ができていますから、こっちへどうぞ」
食事?頼んだ覚えもないのに。でも、お腹は空いている。その食事をいただけるということなんだろうか。
あ、でもお金を持っていない。いくらするんだろう。
私:「あの、お金を持っていないんですが」
職員:「お金はいりませんよ」
お金はいらない?どうして?
そんなことを考えていると、不意にその職員さんが私のお尻をさわってきた。
私:「何をするんですか!」
職員:「〇〇さん、トイレにいきましょう」
トイレはさっき行ったばかりだ。行きたくない。
私:「トイレは今はいいです!」
職員:「でも、濡れていますから着替えましょう。気持ち悪いでしょう?」
ふとお尻をさわると、確かに濡れている。なぜ濡れているんだろう。
職員:「着替えがありますから、一緒に行きましょう」
このままでは確かに冷たいし、気持ち悪い。
でもなぜこの職員は私の着替えを持っているんだろう。
私:「着替えはどこにあるんですか」
職員:「こっちです。どうぞ」
そう言って、職員さんはどこかの部屋に入って行った。ついていけばいいのかな?
職員:「これに着替えましょう」
着替えを渡された。これに着替えろということなんだろう。
そう言うと、職員さんは部屋を出て行った。
着替えをしながら考えているが、この部屋はどこなんだろう。見覚えのある気もするけど、わからない。
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着替えをしていると、ドアがノックされて男の人が入ってきた。
職員:「〇〇さん終わりましたか」
私:「あなたは誰ですか?」
職員:「私はここの職員ですよ」
私:「何しに来たんですか」
そういえば、ここはどこなんだろう。いつからここにいるんだろう。
職員:「食事の用意ができていますから、行きましょう」
食事?頼んだ覚えもないのに。でも、お腹は空いている。その食事をいただけるということなんだろうか。
あ、でもお金を持っていない。いくらするんだろう。
私:「あの、お金を持って・・・」
職員:「お金はいりません!」
お金はいらない?どうして?そしてどうしてそんなに強い口調で言うんだろう。こわい。
そもそもここはどこなんだろう。
私はなぜここにいるんだろう。
わからない。思い出せない。
こわい。
毎日が不安と葛藤との闘いだということ
いかがだったでしょうか。
この例は、とある認知症の方の世界の一部分でしかありません。
これは認知症の症状では記憶障害と見当識障害が起こっているものなのですが、自分が認知症であることすら忘れてしまっている方にとっては、そんなことはわかるはずもありません。
何も思い出せない中で、ただただ、不安な朝を迎えている場合があるということです。
毎日、知らない場所で目が覚める恐怖。よく知らない人に食事を勧められるものの、お金を持っていないことに気づいてからの不安。
そして、不意に身体に触れられたりすることや、大きな声で言葉を被せるように言われる声かけ。
私たちが何気なく毎日行っている繰り返しのように思える介護でも、認知症の方にとっては毎回初めての体験ばかりということもあるのです。
高齢者は認知症が進むにつれて、毎日が不安と焦りとの日々に変わっていきます。
そのことを理解した上で、私たちは認知症の方と関わっていかなければならないと思います。
認知症の世界観を知った上で介護をすることは、その方に寄り添う介護を行う上でとても大切なことだということを心得ましょう。
こちらも合わせてお読みいただくと、より認知症についての理解が深まります。
認知症の種類と主な症状
認知症の中核症状とは
認知症の周辺症状とは
声掛けのコツなどまとめ
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