2016年02月04日
認知症の周辺症状とは
今回は認知症の周辺症状についてお伝えしていきます。
認知症の種類や中核症状についての解説は、下記でご説明しています。
認知症の種類と主な症状
認知症の中核症状とは
認知症の周辺症状は、ご本人の性格やこれまでの環境などによって様々な症状が出てきます。
周辺症状はいくつもの種類の症状の中から、症状が重なって出るパターンが多く、同じような症状の方がいても、微妙に違っているのはそのためなのです。
周辺症状の種類を知り、その方にはどんな症状が現れているのかを把握した上でケアを行うことは、結果的に安心した生活を送っていただくための近道になります。
ですが、認知症の方を介護をする上で大変なのは中核症状ではなく、実はこの周辺症状への対応なんです。
人それぞれ微妙に症状が違うこともあり、どれが正解というものもなく、まさに手探りでその方に合った対応を見つけていかなければならないからです。
とはいえ、様々なパターンの認知症状に対応できるようにするためには、それらの種類や症状、対応の仕方を知っておかないと、時間がかかるばかりか、誤った対応でその方の認知症状を悪化させてしまうことにもつながりかねません。
以下の周辺症状をしっかりと覚えて、認知症対応に役立てていただければと思います^^
周辺症状の種類
【帰宅願望(出社願望)】
帰宅願望の理由は様々で、ほとんどの場合、ご本人はまだ自分が若いと思っていることが多いのが特徴です。「子どもが家で待っているから」「そろそろ仕事に行かなくては」など。認知症の進行とともに年を取ってからの記憶が薄れ、忘れていくために、記憶の若返り現象が起こってしまっているのです。
その他にも、施設に入居している方などは自分が入居していることが理解できずに、施設を公民館のような地域の人が集まるところだと勘違いしているパターンがあります。ご本人は遊びにきている感覚になっているので、この場合は夕方になると帰宅願望が出ることが多くなります。当然その場合でも、やはり記憶の若返り現象が起こっていることが多く、「帰ってご飯を作らないといけないから」などの理由で自宅に帰ろうとするのはそのためなのです。
夕方にかけて帰宅願望が出やすくなることを「夕暮れ症候群」とも言われます。この夕暮れ症候群、不思議なもので、外が暗くなって夜になると落ち着くことが多いのも特徴です。そうやって帰宅モードから、お泊りモードに切り替わる方をたくさん見てきました^^
【徘徊】
「徘徊」とは、目的もなくうろうろと歩き回ることです。なので、認知症の方にとってこの「徘徊」という言葉は当てはまらないことが多いです。ほとんどの場合、何か目的があって、そこに行こうとしている、何かをやろうとしているので、徘徊ではありません。ただ、それが周りの人から見て異様に見えたり、その目的や理由が分からないから「徘徊」と呼ばれるようになったというだけの話です。
ご本人に理由を尋ねてみると「トイレを探している」「外の空気を吸いに行こうと思った」など、明確な目的意識を持っての行動だということがわかると思います。
ただしそこはやはり認知症なので、見当識障害のある方は外に出たまま帰り道が分からなくなり、途中で転倒してケガをしたり、交通事故やそのまま行方不明となる最悪のケースも考えられますので、ご本人の動向把握には十分に注意する必要があります。
【物盗られ妄想】
自分の部屋に置いてあった物が無くなった、誰かが盗ったと思い込んでしまいます。そう思い込んでいるので、誰も盗っていないと言っても説得無効となる場合が多く、たとえ物が出てきたとしても「誰かが盗ってここに置いた」など不信感を払拭することはかなり困難なケースにもなり得ます。
大半の場合は、時計やメガネや指輪など、ご本人にとって貴重品と思える物を自分でタンスやベッドの周りなどに直して、そのまま忘れてしまうことが多いのですが、被害的な気持ちが強くなるとたとえ家族でも疑いの目を向けられることがあります。
介護士でも信頼関係が築けていたとしても当然疑われることもあるのですが、普段からの関係性が良好なら被害的な妄想も軽減できることが多いです。
【暴言・暴力】
認知症といってもいきなり暴言や暴力を振るうのではありません。大半の場合は、介護に対しての不満や苛立ちを覚えたときに、感情を抑えられずに暴言や暴力になるケースがほとんどです。
自分の思ったようにいかないときはイライラが募ることもありますし、職員の声掛けの仕方が悪かったりすると(命令口調だったり、これはダメあれはダメなど行動を制限されるような口調)、気持ちの反発が起きやすくなり、それが暴言や暴力につながることがあります。
暴言は男女ともにみられますが、暴力は男性のほうが圧倒的に多くみられます。
【介護拒否】
介護に対して不信感を抱いている場合、何を言ってもダメ、誰がやってもダメ、ということがみられます。これは前述した暴言・暴力や物盗られ妄想とも関係している場合が多く、介護に対しての不満や苛立ち、そして盗られたりしないだろうかという不安などから、介護拒否となることも少なくありません。
介護拒否のケースとしては、薬を飲むのを嫌がる、排泄介助などの身体介助を嫌がる、入浴や着替えを勧めても嫌がるなどが比較的多くみられます。自分にとって面倒くさいと思うことや、人に迷惑をかけていると思いたくないといった気持ちの表出が、介護拒否という形で出ることがあります。
また、普段からあまり信頼関係がなく、ご本人が苦手だと思っている介護者からの介助も、介護拒否につながることがあります。
【失禁】
認知症が進行すると、見当識障害が出始めます。そのため、トイレの場所がわからなくなったり、行きたくても辿りつけなかったりして、失禁することがあります。この場合は、「トイレに行きたい」と思っていても、間に合わずに失禁するといったケースです。尿意や便意の感覚が比較的保たれていて失禁の多い方はこちらに該当します。
もうひとつは、尿意や便意を感じにくくなっている場合です。感じにくくなっているといっても、尿意や便意自体はちゃんとあります。認知症によって忘れてしまっているのは、これが尿意・便意なんだという感覚の識別です。ですが、大半の方が尿意は多少わからなくなっても、便意を感じることができる方は多いです。
失禁が多く、オムツをしている方などは皮膚の感覚が鈍くなっている場合もあり、自分でも知らないうちに出ていることが多くなります。そのため、しばらく時間が経って冷たくなってから気づくことがほとんどです。皮膚の感覚は、冷たいと感じる感覚のほうが鋭いためです。
【弄便】
オムツに大便をして、それを手でつかんで投げ捨てたり、手についた便を壁や洋服やベッドシーツなどになすりつけたりすることを弄便といいます。
弄便行為は、オムツに出てしまった大便を不快に思い、自分でなんとか処理をしようとしたと考えられます。認知症が進行すると、排便があったことを上手く人に伝えることもできなくなるため、弄便行為につながるケースが多いです。
よって、自ら汚いものを触ろうとして触っているわけではなく、そこにもちゃんとご本人なりの理由があるということです。
【不安・焦燥感】
認知症の進行とともに、不安や焦りといった感情は次第に変化していきます。
最初の頃はこれから自分がどうなっていくのかという不安、わからないことや忘れてしまうことがこれ以上増えないようになんとかしなければという焦りの感情があります。
次第に、見当識障害や記憶障害などが顕著になってくると、今度は知らない場所にいる不安や早く帰らなければという焦りが出始めます。その不安や焦りの気持ちが強くなると、帰宅願望につながることもあります。
認知症の方は発症から常にこの不安と焦りの気持ちと隣り合わせで生活されているんだと考えておいてもいいと思います。
【異食】
見当識障害により、食べられる物と食べられない物の区別がつかなくなることがあります。食べられない物を口に入れてしまうと、場合によっては命の危険を伴うこともあるので注意が必要です。
入れ歯用の洗浄剤やボタン型の電池、洗剤やティッシュなど、異食行為の見られる方は何を口に入れるかわかりません。
【せん妄】
せん妄の状態は、頭の中が混乱してパニックになっている状態です。そのため、興奮して大声を出したり時には暴力を振るうこともあります。人によっては幻覚症状もみられることがあり、声をかけてなだめようとしてもすぐには収まりません。
夜間、寝ていて目を覚ましたときにもこのせん妄がみられることもあり、それを「夜間せん妄」といいます。昼夜逆転傾向にある方が夜間せん妄を起こしやすいです。
環境の変化や外出したことでの疲れ、便秘や脱水症状の出ているときなどはせん妄が出やすくなるため、注意が必要です。
【幻覚・錯覚】
幻覚や錯覚は、ご本人にとってはとてもリアルに感じられることが多く、実際にはなにもなくてもご本人はそうとしか思えない、そう見える(聞こえる)、といった具合に確信に近いものがほとんどです。
幻覚でよくあるのが「そこに子どもがいる」「天井や壁を虫が這っている」といったような幻視や、「あの人たちは自分の悪口を言っている」と聞こえる幻聴などです。夜中に亡くなった方が見えたりすることもあり、実際にそこにいるかのように会話をしていることがあるのも、幻覚の一種です。
錯覚は実際にそこにある物を、何か別の物のように見えてしまうことをいいます。床に落ちているゴミが虫に見えたり、壁のシミが人の顔に見えるといったことは、健常者でもあることです。認知症の方はそこに妄想などが加わり、よりリアルにそう思い込んでしまうことがあります。
レビー小体型認知症の場合は幻覚が初期の段階から起こることも多いので、認知症だと気づかれずに精神科などを誤って受診してしまうケースも少なくありません。
【睡眠障害】
高齢になるにつれて眠りが浅くなったりすぐに目が覚めてしまうことが増えてくることは一般的に知られてしますが、これは脳の中にある体内時計の機能が徐々に低下してくるからだと言われています。
認知症になるとその機能は更に低下してしまいがちになり、そのため夜中に目が覚めたりして睡眠の質が悪くなってくると、今度はその影響が日中に出てきます。日中にウトウトして、夜間に眠れないといったことが続き、昼夜逆転傾向となると睡眠障害となります。
日中傾眠、夜間覚醒の昼夜逆転は、ご本人にとっても日常生活に支障をきたすことが多くなるばかりか、介護者にとっても介護の負担が増えることになります。
【うつ・抑うつ】
認知症の中で、このうつ・抑うつの症状がみられやすのは特にレビー小体型認知症の場合です。アルツハイマー型や脳血管性型など他の認知症でもみられます。
眠れない、食欲がない、気分の落ち込み、無関心などの症状がでます。
認知症の中のうつ・抑うつは、特に診断があるわけではなく、うつ状態としての捉え方をする場合が多いです。お薬の副作用や生活環境の変化などが影響してうつ状態になることもあります。また、認知症初期の段階で、自分は認知症かもしれないという不安などからうつを発症するケースもあります。
【依存】
認知症になり、介護や生活に対する不安や焦りなどから、自分の信頼する人を頼りきってしまうことがあります。常に信頼する人がそばにいないと落ち着かなったり、行く先々に着いて回ったりします。
施設などではこの信頼を寄せる相手が介護者の場合もあるため、ケアに支障が出ることも。
特に異性に対して依存することがみられる場合は注意が必要です。認知症により、妄想なども加わってご本人と同じ性別の方のケアをしているところを見かけると、ケアの邪魔をしようとしたり、急に大声で怒鳴ったりして興奮することもあります。
依存状態にあると、「他の人に取られたくない」という心理が働き、感情を抑えきれずに出してしまうこともありますので、信頼関係が良好なほど陥りやすいといえます。
【収集癖】
収集癖のある方は、自分の物だけでなく他人や公共の物まで集めて、大事にしまい込んでおこうとする方が多く、その原因は様々なことが考えられます。
「何か困ったときに使えるように」という考えで普段からコツコツと集めようとしている方もいれば、昔の物が無かった時代のことを思い出して集めようとされる方もいます。1番多いのは、トイレットペーパーやペーパータオルなどの紙類です。
不思議なことに、普段から物を直している場所のことはよく記憶されていることが多く、そこに直しているとしっかり覚えていることもあります。
集めるのにも何か理由があるので、介護者がむやみやたらに捨ててしまうと、その症状をさらに悪化させることにつながるおそれもあります。
【仮性作業】
周りの人から見ても何をやっているのかわからないようなことでも、ご本人とっては意味のあることをやっているということがあります。
チラシを何度も折る、テービルの傷を指でなぞって消そうとするなど、その作業をしているときは非常に一生懸命に、もしくは満足そうにしていることも多く、その作業をすることで安心できるものがあるのだろうと考えられます。
意味がないからと作業を途中で止めようとすると、逆に興奮することもあるので、ある程度満足のいくまでやってから食事やトイレなどに移行するとスムーズな場合が多いです。
周辺症状は最近ではBPSD(行動・心理症状)とも呼ばれるようになってきました。
個人的には、周辺症状という言い方のほうが合っているような気がしますけど^^
なぜなら、言い方をいくら変えてもその対応方法まで変わるわけじゃないと思うからです。
それに、認知症に共通する症状を中核症状とするなら、個別に出てくる症状が周辺症状ということですよね。
個別化されているといってもおかしくない周辺症状は、共通してみられる中核症状とは違い、人それぞれの性格や環境などによって様々な症状が出てきます。
認知症という大きなくくりの中で、真ん中にあるのを中核症状をするなら、その周辺に人それぞれが持つ症状が無数にあるという考え方、そういうイメージのほうがしっくりくるような気がするんです。
その時代その時代で呼び方は様々に変わっていきますが、どんな言葉になっても、大切なのは認知症の症状を分かりやすく知れるようにすることと、その対応方法や接し方が何より介護においては重要なんだということを知っておきましょう^^
認知症の中核症状とは
認知症の種類と主な症状
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認知症の種類や中核症状についての解説は、下記でご説明しています。
認知症の種類と主な症状
認知症の中核症状とは
認知症の周辺症状は、ご本人の性格やこれまでの環境などによって様々な症状が出てきます。
周辺症状はいくつもの種類の症状の中から、症状が重なって出るパターンが多く、同じような症状の方がいても、微妙に違っているのはそのためなのです。
周辺症状の種類を知り、その方にはどんな症状が現れているのかを把握した上でケアを行うことは、結果的に安心した生活を送っていただくための近道になります。
ですが、認知症の方を介護をする上で大変なのは中核症状ではなく、実はこの周辺症状への対応なんです。
人それぞれ微妙に症状が違うこともあり、どれが正解というものもなく、まさに手探りでその方に合った対応を見つけていかなければならないからです。
とはいえ、様々なパターンの認知症状に対応できるようにするためには、それらの種類や症状、対応の仕方を知っておかないと、時間がかかるばかりか、誤った対応でその方の認知症状を悪化させてしまうことにもつながりかねません。
以下の周辺症状をしっかりと覚えて、認知症対応に役立てていただければと思います^^
周辺症状の種類
【帰宅願望(出社願望)】
帰宅願望の理由は様々で、ほとんどの場合、ご本人はまだ自分が若いと思っていることが多いのが特徴です。「子どもが家で待っているから」「そろそろ仕事に行かなくては」など。認知症の進行とともに年を取ってからの記憶が薄れ、忘れていくために、記憶の若返り現象が起こってしまっているのです。
その他にも、施設に入居している方などは自分が入居していることが理解できずに、施設を公民館のような地域の人が集まるところだと勘違いしているパターンがあります。ご本人は遊びにきている感覚になっているので、この場合は夕方になると帰宅願望が出ることが多くなります。当然その場合でも、やはり記憶の若返り現象が起こっていることが多く、「帰ってご飯を作らないといけないから」などの理由で自宅に帰ろうとするのはそのためなのです。
夕方にかけて帰宅願望が出やすくなることを「夕暮れ症候群」とも言われます。この夕暮れ症候群、不思議なもので、外が暗くなって夜になると落ち着くことが多いのも特徴です。そうやって帰宅モードから、お泊りモードに切り替わる方をたくさん見てきました^^
【徘徊】
「徘徊」とは、目的もなくうろうろと歩き回ることです。なので、認知症の方にとってこの「徘徊」という言葉は当てはまらないことが多いです。ほとんどの場合、何か目的があって、そこに行こうとしている、何かをやろうとしているので、徘徊ではありません。ただ、それが周りの人から見て異様に見えたり、その目的や理由が分からないから「徘徊」と呼ばれるようになったというだけの話です。
ご本人に理由を尋ねてみると「トイレを探している」「外の空気を吸いに行こうと思った」など、明確な目的意識を持っての行動だということがわかると思います。
ただしそこはやはり認知症なので、見当識障害のある方は外に出たまま帰り道が分からなくなり、途中で転倒してケガをしたり、交通事故やそのまま行方不明となる最悪のケースも考えられますので、ご本人の動向把握には十分に注意する必要があります。
【物盗られ妄想】
自分の部屋に置いてあった物が無くなった、誰かが盗ったと思い込んでしまいます。そう思い込んでいるので、誰も盗っていないと言っても説得無効となる場合が多く、たとえ物が出てきたとしても「誰かが盗ってここに置いた」など不信感を払拭することはかなり困難なケースにもなり得ます。
大半の場合は、時計やメガネや指輪など、ご本人にとって貴重品と思える物を自分でタンスやベッドの周りなどに直して、そのまま忘れてしまうことが多いのですが、被害的な気持ちが強くなるとたとえ家族でも疑いの目を向けられることがあります。
介護士でも信頼関係が築けていたとしても当然疑われることもあるのですが、普段からの関係性が良好なら被害的な妄想も軽減できることが多いです。
【暴言・暴力】
認知症といってもいきなり暴言や暴力を振るうのではありません。大半の場合は、介護に対しての不満や苛立ちを覚えたときに、感情を抑えられずに暴言や暴力になるケースがほとんどです。
自分の思ったようにいかないときはイライラが募ることもありますし、職員の声掛けの仕方が悪かったりすると(命令口調だったり、これはダメあれはダメなど行動を制限されるような口調)、気持ちの反発が起きやすくなり、それが暴言や暴力につながることがあります。
暴言は男女ともにみられますが、暴力は男性のほうが圧倒的に多くみられます。
【介護拒否】
介護に対して不信感を抱いている場合、何を言ってもダメ、誰がやってもダメ、ということがみられます。これは前述した暴言・暴力や物盗られ妄想とも関係している場合が多く、介護に対しての不満や苛立ち、そして盗られたりしないだろうかという不安などから、介護拒否となることも少なくありません。
介護拒否のケースとしては、薬を飲むのを嫌がる、排泄介助などの身体介助を嫌がる、入浴や着替えを勧めても嫌がるなどが比較的多くみられます。自分にとって面倒くさいと思うことや、人に迷惑をかけていると思いたくないといった気持ちの表出が、介護拒否という形で出ることがあります。
また、普段からあまり信頼関係がなく、ご本人が苦手だと思っている介護者からの介助も、介護拒否につながることがあります。
【失禁】
認知症が進行すると、見当識障害が出始めます。そのため、トイレの場所がわからなくなったり、行きたくても辿りつけなかったりして、失禁することがあります。この場合は、「トイレに行きたい」と思っていても、間に合わずに失禁するといったケースです。尿意や便意の感覚が比較的保たれていて失禁の多い方はこちらに該当します。
もうひとつは、尿意や便意を感じにくくなっている場合です。感じにくくなっているといっても、尿意や便意自体はちゃんとあります。認知症によって忘れてしまっているのは、これが尿意・便意なんだという感覚の識別です。ですが、大半の方が尿意は多少わからなくなっても、便意を感じることができる方は多いです。
失禁が多く、オムツをしている方などは皮膚の感覚が鈍くなっている場合もあり、自分でも知らないうちに出ていることが多くなります。そのため、しばらく時間が経って冷たくなってから気づくことがほとんどです。皮膚の感覚は、冷たいと感じる感覚のほうが鋭いためです。
【弄便】
オムツに大便をして、それを手でつかんで投げ捨てたり、手についた便を壁や洋服やベッドシーツなどになすりつけたりすることを弄便といいます。
弄便行為は、オムツに出てしまった大便を不快に思い、自分でなんとか処理をしようとしたと考えられます。認知症が進行すると、排便があったことを上手く人に伝えることもできなくなるため、弄便行為につながるケースが多いです。
よって、自ら汚いものを触ろうとして触っているわけではなく、そこにもちゃんとご本人なりの理由があるということです。
【不安・焦燥感】
認知症の進行とともに、不安や焦りといった感情は次第に変化していきます。
最初の頃はこれから自分がどうなっていくのかという不安、わからないことや忘れてしまうことがこれ以上増えないようになんとかしなければという焦りの感情があります。
次第に、見当識障害や記憶障害などが顕著になってくると、今度は知らない場所にいる不安や早く帰らなければという焦りが出始めます。その不安や焦りの気持ちが強くなると、帰宅願望につながることもあります。
認知症の方は発症から常にこの不安と焦りの気持ちと隣り合わせで生活されているんだと考えておいてもいいと思います。
【異食】
見当識障害により、食べられる物と食べられない物の区別がつかなくなることがあります。食べられない物を口に入れてしまうと、場合によっては命の危険を伴うこともあるので注意が必要です。
入れ歯用の洗浄剤やボタン型の電池、洗剤やティッシュなど、異食行為の見られる方は何を口に入れるかわかりません。
【せん妄】
せん妄の状態は、頭の中が混乱してパニックになっている状態です。そのため、興奮して大声を出したり時には暴力を振るうこともあります。人によっては幻覚症状もみられることがあり、声をかけてなだめようとしてもすぐには収まりません。
夜間、寝ていて目を覚ましたときにもこのせん妄がみられることもあり、それを「夜間せん妄」といいます。昼夜逆転傾向にある方が夜間せん妄を起こしやすいです。
環境の変化や外出したことでの疲れ、便秘や脱水症状の出ているときなどはせん妄が出やすくなるため、注意が必要です。
【幻覚・錯覚】
幻覚や錯覚は、ご本人にとってはとてもリアルに感じられることが多く、実際にはなにもなくてもご本人はそうとしか思えない、そう見える(聞こえる)、といった具合に確信に近いものがほとんどです。
幻覚でよくあるのが「そこに子どもがいる」「天井や壁を虫が這っている」といったような幻視や、「あの人たちは自分の悪口を言っている」と聞こえる幻聴などです。夜中に亡くなった方が見えたりすることもあり、実際にそこにいるかのように会話をしていることがあるのも、幻覚の一種です。
錯覚は実際にそこにある物を、何か別の物のように見えてしまうことをいいます。床に落ちているゴミが虫に見えたり、壁のシミが人の顔に見えるといったことは、健常者でもあることです。認知症の方はそこに妄想などが加わり、よりリアルにそう思い込んでしまうことがあります。
レビー小体型認知症の場合は幻覚が初期の段階から起こることも多いので、認知症だと気づかれずに精神科などを誤って受診してしまうケースも少なくありません。
【睡眠障害】
高齢になるにつれて眠りが浅くなったりすぐに目が覚めてしまうことが増えてくることは一般的に知られてしますが、これは脳の中にある体内時計の機能が徐々に低下してくるからだと言われています。
認知症になるとその機能は更に低下してしまいがちになり、そのため夜中に目が覚めたりして睡眠の質が悪くなってくると、今度はその影響が日中に出てきます。日中にウトウトして、夜間に眠れないといったことが続き、昼夜逆転傾向となると睡眠障害となります。
日中傾眠、夜間覚醒の昼夜逆転は、ご本人にとっても日常生活に支障をきたすことが多くなるばかりか、介護者にとっても介護の負担が増えることになります。
【うつ・抑うつ】
認知症の中で、このうつ・抑うつの症状がみられやすのは特にレビー小体型認知症の場合です。アルツハイマー型や脳血管性型など他の認知症でもみられます。
眠れない、食欲がない、気分の落ち込み、無関心などの症状がでます。
認知症の中のうつ・抑うつは、特に診断があるわけではなく、うつ状態としての捉え方をする場合が多いです。お薬の副作用や生活環境の変化などが影響してうつ状態になることもあります。また、認知症初期の段階で、自分は認知症かもしれないという不安などからうつを発症するケースもあります。
【依存】
認知症になり、介護や生活に対する不安や焦りなどから、自分の信頼する人を頼りきってしまうことがあります。常に信頼する人がそばにいないと落ち着かなったり、行く先々に着いて回ったりします。
施設などではこの信頼を寄せる相手が介護者の場合もあるため、ケアに支障が出ることも。
特に異性に対して依存することがみられる場合は注意が必要です。認知症により、妄想なども加わってご本人と同じ性別の方のケアをしているところを見かけると、ケアの邪魔をしようとしたり、急に大声で怒鳴ったりして興奮することもあります。
依存状態にあると、「他の人に取られたくない」という心理が働き、感情を抑えきれずに出してしまうこともありますので、信頼関係が良好なほど陥りやすいといえます。
【収集癖】
収集癖のある方は、自分の物だけでなく他人や公共の物まで集めて、大事にしまい込んでおこうとする方が多く、その原因は様々なことが考えられます。
「何か困ったときに使えるように」という考えで普段からコツコツと集めようとしている方もいれば、昔の物が無かった時代のことを思い出して集めようとされる方もいます。1番多いのは、トイレットペーパーやペーパータオルなどの紙類です。
不思議なことに、普段から物を直している場所のことはよく記憶されていることが多く、そこに直しているとしっかり覚えていることもあります。
集めるのにも何か理由があるので、介護者がむやみやたらに捨ててしまうと、その症状をさらに悪化させることにつながるおそれもあります。
【仮性作業】
周りの人から見ても何をやっているのかわからないようなことでも、ご本人とっては意味のあることをやっているということがあります。
チラシを何度も折る、テービルの傷を指でなぞって消そうとするなど、その作業をしているときは非常に一生懸命に、もしくは満足そうにしていることも多く、その作業をすることで安心できるものがあるのだろうと考えられます。
意味がないからと作業を途中で止めようとすると、逆に興奮することもあるので、ある程度満足のいくまでやってから食事やトイレなどに移行するとスムーズな場合が多いです。
周辺症状は最近ではBPSD(行動・心理症状)とも呼ばれるようになってきました。
個人的には、周辺症状という言い方のほうが合っているような気がしますけど^^
なぜなら、言い方をいくら変えてもその対応方法まで変わるわけじゃないと思うからです。
それに、認知症に共通する症状を中核症状とするなら、個別に出てくる症状が周辺症状ということですよね。
個別化されているといってもおかしくない周辺症状は、共通してみられる中核症状とは違い、人それぞれの性格や環境などによって様々な症状が出てきます。
認知症という大きなくくりの中で、真ん中にあるのを中核症状をするなら、その周辺に人それぞれが持つ症状が無数にあるという考え方、そういうイメージのほうがしっくりくるような気がするんです。
その時代その時代で呼び方は様々に変わっていきますが、どんな言葉になっても、大切なのは認知症の症状を分かりやすく知れるようにすることと、その対応方法や接し方が何より介護においては重要なんだということを知っておきましょう^^
認知症の中核症状とは
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