2023年09月15日
1-11 価格・チャネル戦略
価格とは
【価格の役割】:価値の判断基準となるのが価格
・顧客は支払う対価よりも、製品により受け取る価値の方が大きいと認識する必要がある。
・価格の設定次第で利益・販売量が大幅に変わってくる。
【価格の影響要因】
・消費者の需要:需要と供給のバランスで価格が変わる
・需要の価格弾力性:価格が変化したときに、需要が変化する割合を表す。:価格弾力性が大きい製品は、価格を高くすると売れなくなる。
価格弾力性 = 需要の変化率 / 価格の変化率
・製品のコスト:製造や販売にかかるコストは、価格設定の際の基準となる。:コストにどれぐらい利益を乗せるかで価格戦略は変わる。
・競合の存在:競合を意識した価格設定
・法的な規制:独占禁止法など
価格設定
【価格の基本戦略】:価格の影響要因として、「製品のコスト」や「顧客の需要」、「競合の存在」がある
●コスト志向の価格設定(コストプラス法)(流通業ではマークアップ法):製品の原価に一定の利益を上乗せする
●需要志向の価格設定:消費者の需要に合わせて価格を設定
●心理的価格設定:消費者の心理を重視して価格を設定
・名声価格(威光価格):あえて高い価格をつけることで、消費者に高い価値があるということを認識させるような価格:ブランド品
・端数価格:9や8が付く端数価格をつけると、消費者は実際よりも値段が安く感じることが多い:食品や日用品
・習慣価格:消費者が慣習的に一定の価格のみ受け入れているような価格:自販機の缶ジュース
●競合志向の価格設定:競合の価格を重視して価格を設定
・実勢型価格設定:プライスリーダーの価格に、プライスフォロワーが追随する:消費者が価格差に敏感な製品に良く使われる方法
・入札型価格設定:最も価格が低い企業が契約を受注できる
【新製品の価格設定】
●上澄吸収価格戦略(スキミングプライス)(初期高価格戦略):新製品に高い価格を設定し、価格にそれほど敏感でない消費者に販売する方法
・ターゲット:イノベーター(革新者)
・メリット:利益率が高く、新製品の製品コストを早く回収できる
・デメリット:あまり売れない恐れもある
・成立する条件:新製品の品質やイメージが高く、競合と差別化できており、競合が模倣しにくいこと
●市場浸透価格戦略(ペネトレーションプライス)(初期低価格戦略):新製品に安い価格を設定し、大量に販売することでシェアを高める戦略
・メリット:一気にシェアを高めて、競合他社よりも、規模の経済性や経験曲線効果を早く発揮できる
・成立する条件:需要の価格弾力性が高いこと
・市場浸透価格戦略は、模倣されやすい最寄品でよく見られる価格戦略
【製品ミックスによる価格設定】
●抱き合わせ価格:複数の製品を組み合わせてセットで販売する方法(上下セットの服、PCとソフト):消費者にまとめて販売することが狙い
●プライスライニング:段階的な価格帯に沿って、製品を販売する方法:消費者が製品を選択しやすくする
●キャプティブ価格:メインの製品を安く設定し、付随する製品を一緒に購入してもらう戦略(昔の携帯電話と通話料):付随製品で儲けることが狙い
価格の調整
【割引】:条件を満たした場合に安くする事により販売の促進を図る制度
●現金割引:現金で支払う場合に価格を安くする制度:資金回収が早くなり、資金の回収不能というリスクがなくなる
●数量割引:大量に購入する場合に適用される割引:販売に関わる事務などのコストが削減できる
●季節割引:需要が停滞する季節に適用される割引:需要を喚起する
【販売促進による価格設定】
●ロスリーダー政策:目玉商品を設定し、その商品目当てに来店した顧客に、目玉商品以外の商品も購入してもらうことで、利益を確保する方法
●エブリデーロープライス政策(EDLP政策):常に商品を低価格で販売する方法(ウォルマートが推進):大規模な仕入やローコストのオペレーションを築くことが必要
【販売チャネルによる価格設定】
●機能割引:販売相手が遂行する流通機能によって割引をする制度(卸売業者が輸送や保管)
●アローワンス:流通業者がメーカーの意図に従って広告や陳列などを行った場合に割引を行う
●リベート:取引が終了した後の一定期間後に現金などが支払われる:取引金額が多い場合や、メーカーの販売促進に協力した場合などのリベート:販売やプロモーションを促進する効果
●メーカーの価格:再販売価格をメーカーが拘束することは、独占禁止法によって禁止:メーカー希望小売価格(参考価格)、オープン価格
〈参照売価〉
・外的参照価格:メーカー希望小売価格や当店通常価格など、消費者の購買環境から外的に入手できる参照価格
・内的参照価格:消費者個人の内的な感覚を基にした参照価格(過去の経験等)
〈現代の価格政策〉:価格政策が他のマーケティング・ミックス要素と統合的に作用することで、企業の競争優位性が左右される
●Hi-Lo 政策:集客のために、セールや特売など一時的に低価格で販売する方法
・フォワード・バイイング:前もって大量に商品の購入を行って、通常より安い価格で仕入れること
●価格の品質バロメーター機能:製品やサービスに関しての知識や情報が少ない場合は、価格の高いものは品質も良いと思う事
チャネルの機能
メーカーで生産された製品は、様々な流通経路をたどって最終消費者まで届けられる。この流通経路のことをチャネルと呼ぶ【流通の機能】
・商流としての製品の所有権を移転する機能
・物流として製品を輸送したり保管する機能
・情報流通として需要や供給などの情報を伝達したり、販売促進をする機能
・流通業者が掛けで仕入れることにより支払いが一定期間猶予されるために金融機能があります
・製品が消費者に売れないリスクを流通業者が負担する、危険負担機能
【取引数最小化の原理】
・メーカーと小売業者の間に卸売業者が介在することで取引の数が少なくなり、流通が効率化するとされる事
〈チャネル・スチュワードシップ〉
・流通チャネルの参加者の誰かがリーダー、すなわちスチュワードとなってチャネル戦略を策定し、顧客にとっての最適化を図り、同時に、チャネルの参加者すべてが利益を享受できるようにすること
〈オムニ・チャネル・リテイリング、電子商取引におけるモール型、マーケットプレイス型、テナント型プラットフォーム〉
●オムニ・チャネル・リテイリング:実店舗、オンラインストア等すべての販売チャネルや流通チャネルを統合すること
●モール型 EC サイト:Web 上のショッピングモールのようなスペースを提供する EC サイト
・マーケットプレイス型:モール内で商品を販売したい企業が、商品のデータのみを掲載するタイプのモール型 EC サイト:出店ではなく「出品」(Amazon)
・テナント型:多くの EC サイトが立ち並んだモール型 EC 市場です。(楽天市場や Yahoo!)
チャンネルの種類
【チャネルの長さによる種類】
●直接流通:メーカーが直接消費者と取引を行うチャネル
●間接流通:メーカーと消費者の間に流通業者が介在するチャネル(小売業者や卸売業者が存在する場合も)
【チャネルの幅による種類】
●開放的チャネル政策:メーカーが取引する流通業者を限定せずに、幅広く製品を流通させる方法
・メリット:たくさんの製品を販売できる
・デメリット:メーカーがチャネルをコントロールすることが難しい
・日用雑貨などの最寄品によく見られる政策
●選択的チャネル政策:メーカーが取引する流通業者を、一定の基準によって選択して、業者の数を絞り込む方法
・メリット:流通業者を絞り込むことで、販売の努力が集中できることと、得意先の管理がしやすくなること
・デメリット:次の排他的チャネル政策に比べると、流通業者の販売やプロモーションへの協力が不十分な場合があること
・化粧品などの買回品で、販売業者の業態やイメージなど一定の基準を満たした取引先を選択して、優先的に販売するのが選択的チャネル政策
●排他的チャネル政策:製品の流通を制限し、専売店のみに販売権を付与するもの
・メリット:自社のブランドを高めるのに向いている
・チャネルを極端に絞り込むため、消費者の認知度が低下し、売上が低下する可能性があること
【垂直的マーケティングシステム(VMS)】:メーカーや卸売業者、小売業者を含めた垂直的なチャネル間の競争
●企業型システム:チャネル全体が一つの資本によって垂直統合されているもの(自動車など)
●契約型システム:独立した企業同士が契約によって結びつくシステム
・フランチャイズチェーン:本部であるフランチャイザーと、加盟店であるフランチャイジーが契約を結んで事業を行う
・ボランタリーチェーン:独立した企業同士が結合して、経営の合理化をはかる仕組み:本部が集中的に仕入などを行うことで、業務の効率化を行う
@コーペラティブチェーン(小売業者主宰):小売業者同士で水平的に統合し、共同で本部を設けて共同仕入や、在庫管理などを行う
Aボランタリーチェーン(卸売業主宰):卸売業主宰のボランタリーチェーンでは、卸売業者が小売業者に対してリテールサポートを行う。
リーテルサポート:卸売業者が小売業者から入手した売れ筋などの情報を元に、商品情報の提供などの支援を各小売業者に行う
●管理型システム:チャネルリーダーが他のメンバーを契約によらず組織化するもの:最もチャネルリーダーの支配力が弱い
〇流通系列化:メーカーが卸売業者や小売業者などを自社の流通に組み込むことで、競争優位を獲得しようとすること
・専売店制度:メーカーが流通業者に自社製品のみを取り扱うように制限する制度
・一店一帳合制:メーカーが、小売業者に対して自社製品を仕入れる卸売業者を一つに制限すること
〈国際フライチャイジング〉
@ストレート・フランチャイジング契約:国内の本部が進出先国でフランチャイジング参加の募集をかけ、現地事業者と直接フランチャイジング契約を締結する形態。
A合弁型フランチャイジング契約:国内の本部が進出先国でのパートナーとともに現地に合弁会社や子会社を設立し、そこを相手先としてマスター・フランチャイズ契約を結ぶもの。
Bサブ・フランチャイジング契約:海外の現地本部(マスター・フランチャイザー)が、現地で加盟店を募集し、フランチャイズ契約による店舗展開を行うもの。
物流戦略
物流では、物流コストと顧客満足はトレードオフの関係にある【物流の機能】:ものを輸送するだけでなく、保管や荷役、包装まで含んでいる。
・購買物流:メーカーで材料や部品を購入する
・販売物流:工場で製品が生産された後に倉庫で保管
【ロジスティックス】:物流業務を効率的に行うための管理方法:材料の調達から生産、顧客への配送などの一連の物流活動を、個別機能ごとではなく全体最適で計画的に管理するプロセス
・全体最適化するために、工場や倉庫などの物流拠点の配置や、材料や製品の輸送方法、生産や配送のスケジューリング、在庫管理方法などを総合的に計画し管理
【サードパーティーロジスティクス】
・サードパーティーロジスティクス:ロジスティックスを第三者にアウトソーシング
・輸送や倉庫業務といった個別の業務だけでなく、ロジスティクス全体をアウトソーシング
・物流業務を改革しコスト削減や顧客満足度の向上を図ることが狙い
タグ:企業経営理論
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