2023年09月02日
1-8 労働関連法規
労働基準法
労働者の保護を目的、労働条件は労働者と使用者が対等の立場において決定すべき
【労働条件】:労働基準法などの法令が最も強い効力があります。続いて、労働協約、就業規則、労働契約の順に効力がある。
●労働協約:労働組合と使用者の間で結ぶ協定
●就業規則:従業員が守るべきルール:常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出ることが義務(パートやアルバイトも含む)
・絶対的記載事項:労働時間、賃金、退職
・相対的記載事項:退職手当や臨時の賃金:制度を導入する場合には記載
・任意的記載事項:労働協約や法令に違反することはできません
作成・変更には労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴く
●労働契約:労働者と使用者の間で結ぶ契約
・賃金や労働時間などの労働条件を明示(書面の交付により)することが義務
・労働条件は、就業規則や労働協約、法令に違反することはできない。
原則期間の定め無し、定める場合は3年まで、例外専門知識や60歳以上は5年まで
〈心理的契約〉:契約書などで明文化されている内容を超えて、期待する暗黙の了解のことを、心理的契約という
【労働時間】
●法定労働時間
・1日8時間まで、1週間40時間まで、(休憩時間を除く)
・例外:労働者10人未満かつ特定の事業は週に44時間まで:小売りや卸売りなどの商業、映画・演劇業、病院などの保健衛生業、旅館や飲食など接客・娯楽業
●変形労働時間
・1 ヶ月単位の変形労働時間制:1週間の法定労働時間を越えない限り、1日8時間を超えても良い制度
・フレックスタイム制:一定期間の総労働時間を定めておき、労働者が始業や終業の時刻を自主的に決定できる制度:就業規則に記載し、労使協定で総労働時間などの内容を定めることが必要
・1 年単位の変形労働時間制:1週間の労働時間が40時間を超えない限り1日8時間を超えても良い制度:季節により繁忙期と閑散期がある企業向き
・1週間単位の変形労働時間制:労働者30人未満、特定の業種で導入できる(小売、旅館、料理店、飲食店):1週間の労働時間が40時間を超えない限り1日8時間を超えても良い。
●休憩
・6時間超:45分以上
・8時間超:1時間以上
原則:労働時間中に一斉に付与し、自由に利用させる
〈働き方改革〉:2019年4月1日より施行
1⃣労働時間法制の見直し
1,残業時間の上限規制
・原則月45時間、年360時間
・臨時的な特別な事情:年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む):月100時間未満(休日労働を含む):月45時間を越えれるのは年6ヶ月まで
2,「勤務間インターバル」制度の導入促進:(努力義務)
勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を確保
3,年5日間の年次有給休暇の取得:(企業に義務づけ)
希望を踏まえて時季を指定する、年5日は取得させること
4,月 60 時間超の残業の割増賃金率引上げ
月 60 時間超の残業割増賃金率が 50%(大企業は以前から)
5,労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)
裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務づけ
6,「フレックスタイム制」の拡充
清算期間が3か月以内
・3 カ月平均で法定労働時間以内であれば:事業者割増賃金の支払いが必要ない。:労働者も振り替えた月に所定労働時間を働いていない場合であっても、その時間分は欠勤扱いにならない。
7,「高度プロフェショナル制度」を創設
・高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で 一定の年収要件(少なくとも 1,075 万円以上)を満たす労働者を対象
・労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提
・年間 104 日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度
・対象業務は、金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務、資産運用の業務、新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務等
8,産業医・産業保健機能の強化
・事業者から産業医への情報提供を拡充・強化します。また産業医の活動と衛生委員会との関係を強化
2⃣雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
1,不合理な待遇差の禁止:正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止
⑴パートタイム労働者・有期雇用労働者
@ 均衡待遇規定の明確化:基本給、賞与、役職手当、食事手当、福利厚生、教育訓練などごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化
A 均等待遇規定:新たに有期雇用労働者も対象とする
B 待遇ごとに判断することを明確化するため、ガイドライン(指針)を策定
⑵派遣労働者
いずれかを確保する事を義務化
・派遣先の労働者との均等・均衡待遇
・一定の要件を満たす労使協定による待遇
合わせて、派遣先労働者の待遇に関する 派遣元への情報提供義務を新設
2,労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化
・非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説明を求めることができる
<雇入れ時> 有期雇用労働者に対する、雇用管理上の措置の内容(賃金、教育訓練、福利 厚生施設の利用、正社員転換の措置等)に関する説明義務を創設。
<説明の求めがあった場合> 非正規社員から求めがあった場合、正社員との間の待遇差の内容・理由等を 説明する義務を創設。
<不利益取扱いの禁止> 説明を求めた労働者に対する場合の不利益取扱い禁止規定を創設。
3,行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政 ADR)の規定の整備
●休日
・毎週少なくとも 1 日の休日
・4 週間で 4 日以上の休日を与える変形休日制も認められている
●時間外労働
・法定労働時間外の労働をさせるときには、あらかじめ労使協定を結び、労働基準監督署長に届け出る必要がある:36 協定
・労働組合または過半数代表者と書面による協定を結ぶ
●みなし労働時間
・事業場外労働のみなし労働時間制:事業場の外で働いており、労働時間が把握しづらいケースに適用
・裁量労働のみなし労働時間制:専門業務型は、研究開発などの専門的業務に適用:企画業務型は、事業の企画や分析など事業運営自体を扱う業務に適用
●年次有給休暇:要件を満たす労働者に対して年次有給休暇を与えることが義務
・6 ヶ月間継続して勤務しており、労働日の8 割以上を出勤した労働者
・8 割以上という基準は、業務上の負傷・疾病による休業や、産休、育児休業や介護休業、年次有給休暇を取得した日は、出勤したとみなして計算
・継続勤務が 6 ヶ月の時に 10 日
・時季変更権:正常な事業運営を妨げる場合には、使用者が時季を変更すること
(使用者は労使協定によって労働者が有給休暇を時間単位として請求したときは、5 日以内に限り時間単位に与えることができます。)
・有給休暇の計画的付与:有給休暇の日数のうち 5 日を超える部分について、使用者が与える時季を決めることができる制度:労使協定で時季を定める必要がある
●適用除外
・管理監督者には、これまでの労働時間の規定は適用されない
・管理監督者は経営者と一体の立場にある者
【解雇】
●解雇の制限
・業務上の負傷や疾病のための休業期間や、休業が終了した後の 30 日間
・産休の期間と休業終了後の 30 日間も制限されており、この期間に解雇することはできない
・育児・介護休業法では、労働者が育児休業や介護休業の申し出をしたり、取得したりすることを理由とする解雇も禁止
●解雇の予告
・30 日前に労働者に予告をするか、30日分以上の賃金を支払う必要がある
・合理的な理由がない場合には解雇はできず、無効になる
・天変地異などやむを得ない事情で事業の継続が不可能になった場合や、労働者の責で解雇する場合には解雇予告は必要ない
・日々雇い入れられる労働者や試みの使用期間中の者に解雇予告は必要ない:「試みの使用期間」とは、雇用してから 14 日以内
【賃金】
●賃金支払の原則:支払方法について 5 原則
・通貨払いの原則
・直接払いの原則
・全額払いの原則
・毎月 1 回払いの原則(1回以上)
・一定期日払いの原則
●割増賃金:法定労働時間以外の労働に対して割増賃金を支払う
・時間外労働の場合は 25%以上
・休日労働の場合は 35%以上
・深夜労働の場合は 25%以上
・複数の条件が組み合わさった場合は、率を加算する必要がある
・1か月 60 時間を超える時間外労働については、割増賃金は 50%以上:割増賃金の支払いに代えて、代替休暇として有給休暇を付与することもできる
〈雇用調整(一時帰休)〉
・使用者が経営上の都合により操業を短縮し、労働者を自宅待機や教育訓練などの形で一時的に業務を休ませること
・一時帰休の期間中は、使用者に平均賃金の 60%以上の休業手当の支払義務を設けている
〈労働基準法施行規則〉
・更新の基準は書面の交付により明示しなければならない
・更新の基準の内容は、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるもの
労働組合法
労働三権として、団結権、団体交渉権、団体行動権が保障されている
【不当労働行為】:労働組合を組織することを妨害したり、労働組合員に対して不当な扱いをしたりすることを禁止⇒労働委員会に申し立てて救済を求める
・不利益な取り扱い:労働組合に加入したり活動をしたことを理由に、解雇や減給する事
・黄犬契約の締結:労働者が労働組合に加入しないことや脱退することを雇用の条件にする事
・団体交渉拒否:正当な理由がなく団体交渉を拒否すること
・支配介入:労働組合の結成や運営に対して、使用者が支配したり介入したりすること
・経費援助:使用者が労働組合の運営に関する経費を援助すること
【労働協約】:団体交渉の結果、労使で合意した労働条件をまとめたもの
・就業規則は労働協約に反してはならない
・労働協約と労使協定は別のもの
・労使協定:労働基準法で定められた原則に対して例外を規定するために労使で締結するもの:労働条件は労働協約や就業規則に明記する必要がある
労働安全衛生法
労働災害を防止し、労働者の安全と健康の確保や、快適な職場環境の形成を促進するための法律
●労働安全衛生管理の体制
・総括安全衛生管理者:安全管理、衛生管理を総括的に管理する最高責任者:建設業・運送業、常時使用する労働者が100人以上:製造業・小売業300人以上
・安全管理者:安全に関わる部分を管理する:常時使用する労働者が 50 人以上
・衛生管理者:衛生に関わる部分を管理する:常時使用する労働者が 50 人以上
・産業医:労働者の健康を管理する:医師から選任する:事業者は、衛生委員会に対し、産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければならない:産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければならないと義務化
●健康診断:労働者について年一回の健康診断を行う必要があります
〈健康診断の義務〉
・常時雇用する労働者を雇い入れる際(入社時)と、その後年に 1 回の健康診断(定期健診)を受けさせる義務があり、労働者も受ける義務がある。
・常時雇用する労働者:正社員(期間の定めのない労働契約)は全員が受診対象
・契約社員やパート/アルバイト:以下の2つの条件を満たす場合は健康診断の受診義務がある
@期間の定めのある契約で使用される者であって、契約期間が 1 年以上の者、1週間の労働時間が、A正社員の 4 分の 3 以上である者(原則は週 30 時間以上となる)
・労働者の健康診断の結果を 5 年間保存
・健康診断の費用の負担を誰がするのかは、法律には規定されていません。(事業者に健康診断の義務が課せられている以上、事業者が費用を負担するのが当然と考えられています)
〈医師による面接指導〉
・労働者の週 40 時間を超える労働が 1 月当たり 80 時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる場合には、労働者の申し出を受けて、医師による面接指導を行わなければならない。
・労働安全衛生法第 66条の 8 により規定
・長時間労働者に脳・心臓疾患の発症が多い
労働保険
労災保険と雇用保険がある
【労災保険】:業務上で災害が発生したときの補償を目的
・労働者を一人でも雇用していれば加入が義務(パート・アルバイト含む)
・業務災害:業務が原因となった負傷や疾病、障害、死亡
・通勤災害:住居と就業場所の間を合理的な経路および方法で移動した場合
【雇用保険】:労働者の雇用や生活の安定を目的
@1週間の所定労働時間が 20 時間以上
A31 日以上の雇用見込がある人を雇い入れた場合
@Aを満たすと適用対象
・求職者給付(失業保険):失業した際に支給される保険
・就職促進給付:再就職した際に給付されるもの
・教育訓練給付:厚生労働大臣が認める教育訓練を受講し修了した場合に支給
・雇用継続給付:高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付の 3 種類
〈労災保険の適用事業〉:原則として労働者を使用するすべての事業
・例外:@国の直営事業や官公署の事業:国家公務員災害補償法や地方公務員災害補償法の適用となるため
A農林水産業の一部については、暫定的に任意適用事業
・通常は事業主や役員は加入することができない:例外:一人親方や自営農業、小規模事業者など、その業務の実状や災害の発生状況などからみて、労働者に準じて保護することが適当であると認められる者
社会保険
健康保険と厚生年金がある
【健康保険】:業務外の疾病や負傷、死亡、出産に対して給付を行うことが目的
・被保険者だけではなく扶養家族に対しての給付も対象となる
・事業主と被保険者が半分ずつ保険料を支払う
【厚生年金】:日本の公的年金制度は、3 階層
・国民年金(基礎年金):一番下の階層:全ての国民が対象
・厚生年金:保険料は事業主と被保険者が半額負担:加入期間とその間の収入に比例して支給:会社員が対象
・厚生年金基金:企業年金制度の一つで企業が任意で加入する年金
その他法規
【育児・介護休業法】
・労働者から育児や介護の申請があった場合、事業主は一定の休暇などを与えることが義務付けられている
・育児休業:原則として子どもが1歳になるまで休業を取得できる制度:両親がともに育児休業を取得する場合、子どもが最長 1 歳 2 ヵ月に達するまでの間で 1 年間の休業が可能:保育所に入所できないなどの事情がある場合は、最長で 2 歳に達するまで休業を延長
・子の看護休暇:子どもが 1 人の場合は年 5 日、2 人以上の場合は 10 日までの休暇を取得できる制度:小学校入学前の子どもがいる労働者が対象:病気やけが:1 日単位だけでなく時間単位でも取得可能
・介護休業:要介護の対象家族 1 人につき 3 回まで、通算 93 日までの休業を取得できる制度
・介護休暇:要介護状態の対象家族が 1 人であれば年 5 日、2 人以上であれば年10 日まで、介護のための短期の休暇を取得できる制度:1 日単位だけでなく時間単位でも取得できる
【労働契約法】
5つの基本原則
1,労使対等の原則:労働契約は、労働者および使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、または変更すべきもの
2,均衡考慮の原則:就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、または変更すべきもの
3,仕事と生活の調和への配慮の原則:仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、または変更すべきもの
4,信義誠実の原則:労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、および義務を履行しなければならない
5,権利濫用の禁止の原則:労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない
〈その他の法規〉
●男女雇用機会均等法
・募集や採用について男女で均等な機会
・配置や昇進、教育、福利厚生、退職などにおいて、性別を理由とした差別的取り扱いを禁止
・現状で企業の中で女性に対する待遇などの格差がある場合は、それを改善するような取り組みを行うことは、違法にはならない:ポジティブアクション
●労働者派遣法:労働者の派遣事業を行う民間の業者に対して適用される法律
・労働者派遣:自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受ける他人のための労働に従事させること
・派遣労働という働き方、およびその利用:臨時的・一時的なものであることを原則:常用代替を防止
すべての業務で、次の 2 つの期間制限が適用されるようになりました。
・派遣先事業所単位の期間制限:同一の派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則、3 年が限度:3 年を超えて受け入れようとする場合は、派遣先の過半数労働組合等からの意見を聴く必要がある:1 回の意見聴取で延長できる期間は 3 年まで
・派遣労働者個人単位の期間制限:同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3 年が限度:
・正社員と派遣社員「同一労働同一賃金」が適用
●職業安定法:職業紹介に関する規定をまとめた法律
・公共職業安定所(ハローワーク):公的なもの
・有料職業紹介事業:厚生大臣の許可が必要:手数料や報酬を受ける事業:転職を希望する人と、企業の間で仲介を行う人材紹介という形が一般的:許可制、期間は新規の場合は 3 年、更新は 5 年ごとに行う必要:港湾運送業、建設業への紹介は禁止
タグ:企業経営理論
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