2023年08月23日
1-6 組織と人材
経営管理の発展
【テイラーの科学的管理法】
・課業管理:課業(1日に行う作業量)を設定し管理を行う。
・4つの管理原則:課業を設定する事、標準的な条件を設定する事、家業を達成した労働者には高い賃金で報いる事、家業が達成できなかった労働者には低い賃金にする事
・科学的管理法の成果:IE(経営工学)の発展の契機となった。
・科学的管理法の問題点:経済人モデル(合理的な基準に基づいて行動するという考え)
【人間関係論】
・ホーソン実験:集団の中での非公式な行動基準(標準作業量が引き上げられたり集団に迷惑が掛かる)
・ホーソン実験の成果:生産に影響を与える要因は非公式な人間関係が重要
・社会人モデル:レスリスバーガー:人間は感情をもった社会的な存在であり、感情の理論で行動する
・インフォーマル組織:非公式な組織が公式な組織に大きな影響を与える
・人間関係論の問題点:感情を重視するだけでは生産性は向上しない。目的をもって自律的に行動する存在でもある。
モチベーション理論
モチベーション:動機づけ
【内容理論】
●マズローの欲求段階説:人間の欲求を5段階に体系化:下から、生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、自我の欲求、自己実現の欲求
・低次元の欲求が満たされると上の欲求を満たそうとするが、自己実現欲求以外は一旦満たされると動機づけの要因にならない
●マグレガーのX理論・Y理論
・X理論:従来からの人間観(仕事が嫌い、強制や罰が無ければ仕事をしない)、低次元の欲求段階にいる:命令と統制による管理
・Y理論:新しい人間観(仕事をするのが本性、目的のために進んで働く、報酬や条件で進んで責任を引き受け創意工夫する):高次元の自我の欲求や自己実現の欲求段階にいる:目標による管理(MBO)
●ハーズガーグの動機づけ・衛生理論
・動機づけについて2つの要因がある:不満要因、、満足要因
・不満要因(衛星要因):会社の方針、作業条件、給与、人間関係:要因を高めても不満は減少するが積極的な動機づけにならない
・満足要因(動機づけ要因):達成感、認められること、やりがい、責任、昇進、成長:高次元の欲求段階に相当する欲求
⇒職務充実(別名ジョブ・エントリッチメント):計画や判断など責任と権限を拡大し仕事を質的に充実:職務の垂直拡大
●アージリスの未成熟・成熟理論:人間は成長の段階で、受動的から能動的になったり、依存した状態から自立した状態になるもの
・組織は人間の成長を妨げないようにすることが重要⇒職務拡大、別名ジョブ・エンラージメント:仕事の範囲を水平的に拡大する:成長の実感を与える・
〈内発的動機づけ〉
・外発的動機付けは強制や懲罰、評価、報酬などが要因
・内発的動機付けは、例えば業務等に対する興味や関心から意欲が沸いて業務遂行等からの達成感や満足感、充実感を得たいという欲求が要因
〇デジの内発的動機付け:人は生まれながらに有能感と自己決定への欲求をもっており、この 2 つがモチベーションの重要な源泉となっている
〇チクセントミハイのフロー心理学:人が極度に集中している、没頭している状態を「フロー状態」という。
フロー経験:「活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される直接的で即座な反応」、「活動の目的が難しすぎず易しすぎない」「活動に本質的な価値があり活動が苦にならない」等が条件
〇ホワイトのコンピテンス(有能性)概念:コンピテンスとは環境に対する適応能力を指す概念:
「個人が経験・学習を通して獲得した能力をある状況下であれば有効に作用するだろうと考える潜在能力を持つこと」、
「その状況下でその潜在能力を有効に活用することで自分の有能さを発揮しようと動機付けられること」の2つを統合した概念
【過程理論】:どのようなプロセスで動機づけが行われるのかということに注目するのが過程理論
●ブルームの期待理論;動機づけの強さ(報酬の期待される価値と、報酬を得られる確率を掛け合わせたもの)
・報酬というのは、金銭的な報酬だけではなく、仕事の充実感や得られる尊敬など、個人にとって動機づけとなるもの全てを含む。
:個人によって報酬のとらえ方違うので動機づけの強さも変わる。
●マクレランドとアトキンソンの達成動機説
・達成動機:高い業績を上げたい、達成し成功したいと思う人が多く持っている動機:個人の責任で仕事をする事を好み、自分が行った事について迅速なフィードバックを望み、中リスクを好む。
・中ぐらいのリスク:50%以上の成功確率があれば動機づけ(リスクが低すぎるとあまり動機づけされない)
〈(中核的)職務特性モデル〉
・仕事の性質や特性そのものがモチベーションに深くかかわっていると考える理論:仕事自体が面白ければ、モチベーションが高まる
1,技能多様性:必要とされるスキルの多様性。
2,完結性:仕事の流れの全体に関与できること。(一部じゃない)
3,重要性:仕事の出来栄えが他の人(社内や顧客)にとって重要なこと。
4,自律性:自分で工夫できる裁量が大きいこと。
5,フィードバック:仕事そのものからフィードバックを得られること。(事の成果についての情報を直接的に得られるほど動機づけが高まる。)
〈(中核的)キャリア・アンカー〉:E.シャインによって提唱
・個人がキャリアを選択するときに、自分にとって最も大切で、犠牲にすることができない価値観を意味
・長期的なキャリア形成においては「どの仕事をしたいのか(what)」よりも「どのように仕事をしたいか(how)」の方が重要
・シャインは、8種類のキャリア・アンカーを示している
@管理能力 - 組織の中で責任ある役割を担うこと
A技術的・機能的能力 - 自分の専門性や技術が高まること
B安全性 - 安定的に 1 つの組織に属すること
C創造性 - クリエイティブに新しいことを生み出すこと
D自律と独立 - 自分で独立すること
E奉仕・社会献身 - 社会を良くしたり他人に奉仕したりすること
F純粋な挑戦 - 解決困難な問題に挑戦すること
Gワーク・ライフバランス - 個人的な欲求と、家族と、仕事とのバランス調整をすること
リーダーシップ
・与えられた状況の中で、目標を達成するために個人や組織に対して影響を与えること
【リーダーシップの源泉】:メンバーがリーダーシップを受け入れることが必要
〈組織から付与〉
・合法勢力:組織から与えられた権限
・報酬勢力:報酬を与える能力から生じる
・強制勢力:罰則を与える能力
〈個人の資質〉
・専門勢力:専門的知識や技術
・準拠勢力:個人的魅力や一体感
〈権威受容説(権限受容説)〉:権威は相手に受け入れられて初めて有効である:C.I.バーナードが提唱
・権威がメンバーに受容される主なポイント:
@リーダーの伝達の内容が、組織目的と矛盾していない
Aリーダーの知識や能力が伴っており、その権限行使にふさわしい
B伝達の内容がメンバーの個人的利害に反していない
C伝達の内容がメンバーの無関心圏の範囲であること(無関心圏とは興味関心が無い内容ということです)
〈リーダーシップとフォロワー〉
・リーダーシップの本質は人がついてくること:優れたリーダーかの判断はフォロワーがリーダーを受容する度合い
【資質特性論】:個人的資質:共通する性格特性の統一見解は出てこず
【行動類型論】:行動パターン
●レヴィンのリーダーシップ類型論:タイプを3に分類
・専制型リーダーシップ:仕事の成果は民主型と同等、満足度や雰囲気は民主型より劣っている
・民主型リーダーシップ:援助し集団で決定:仕事の成果と、仕事の満足度やグループの雰囲気の両面で一番良い結果
・放任型リーダーシップ:全て個人が自由に決定:仕事の成果が最低
●リカートのシステムW理論: 4 つのタイプに分類
・独善的専制型
・温情的専制型
・相談型
・参加型:参加型が理想:部下を支持し集団的な意思決定、高い業績目標を設定:集団のモチベーションを高め、成果を上げる
各小集団の管理者が連結ピンの役目を果たすことが重要:管理者が連結ピンとなることで、コミュニケーションや組織運営が円滑になる
●ブレーク=ムートンのマネジリアル・グリッド
・リーダーの関心を、人間の関心と業績の関心の 2 軸
・人間の関心と業績の関心が共に高いタイプが、最も高い業績を上げる
●シャートルのオハイオ研究:リーダーの行動は「構造作り」と「配慮」という2軸
・「構造作り」:インフラ整備+部下の課題管理:仕事志向
・「配慮」:良い人間関係を維持しようとする行動:人間関係志向
優れたリーダーは双方を高度に行う
【リーダーシップのコンティンジェンシー理論】:状況によって適合するリーダーシップは異なる
●フィードラーのコンティンジェンシー理論
・指示や命令を中心とした仕事中心型:リーダーが統制しやすい状況は良い(メンバーがリーダーを信頼しており、仕事内容が明確で、リーダーの権限が強い状態)
:逆にリーダーが統制しにくい状況もこちらの方が良い
・人間関係の配慮を中心とした人間関係中心型:状況がどちらでもない中間的なときは良い
・リーダーシップ・スタイル:LPC(もっとも一緒に仕事をやりたくない同僚)という指標:LPCが高いリーダーは人間関係志向、低いリーダーは生産指向、仕事志向
・状況要因:リーダーシップ・スタイルと集団業績の関係を状況要因として、リーダーと集団の関係性を状況好意性という概念でとらえ@リーダーと集団の関係(良い-悪い)、Aタス
クのルーティン化、構造化の程度(高い-低い)、Bリーダーの公式権限の強さ(強い-弱い)の三側面で表しました。
●ハウスのパス=ゴール理論(経路理論):報酬の目標を示し、その報酬を得るための経路を明確にすることが必要だと指摘
・期待される報酬の価値を明確に示し、障害を避けて報酬を得るための経路を示す
・部下の能力が高く、仕事が高度なほど、参加的なリーダーシップが有効
●その他のリーダーシップ理論
・PM 理論:P機能(目標達成能力)、M機能(集団維持能力):P,Mどちらも高いリーダーが高い生産性を示す
・リーダー・メンバー交換理論(LMX理論):自分と似た考え方・個人特性を持ち、能力が高いメンバーを内集団として選び、貢献に対する内的・外的報酬を提供
内集団のメンバーは信頼関係を築き、成果を高めるための資源や機会を積極的に受け取り、仕事に対してリスクを取る傾向にある
組織活性化
【組織文化】
●組織文化の定義と役割:組織メンバーの間で共有された価値や理念、あるいは習慣となった行動パターンと定義:組織文化は組織メンバーの間で形成される
●組織開発(組織変革):組織開発や組織変革と呼ばれる方法
・組織開発(OD):組織の有効性や従業員のウエルネス(心身ともに良好な状態)の改善を目指し、人間的かつ民主的価値観のもとで計画的に組織変革に介入するマネジメント手法
・重視している価値観
@人間尊重の価値観:人間は基本的に善であり、最適な場が与えられれば、自律的・主体的にその人間の能力を発揮する。
A民主的な価値観:意思決定する際、関連するできる限り多くの人が参加し関与した方が意思決定の質が高まると考えられる。
B当事者中心の価値観:自ら主体的に変革に取り組むものと考えられる。
C社会的・エコロジカル的システム志向の価値観:組織内だけでなく、組織を取り巻く社会や環境をも重視している。
〈組織アイデンティティ〉:「我々は何者であるか」という問いに対する答え
・組織に対して近くしている、中心的、連続的、独自的な属性
〈キャメロンとクインの組織文化理論〉
●組織文化:組織メンバーの間で共有された価値や理念、あるいは習慣となった行動パターンと定義
・クラン文化:支援的リーダーシップ:クラン(仲間)水平的な関係性
・アドホクラシー文化:革新者的リーダーシップ:創造性を発揮、組織外部に発信:ベンチャー
・ハイアラーキー文化:規則や手続きの遵守:明確な階層がある官僚組織
・マーケット文化:現実主義的リ−ダーシップ:プロセスより市場シェア拡大を重視
【集団の行動】:企業は、小さな集団の集合体と考えることができる
●集団の行動様式(集団のダイナミクス):個人には見られないような特性
・集団の凝集性が高くなる:集団の行動基準に従う圧力が働く
・凝集性が高い集団:まとまりが高い、閉鎖的になる、集団浅慮(グループシンク)
・集団浅慮;集団で決定すると短絡的に決定される:集団を過大評価、集団が閉鎖的⇒均一な意見にする圧力がかかる⇒危険な意思決定をしてしまう。
●コンフリクト(葛藤):組織が個人の集団である以上コンフリクトは避けられない
・コンフリクトを解決していくことで変革を実現する。⇒コンフリクトマネージメント
【組織学習】:組織やメンバーが新しい知識を獲得する活動やプロセス
●低次学習と高次学習
・低次学習(シングルループ学習):既存の枠組みの中で行う学習:組織がゆっくり進化している時
・高次学習(ダブルループ学習):既存の枠組み自体を変革するための学習:組織が革新的に進化する時に必要
●組織学習のサイクル:4 段階のサイクル
・個人の信念が変化
・個人の行動が変化
・組織の行動に影響
・行動の結果、環境に変化
●組織学習の制約
・役割の制約:役割の制限があり行動を起こせない
・傍観者的な態度:周りが傍観者で組織行動に生かされない
・環境に変化を及ぼさない:組織は変化したと迷信的に思い込んでいるが実際には変化していない。
・個人がそれを正しく評価しない:環境が変化しても個人が正しく評価しない
●ナレッジマネジメント:組織の中で、知的資産を共有する方法
・ナレッジを蓄積し共有するだけでなく、個人の持つ暗黙知を、組織的な形式知として活用していくことが重要
〈SECIモデル〉
・共同化(Socialization):個人の持つ暗黙知を、別の個人が、自分の暗黙知として取り込むプロセス
・表出化(Externalization):個人が持つ暗黙知を、他人に伝わりやすくするため、言語や図表などを使って形式知にするプロセス
・連結化(Combination):個別の形式知を組み合わせて、新たな形式知を生み出すプロセス
・内面化(Internalization):個人が形式知を理解し、自分自身のノウハウやスキルとして体得(暗黙知化)するプロセス
【戦略的組織変革】:外部の環境変化に合わせて、戦略的に組織を変革すること
●組織変革への抵抗:時間が経つにつれて固定的になり、変革への抵抗が生じる。:変革のコスト(特に埋没コスト)、必要性・認識の不足
●組織変革の遂行:リッチな情報より、経営者が変革の必要性があるかを認識する
・制度的なリーダーシップ:組織に理念を注入するリーダーシップ
〈組織コミットメント〉:個人が組織に対して一体化している程度
・情緒的コミットメント:損得勘定ではなく、一体感や愛着といった情緒的なもの
・功利的コミットメント:損得に基づく功利的な判断によるもの
・規範的コミットメント:組織には忠誠を尽くすべきだという信念によるもの
・態度的コミットメント:組織の価値や目標を進んで自分に取り入れていくこと
・行動的コミットメント:個人の過去の行動によって、その組織への関与が強まる過程に注目したもの
〈解凍-変化-再凍結モデル(レヴィンの変革プロセス)〉:組織の変革は3段階のプロセスで実行される
@解凍:変革の必要性を理解させるプロセス
A変化:新しい考え方や行動様式を理解させるプロセス
B再凍結:新しい考え方や行動様式を、組織のメンバーに定着させるプロセス
タグ:企業経営理論
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